税務調査という言葉を見聞きすると、つい身構えてしまう方も多いでしょう。しかし、税務調査の目的や流れ、必要な準備や対策について押さえておくことで、適切に対応できます。この記事では、税務調査の概要をはじめ、調査開始から終了までの流れ、調査中に気を付ける点や対策について解説します。本記事を通じて税務調査に対する不安を軽減させ、冷静な対応につなげましょう。
目次
そもそも税務調査とは何か?

税務調査とは、事業を営む方が提出した確定申告が税法に則って正しく行われているかを確認するための調査のことです。適正な納税だけでなく、納税者1人ひとりの公平性の維持を目的としています。
調査は事業所を管轄する税務署職員が調査官として担当することが一般的です。その際、帳簿書類の確認や関係者への質問を通じて、申告内容の誤りや意図的な不正がないかをチェックします。
なお、税務調査と一口に言っても、任意調査と強制調査の2つに大別されます。任意調査は納税者の同意に基づいて行われる調査です。税務署から納税者へ電話連絡が入り、日程調整を経て行われます。納税者の協力を前提とする特徴から、税務調査の多くは任意調査が選択されます。
一方、強制調査は、国税局査察部、通称「マルサ」が実施する調査です。裁判官の令状に基づいて行われ、脱税や悪質な隠ぺい工作などが疑われる場合に実施されます。また、文字通り強制で行われるため、税務署から納税者に事前連絡はありません。
【7ステップ】税務調査開始から終了までの流れ
税務調査は一般的に、納税者に対して事前通知がなされた後、双方で調整したスケジュールに則って調査が行われ、必要手続きを済ませて終わります。ここからは、税務調査開始から終了までの一般的な流れについて解説するので、予備知識の1つとして押さえておきましょう。
ステップ1:税務署から調査実施の事前通知が届く
ごく一般的に行われる税務調査は、納税者の協力のもと行われる任意調査です。そのため、まずは調査官から納税者に対して電話連絡が入り、税務調査の実施について通知されます。
電話では、調査目的や対象税目のほか、調査官の希望日時が伝えられることが多いです。
ステップ2:調査日程の具体的な調整を行う
税務署から事前通知を受けた後は調査日程を調整します。通常の調査であれば2~3日程度で行われることが多いものの、事業規模や取引内容によって期間が変動するケースもあるようです。
顧問税理士がついている企業であれば、税理士と納税者、調査官の3者にとって最適な日程を決めます。
ステップ3:顧問税理士と打ち合わせをして入念な準備を進める
顧問税理士がついている企業であれば、日程が決まった段階で打ち合わせと準備を進めます。
税務調査が決まった場合、慌てたり不安に感じたりする方もいますが、適切な書類を集め、用意しておくことで冷静に対応できます。どの書類を用意すべきか判断に迷うときは税理士を頼り、連携を取りながら準備しておくと安心です。
ステップ4:調査当日を迎え、聞き取りや書類確認に応じる
調査当日は、調査官が事業所または納税者の自宅を訪ねます。改めて税務調査の目的について説明を受けることがありますが、どのような質問に対しても誠実に対応する姿勢を心がけましょう。
調査が開始すると、調査官から調査対象の税目に対する不明点や疑問点について質問されます。場合によっては、調査対象の税目に関する書類の提示を求められることもあります。このようなときは準備していた書類に限らず、関連する書類をすべて提示しましょう。
ステップ5:調査官からの指摘事項に対して見解を説明する
調査過程では、調査官から申告内容の誤りについて指摘を受ける場合もあります。指摘内容について誤りがない、あるいは正当な理由がある場合は、税理士の助言を受けながら自社の見解、根拠を明確に説明しましょう。
また、適切な理由があるにも関わらず説明を怠っていた場合もあるかもしれません。そのようなときは自社の落ち度について謝罪しつつも、毅然とした態度で対応することが大切です。
ステップ6:後日、税務署から調査結果の連絡を受ける
調査終了後は後日、調査官から調査結果に関する連絡が届きます。追徴課税や修正申告の対応が求められた場合は、税理士と連携しながら最終的な確認を行います。
ステップ7:調査結果に応じて修正申告などの手続きを行う
調査結果に対して納得し、内容に問題がなければ修正申告を行います。本来、納めるべき税金を過少申告していた場合は、追徴税額と過少申告加算税の納付が求められるので、納付期日までにそれぞれ納めましょう。
税務調査で重点的にチェックされる5つの項目

調査官は事業規模や業種、過去の申請内容等を基準に調査目的を定めます。ここからは税務調査でチェックされる項目について解説するので、どのような項目を質問されるのかを押さえておきましょう。
売上の計上時期や計上漏れがないか
税務調査では、事業売上について厳しくチェックすることが多いです。なかでも計上時期や計上漏れについては、取引の詳細が確認できる請求書や契約書にも目を通すことがあります。
こうした確認は、期末に発生した売上を翌期に計上する「期ズレ」や売上自体を帳簿から省く「売上除外」の有無を判断するためです。
請求書の日付と異なる期に売上を立てることは、税務上、単なるミスでは済まされません。会計上と税務上では収益認識の時期が異なる場合もあるため、税務上のルールについては把握し直すことをおすすめします。
在庫(棚卸資産)が正しく計上されているか
期末に行われる棚卸は、売上原価の計上に対して直接的な影響をもたらす特徴を理由に、利益操作に用いられやすい項目のひとつです。
仮に棚卸資産を少なく計上すると、その分、売上原価が増え利益が圧縮されるため、税金を低く抑えることができます。こうした背景を視野に、調査官は実際の在庫数と帳簿上の在庫数を照らし合わせて確認を進め、差異の有無を確認するのです。
このほか、滞留在庫や不良在庫の評価損計上が適切かどうかにも確認することがあります。
前期と比較して勘定科目に大きな変動がないか
前期の申告内容と比較して、特定の勘定科目が異常に増減していないかもチェックします。特に経費が異常に増えていた場合は、その内訳について詳細な説明を求められる場合があります。
このほか、広告宣伝費や福利厚生費に個人的な支出が含まれていないかもチェックするため、誤りがある場合は速やかに申し出ることが大切です。
役員や経営者の個人的な支出が経費に含まれていないか
中小企業や個人事業主に対する税務調査のなかでも指摘されるものが、私的な支出が経費計上されているケースです。例えば役員であれば自身の趣味で出かけたゴルフ場の利用料等や家族との旅行費用があります。
また、自宅を事業所として使用する個人事業主であれば、自宅の修繕費すべてを経費に含むケースもあるようです。
税務上、経費と認められるものは事業に直接関係する費用のみです。そのため、前述した役員の例であれば、いずれも経費計上はできないことになります。また、自宅兼事業所とする個人事業主の場合も事業所部分の修繕費に限り経費計上できるため、誤認しないよう留意しましょう。
関連会社との取引価格は適正か
グループ企業間での取引がある場合は、取引価格が恣意的に操作されており、不当に税負担を下げていないかについて確認することがあります。こうしたケースでは「移転価格税制」と呼ばれる制度を用い、関連会社との取引が、独立した第三者との取引と同価格かをチェックします。
特に海外の関連会社と取引する企業の場合、利益を国外に移転する目的で価格調整していないかといった疑念を持たれるケースが少なくありません。調査官は多角的な視点で税務調査を行っているため、どのような質問にも誠意を持って対応しましょう。
税務調査をスムーズに乗り切るための6つの対応ポイント

税務調査においては、事前準備だけでなく調査に対する納税者の姿勢も大切です。ここからは調査官に好印象を与え、円滑に調査を進めるために押さえておきたい6つの対応ポイントについて解説します。
質問された内容にのみ簡潔に回答する
税務調査だからこそ、質問された内容について事細かに説明する必要があると考える方もいるでしょう。しかし詳細な情報を加え過ぎてしまうと、かえって疑念を強めてしまうことがあります。
例えば調査官に「この領収書はどのような理由で経費計上しましたか?」と聞かれた場合です。このようなときは「取引先であるA社と打ち合わせで使用した飲食代です」と簡潔に答えるのみで問題ありません。
当時の状況を詳しく説明しようとすると、かえって回答がぼんやりとし、疑念を強めてしまいます。したがって、不用意に経緯や個人的な感情を加えることは避けるよう留意しましょう。
調査官との雑談にも油断しない
調査官の人柄が予想以上に話しやすい場合、つい雑談に走ることもあるかもしれませんが、実は雑談こそ注意しなければなりません。緊張を解くための雑談を通じて、納税者の税務意識や性格を探るためです。
たとえ話しやすい調査官であっても雑談も、れっきとした調査の一環という認識を失念しないよう注意しましょう。
すべての回答で一貫性を保つことを意識する
調査官からの質問に対しては、すべて一貫性のある回答を意識しましょう。例えば売上計上において「納品日基準」と答えたのに、別の質問に対する回答で「請求書発行日基準」と回答すると、申告内容の信憑性が問われかねません。
調査官の心象を悪化させる原因にもなるため、顧問税理士がついている場合は事前に入念な打ち合わせを済ませておくことをおすすめします。
不明な点や曖昧な記憶で安易に回答しない
記憶が曖昧であったり事実と異なる回答をしたりすると、正当な理由があっても疑念を強めます。仮に記憶が定かではないときは、その時点で回答することは避け、「確認して後ほど回答します」と伝えましょう。
調査官には丁寧かつ誠実な態度で接する
どのような人柄の調査官であっても、税務調査を担当する以上は国税に関する公的な職務を遂行していることに変わりはありません。どのような理由があっても、威圧的な態度や不誠実な対応を取ることは避けましょう。
上述したように税務調査の多くは納税者の協力のもと行われる任意調査です。そのため、協力を得られないと受け取られかねない態度だと、調査官の心象を悪くし、さらに厳格な調査に至るリスクを高めてしまいます。納得できない指摘があった場合でも、感情的になることは避け、調査終了まで丁寧かつ誠実な態度で接するよう心がけましょう。
事前に顧問税理士と綿密なシミュレーションを行う
税務調査の成功率は、事前準備で高めることができます。特に有効なのが税理士とのシミュレーションです。シミュレーションでは過去の申告内容や帳簿、経費の内訳について改めて確認・記憶しておきましょう。
税務調査に関する連絡のなかで申告内容の不備を指摘されたものの、正当な理由が存在する場合もあるでしょう。こうした場合も、適切に説明できるよう、あらかじめ理由を簡潔にまとめ、記憶しておくこともおすすめです。
まとめ
税務調査と見聞きすると、やましいことをしていなくても不安を抱くものです。しかし、調査目的を受け止め、適切な準備を済ませておけば誰でも冷静に乗り切ることができます。
しかし、仮に正当な理由がある場合でも、税務調査に関する連絡が届いた以上は、はからずも税務署から疑念を抱かれているということです。
冷静かつ適切に税務調査を乗り切りたいときは、「小谷野税理士法人」までお気軽にご相談ください。








