マイクロ法人の経営者のなかには、税理士に報酬として渡す費用に懸念を持つ方もいるでしょう。依頼する業務内容や対応時間によっては高額になりがちなことから、「税理士なしで決算・申告を済ませたい」と考える方も多いです。この記事では、税理士なしで決算・申告を行うメリット・デメリットから、具体的な手順、成功させるためのポイントについて解説します。
目次
マイクロ法人の決算・申告は税理士なしでも可能?

結論からお話しすると、マイクロ法人の決算・申告は、税理士に依頼しなくても経営者自身で行えます。特に免税事業者で取引内容も複雑なものでなければ、クラウド会計ソフトなどの活用で対応できます。ただし、クラウド会計ソフトを使い、自身ですべて対応するためには、簿記や税務に関する知識を習得しなければなりません。本業と並行して決算・申告処理も進めなければならないため、自社状況に合わせた判断を進めることが大切です。
マイクロ法人の会計を税理士なしで行うメリット・デメリット
マイクロ法人を営む方が税理士に依頼せず自身で決算・申告を行うなかでは、下表のメリット・デメリットが存在します。
| メリット | デメリット |
|---|---|
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最大のメリットはコストの軽減あるいは削減といった経費の節約ですが、申告ミスなどによる追徴課税リスクといったデメリットは見過ごせない課題です。
特に、マイクロ法人を設立して間もない時期で、経費を最小限に抑えたい方にとって費用の節約は魅力的なメリットでしょう。しかし、追徴課税となれば予想外の出費になるため、短期的な視野ではなく、長期的な視点で検討することが推奨されます。
マイクロ法人におけるメリット・デメリットについて興味のある方は、こちらからお気軽にお問い合わせください。
税理士なしでマイクロ法人の決算・申告を自分で行う10ステップ

税理士に頼らず、自分でマイクロ法人の決算・申告を行う場合、どのような手順で進めればよいのでしょうか。ここでは日々の記帳をはじめとする決算業務の全体像を10のステップに分けて具体的に解説します。
ステップ1:日々の取引を会計ソフトに記帳する
まずは日々の取引を会計ソフトに記帳することです。入金や支出といった事業に関するすべてのお金の動きは、発生する度に入力する必要があります。特に近年の会計ソフトは、銀行口座などとの連携によって、自動的に取引データを取り込めます。
また、AIによって勘定科目の推測・仕訳が提案され、記帳作業が容易にできることも多いです。クラウド会計ソフトの便利機能を活用することで、入力時間と手間を削減できます。
ステップ2:領収書や請求書などの証憑書類を整理する
会計ソフトに入力した取引については、その内容を証明するための証拠が必要です。証拠となるものとしては領収書や請求書、レシート、契約書といった証憑書類が挙げられます。
証憑書類は税法によって一定期間の保存が義務づけられており、税務調査の際には提示を求められる重要書類です。管理にあたっては取引の発生順に日付ごとに整理する、月別にまとめるなど、後から確認しやすいようにファイリングすることが推奨されます。
なお、証憑書類がない場合は経費として認められないというリスクがあるため、管理は徹底するよう留意しましょう。
ステップ3:現金や預金残高などの資産・負債を確認する
決算日時点での会社の財産状況を正確に把握するべく、帳簿上の残高と実際の残高が一致しているかの確認作業も大切です。一例としては、手元にある現金やすべての銀行口座の預金残高との照合です。
また、売掛金や買掛金、未払金、借入金などの債権・債務も取引先ごとに残高を確認し、帳簿と一致しているかを確認します。こうした作業を徹底することで、記帳の漏れや二重計上などのミスを特定し、正確な数字に修正できます。
ステップ4:試算表を作成して記帳内容をチェックする
これまで行ってきたすべての仕訳が正しく記録されているかを確認するべく、試算表を作成します。試算表は、すべての勘定科目について借方と貸方の合計金額を一覧にした表です。
会計ソフトの利用によってはボタン1つで自動的に作成され、一目でミスや不備を確認できます。試算表の借方合計と貸方合計は必ず一致するため、バランスに差異がなければ転記ミスなどはないと判断できます。
ステップ5:決算整理仕訳を行い数値を確定させる
これまでの取引記録だけでは、該当する事業年度の正確な利益や財産状況を表せません。そのため決算日には期中の会計処理を修正・補足するための仕訳として決算整理仕訳を行います。
具体的には固定資産の減価償却費の計上、期末の在庫商品(棚卸資産)の評価の計上です。この処理を経て会計期間に対応した正しい費用と収益を確定させ、最終的な決算数値を固めます。
ステップ6:法人税や消費税などの納税額を計算する
決算整理仕訳によって確定した税引前当期純利益を基に、納付すべき税金額を計算します。法人が納める主な税金は、法人税、法人住民税、法人事業税です。会計上の利益と税務計算上の所得は必ずしも一致しないことから、まず「申告調整」という作業を行います。
その後、課税対象となる所得金額を算出する流れです。なお、基準期間の課税売上高が1,000万円を超える課税事業者などは、消費税の納税額も計算しなければならない点に注意しましょう。
ステップ7:決算報告書(貸借対照表・損益計算書など)を作成する
確定した決算数値を基に、1年間の経営成績と期末時点の財政状態をまとめた決算報告書を作成します。
決算報告書は主に貸借対照表と損益計算書、株主資本等変動計算書、各書類の補足情報をまとめた個別注記表で構成されます。なお、各書類は会計ソフトの利用によって自動作成が可能です。
ステップ8:株主総会で決算報告書を承認する
株式会社の場合、株主が経営者1人というケースがほとんどですが、その場合でも法律上の手続きとして株主総会の開催・決議が必要です。
その理由は、承認手続きをもって、その事業年度の決算が正式に確定するからです。なお、株主総会を行った後は、税務調査での証拠として示せるよう、株主総会議事録を作成し会社で保管しましょう。
ステップ9:税務署や自治体に申告書を提出し納税する
次に株主総会の承認を得た決算内容に基づき、税務申告書を作成します。法人税の申告書は税務署へ、法人住民税・事業税の申告書は都道府県税事務所と市区町村へ提出しなければなりません。申告・納税の期限は、原則として事業年度終了日の翌日から2ヶ月以内です。
申告書の提出は、国税の電子申告・納税システムであるe-Taxを利用すると、オンラインで完結できます。計算した税額は期限までに金融機関窓口やコンビニ、電子納税を使用して納付します。
参考:申告と納税|国税庁
ステップ10:作成した帳簿や書類を法律に従い保管する
最後は、作成した帳簿や書類を法律に従って保管しましょう。決算や申告手続きが完了した後、関連書類を破棄する方がいますが、会社法および税法では、一定期間の保存が義務づけられています。
特に法人税法では、決算・申告関係書類を原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。
税務調査の際に提示を求められる書類でもあるため、会社法や税法をもとに、適切に整理・保管しましょう。
マイクロ法人の会計・決算を自分で成功させるための3つのポイント
税理士に依頼せずにマイクロ法人の決算・申告を乗り切るためには、これから解説するポイントを押さえておくことが求められます。どのようなポイントがあるのか、さっそく確認していきましょう。
クラウド会計ソフトを導入して作業を効率化する
税理士に頼らず自らで決算を行うのであれば、クラウド会計ソフトの利用は必須項目と言えます。近年のクラウド会計ソフトは、事業用口座の登録に加えて、ソフトとの連携によって明細取引が自動で取り込まれる構造になっていることが多いです。そのため、仕訳・入力作業の簡略化につながります。
仮に簿記の知識が乏しい方でも、ガイドに従って操作するだけで日々の記帳・決算書の作成・法人税申告書の作成までをスムーズに行えます。手作業に比べて入力・計算のミスを大幅に減らしながら作業時間の短縮が見込まれるため、本業に集中する時間を確保したい方には有効な方法です。
なお、小谷野税理士法人に在籍する税理士の多くは、クラウド会計ソフトを活用したサービスを提供しています。既存データを活用しながら税理士に決算・手続きの代行を依頼したいときは、お気軽にこちらからお問い合わせください。
日々の経理業務を後回しにせずこまめに行う
決算期の負担を軽減する効果的な方法として、日々の経理業務を溜め込まないことが挙げられます。領収書の整理や会計ソフトへの入力をまとめて行おうとすれば、膨大な作業量に圧倒されるでしょう。
また、取引内容の詳細を失念し、処理に時間がかかる、あるいは誤った処理をする原因にもつながります。
経営者自身で経理業務を行うのであれば、週1回といった一定間隔で経理作業を行うよう努めましょう。継続的な経理処理を心がけることでスムーズな確認・決算手続きにつながります。
不明点は税務署や商工会議所に相談する
自分で決算を進めるなかでは、取引の詳細や手続きの内容において判断に迷うこともあります。そうしたときは1人で悩むのではなく、公的な相談窓口を活用することが大切です。
事業所を管轄する税務署に問い合わせることで、申告書の書き方や税法の一般的な解釈について無料で相談できます。地域の商工会議所や商工会でも記帳指導や経営に関する相談・アドバイスを行っていることもあるため、相談内容に応じて使い分けてみると良いでしょう。
マイクロ法人の会計を税理士に任せるメリット

経営者自らが会計業務を行う場合、さまざまなステップを本業と並行して行わなければなりません。本来、業務に充てるべき時間が経理処理によって減ってしまえば、ビジネスチャンスを逃す可能性もあるでしょう。ここでは会計を税理士に任せるメリットについて解説します。
通常業務に時間を充てられる
会計業務を税理士に任せることで、本業に注力できます。クラウド会計ソフトを使い、記帳や申告を行っていた方であれば、データを税理士に共有するだけで状況の確認および手続きを代行できます。
時間と労力を本業に充てられれば、事業の成長・拡大を目指し続ける環境を構築できるでしょう。
法改正に沿った会計処理が実現する
会計業務に従事する場合、社会の変化に応じて変更される税法を深く理解している必要があります。しかし、本業に時間的リソースを充てたい方ほど、税法を身につけることは容易ではありません。
法改正に関する課題も、税理士に会計業務を代行させることで最新の税法を基に適切に処理できます。誤った税務処理・深刻によっては重加算税などのペナルティが課される場合もあります。知識不足による重いペナルティを避けたい方は、税理士への依頼を検討しましょう。
資金繰り・経営に関する相談ができる
税理士に日々の記帳や会計処理を任せていた場合、事業成長に伴う資金繰りや経営に関する相談も可能です。特に節税目的でマイクロ法人を設立した場合、売上が低いために、融資を受けられないことがあります。こうした問題も税理士に相談することで、事業が頓挫する前に適切なアドバイス・サポートが受けられます。自身では対応できないと悩んでいた資金調達も、税理士によるサポートによって財務面および精神的な負担軽減につながるでしょう。
マイクロ法人を設立したものの、さまざまな理由によって資金調達が難航している方も多いでしょう。そのようなときは、まずはこちらからお気軽にご相談ください。
まとめ
マイクロ法人の決算・申告は、クラウド会計ソフトなどの活用によって税理士なしで進められます。税理士費用を節約できるメリットがあるものの、経理・税務に関する知識習得に時間や労力がかかり、最初は難航する場合もあります。
本業に専念したい方や経理処理が複雑化したときは、税理士への依頼を検討するタイミングと言えるでしょう。信頼できる税理士を速やかに見つけたいときは、小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。








