法人を設立した場合、原則として設立から最大2年間は免除期間とされるのが一般的です。しかし、条件によってはこの期間の途中、または設立初年度から課税対象となるケースもあるため注意しなければなりません。本記事では、消費税の免除がなくなる具体的な条件や、2年間の免除期間を最大限に活用するための方法について解説します。
目次
法人設立後に消費税が原則2年間免除される仕組みとは?

新たに設立された法人は、原則として設立から2年間、消費税の納税が免除されます。ここでは、原則として2年間免除される理由についてご紹介します。
新設法人には納税義務を判定するための「基準期間」がない
基本的に、消費税の納税義務は「前々事業年度の売上高」を基準に判定されますが、設立1期目と2期目には「判定の元となる期間」が存在しません。
そのため、基準期間における課税売上高もゼロとして扱われ、自動的に納税義務が免除される仕組みとなるのです。これが、新設法人が最大2年間にわたり免除期間を享受できる根拠です。
参考:No.6503 基準期間がない法人の納税義務の免除の特例|国税庁
個人事業主と法人は別人格として扱われるため売上は引き継がれない
個人事業主が法人成りした場合でも、消費税の納税義務判定において「個人と法人は別人格」として扱われます。したがって、個人事業主時代の売上高は、法人の基準期間の判定に引き継がれません。
例えば、個人事業主時代の課税売上高が1,000万円を超えていた場合でも、法人を設立すれば、課税売上高はゼロからスタートします。このため、法人設立後の2年間は改めて消費税の免除期間の恩恵を受けられる可能性があるのです。
必ず免除ではない!法人1期目から課税事業者になる3つの条件

法人を設立しても、必ず2年間消費税が免除になるわけではありません。次のいずれかに該当すると、設立1期目から課税事業者となり消費税の納税義務が発生します。
設立時の資本金の額・会社の支配関係・インボイス制度への登録状況によって決まるため、会社設立前に必ず確認しておきましょう。
会社の資本金が1,000万円以上である
会社設立時点(除業年度開始日)の資本金が1,000万円以上である場合、設立初年度から消費税の課税事業者となります。資本金が1,000万円以上の法人は事業規模が大きく、納税の負担能力があると判断されるためです。
そのため消費税の免除を受けたい場合は、資本金を1,000万円未満に設定する必要があります。現物出資も資本金に含まれるため注意しましょう。
特定新規設立法人に該当する
次の両方に当てはまると、設立1期目から課税事業者となります。
- 他の事業者が自社の発行済株式の50%超を直接または間接的に保有している
- 支配関係にある事業者の基準期間における課税売上高が5億円を超えている
この制度は、大企業が子会社を設立することで消費税の免除を受けるといった租税回避行為を防ぐ目的で設けられているものです。自社の株主構成や、その株主の売上規模によってはこの条件に該当する可能性があるため、設立前に確認を行いましょう。
インボイス発行事業者として登録申請している
免税事業者であっても、適格請求書(インボイス)発行事業者として登録すると、登録日から課税事業者となります。
たとえ設立1期目や2期目の免除期間中であっても、登録した時点で免税の権利は失われます。事業戦略としてインボイス登録が必要かどうかを、免税のメリットと比較して慎重に判断しなければなりません。
設立2期目で消費税の免除がなくなる「特定期間」の判定基準

設立1期目を免税事業者として終えた場合でも、2期目から課税事業者となる可能性があります。その判定に用いられるのが「特定期間」という制度で、設立1期目の上半期における売上や給与の支払い状況によって判断されます。ここでは、特定期間と課税事業者になる条件について詳しく解説します。
特定期間とは?
特定期間とは設立2期目の場合、設立1期目の事業年度開始から6ヵ月間を指します。この期間の課税売上高や給与等支払額を基準に、翌期(2期目)以降の消費税免除の可否が判断されるのです。
事業が順調に拡大した場合などには、この基準を超えてしまい、2期目から納税義務が発生するケースがあるため注意が必要です。
特定期間の課税売上高と給与支払額が1,000万円を超えた場合
第1期の事業年度開始日から6ヵ月間の課税売上高と給与支払額が1,000万円を超えると、設立2期目から課税事業者となります。しかし、課税売上高もしくは給与支払額のどちらかが1,000万円以下であれば、免税事業者となります。
設立3期目以降の消費税判定は「基準期間」で判断される
設立1期目・2期目と消費税の免除を受けてきた法人も、3期目以降は通常の判定ルールに戻ります。つまり、消費税の納税義務は、前々事業年度(基準期間)における課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判断されます。
3期目の納税義務は1期目の課税売上高を基準に、4期目の納税義務は2期目の課税売上高を基準に判定されるということです。3期目以降も継続して免税事業者でいられるかどうかは、過去の業績次第となります。
売上の増加に伴って免税期間が終了する可能性もあるため、将来の納税に備えた資金計画を立てておくことが重要です。
消費税の免除期間を最大限に活用するための3つの方法
消費税の免除がなくなる条件を正しく理解すれば、設立後の免除期間を最大限に活用できます。ここでは、特に重要な3つのポイントについてまとめました。これらを計画的に実行することで、事業初期の資金繰りを安定させる効果が期待できるでしょう。
資本金を1,000万円未満に設定する
消費税の免除期間を最大限活用するための最も基本的な方法は、会社設立時の資本金を1,000万円未満に設定することです。資本金が1,000万円以上の場合、設立初年度から課税事業者とみなされ、免除を受けられなくなります。
そのため、資本金を1,000万円未満に抑えることで、原則通り最大2年間の免除期間を確保できる可能性が高まります。ただし、資本金は企業の信用度を示す指標の一つでもあるため、事業計画や必要な初期投資額とのバランスを考慮し、適切な金額を設定することが重要です。
第1期の事業年度を短縮して「特定期間」の判定を回避する
設立2期目の納税義務を判定する「特定期間」の制度を回避し、免除期間を確保するケースも見受けられます。特定期間は「前事業年度開始の日以後6ヵ月の期間」と定義されているため、設立第1期の事業年度を7ヵ月以下に設定する方法です。
特定期間の定義上、事業年度が7ヵ月未満の場合は「6ヵ月間の特定期間」が存在しなくなるため、2期目も免税事業者として継続できる可能性が高くなります。決算月を自由に設定できる法人設立のメリットを活かした、合法的な節税策の一つです。
個人事業主の課税売上が1,000万円を超えたタイミングで法人成りする
個人事業主として課税売上高が1,000万円を超えると、その2年後には消費税の課税事業者となります。したがって、売上が1,000万円を超えたタイミングで法人化すれば、個人事業主としての納税義務を回避し、法人として最大2年間の免除期間をスタートさせることができます。
このタイミングで法人なりを行うことで、個人と法人の免税期間を連続的に活用でき、事業全体での税負担を最小限に抑えることができるのです。ただし、売上が1,000万円を超える前に法人化してしまうと、個人事業主として引き続き免税が続く期間を活かせないまま終了してしまいます。法人化の時期は慎重に見極めましょう。
まとめ
法人の消費税免除は、原則として設立から最大2年間適用されます。ただし、その期間はさまざまな条件によって変動します。設立時の資本金が1,000万円以上の場合や特定新規設立法人に該当する場合、インボイス発行事業者として登録した場合は、初年度から課税対象となるため注意しましょう。
さらに、設立2期目には「特定期間」の売上や給与支払額によって納税義務が発生する場合もあり、免除が終了する条件は一様ではありません。これらの仕組みを正しく理解し、事業計画に合わせた資本金の設定や法人設立のタイミングを戦略的に設定することが重要です。









