個人事業主や小規模な会社を経営している場合、自分で確定申告を行う人は珍しくありません。税務申告は複雑なものも多く、「うっかり脱税しているのではないか」と不安になることもあるでしょう。故意ではなくても脱税は罰則の対象になるかもしれません。ここでは、うっかり脱税になるケースや、脱税と判断された場合の罰則について解説します。
目次
うっかり脱税になるケースとは

「税金を払いたくない」という気持ちで脱税を意図的に行うケースもあれば、脱税するつもりはなかったものの脱税行為になってしまったというケースもあります。
うっかりによって脱税になるケースには、以下のようなものが挙げられます。
経費の計上ミス
本来であれば経費として計上できないものを計上していたり、経費の金額を誤って計上したりすれば、「経費の水増し」を疑われる可能性があります。
とくに個人事業主の場合、経費とプライベートの支出の線引きが曖昧になるケースが多いです。
例えば、自宅を事務所と兼用していれば、家賃や水道光熱費の一部は経費で計上できます。ただし、家賃や水道光熱費を全額経費で計上することはできず、仕事で使用している割合のみを計上しなければなりません。
経費は事業で必要な支出のみを計上し、正確な日付や金額を記録する必要があります。
売上の申告・記帳の漏れ
売上の申告漏れや、記帳のミスに気付かず確定申告をすれば、脱税を疑われる可能性があります。
例えば、売上の入金があったにも関わらず記帳を忘れた場合、その売上は申告漏れになります。最近では会計ソフトを利用する個人事業主や企業も多いですが、入力時に金額を誤って登録し、そのまま申告してしまうケースも多いです。
意図的な申告漏れではなかった場合でも、税務署は「所得の隠蔽」と判断する可能性があります。例えば、現金取引が多いにも関わらず、現金の売上の記録が少なければ所得を隠蔽していると判断されやすいです。
消費税の申告不備
消費税に関する申告に何らかの不備がある場合も、脱税になる可能性があります。
課税事業者は消費税の申告と納税義務がありますが、消費税の申告を怠れば、無申告加算税や延滞税の対象になります。「うっかり申告を忘れていた」という言い訳は通りません。
また、消費税の計算を誤って申告していた場合も、脱税だと判断されることがあります。
例えば、本則課税を選択しているにも関わらず簡易課税の計算方法を用いて納税額を少なく申告しているケースや、売上に対する消費税の一部を申告しなかったケースは、税務署から意図的に過少申告したと判断されるかもしれません。
消費税には本則課税と簡易課税があり、計算方法が異なります。適切な課税方式を選択し、計算ミスがないように注意することが大切です。
正しい金額を申告しなければ、過少申告として税務調査が入るリスクがあります。
副業の申告漏れ
本業とは別で副業による収入がある場合、副業の収入も忘れず申告しなければなりません。申告漏れがあれば、脱税を疑われる原因になってしまいます。
会社員の給与は所属する会社が年末調整をするので原則として各自が確定申告する必要がありません。しかし、副業に関しては各自で申告する必要があります。とくに副業で個人事業を始めたばかりの場合は、副業の収入の申告漏れが起こりやすいです。
「副業で収入は少ないから問題ないだろう」と軽視して確定申告をしないことも危険です。自分が申告をしなくても、報酬を支払った相手が税務署に支払調書を提出すれば、税務署は収入を把握できます。
確定申告の失念・期限超過
「仕事が忙しい」「初めて自分で確定申告をするので手間取った」などの理由で、確定申告の期日を失念したり、期限を超過したりすれば、脱税と疑われる可能性があります。
確定申告の期限は、毎年2月16日〜3月15日(期限が土日祝の場合は翌日が期限)です。期限を過ぎれば、延滞税や無申告加算税が課されます。
やむを得ない事情があって申告期限を過ぎる場合は、事前に税務署へ相談することが大切です。場合によっては、申告や納付期限の延長が認められます。
領収書や請求書の紛失
経費として支出を計上する際には、経費の証拠となる領収書や請求書が必要です。
事業に必要な経費であったとしても、領収書や請求書などの証拠がなければ、税務署に経費として認めてもらえない可能性があります。とくに税務調査では、帳簿の記録だけではなく、帳簿を裏付けるための証拠が重要視されます。
尚、領収書や請求書などの証拠書類の保管期限は、7年間です。これらの書類は税務署からの調査があった場合、すぐに提出できるように保管することが義務付けられています。
書類の紛失が多ければ、過少申告や隠蔽、仮装を疑われるリスクが高まるでしょう。紙だけではなく、電子データでも保存するなど、日頃から保管や整理をしっかり行うことが大切です。
領収書の保管に関しては、下記の記事も参考になります。
脱税と判断された場合の罰則

故意的ではない「うっかり」が原因の場合も、税務署に脱税と判断されればペナルティが課されます。
税務署が脱税と判断した際には、以下のような罰則が課される可能性があります。
加算税が課される
加算税とは、本来納めるべき税金を納めなかった場合や、少なく申告した場合に課されるペナルティです。うっかり申告金額を誤ったり申告を忘れたりするなど、故意ではない場合にも課されます。
うっかり脱税した場合に課せられる可能性のある加算税には、「無申告加算税」「過少申告加算税」「重加算税」の3種類が挙げられます。
無申告加算税は、確定申告を期限内に行わなかった場合に課されるペナルティです。税率は、納付すべき税額のうち、50万円までの部分には15%、50万円を超える部分には20%〜30%が課されます。
税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合、無申告加算税の税率は5%に軽減されます。ただし、意図的に申告を怠ったなど、悪質な行為と判断された場合は、重加算税が課され、税率は40%(状況によっては50%)にまで引き上げられます。
尚、加算税の計算においては、不足している税額が50万円を超える部分については、20%の税率が適用されるため、一律15%ではありません。
過少申告加算税は、申告額が誤っていた場合に課される加算税です。過少申告加算税は原則10%ですが、不足税額が50万円を超える部分は15%の税率が適用されます。
また、「うっかり」ではなく意図的に脱税をしたと判断されれば、重加算税が課されます。重加算税の税率は、原則40%です。
追徴課税に関する詳しい内容は、下記の記事が参考になります。
延滞税が発生する
確定申告の期限に間に合わなかった場合、延滞税が発生します。延滞税は、納付期限の翌日から納付するまでの日数に応じて加算されるペナルティです。
延滞税の税率は毎年見直されており、2025年の場合は「納付期限の2カ月以内は年2.4%」、「2カ月を超えると年8.7%」です。確定申告を終えていても、納付が期限に間に合わなかった場合も同様に延滞税がかかります。
延滞税は放置するほど金額が高額になるため、できるだけ早く対処することが大切です。支払いが難しい場合は、税務署へ相談しましょう。
参考:延滞税の割合
刑事罰が科せられる
自分では「うっかり」脱税になってしまったと考えていても、悪質だと税務署に判断されれば刑事罰が科されるかもしれません。
悪質な脱税は国税局の査察部(マルサ)によって調査が行われ、刑事告発から起訴、裁判へと進みます。
裁判で有罪判決が下されれば、所得税法違反や法人税法違反などにより、10年以下の懲役または1,000万円以下、あるいはその両方が科されます。脱税額が大きいほど、罰金額も高額になる傾向です。
また、刑事罰が確定すれば前科が付くため、会社や個人としての信用に悪影響をもたらします。
うっかり脱税しないための予防策

小さなミスや期限の失念などの不注意が、脱税疑惑を招くこともあります。脱税と疑われないためには、日頃から注意することが大切です。
ここからは、うっかり脱税していたという事態を防ぐための予防策を紹介します。
経費を正しく管理する
事業や副業で発生する支出は、すべて経費として認められるわけではありません。とくに個人事業主はプライベートの支出と事業の支出が曖昧になっているケースも多いため、支出を正しく区別することが大切です。
領収書や請求書などの証拠を基に、「どのように事業で使用した経費だったのか」客観的に説明できるものを経費として扱います。分別が難しい場合は、税理士に相談しましょう。
また、「経費として計上してもバレないだろう」という気持ちでプライベートの支出を経費で計上するような行為も危険です。税務調査で不適切な経費が発覚すれば、加算税や延滞税が課されます。
経費は正しく管理し、脱税を疑われるリスクのない申告を心がけましょう。
経費の区分に関する詳しい内容は、下記の記事にも記載されています。
こまめに記帳する
日々の取引内容をこまめに記帳することが、申告漏れや計上ミスを防ぐ予防策です。
「ある程度経費がたまってから記帳しよう」「確定申告前にまとめて記帳すればいい」などと考えて記録を怠れば、作業が増えるので申告漏れや計上ミスが起こりやすく、脱税につながるリスクが高まります。
月末や申告前にまとめて処理するのではなく、その都度取引を記帳することを習慣化しましょう。日常的に帳簿が整理されていれば、作業の負担が減り、ミスの防止につながります。
申告期限を守る
脱税を疑われないためには、決められた期限内に確定申告を行いましょう。
個人の所得税の申告期限は、原則として毎年3月15日(土日祝の場合はその翌日)です。個人事業主の場合、この期限内に確定申告と納付を行います。
法人の場合の申告期限は個人とは異なり、決算日の翌日から2カ月以内です。
あらかじめスケジュールを立て、余裕を持って申告準備を行いましょう。万が一、申告期限に間に合わない場合は、事前に税務署へ相談することが大切です。
税理士に相談する
税務の知識が十分でない場合や、経費の管理が複雑になってきた場合は、早めに税理士へ相談することを推奨します。
税理士は正しい知識で経費計上や記帳を行うことができ、確定申告書の作成までサポートしてくれます。場合によっては、節税対策に関するアドバイスも受けられるでしょう。
とくに個人事業主や会社を設立したばかりの人は、不慣れな作業による申告漏れなどのミスが起こりやすいです。専門家である税理士に任せれば安心ですし、事業に専念することができます。
また、税務調査が入った場合も税理士が対応してくれるため、精神的な負担も軽減されます。
税理士に税務申告を任せよう
税務申告は複雑でミスが起こりやすく、知らないうちに「うっかり脱税している」リスクがあります。
税理士へ依頼すれば、税務の不安や手間を軽減できます。正確に確定申告をするだけではなく、税務調査が入った場合の対応も可能です。
小谷野税理士法人では、経験と知識の豊富な税理士が多数在籍しています。業界に精通した税理士に依頼することもでき、最適な節税対策の提案も可能です。
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