飲食店の共同経営は、資金や人手を確保しやすいため魅力的な方法です。知人や友人と夢を叶えられる一方で、意見の対立や責任分担の曖昧さなど、思わぬトラブルが発生する可能性もあります。本記事では、飲食店の共同経営におけるメリット・デメリットを整理し、起きやすいトラブルの具体例と、予防策や対処法を分かりやすく解説します。
目次
共同経営とは?

複数の人が同じ立場で飲食店を経営する方法が、共同経営です。個人での開業とは異なり、協力しながら店舗を運営する体制には独自の仕組みや注意点があります。
共同経営の基本的な考え方
共同経営とは、2人以上の経営者が対等な立場で事業を運営する形態です。飲食業では、友人や知人と共同で開業するケースが多く見られます。同じ目標を持った仲間と協力することで、業務の分担や意思決定がしやすくなると考える人も多いでしょう。
信頼関係に基づいた経営はメリットがある一方で、立場の対等さゆえに役割分担や責任の線引きが曖昧になりやすい点には注意しなければいけません。
共同経営の種類・形態
共同経営には、複数の形態や契約方法があります。もっとも基本的なのは、出資金を折半し、双方が対等に経営に参加するスタイルです。どちらも個人事業主として活動し、上下関係のない関係を築きます。
他によく行われるのが、出資比率に応じて最終的な決定権を持つパターンです。一方が事業主となり、もう一人を外注契約や雇用契約によって業務に関わらせるケースもあります。
法人を設立して経営する場合、株式会社やLLP(有限責任事業組合)が選ばれます。株式会社は出資比率で議決権が決まり、LLPやNPOでは構成員の意見が重視されやすい点が特徴です。
個人事業主同士が契約を交わすだけで法人化しない場合もありますが、経理処理の分担が課題です。報酬の分配方法としては、外注費の支払いに見立てた処理や、雇用契約による給与支払いなどが考えられます。
どの形態を選ぶかは、共同経営者同士の事前の話し合いが欠かせません。将来的なトラブルを防ぐためにも、納得のいく契約内容を文書で残しておきましょう。
飲食店における共同経営のメリット
飲食店を共同で経営することには、いくつもの魅力的なメリットがあります。具体的なメリットは以下の通りです。
資金力の向上につながる
複数人で出資を行うことで、開業に必要な資金を集めやすいです。店舗の設備費や内装工事、初期の仕入れなどには多額の費用がかかるため、1人では不足しがちな資金を分担できます。また、共同出資者がいることで信用力が高まり、金融機関からの融資が受けやすくなる傾向もあります。 資金面の余裕があることで、より自由度の高い店舗づくりが可能です。
得意分野を補い合える
共同経営では、それぞれの得意分野を活かした効率的な役割分担が実現しやすくなります。調理が得意な人がキッチンを担当し、経営に強い人が運営や財務管理を担うといった形です。専門性を分け合うことで無理なく経営を回せるうえ、事業の幅や可能性も広がります。
多角的な視点で意思決定ができる
経営者が複数いることにより、一方的な考えに偏らない柔軟な意思決定が可能です。店舗レイアウトের変更や新メニューの導入といった判断においても、さまざまな意見が出ることでより客観的な視点が得られます。一人では気づけなかった課題や改善点にも気づきやすくなり、店舗運営の質を高められるでしょう。
精神的な支えになる
共同経営では、悩みや不安を共有できるパートナーがいること自体が安心材料です。経営判断に迷ったときや困難に直面したときに、相談相手がいるだけで精神的な負担が軽くなります。孤独感が大きくなりがちな経営者という立場において、伴走者の存在は長く経営を続けていくうえでの支えになります。日々の判断や対応も、冷静に行いやすくなるでしょう。
飲食店を共同経営するデメリット

共同経営には数多くの魅力がある一方で、注意すべきリスクも存在します。
トラブルを防いだうえで共同経営を成功させるためにも、以下の点に注意してください。
意思決定に時間がかかる
複数人での経営では、重要な判断に時間がかかる傾向があります。全員の合意が必要な場面では、意見が分かれると調整に多くの労力を要します。例えば新メニューの導入や価格の見直しなど、即時の判断が求められる場面で意見がまとまらないと、機会損失につながることがあります。
価値観の違いで方針がぶつかる
経営者同士の価値観が異なると、店舗運営の方向性にズレが生じることがあります。開業当初は同じ目標を共有していても、時間の経過とともにそれぞれの立場や考えが変わっていくのは自然なことです。
経営者同士の価値観が対立した場合、現場が混乱するだけでなく、従業員の間にも不信感が広がるでしょう。結果として、経営の軸がぶれ、店舗の一体感が失われてしまう恐れがあります。
報酬や労働の不均衡に不満が生まれる
仕事量や責任の重さに差があるにもかかわらず、報酬が同額だと不公平感が募ります。実際にはどちらかに負担が集中していても、見え方の違いから誤解や不満が生まれてしまうかもしれません。完全に対等な共同経営を長く維持するのは難しいという実情があります。
人間関係の悪化が経営に影響する
共同経営は信頼関係のもとに成り立っていますが、関係が悪化すると業務に直結した問題へと発展します。不満が積み重なることで、口論や対立が表面化しやすくなり、冷静な意思決定ができなくなります。経営者同士の雰囲気の悪さがスタッフや顧客にも伝わってしまい、店舗全体の空気が悪くなるというケースも少なくありません。人間関係の修復には時間がかかるため、日頃からの対話が重要です。
途中での離脱や夫婦経営のリスク
共同経営者が途中で離脱する場合、業務の引き継ぎや責任の所在が不明確だと残された経営者の負担が一気に増えてしまいます。
また、夫婦での共同経営では、家庭と仕事の境界が曖昧になりがちです。私生活での対立が業務に波及し、ストレスや疲労の蓄積につながることもあります。経営と家庭の役割を分ける意識が欠かせません。
共同経営で起こりやすいトラブルと対策方法
共同経営では、信頼関係を前提に始めた事業でも思わぬトラブルが発生するリスクがあります。共同経営で起こりやすいトラブルを事前に把握し、対応策を考えましょう。
共同経営者の利益・責任が曖昧になる
利益配分や責任の所在が不明確なまま事業を始めると、不満が生じやすいため注意が必要です。開業時に「利益は折半」とだけ決めてしまうケースでは、日々の労働時間や成果の差に対して不公平感が高まります。
例えば、キッチンを任された人は「料理で客を引きつけている」と感じる一方で、ホール担当者も「接客で店を支えている」と考えている場合があります。どちらも自分の貢献が大きいと感じるため、報酬が同額であることに納得できない状態が生まれがちです。
また、赤字になった際にも、「誰の判断が原因なのか」「なぜ折半するのか」といった議論に発展する可能性もあるでしょう。
トラブルを防ぐためには、開業前の業務分担と責任範囲、報酬の配分ルールにおける明文化が大切です。最終決定者や報酬の基準を文書で取り決めておけば、後のトラブルを未然に防げます。契約書として文書に残し、問題が起きた場合の迅速な解決につなげましょう。
共同経営者で意見がぶつかる
飲食店経営の現場では、日々判断しなければならない事項が多く、スピードが重要です。そのため、経営方針や価格設定、採用方針などでの意見の衝突は避けられません。
開業当初は目標や方向性が一致していても、経験を重ねるにつれ新たな視点やアイデアが生まります。意見の衝突自体は健全な状態ですが、意見が割れたときに合意形成に時間がかかると、判断の遅れによって店舗の損失につながるおそれがあります。
対策として、まず最終的な意思決定者をあらかじめ定めておきましょう。出資比率や担当業務に応じて分野ごとに決定権を割り振る方法も効果的です。また、意思決定のルールを共有し、感情的な対立を避けるための手順を設けておくと、客観的に判断できます。
さらに、定期的な話し合いによる店舗方針のすり合わせが、衝突を未然に防ぐ鍵です。
経営パートナーに過度に依存してしまう
共同経営では、それぞれの得意分野を活かした業務分担が理想です。しかし、実際には一方に負担が集中し、もう一方が依存する構図になりがちです。
一人が店舗運営や調理全般を担い、もう一人が経理や広告に従事していたとしても、時間の経過とともに業務の偏りが大きくなる場合があります。業務が偏った状態が続くと、依存されている側に不満や疲労が蓄積し、関係性が悪化するリスクが高まります。
依存を防ぐために、開業前に業務と責任の分担を明確に定め、書面で共有しましょう。加えて、定期的に役割や負担のバランスを確認する場を設ければ、片方に過度な負担がかかっていないか確認が可能です。
互いの業務内容の見直しと、必要に応じた調整により、協力関係を維持できます。共同経営が成功するかどうかは、両者を補い合う意識と継続的な対話にかかっています。
飲食店の共同経営を成功させるコツ

共同経営を軌道に乗せるためには、開業前の準備と、経営中の継続的な話し合いが欠かせません。信頼関係だけに頼るのではなく、具体的なルールを設け、トラブルを未然に防ぐ体制をつくりましょう。
契約書の作成とルールを明文化する
共同経営を始めるうえで、契約書の作成は必須のステップです。誰が何を担当するのか、報酬や利益の分配はどうするのかといった内容を、あいまいなまま進めると不満が生じる可能性が高くなります。
例えば「利益は折半」と決めていても、実際には調理担当が毎日12時間働いている一方で、広報担当は3日に1度の投稿だけという場合、不満が生じる可能性があります。双方が納得して働くために、報酬を労働時間や責任範囲に応じて決定する方法が効果的です。
また、誰かが辞める場合や病気などで業務ができなくなったときの対処法も、あらかじめ契約書に盛り込んでおくと安心です。
意思決定のルールを定めておく
意見の対立は避けられないものだからこそ、決定についてのルールの明示が重要です。出資比率に応じて決定権を与える方法や、分野ごとに最終判断者を分ける方法が有効です。
「メニュー構成は調理担当が最終判断」「価格設定は経営担当が決定」といったルールを設ければ、話し合いが難航した場合でも混乱を避けられます。また、「どうしても合意できない場合は、第三者の意見を参考にする」などの合意形成のルールも定めておくと冷静な判断が可能です。
飲食業はスピードが命です。迷いが長引くほど、売上やスタッフ対応にも悪影響が出ることを意識しましょう。
コミュニケーションを途切れさせない仕組みをつくる
日々のすれ違いを放置すると、小さな誤解がやがて大きなトラブルに発展します。経営者同士の対話を絶やさない工夫が、成功への近道です。
「週に1回は2人だけで経営会議を行う」「業務終了後に5分だけ情報共有の時間をとる」といった習慣が効果的です。LINEグループやスケジュール共有アプリなどを使って、業務内容や方針を可視化するのもおすすめです。
まとめ
飲食店の共同経営には、資金を確保しやすい、得意分野を補えるといったメリットがあります。一方で、意見の衝突や役割分担の不明確さ、パートナーへの依存など、経営の継続を妨げるリスクも潜んでいます。
こうした問題を未然に防ぐためには、開業前のルールの整理と、信頼だけに頼らない仕組みづくりが欠かせません。役割分担や利益の配分、意思決定の方法、トラブル時の対応策などを明文化し、共同経営契約書として書面に残しておきましょう。
パートナーとの対話や、お互いの立場と責任の明確化が、共同経営成功の第一歩です。









