会社設立時に法務局へ提出した定款は変更可能ですが、費用が生じます。主に発生する費用は、登録免許税と専門家への依頼料です。あらかじめ定款変更に必要な費用や手順を把握しておけば、円滑に手続きを進められるでしょう。ここでは、定款変更にかかる費用や手続きの流れ、注意点を解説します。
目次
定款変更で登記手続きは必ず必要?

会社の設立時に定款を作成し、法務局へ提出します。しかし、会社を長く運営していれば、内容に修正や変更が必要になることもあるでしょう。
定款内容に修正がある場合、登記手続きは必ず必要なのでしょうか?
変更登記申請が必要なケース
定款に記載される内容は、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類に区分されます。
「絶対的記載事項」は、会社法で定められた必須項目です。そのため、内容に変更があった場合は、必ず法務局で登記手続きを行わなければなりません。
「相対的記載事項」や「任意的記載事項」の記載は法律で規定されておらず、任意です。ただし、記載すれば登記事項として扱われるものがあります。
登記事項として扱われるものに関しては、変更があれば登記申請が必要です。
各事項ごとに登記申請が必要な項目内容の代表例は、以下の通りです。
| 特徴 | 項目内容 | |
|---|---|---|
| 絶対的記載事項 | 定款に必ず記載されている項目。 記載がなければ定款が無効になる。 |
|
| 相対的記載事項 | 定款に記載がなくても問題はないが、記載がなければ法的効力が認められない。 |
など |
| 任意的記載事項 | 会社が独自に記載できる項目。 |
など |
絶対的記載事項以外の項目の内容は、会社ごとに異なります。定款変更によって登記申請が必要かどうか分からない場合は、税理士へ相談すると良いでしょう。
定款変更に関する詳しい内容は、下記の記事も参考になります。
変更登記申請が不要なケース
相対的記載事項や任意的記載事項の内、登記事項ではないものの内容を変更する場合は、変更登記申請の必要はありません。
各事項で変更登記申請が不要なケースの代表例は、以下の通りです。
| 項目内容 | |
|---|---|
| 相対的記載事項 |
など |
| 任意的記載事項 |
など |
任意的記載事項に関しては、登記対象外になるケースが多いです。しかし、必ずしも登記対象外になるとは限らないため、自己判断せずに法務局や税理士に確認することでミスを防げます。
決算月の変更に関しては、下記の記事を参考になります。
定款変更の手続き費用
定款の変更手続きを行う際には、一定のコストがかかります。
変更する内容によっては、想定よりも費用が高額になることもあるかもしれません。そのため、事前に金額の目安を確認しておくと安心です。
定款変更の手続きにかかる主な費用は、以下の通りです。
登記申請にかかる費用
定款変更にあたり法務局への変更登記申請が必要な場合、登録免許税の支払いが発生します。
登録免許税の金額は、変更する内容によって異なります。主な登録免許税の金額は、以下の通りです。
| 変更項目 | 登録免許税の金額 |
|---|---|
| 商号(会社名) | 1件につき30,000円 |
| 事業目的 | 1件につき30,000円 |
| 本店所在地 | 管轄法務局の管轄内:30,000円 管轄法務局の管轄外:計60,000円 (新旧それぞれの住所で30,000円ずつ) |
| 役員 | 1件につき10,000円 (資本金が1億円を超える会社は1件につき30,000円) |
| 資本金の増資 | 増資した資本金額の0.7%または30,000円のいずれか多い金額 |
専門家への依頼費用
定款変更の手続きは自社で行うことも可能ですが、スムーズかつ的確に手続きを進めるためには、税理士や司法書士など専門家のサポートを受けるケースが多いです。。
定款の変更手続きを税理士へ依頼する場合は、費用がかかります。料金は税理士事務所ごとに設定が異なりますが、相場金額は2万円~8万円です。
税理士は、定款変更における税務上のアドバイスや、議事録作成のサポート、必要書類の準備などの業務の対応が可能です。
ただし、定款変更の登記申請など法務局への手続きは、司法書士の独占業務に該当します。そのため、定款変更で登記申請の書類作成と代理申請は税理士では対応できず、司法書士への依頼が必要です。
こうした担当業務の違いがあるものの、定款変更を税理士に依頼すれば、司法書士と連携して進めるケースが多いため、税理士と司法書士を別々に依頼する手間が省けることが一般的です。
なお、税理士に定款変更のみを単発で依頼することも可能ですが、顧問契約を結べば、確定申告や税務相談、税務署対応なども含めた総合的なサポートを受けられます。顧問契約の場合の費用は、月額数万円になることが一般的です。
税理士や司法書士と顧問契約をしていない場合は、定款変更を機に顧問契約を検討してみても良いかもしれません。
変更登記申請しなかった場合のリスク

定款内容を変更したものの変更登記申請を行わなければ、さまざまなリスクを負います。故意ではなく申請の必要性を知らなかった場合も同様です。
変更登記申請を行わなかった場合のリスクは、以下の通りです。
法的効力が認められない
登記事項の変更を法務局へ申請しなかった場合、変更した内容は法的に有効と認められません。
社内の定款内容を変更していたとしても、登記申請を行っていなければ、登記簿には古い情報がそのまま残ってしまいます。その結果、金融機関や取引先が古い情報を基に契約や取引を進めてしまう可能性があります。
そうなれば、契約無効や損害賠償を請求されるリスクがあり、会社の信用の低下にもつながるため、注意が必要です。
行政処分を受ける
定款変更後に登記申請を怠った場合、法務局から指導や申請の催告を受けます。通知を無視し続ければ、過料など行政上の処分が科されるリスクがあります。
会社法第976条に基づき、過料が科されることが一般的です。過料は、数万円から数十万円程度に及ぶ可能性があります。
また、代表者個人も責任を追及されるケースがあるため、定款の変更をした場合は、速やかに登記申請の手続きを行うことが大切です。
補助金を受けられない可能性がある
定款上の役員構成や事業目的を変更したにも関わらず、登記申請を行わなかった場合、補助金の申請が認められない可能性があります。
補助金の審査では、登記簿謄本を元に法人情報を確認することが一般的です。変更登記申請を行わなければ、申請書と登記簿の情報が一致しないため、虚偽申告を疑われる可能性があります。
そうなれば、補助対象から外されるだけではなく、過去に受けた補助金について返還を求められる事態に発展するかもしれません。
また、虚偽申告と判断されれば、会社の信用が失われ、将来的な補助金や助成金の申請にも影響を及ぼす可能性があります。
税務申告に影響する
変更登記を行わずに税務申告を行った場合、登記簿上の情報と申告書に記載された内容に相違が生じる可能性があります。
例えば、代表者の交代や事業目的の見直しを行ったにも関わらず、登記申請していなければ、申告書類と登記情報が一致しません。そうなれば、税務署から訂正や追加説明が求められるでしょう。
場合によっては、税務署が申告内容を精査するきっかけになり、税務調査へ発展するリスクがあります。調査で帳簿の不備や申告漏れなどが判明すれば、追徴課税や延滞税、重加算税などの処分が科されます。
さらに、このような不備が繰り返されれば、税務署からの信用が低下し、申告に対する審査が一層厳しくなるかもしれません。
定款変更の手続きの流れ
会社設立時に作成した定款を変更する場合、会社法で定められたルールに沿った手続きが必要です。登記申請が不要なケースも、手続きを省くことはできません。
定款変更を行う場合は、以下の流れに沿って手続きを進めましょう。
株主総会の特別決議で決定する
定款変更をするためには、株主総会の特別決議による決定が必要です。
特別決議で、議決権の過半数を保有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成があれば定款を変更できます。
株主総会が開催される時期であれば、総会時に特別決議を行います。株主総会の時期ではない場合は、臨時株主総会を開かなければなりません。
株主総会の議事録を作成する
株主総会を開いた場合は議事録を作成することが会社法で定められているため、定款変更に関する特別決議も議事録を作成します。
議事録の作成に定められたフォーマットはありませんが、開催日時や出席株主数、賛成数、議事の結果などを記載します。
変更登記の期限は、決議から2週間です。そのため、議事録の作成は2週間以内に終える必要があります。
ただし、登記事項の変更は原則2週間以内であることが会社法第915条に定められていますが、所在地が海外の場合は3週間の期限になるなどの例外もあります。
また、作成した議事録は、変更前の原始定款と一緒に保管しましょう。登記申請が不要な場合は、ここで手続きは終了です。
法務局に変更登記を申請する
登記事項を変更した場合は、法務局で変更登記申請を行わなければなりません。
変更登記申請で必要になる書類は、定款や株主総会の議事録、株主リストなどです。定款変更の内容によって提出すべき書類は異なりますが、法務局のホームページで確認できます。
申請方法は、管轄の法務局の窓口への持参や郵送、オンライン申請から選べます。
税務署へ届け出る
本店所在地や事業年度、事業目的などを変更した場合は、税務署にも届出が必要です。
異動届出書に必要事項を記入し、管轄の税務署へ提出します。納税地に変更があった場合は、変更前の管轄税務署へ提出します。
提出期限はありませんが、異動後は速やかに提出しましょう。
定款変更の手続きにおける注意点

定款を変更する際には、会社法の規定に従って対応をしなければなりません。万が一、手続きに誤りや不備があれば、会社に不利益が生じる可能性があります。
ここからは、定款変更の手続きにおいて注意すべき点を解説します。
代表者の独断で変更できない
定款の内容は、代表取締役が独断で自由に書き換えることはできません。会社の規模に関係なく、株主総会における特別決議の承認が必要です。
仮に、代表者が株主の同意を得ずに定款の変更を進めた場合、その内容は無効と判断される可能性が高いです。登記の申請手続きを行っても受理されないことや、株主から無効確認訴訟を起こされるリスクがあります。
また、無断で定款変更を実行したことが原因で会社に損失が発生すれば、代表者個人が損害賠償責任を負うことになります。
会社の規模に関係なく株主の権利は法律で保護されているため、定款変更の際は必ず会社法に基づく適切な手続きを行いましょう。
原始定款に直接手を加えてはいけない
会社を設立する際に作成した定款は「原始定款」と呼ばれ、公証人によって認証された公的な文書です。そのため、後からこの原始定款に変更内容を直接書き加えたり、修正したりすることはできません。
万が一、原始定款に手を加えてしまった場合は、定款そのものの法的効力が失われる可能性があります。
定款の内容を変更する際には、株主総会の議事録を作成し、その議事録と原始定款を一緒に保管しましょう。
定款変更は知識や正確性が必要
定款変更は、株主総会や登記申請まで法律に沿って正確に進める必要があるため、専門知識が求められます。
税理士や司法書士など専門家に依頼せずに代表者が自力で行うこともできますが、書類の不備や法的要件の見落としなどがあれば、定款変更が認められません。
場合によっては登記簿上の情報と税務申請上の情報が一致せず、税務調査につながる可能性があります。
労力や時間をかけた定款変更が別のトラブルを生むリスクを避けるためにも、専門家へ相談や依頼することを推奨します。
定款変更に関する注意点は、下記の記事も参考になります。
定款変更は税理士に相談しよう
会社の運営を続けていく中で、事業内容の変化や経営体制の見直しに伴い、定款内容の見直しが必要になることもあるでしょう。
定款を変更するには株主総会の特別決議が必要であり、内容によっては法務局へ登記申請が必要です。
定款変更は専門的な知識が必要になる手続きで、税理士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
小谷野税理士法人では、会社設立時のサポートから、定款変更や税務申告まで一括して依頼できます。状況に応じて専門家と連携して対応することも可能です。
まずは、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。








