会社の作り方は、聞きなれない専門用語があり手続きも複雑に感じます。しかし、一つずつ解決することで、スムーズに会社設立が可能です。具体的には、基本事項の決定から設立後の届出まで、8つのステップで進みます。初めて会社設立に挑戦する方でも理解できるよう、具体的な手順や費用、必要書類を詳しく解説します。
目次
会社を設立する前に知っておきたい基礎知識
会社設立を検討する際は、法人化の基本的な特徴を押さえておくことが重要です。個人事業主と法人では、税制や社会的信用の扱いが異なるため、違いを理解しておくことで判断がしやすくなります。
個人事業主と法人の主な違い
法人化の代表的なメリットとして、社会的信用の向上と税負担の見直しが挙げられます。一般的には、年間利益が一定額を超えると法人化を検討するケースが多く見られます。
法人は個人とは別の人格として扱われるため、金融機関からの融資や取引面で有利になる場合があります。また、法人税は所得税と異なる税率体系で、役員報酬を経費として計上できる点も特徴です。
法人化にあたっての注意点
一方で、法人化には一定のコストや義務も伴います。設立時には法定費用がかかり、赤字であっても毎年の税負担が発生します。また、社会保険への加入が必要となり、会計や税務の手続きも複雑になります。さらに、融資を受ける際に代表者個人が保証を求められるケースもあるため、法人化後も個人の責任が生じる場合がある点には注意が必要です。
会社形態の基本的な選択肢
新たに設立できる会社形態は、株式会社と合同会社の2種類です。株式会社は信用力が高く資金調達に向いている一方、設立費用や運営上の義務が多くなります。合同会社は設立費用を抑えやすく、経営の自由度が高い反面、対外的な信用面で不利になることがあります。
【全8ステップ】株式会社設立の具体的な手順と流れ

会社の設立は、基本事項の決定から登記完了まで、8つのステップで進めます。ここでは、株式会社設立の流れを全体像から順を追って解説します。
- ステップ1:会社の基本情報を決める
- ステップ2:会社の実印を作成・準備する
- ステップ3:会社のルールを定めた「定款」を作成する
- ステップ4:公証役場で作成した定款の認証を受ける
- ステップ5:発起人の個人口座に資本金を払い込む
- ステップ6:法務局へ提出する登記申請書類を準備する
- ステップ7:管轄の法務局で設立登記を申請する
- ステップ8:登記完了後に登記簿謄本と印鑑証明書を取得する
各ステップを確実に進めることで、スムーズな会社設立を実現できます。
ステップ1:会社の基本情報(商号・事業目的・本店所在地など)を決める
会社設立の最初のステップは、基本情報の決定です。主に、以下の項目を決めていきます。
- 商号(会社名)
- 事業目的
- 本店所在地
- 資本金の額
- 発起人
- 役員構成
これらの項目は、定款作成に必要となるため、事前に具体的に整理しておくことが重要です。必要に応じて、会社ロゴなどの検討も並行して進めます。
ステップ2:会社の実印(法人印)を作成・準備する
基本情報が固まったら、法務局に登録する会社の実印(代表者印)を作成します。会社実印は、会社の意思決定を法的に証明する重要な印鑑です。通常、実印に加えて「銀行印」「角印」を合わせた3本セットで作成します。
印鑑のサイズには規定があり、法務局に登録できる実印は、辺の長さが1cmを超え、3cm以内の正方形に収まるものでなければなりません。作成には数日から1週間程度かかるため、早めに準備しておきましょう。
ステップ3:会社のルールを定めた「定款」を作成する
定款とは、会社の組織や運営に関する基本ルールを定めた書類です。「会社の憲法」とも呼ばれます。定款には3種類の記載事項があります。
- 記載が必要な「絶対的記載事項」(商号、事業目的、本店所在地など)
- 定めなければ効力が生じない「相対的記載事項」(役員の任期、株式の譲渡制限など)
- 任意で記載する「任意的記載事項」
定款は会社運営の基礎です。事業内容や将来の展望を考慮して慎重に作成しましょう。テンプレートも存在しますが、自社の実態に合わせたルール作りが重要です。
ステップ4:公証役場で作成した定款の認証を受ける
定款を作成したら、公証役場で認証を受けます。定款が正当な手続きで作成されたことを証明してもらうためです。定款認証は、株式会社の設立でのみ必須です。合同会社の場合は不要となります。認証は、本店所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います。
手続きには、公証人手数料として原則5万円が必要です。資本金の額や一定の要件を満たす場合、1万5,000円となるケースもあります。紙の定款の場合は、公証人手数料に加えて収入印紙代4万円が必要です。
電子定款を利用すれば印紙代は不要です。実務では電子定款の利用を強くお勧めします。ただし、電子定款の作成には専用ソフトや機器が必要となる点に注意してください。
ステップ5:発起人の個人口座に資本金を払い込む
定款の認証が完了したら、資本金を払い込みます。定款で定めた金額を、発起人(代表者)の個人口座に振り込んでください。法人口座はまだ開設できないため、既存の個人口座を使用します。
会社法上、株式会社は資本金1円から設立可能です。ただし、資本金が極端に少ない場合、金融機関からの融資や取引先からの信用面で不利になります。事業内容や運転資金を考慮して、適切な金額を設定してください。
複数の発起人がいる場合、各自の出資額を代表者の口座に振り込みます。振込が完了したら、通帳の表紙、裏表紙、振込履歴ページをコピーし、「払込証明書」として登記申請時に提出します。残高証明では受け付けられないため、必ず振込手続きをしましょう。
ステップ6:法務局へ提出する登記申請書類を準備する
資本金の払い込みが完了したら、登記申請書類の準備に取り掛かります。法務局へ提出する書類一式を揃えましょう。
具体的には、登記申請書、登録免許税納付用台紙、認証済みの定款が必要です。加えて、発起人の同意書、役員の就任承諾書と印鑑証明書、資本金の払込証明書、印鑑届書も用意します。会社の機関設計によっては、設立時取締役会議事録の作成も求められます。
各書類には厳格な様式や記載ルールがあります。抜け漏れや不備があると申請が受理されません。チェックリストを作成して、一つずつ確実に揃えていくことをおすすめします。
ステップ7:管轄の法務局で設立登記を申請する
すべての必要書類が揃ったら、設立登記を申請します。本店所在地を管轄する法務局へ提出してください。申請方法は3つあります。
- 法務局の窓口へ直接持参する方法
- 郵送による方法
- オンライン(登記・供託オンライン申請システム)を利用する方法
窓口または郵送で申請した場合、書類を提出した日が会社の設立日です。オンライン申請の場合は、申請が法務局に受理された日が設立日となります。会社の設立日は任意に選べるため、縁起の良い日や記念日を選ぶ経営者も多く見られます。
申請後、書類に不備がなければ、通常1週間から2週間程度で登記が完了です。審査期間中、書類の修正(補正)を求められることもあります。
ステップ8:登記完了後に登記簿謄本と印鑑証明書を取得する
登記申請が完了したら、会社が法的に設立されたことになります。登記完了予定日以降に、法務局で必要書類を取得しましょう。取得する書類は、「登記事項証明書(登記簿謄本)」と「印鑑証明書」です。
書類を取得するには、まず「印鑑カード」の交付申請を行います。登記事項証明書と印鑑証明書は、設立後のさまざまな場面で必要です。法人口座の開設、税務署への届出、社会保険の手続きなどで使用します。今後の手続きに従って、必要な部数を取得してください。
会社設立にかかる費用の総額と内訳を解説

会社設立には、約20〜25万円の費用がかかります。総額の把握は、事業計画や予算を立てる上で重要です。法定費用と実費に分けて、詳しく解説します。
株式会社の設立に必要な法定費用一覧(約20〜25万円)
株式会社を設立する際には、必ず発生する法定費用があります。法定費用は大きく3つに分かれます。
| 項目 | 金額の目安 |
| 定款認証手数料 | 3万~5万円 |
| 収入印紙代 | 4万円 |
| 登録免許税 | 15万円~ |
| 合計 | 約20万~25万円 |
まず、定款の認証を受けるための公証人手数料です。資本金の額に応じて3万〜5万円かかります。次に、紙の定款を作成する場合、収入印紙代として4万円が必要です。ただし、電子定款を利用すれば印紙代は不要です。
最後に、法務局へ設立登記を申請する際、登録免許税を納付します。税額は「資本金の額×0.7%」で計算され、最低15万円と定められています。法定費用を合計すると、最低でも約20万円から25万円程度が必要です。
専門家への依頼費用や印鑑作成費などの実費
法定費用以外にも、会社設立にはいくつかの実費が発生します。専門家への依頼費用と印鑑作成費用が主な実費です。
| 項目 | 金額の目安 |
| 司法書士・行政書士への報酬 | 5万~10万円 |
| 印鑑作成費用(実印・銀行印・角印) | 数千円~数万円 |
| 登記事項証明書 | 1通600円 |
| 印鑑証明書 | 1通450円 |
司法書士や行政書士に設立手続きの代行を依頼する場合、報酬として5万円から10万円程度が相場です。最近では会計ソフト会社などが提供する設立支援サービスを利用すれば、専門家への依頼が無料になる制度もあります。
法務局に登録する会社の実印や銀行印、角印などの印鑑作成費用も必要です。材質により異なりますが、数千円から数万円が目安です。設立完了後に取得する登記事項証明書(1通600円)や印鑑証明書(1通450円)の発行手数料も実費として見込んでおきましょう。
会社設立の費用を安く抑える2つの方法
会社設立にかかる費用は、工夫次第で安く抑えられます。最も効果的な方法は、電子定款の利用です。電子定款を利用すると、紙の定款で必要となる収入印紙代4万円が不要になります。自身で専用ソフトや機器を揃えるのは大変ですが、行政書士や司法書士に依頼すれば、比較的簡単に電子定款の作成が可能です。会社設立支援の制度を利用するのも一つの方法でしょう。
もう一つの方法は、専門家に依頼せず、すべての手続きを自分で行うことです。時間と労力はかかりますが、代行手数料を節約できます。近年は、Web上で必要項目を入力するだけで書類作成ができるシステムも充実しており、初めての方でも比較的スムーズに手続きを進めることが可能です。
会社設立の手続きに必要なもの
会社設立をスムーズに進めるには、チェックリストの作成が推奨されます。必要なものは「事前準備段階」と「登記申請段階」の2つに分けて整理しましょう。各段階で何が必要になるのかを事前に把握しておくと、手続きが円滑に進みます。
事前に準備しておくべきもの(印鑑・証明書など)
会社設立の手続きを始める前に、いくつか準備すべきものがあります。事前準備を確実に行えば、手続きの遅延を防げます。まず、発起人および取締役に就任する全員の個人実印が必要です。発行から3ヶ月以内の印鑑証明書も用意してください。印鑑証明書は市区町村役場で取得できるため、必要枚数を確認して早めに用意しましょう。
次に、法務局に登録する会社の実印(代表者印)を作成しておきます。資本金を払い込むための発起人個人の銀行口座(通帳)も準備してください。会社のメールアドレスも事前に決めておくとよいでしょう。連絡先が明確になり、後の手続きがスムーズに進みます。準備を怠ると手続きが滞るため、確実に揃えてください。
登記申請時に提出が必要な書類一覧
法務局へ会社設立の登記申請を行う際には、次の書類一式を提出します。
- 登記申請書
- 登録免許税分の収入印紙を貼付した台紙
- 公証役場で認証を受けた定款の謄本
- 発起人の同意書
- 代表取締役・取締役の就任承諾書
- 各役員の印鑑証明書
- 払込証明書(資本金の払込を証明する書類)
- 印鑑届書(会社実印の登録用)
- 設立時取締役会議事録(該当する会社のみ)
会社の機関設計などによって提出書類は異なる場合があります。自社のケースに合わせて、法務局のWebサイトなどで最新の必要書類を確認しましょう。
会社設立が完了した後に必要な手続き
法務局での登記が完了しても、すぐに事業を始められるわけではありません。会社設立後には、数多くの手続きが待っています。設立後の手続きを後回しにすると、税務や社会保険で支障が生じる場合があるため、確実に対応しましょう。
税務署や自治体への法人設立に関する届出
会社の登記が完了したら、まず税務関係の届出を行います。本店所在地を管轄する税務署へ「法人設立届出書」を提出します。同時に、「青色申告の承認申請書」や「給与支払事務所等の開設届出書」も提出するのが一般的です。
取引先からインボイス(適格請求書)の発行を求められる可能性がある場合には、「適格請求書発行事業者の登録申請書」の提出も検討しましょう。近年、インボイス制度の重要性が高まっています。自社の取引形態や顧客層に応じて、登録の要否を事前に確認してください。
年金事務所での社会保険の加入手続き
法人は、業種や規模にかかわらず社会保険への加入が義務です。健康保険・厚生年金保険への加入が法律で義務付けられています。社長1人の会社であっても、役員報酬を受け取っていれば加入対象です。手続きは、本店所在地を管轄する年金事務所で行います。
会社設立後、事業所として社会保険の適用対象となった場合、速やかに手続きを行いましょう。原則として事実発生から5日以内に「健康保険・厚生年金保険新規適用届」を年金事務所へ提出します。続いて、役員や従業員について「被保険者資格取得届」を提出してください。各人が社会保険に加入する流れです。期限内の手続きが重要です。
参考:1-1:事業所を設立し、健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき|日本年金機構
労働基準監督署・ハローワークでの労働保険の手続き
従業員を1人でも雇用する場合は、労働保険への加入手続きが必要です。労災保険と雇用保険の2つがあります。まず、管轄の労働基準監督署へ「労働保険関係成立届」を提出します。従業員を雇用した日の翌日から10日以内に手続きを行ってください。労災保険は、業務中や通勤途中の事故に対する保険です。
次に、管轄のハローワーク(公共職業安定所)へ書類を提出します。「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」の2つです。雇用した日の翌月から起算して10日以内が期限となります。従業員の生活の安定や、円滑な雇用関係の構築のためにも、期限内の手続きを確実に行いましょう。
法人名義の銀行口座を開設する
会社の設立手続きが完了したら、法人名義の銀行口座を開設します。個人口座と事業用の資金を明確に分けることで、経理処理が明瞭になり、会社の信用度も高まります。
口座開設には、登記事項証明書(履歴事項全部証明書)と法人の印鑑証明書が必要です。会社実印、銀行へ届け出る銀行印、来店者の本人確認書類なども用意します。金融機関は、事業内容や所在地などを確認する審査を行います。審査には数日から1週間程度かかるケースが一般的です。
メガバンクや地方銀行、ネット銀行など、各金融機関で特徴が異なるため、手数料や提供内容を比較して自社に合った銀行を選びましょう。口座開設後は、融資や法人カード、定期預金などの相談も可能です。
まとめ
株式会社の設立は、8つのステップで完了します。基本事項の決定、定款の作成・認証、資本金の払込み、登記申請、設立後の各種届出という流れです。費用は法定費用と実費を合わせて、最低でも20万円以上が必要です。電子定款の利用や手続きを自分で行うことで節約できます。
本記事で解説した手順やチェックリストを活用し、計画的に準備を進めてください。不明な点があれば、税理士などの専門家に相談することをお勧めします。小谷野税理士法人では、会社設立のサポートも行っておりますので、お気軽にご相談ください。










