公益法人を設立するには、一般法人として登記を行った後、行政庁から「公益認定」を受ける必要があります。公益法人にはメリットがある一方で、事業内容や財務運営に関する基準を満たす必要があり、申請準備には相応の時間と労力がかかるものです。この記事では、公益認定を受けるまでの流れや必要書類、注意点について解説します。
目次
公益法人を設立するには?

公益法人は設立時点で名乗れるものではなく、一定の手続きを経て「公益性がある」と行政庁から認められる必要があります。まずは、公益社団法人や公益財団法人を設立する上で知っておきたいポイントを整理しましょう。
なお、「公益法人」は広義では民間の非営利団体全般を指しますが、ここでは公益社団法人と公益財団法人に絞って解説していきます。
一般法人の設立後に公益認定を受ける
公益法人として活動を始めるには、まず「一般社団法人」または「一般財団法人」として法人格を取得することから始まります。つまり、まずは一般法人として発足し、その後、行政庁に対して「公益認定」の申請を行う必要があるのです。あくまで法人格を取得するための手続きであるため、初めに設立する一般法人に「公益性」は問われません。
公益認定は、「主たる目的が公益に資するものであるか」「その活動内容や財務体制に透明性と信頼性があるか」など、内閣府または都道府県知事が審査・判断する制度です。認定には、公益法人認定法に定められた18の基準をすべて満たすことが求められます。
また、認定を受ける際、「欠格事由」に一つでも該当していると公益法人を設立できません。「役員に反社会的勢力が含まれていないか」「税金の滞納がないか」など、法人の信頼性を問う項目です。
申請には多くの書類作成や確認事項が伴い、行政庁との複数回のやりとりも想定されます。しかし、公益認定が下りれば「公益社団法人」「公益財団法人」としての活動が正式に認められ、名称の使用や税制優遇などのメリットもあります。
参考:公益認定等ガイドライン|公益法人Information
法人設立時から公益法人を名乗ることはできない
「公益性のある活動を行うから、最初から公益法人として設立したい」と考える方もいるかもしれませんが、現行制度では認められていません。公益法人を設立するには、まずは「一般法人」として登記し、その後に公益認定を申請する流れが前提です。
つまり、「公益法人でありたい」との意志が明確にあっても、法人格の取得時点ではその名称の使用も活動もできません。この仕組みは、2008年に施行された新制度によって確立されたもので、法人の設立と公益性の評価を明確に分けることで、より公正な審査が行われるようになりました。
なお、公益法人としての活動を視野に入れている場合には、初期の段階から定款や組織体制を認定基準に沿った形で設計すると良いでしょう。設立時から準備を進めておくことで、後の申請手続きをスムーズに進められ、認定取得後の運営にも好影響をもたらします。
また、公益法人としての活動を希望するなら、設立準備は少なくとも1年以上前から始めるのが理想です。
公益法人を設立する流れ
公益法人を設立するためには、一般法人の設立から始まり、その後、公益性を証明するための申請手続きへと進みます。ここでは、公益法人設立までの流れをご紹介します。
①一般社団法人または一般財団法人を設立する
公益法人を目指すには、まず「一般社団法人」または「一般財団法人」として法人格を取得します。一般社団法人は共通の目的を持つ人々の集まりに、一般財団法人は一定の財産に、それぞれ法人格を与える仕組みです。設立には定款の作成や登記申請などの手続きが必要で、司法書士に依頼するケースも多く見られます。
一般法人を設立するためには、まず法人の基本事項を定めた定款の作成が必要です。定款には、法人の名称・所在地・目的・事業内容・事業年度などを記載し、公証役場で認証を受けます。一般社団法人は2名以上の社員がいれば設立でき、一般財団法人の場合は300万円以上の拠出財産が必要です。
定款の認証が済んだら、理事や監事などの役員を選任し、就任承諾書や印鑑届出書など必要な書類を整えて法務局に登記申請を行います。申請が受理されると法人格が付与され、正式に一般法人として活動を始められます。
はじめての手続きに不安を感じる場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談しながら進めると安心です。
②申請書類を準備し、行政庁に提出する
一般法人の設立が完了したら、次は公益認定を受けるための準備に進みます。申請先は、法人の活動区域によって都道府県か内閣府に分かれています。
提出が必要な書類は、申請書(かがみ文書)、別紙1〜3、そして各種の添付資料です。別紙には法人の基本情報や事業内容、財務状況などを記載し、定められた認定基準を満たしているかを示します。中でも別紙3では、財務面で公益性が保たれているかを数値で示します。「収益が過剰に蓄積されていないか」「財源が公益目的に活用されているか」といった観点が審査のポイントです。
また、添付書類には、定款・登記事項証明書・役員名簿・事業計画書・収支予算書・納税証明書などが含まれます。各書類は、申請書の記載内容と整合性を取る必要があるため、作成時には細やかな確認が欠かせません。少しでも不備があると、修正や追加資料の提出を求められることがあります。
申請後は、行政庁とのやり取りやヒアリングを経て審査が進み、認定の可否が決まります。全体の流れには数カ月かかる場合もあるため、余裕を持って準備に取りかかると良いでしょう。
参考:申請の手引き 公益認定編(一般法人が公益認定を申請する場合)|内閣府
③行政庁による審査を受ける
公益認定の申請を行うと、行政庁による審査が始まります。申請のタイミングに制限はなく、一般法人の設立直後でも手続きは可能です。
審査では、提出された書類をもとに、法人が「公益性を備えているか」が丁寧に確認されます。審査期間の目安はおおよそ4か月とされており、その間に追加資料の提出や内容の修正を求められることもあります。
審査のポイントは、大きく分けて以下の2つです。
- 法人の活動が不特定多数の利益の増進に寄与しているか
- その活動を継続的に行うための体制や財務基盤が整っているか
公益目的事業の内容や比率、収支のバランス、遊休財産の管理状況などが具体的にチェックされます。さらに、理事や監事の構成、定款の記載内容なども審査の対象です。
この段階では、法人の理念や活動の意義をいかに明確に伝えられるかが、評価に大きく影響します。準備に時間をかけた分だけ、審査もスムーズに進みやすくなるでしょう。
④公益認定を受けて確認書を受け取る
行政庁による審査を経て公益性が認められると、最終的に「確認書」が交付されます。審議会での審査を通過した後、まずは担当者から電話で結果の連絡が入ることが多く、その後に書面が届く流れが一般的です。
確認書は、法人が正式に公益法人として認定されたことを証明する書類であるため、受け取ったら大切に保管しておきましょう。
⑤公益法人への移行登記を行う
公益認定を受けた後は、法務局での移行登記を済ませ、正式に「公益社団法人」または「公益財団法人」として名称の使用が認められます。
登記手続きでは、主務官庁から交付された確認書をはじめ、理事や監事の就任承諾書・印鑑証明書・議事録など、いくつかの書類を整える必要があります。実務的には司法書士に依頼するケースが多く、登記完了までの期間はおおむね2週間程度です。
登記完了後は、法人名の変更に伴い、税務署や金融機関などへの届出も必要です。この時期は事務作業が集中しやすいため、あらかじめスケジュールを組んでおくと良いでしょう。
公益認定を見据えた一般法人設立のポイント

公益法人としての活動を目指す場合、一般法人の設立段階から意識しておきたい点があります。後からの修正や再構築を避けるためにも、初期設計の段階で公益認定の要件を視野に入れておくことが大切です。ここでは、特に重要である2つのポイントについてご紹介します。
一般法人の設立当初から理事数を3名以上にする
一般社団法人を設立する際、法律上は理事1名からでも構成できますが、公益認定を目指す場合は、あらかじめ理事を3名以上選任しておくことが望ましいとされています。
公益社団法人では理事会の設置が義務づけられており、そのためには最低3名の理事が必要です。さらに、監事の設置も求められるため、設立時点で理事3名と監事1名の体制を整えておくと、後の手続きをスムーズに進められます。
理事や監事は、社員総会での選任や就任承諾書の取得など、形式的な手続きも必要です。また、理事と監事は兼任できないため、それぞれ独立した人員を確保する必要があります。
一方、一般財団法人については、公益財団法人と同じく設立時点から理事3名、監事1名、評議員3名の体制が求められます。つまり、公益認定を見据えた特別な準備をしなくても、基本的な機関設計はすでに整っている状態です。ただし、役員の兼任が認められていない点には注意しましょう。
欠格事由に該当していないか確認する
公益認定を受けるためには、法人の体制や事業内容が基準を満たしていることに加え、「欠格事由」に該当していないことも重要な条件です。主に、以下に該当しないか確認されます。
- 役員の中に暴力団関係者や重大な犯罪歴のある人物が含まれていないか
- 定款や事業計画に法令違反の恐れがないか
- 税金の滞納処分を受けていないか など
特に役員の経歴や法人の納税状況については、申請時に証明書類の提出が求められるため、事前に確認しておくと安心です。
公益法人を設立するメリット
公益法人として認定を受けるには、一定のハードルを越える必要がありますが、その先にはメリットが待っています。ここでは、「税制上の優遇」と「社会的信用の向上」についてご紹介します。
税額控除が適用される
公益法人に寄附を行った個人や法人は、税制上の優遇措置を受けられます。
例えば、個人の場合は「所得控除」または「税額控除」のいずれかを選択でき、寄附額に応じて所得税の負担を軽減することが可能です。控除の上限や計算方法には一定のルールがありますが、制度を活用すれば節税効果が期待できます。
また、公益法人側にもメリットがあります。公益目的事業に関する収益は法人税の課税対象外とされるほか、一定の源泉所得税が免除されるのです。ただし、収益事業(法人税法上の34業種に該当する事業)を行う場合は、課税対象となります。
さらに、収益事業から公益目的事業への支出が「みなし寄附金」として扱われる制度もあり、税務上の負担を抑えながら資金運用ができます。
社会的な信用度が向上する
「公益社団法人」や「公益財団法人」の名称は、厳格な審査を経て認定された法人だけが使用できます。この名称が示すのは、公益性や信頼性を備えた組織であるとの証です。社会からの見え方が変わることで、活動への共感や支援が得やすくなり、他団体との差別化にもつながります。
例えば、企業からの協賛や助成金の獲得、行政との連携、メディアへの露出など、あらゆる場面で「公益法人」としての肩書きがプラスに働くことがあります。また、寄附者にとっても税制上のメリットがあるため、支援のハードルが下がり、結果として資金調達の幅が広がるでしょう。
公益法人を設立する際の注意点

公益法人としての活動を始めるには、一定の基準を満たすだけでなく、継続的にその水準を維持していく責任も伴います。ここでは、設立を検討するうえであらかじめ知っておきたい5つの注意点をご紹介します。
事業内容や保有財産に制限がある
公益法人は、公益性を確保するために事業内容や財産の使い方に一定の制約があります。まず、法人全体の支出に占める公益目的事業の割合が50%以上であることが求められます。「公益目的事業比率」と呼ばれるもので、公益性の維持に欠かせない基準です。
また、公益事業の収支は黒字を出すことが目的ではなく、収入が必要経費を上回らないように調整する「収支相償」の考え方が適用されます。さらに、使い道が決まっていない財産を過剰に保有することも認められていません。いわゆる「遊休財産」の保有額は、1年分の公益目的事業費を超えない範囲に抑える必要があります。
活動内容の報告義務や立入検査がある
公益法人として認定を受けた後は、活動の透明性を確保するため、行政庁への報告が義務づけられます。毎事業年度の終了後には、事業報告書や活動内容を記した書類などを提出する必要があるため、日々の記録をきちんと整えておくことが大切です。行政庁は報告資料をもとに、法人が公益性を持って継続的に事業を行っているかを確認します。
また、行政庁による立入検査が数年に一度の頻度で実施され、帳簿や議事録、理事会の運営状況などが確認されます。検査の際に改善すべき点があれば、後日その対応状況について報告書を提出しなければなりません。
公益法人会計基準を遵守しなければならない
公益法人として活動するには、一般的な会計処理とは異なる「公益法人会計基準」に基づいた帳簿管理が求められます。この基準では、公益目的事業・収益事業・法人全体の3つに分けて会計処理を行う「三区分会計」が基本となり、それぞれの収支を明確に記録しなければなりません。
例えば、「寄附金や会費がどの事業に使われたのか」「公益目的に沿って適切に使われているか」を示す必要があります。
また、財務諸表の作成や附属明細書の整備も義務づけられており、会計処理の煩雑さに戸惑う方も多いことでしょう。特に小規模な法人では、専門知識を持つ人材の確保が課題になることもあります。
とはいえ、こうした透明性の高い会計体制は、社会からの信頼を得る上でも大切です。最初は手間に感じるかもしれませんが、丁寧に整えていくことで、法人の健全な運営にもつながっていきます。
剰余金の分配が認められていない
公益法人は、営利を目的としない「非営利法人」として位置づけられており、事業で得た利益を構成員に分配することは法律で禁じられています。収益が出たとしても、法人の内部に留め置かれ、次の公益目的事業に充てることが原則です。つまり、法人の財産はあくまで社会のために使われるべきものであり、個人の利益に転用することはできません。
このルールは、法人の信頼性を保つための大切な仕組みでもあります。ただし、役員報酬や職員給与など、業務に対する正当な対価は支給可能です。
しかし、その金額が過度に高額であれば「特別の利益」とみなされる恐れがあるため、社会通念に照らした妥当性が求められます。公益法人を設立する際は、「利益をどう使うか」ではなく、「どのように公益に還元するか」といった視点を大切にしていくことが求められます。
公益認定取消後の負担が大きい
公益認定を受けた法人が、何らかの理由で認定を取り消された場合、その影響は想像以上に大きいでしょう。特に注意したいのが「公益目的取得財産残額」の扱いです。
認定期間中に公益目的で得た財産のうち、まだ使い切っていない分を指し、認定取消後は他の公益法人や国・自治体などに贈与しなければなりません。つまり、法人に残っている資産は自由に使えなくなるのです。
さらに、取消しの手続きには、贈与契約の締結や財産目録の作成、行政庁への報告など、煩雑な事務作業が伴います。短期間で対応しなければならないため、精神的・時間的な負担も大きいでしょう。
公益法人としての活動を継続するには、日頃から認定基準を意識した運営を心がけ、万が一のリスクにも備えておくことが大切です。信頼を守るための努力が、結果として法人の安定にもつながっていきます。
公益法人を設立するなら専門家のサポートを受けよう
公益法人の設立には、一般法人の設立から公益認定申請、認定後の運営まで、専門的な知識と実務経験が求められます。特に税務・会計・定款設計・財務三基準への対応などは複雑で、一般的な法人設立とは異なる配慮が必要です。
こうした手続きをスムーズに進めるには、公益法人に精通した税理士の支援が有効でしょう。しかし、公益法人の実務に詳しい税理士は少ないのが実情です。
そのため、制度や運用に精通した専門家に早い段階から相談することが、無理のない設計と安定した運営につながります。設立後の負担を減らすためにも、信頼できるパートナーを見つけておくことが大切です。
公益法人の設立を検討している方は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。








