コングロマリットとは、異なる業種の企業が統合し、一つの企業グループを形成する経営形態です。多角経営とも呼ばれ、事業リスクの分散や新たな収益源の確保が主な目的です。多角化経営は、企業の成長戦略として近年注目を集めています。変化の激しい現代において、リスクヘッジ効果が期待できるためです。本記事では、コングロマリットの定義から目的、コンツェルンとの違い、具体的な手法を詳しく解説します。
目次
コングロマリット経営(多角経営)とは

コングロマリット経営は、異なる業種の企業が統合し、一つの企業グループを形成する経営戦略です。多角経営とも呼ばれ、企業が単一事業にとどまらず、複数の分野に事業展開する姿勢を示します。M&A(合併・買収)を通じて異業種の事業を取り込み、多角化を実現するケースが多く見られます。
コングロマリットの意味
コングロマリット(Conglomerate)は、英語で「集塊」や「寄せ集める」という意味です。ビジネス用語としては、技術や市場で関連性の低い複数の企業や事業が統合された複合企業を指します。
多角経営は、関連性の低い事業を意図的に展開し、企業全体の安定や成長を目指す戦略です。特にM&Aの場面では、既存事業と異なる分野への進出を「コングロマリット型M&A」と呼びます。
コングロマリット経営の目的
コングロマリット経営の主な目的はリスク分散と収益機会の拡大です。ある事業が市場変動や外部環境の悪化で低迷しても、他の事業の補填により、企業全体の経営安定が期待できます。
また、異なる事業間での技術やノウハウ、経営資源の共有によって生まれる、新たなシナジー効果も重要な目的です。コングロマリット経営により、単一事業では得られない成長が可能です。
コンツェルンとの違い
コングロマリットとコンツェルンは、どちらも複数企業によるグループ形態ですが、目的と構造に違いがあります。
- コングロマリット:異業種間の多角化が主目的。リスク分散や成長機会の獲得を重視します。
- コンツェルン:主に関連性の高い業種でグループを形成し、市場支配や独占的地位の確立が目的です。
コンツェルンは持株会社が子会社や孫会社を支配するピラミッド型構造をとる場合が多い一方、コングロマリットは必ずしもそうとは限りません。戦前の日本の財閥はコンツェルンの代表例ですが、現在は解体されています。
コングロマリット経営は多角化によるリスク分散と成長を目指る現代企業にとって重要な経営戦略です。
コングロマリット経営(多角経営)の手法
コングロマリット経営で多角化を進めるには、いくつかの代表的な手法があります。企業の買収、企業の合併、資本提携などの活用により、既存事業とは異なる分野に進出し、事業ポートフォリオを拡大できます。
企業の買収
企業の買収は、コングロマリットによる多角化経営で最も一般的な手法の一つです。異業種や異分野の企業の株式を取得し、経営権の獲得により新たな事業をグループに取り込む方法です。
株式の100%取得による完全子会社化が多く、買収した企業の技術やノウハウ、顧客基盤を迅速に獲得できます。ソニーグループが、エンターテインメント分野への進出を目的に積極的な買収を行った事例が有名です。
企業の合併
企業の合併も、多角化経営を実現する重要な手法です。複数の企業が一つの法人となり、それぞれの事業や資源を統合する方法で、主に吸収合併や新設合併の形が取られます。
合併により、異なる事業や経営資源を効率的に結集し、シナジー効果を追求できます。大規模な合併を実施すると、売上規模や従業員数が急増し、業界内でのシェア拡大が可能です。
なお、合併の税務処理は「適格合併」か「非適格合併」かによって大きく異なります。
適格合併の場合、資産や負債は帳簿価額(簿価)で引き継がれ、譲渡損益が発生しないため法人税は課税されません。一方、非適格合併の場合は資産や負債が時価で評価されるため、譲渡益に対して法人税が課税されることとなり、税負担が大きくなります。合併を実施する際は税務上の適格性にも十分な検討が必要です。
資本提携
資本提携は、他の企業と資本的な結びつきを持ちながらも、各企業の独立性を維持できる手法です。互いの株式を持ち合い、業務や資金面で協力関係を強化します。
一般的に、経営への影響力を調整するために持株比率を3分の1未満に抑える場合が多いです。資本提携により、ノウハウや経営資源の共有、新規事業機会の創出、リスク分散が図れます。三菱グループや三井グループなどが、資本提携を通じてコングロマリットを形成した代表例です。
コングロマリット経営では買収・合併・資本提携といった多様な手法を組み合わせて、多角化経営と企業成長を実現しています。
コングロマリット経営(多角経営)のメリット

コングロマリット経営、すなわち多角経営には、企業の持続的な成長や変化の激しい経営環境への対応力を高める多くのメリットがあります。
異業種や異分野への進出は、リスク分散や安定した収益基盤の構築、事業間の相乗効果による新たな価値創造が期待できます。
経営リスクの分散
コングロマリット経営の最大のメリットは経営リスクの分散です。多角経営によって、企業は特定の事業や市場への依存度を下げられます。
ある事業分野が不調でも、他の好調な事業による損失の補填で、企業全体における業績の安定化が可能です。多角経営によるリスク分散で、経済変動や予期せぬ事態が発生しても、倒産リスクを低減できます。VUCA時代と呼ばれる不確実性の高い現代において、リスク分散は企業の生存戦略として重要です。
相乗効果の期待
多角経営では、事業間でのシナジー効果が期待できます。異なる業種や事業分野の統合により、技術やノウハウ、顧客基盤、販売網などを相互に活用でき、新たな収益機会の創出やコスト削減が実現します。
例えば、ある事業で培った技術の別事業への応用や、既存顧客への新たなサービスの提供により、企業価値のさらなる向上が可能です。
中長期の戦略策定
コングロマリット経営は、中長期的な視点での戦略策定を促します。複数の事業分野を統合し、ポートフォリオ全体での成長を目指すには、数年から十年単位の長期計画が欠かせません。
中長期の戦略策定により、将来の市場変化や技術革新を見据えた上で、各事業の役割や投資の優先順位を決定できます。短期的な成果が出にくい新規事業への積極的な投資も可能です。
事業再編の実行
多角経営により、企業は複数の事業部門や子会社を持つため、事業再編を柔軟かつ迅速に実行できます。各事業を独立した組織として管理するため、不採算事業からの撤退や成長事業への資源集中が容易となり、企業全体の収益性や競争力が向上します。特に持株会社体制を採用している場合、さらにスムーズな事業再編が可能です。
新たな事業への参入
コングロマリット経営は、新規事業分野への参入を低リスクかつ効率的に実現します。既存事業を持つ企業の買収や合併により、確立された技術・人材・顧客基盤・ブランドを一度に獲得でき、市場参入にかかる時間やコストを大幅に削減できます。
特に自社単独では難しい異業種への進出において、コングロマリット経営によって低リスクで参入が可能です。
コングロマリット経営(多角経営)のデメリット
コングロマリット経営には多角経営による多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。異なる事業を複数抱えるために経営が複雑になり、管理体制の課題や、期待した相乗効果が得られない場合の企業価値の低下などが挙げられます。
企業価値の低下
コングロマリット経営の代表的なデメリットは企業価値の低下リスクです。「コングロマリット・ディスカウント」と呼ばれ、複数の事業を組み合わせた企業の市場価値が、それぞれの事業が独立して存在する場合の価値合計を下回る現象を指します。
事業内容が多岐にわたるために、企業全体の実態や将来性の不透明化が原因です。コングロマリット・ディスカウントは株価にも影響を及ぼす可能性があります。
経営管理の複雑化
コングロマリット経営は、経営管理の複雑化という課題も抱えます。異なる業種や市場環境を持つ複数事業の同時管理が必要です。それぞれの事業には独自のビジネスモデルや商慣習が存在します。
経営判断やリソース配分のためには、各事業の理解と専門知識が欠かせません。また、組織が階層化し、意思決定や情報伝達に時間がかかることもあります。効率的な経営管理体制の構築と維持には、労力とコストが必要です。
ガバナンスの課題
コングロマリット経営では、企業グループ全体のガバナンス(企業統治)に課題が生じる場合があります。異なる企業文化や経営方針を持つ複数企業がグループに属するため、統一した理念や戦略の浸透が難しくなる場合があります。
各子会社や事業部門に裁量を与えると、グループ全体より個別最適を優先する行動が見られる可能性も否定できません。グループとしての意思決定プロセスを明確にし、独立性を尊重しつつも全体利益を重視したガバナンス体制の構築が重要です。
投資によるコスト
コングロマリット経営を推進するためには、企業の買収や合併、資本提携などに多額の投資が必要です。特に大規模なM&Aを実行する際には、買収対価やアドバイザリー費用、法務費用など様々なコストが発生します。
加えて、M&A後のシステム統合や組織再編にも追加コストがかかります。期待される収益増加やシナジー効果が得られない場合、企業にとって負担となる可能性があり、短期的な業績悪化のリスクも考慮が必要です。
コングロマリット経営には企業価値の低下、経営管理の複雑化、ガバナンスの課題、投資コストの増加といったデメリットが存在します。コングロマリット経営におけるリスクの把握や、管理体制や戦略の整理が、安定した成長と企業価値の維持には欠かせません。
コングロマリット・プレミアムとディスカウント
コングロマリット経営が企業価値に与える影響は、プレミアムとディスカウントという二つの現象として現れます。プレミアムとディスカウントの概念を理解し、コングロマリット経営の成果の評価と今後の経営戦略に役立てましょう。
コングロマリット・プレミアムとは
コングロマリット・プレミアムは、コングロマリットを形成した企業の市場価値が、それぞれの事業が単独で存在していた場合の価値の合計よりも高くなる現象です。コングロマリット・プレミアムは、異なる事業間でシナジー効果が発揮されたときに生じます。
例えば、グループ内での技術やノウハウの共有により、新たな価値が創出されたり、クロスセルによって売上が増加したりするケースが挙げられます。
また、間接部門の統合によるコスト削減が実現すれば、企業全体の収益性や成長性が高まり、投資家からの評価も向上するでしょう。事業の組み合わせによる新たな付加価値の創出が、コングロマリット・プレミアムの要因です。
コングロマリット・ディスカウントとは
コングロマリット・ディスカウントは、コングロマリットを形成した企業の市場価値が、それぞれの事業が単独で存在していた場合の価値の合計を下回る現象です。多角経営が必ずしも企業価値の向上につながらず、逆に市場から過小評価される場合に発生します。
主な理由は、異なる事業間で期待したシナジー効果が十分に発揮されない点や、経営管理の複雑化による非効率の発生が挙げられます。また、事業構造が複雑で投資家が企業全体を理解しにくくなった場合や、不採算事業が他の好調な事業の価値を相殺する場合にも、企業価値が低下するでしょう。
コングロマリット経営ではシナジー効果の創出や経営効率の維持が企業価値向上の鍵ですが、管理の難しさや事業の不採算化によってディスカウントが発生するリスクもあるため、戦略的な運営が重要です。
コングロマリット型M&Aのポイント

コングロマリット型M&Aは、企業が多角経営を迅速に実現するための有効な手段です。しかし、異なる業種や文化を持つ企業を統合するため、一般的なM&Aと比べて難易度が高い傾向があります。
目的と戦略の明確化
コングロマリット型M&Aを成功させるには、M&Aの目的と実現したい戦略の明確化が重要です。進出する事業分野や期待するシナジー効果、M&Aが企業全体の長期ビジョンにどう貢献するかを具体的に定めます。
目的が曖昧なまま進めると、統合後の方向性が不明確になり、想定した効果が得られないリスクが高まります。目的と戦略に基づいて、買収や合併の対象企業を選定しましょう。
統合計画の策定
コングロマリット型M&Aでは、統合後の計画(PMI:Post-Merger Integration)の策定が特に重要です。異なる文化や業務プロセスを持つ企業同士がスムーズに融合するためには、組織・システム・人事・企業文化など多岐にわたる要素の統合計画が必要です。統合計画を整備すれば、早期にシナジー効果を発揮しやすくなるでしょう。
統合のスケジュールや責任体制の明確化や、関係者間での密なコミュニケーションが成功の鍵です。
リスクへの対応
コングロマリット型M&Aには、一般的なM&Aに加えて固有のリスクが存在します。異業種間の統合による予期せぬ問題や、企業文化の違いによる摩擦、シナジー効果が得られない可能性などが挙げられます。
リスクを事前に想定し、それぞれの対応策を検討しておきましょう。対応策の検討には、投資や買収の際に、対象企業の財務・法務・事業内容などを多角的に調査・分析するデューデリジェンスの手続きが有効です。デューデリジェンスを通じて対象企業のリスクを詳細に評価し、リスク発生時のエスカレーション体制や責任範囲を明確にできます。初期段階からリスク管理を徹底しましょう。
成果の確認
コングロマリット型M&Aによる多角経営が計画通りに進んでいるか、定期的な成果の確認が大切です。M&Aの目的に対する進捗状況や、想定したシナジー効果の実現度合い、財務的なパフォーマンスを定量的に評価します。
また、統合プロセスでの課題や問題点を早期に発見し、必要に応じて計画の見直しや改善策を実行しましょう。継続的なモニタリングと評価が、M&Aの成果を最大化し、多角経営の成功につながります。
コングロマリット経営の成功事例
コングロマリット経営によって大きな成長を遂げている企業は、国内外に数多く存在します。ここでは、コングロマリット経営の成功事例をみていきましょう。
インターネット関連企業の事例
インターネット関連企業の中にも、多角化経営を通じて成長した例があります。楽天グループは、Eコマース事業を主軸としつつ、金融、通信、エンターテイメントなど多様な分野に進出し、コングロマリット経営を推進する企業です。
M&Aを活用した事業領域の拡大により、各事業間でシナジー効果を生み出し、グループ全体の成長を実現しています。特にフィンテック事業は、楽天グループの大きな収益源となっており、多角化経営の成功例として有名です。
大手電機メーカーの事例
日本の大手電機メーカーも、多角化経営を積極的に進めてきました。日立製作所は、情報通信、電力、産業、鉄道、ヘルスケアなど幅広い事業分野を展開するコングロマリット企業です。
事業ポートフォリオの見直しや再編を繰り返しながら、社会インフラやITソリューション事業に注力し、収益構造の転換を図ってきました。異なる技術やノウハウの融合により、新たな価値を生み出し、多角化経営の成功事例として評価されています。
参照:事例|Lumada:日立
経営に関するお悩みは専門家への相談もおすすめ
コングロマリット経営や多角化経営は、企業の成長や安定化に効果をもたらしますが、事業の選択や組織運営、リスク管理など、経営者が直面する課題も多岐にわたります。
自社だけで解決策を見出すのが難しい場合や、客観的な視点で現状を分析したいときは、税理士や経営コンサルタントなどの専門家への相談がおすすめです。
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