税金を滞納したまま放置すれば、財産が差し押さえられてしまいます。差し押さえ対象になる財産は、個人事業主ならば個人名義のもの、法人ならば法人名義のものです。差し押さえが実行されれば、事業や生活に重大な影響が生じます。ただし、差し押さえを受けても正しい手続きを踏めば回避や解除は可能です。ここでは、税金滞納による差し押さえについて解説します。
目次
税金滞納から差し押さえまでの基本的な流れ

税金の支払いを滞納すれば、最終的に財産の差し押さえに遭います。
ただし、税金を滞納してもすぐに差し押さえが行われるわけではありません。
税金滞納から差し押さえまでの基本的な流れからみていきましょう。
督促の段階
税金の支払い期限が過ぎれば、自治体や国から督促状が送付されます。
これは、あくまでも支払いを催促するものであり、滞納額が少額であれば郵送での通知だけで済むケースもあります。
税金の納付期限は、税金の種類や自治体ごとに異なりますが、納付期限から20日以内に督促状が送付されることが一般的です。
最終催告
督促状などの文書の送付や電話、訪問などによる督促をしても税金が納付されない場合、最終通知として通告書が届きます。
この催告書を無視すれば、次の段階として差し押さえ予告通知が送付されます。
実際に財産の差し押さえが可能になるのは、督促状の送付から11日目以降が目安です。
差し押さえの決定・予告
一連の催告に応じなかった場合、税務署や各自治体は差し押さえを実施する方針を決定します。
差し押さえ予定日が記された差し押さえ通知書が送付され、この通知書には執行官が当日現地へ出向く旨が記載されています。
この通知書が届いてから一定期間内に債務者が対応すれば、差し押さえの回避が可能です。
差し押さえの実行
差し押さえ通知書へ記されていた日時に執行官が自宅や勤務先を訪問し、対象になる財産を差し押さえます。
銀行口座がある場合は口座が凍結され、給与債権の場合は会社に差し押さえ命令が出されます。
不動産の場合は、不動産売買や抵当権設定が制限され、競売にかけられます。
差し押さえの対象になる財産とは?
税金滞納で差し押さえの対象になる財産は、個人の場合と法人の場合で異なります。
個人事業主と法人それぞれの差し押さえ対象になる財産は、以下の通りです。
個人事業主の場合
個人事業主やフリーランスとして事業をしている場合、税金を滞納することで差し押さえられる財産は個人名義のものです。
対象になる財産には、以下のようなものが挙げられます。
- 預貯金
- 自宅などの不動産
- 売掛金
- 車やバイクなどの動産
- 有価証券
- 生命保険
現金は66万円以上が差し押さえの対象になり、生活に必要な家財道具などは差し押さえされることはありません。
法人の場合
法人が税金を滞納している場合、法人名義の財産が差し押さえの対象です。
対象になる財産には、以下のようなものが挙げられます。
- 法人名義の銀行口座
- 法人名義の不動産(オフィスや工場など)
- 法人名義の車
- 什器、機械設備、備品など
- 売掛金
会社を経営するために必要な財産が差し押さえになるため、事業継続が困難になるでしょう。
税金滞納による差し押さえで受ける影響

税金滞納による差し押さえを受ければ、生活や仕事にさまざまな影響が出ます。
差し押さえによって受ける影響には、以下のようなものが挙げられます。
生活や事業への直接的ダメージ
税金滞納によって差し押さえを受ければ、まず最初に影響を受けるのは日々の生活資金や事業資金です。
税務署は、預貯金や売掛金、不動産などさまざまな財産を差し押さえることができ、その中でも銀行口座の差し押さえは生活や事業の運営に直結します。
口座が凍結されれば、公共料金や家賃の引き落としができなくなります。
事業のための口座が凍結されれば、仕入れ先や取引先への支払いが滞り、契約解除や取引停止に発展することも少なくありません。
こうした連鎖的な影響により、資金繰りがさらに悪化する恐れもあります。
信用の低下
差し押さえが表面化すれば、債務者の信用にも深刻なダメージが生じます。
法人ならば、取引先や顧客に対して財務的な不安を与えるでしょう。
また、金融機関との関係にも影響を及ぼします。
税金の滞納や差し押さえが確認されれば、新たな融資審査で不利になる可能性が高く、既存の借入条件にも影響することがあります。
滞納履歴が今後の資金調達に大きな壁になれば、事業の将来性が左右されることもあるでしょう。
法的措置による不利益
差し押さえは一時的な処分ではなく、場合によっては法的な手続きに発展することもあります。
例えば、差し押さえた不動産や動産が競売にかけられる換価処分に進めば、その資産を失って記録として残ります。
しかも、競売は通常よりも安価で売却されるケースがあるため、売却益だけでは返済できないこともあるでしょう。
さらに、滞納が続けば追加の延滞税が発生し、元々の税額以上の負担になります。
こうした事態を避けるには、滞納をする前や滞納の初期段階で税務署や専門家へ相談し、財政状況などに応じた適切な対処をすることが重要です。
差し押さえを回避するためにできること
税金滞納によって財産が差し押さえになれば、事業や生活に支障をきたします。
税金を滞納しないことが一番の対策ですが、すでに滞納してしまっているケースや、税金を支払える金銭が手元にないというケースもあるでしょう。
差し押さえを回避するためにできることを解説します。
早期対応が重要
督促状を受け取ったら、すぐに行動することが大切です。
「少しくらい滞納しても大丈夫だろう」と考えず、手元に支払える金銭がある場合はすぐに支払いましょう。
支払が難しい場合も放置せず、税務署や自治体に相談してみてください。そうすることで、支払う意思があると判断され、差し押さえを回避するためにできることなどのアドバイスを受けられるでしょう。
先延ばしにすると対応の選択肢が狭まります。
分納・延納制度を利用する
税務署や自治体には、分割納付や延納の申請制度があります。
事情を説明すれば、一括支払いの税金を分けて支払えるようになるでしょう。
手続きは簡潔なので、早めの相談が重要です。
分納が認められれば、納付を続けている間は差し押さえを回避できます。
納税猶予制度の利用
災害や病気、事業の一時的な困難など特定の理由があれば、納税猶予制度の利用が可能です。
納税猶予申請書と併せて収支書や診断書などを提出すれば、1年程度の猶予が認められます。
猶予期間の間に資金を調達して支払いをすれば、差し押さえを回避できます。
ご自身の状況で納税猶予制度を利用できるかどうか知りたい場合は、自治体の窓口に問い合わせると良いでしょう。
法的整理を検討する
税金以外の債務も抱えていて支払いが難しい場合には、法的整理を検討することも選択肢のひとつです。
ただし、民事再生や自己破産などの法的整理をしても、税金は免除されません。
なぜならば、税金は非免責債権に該当し、免責決定の効力が及ばないことが破産法第253条に定められているからです。
しかし、他の債務を整理することで余力が確保されるため、税金を支払いやすくなる可能性があります。
法的整理による税金滞納の扱いに関しては、下記の記事も参考にしてください。
税理士へ相談する
税理士は税務の専門家なので、相談することで個別の状況に応じたアドバイスを受けられます。
例えば、支払い能力に応じた分納申請の手続きや、猶予申請の方法を正確に案内してくれます。
自分ひとりで悩むよりもスムーズに対応でき、精神的な負担も軽減される点は大きなメリットです。
また、税金滞納をしている場合は、滞納によって発生する延滞税や加算税のリスクを最小限に抑えるための戦略も立ててもらえるでしょう。
差し押さえに発展する前に、早めに税理士へ相談して的確な対応をとることが賢明です。
すでに差し押さえられた場合の解除方法

税金滞納を放置し、すでに差し押さえを受けているという方もいるでしょう。
すでに財産を差し押さえられたからといって諦める必要はありません。
差し押さえを解除できる方法もあるので、状況に応じた対応をしてください。
完納による解除
税金の滞納によって財産の差し押さえを受けた場合、確実で迅速な差し押さえの解除方法は完納です。
完納とは、滞納している税金の全額を支払うことを指します。
滞納税額を一括で納めれば、差し押さえの根拠がなくなるため、税務署は速やかに差し押さえを解除することが原則です。
ただし、完納が成立するまでの間に発生した延滞税や加算税なども含めて支払わなければなりません。そのため、納付前に納税額の総額を確認し、資金繰りの見通しを立てて対応することが求められます。
交渉による解除
差し押さえの解除や処分の回避をするために、税務署や自治体との交渉も有効な手段のひとつです。
とくに支払い能力に限りがある場合は、分納や猶予制度の利用について相談することが考えられます。
すでに差し押さえを受けている段階であったとしても、誠実な納税意思を示すことで交渉できる可能性が高まります。
交渉の際には、収支状況や収支の内訳、手元資金の状況などを具体的に提示すると良いでしょう。
また、差し押さえ対象から生活や事業に不可欠な財産を除外してもらうように申し出ることも可能です。
自力での交渉が難しい場合は、税理士などの専門家に同席してもらうと話がスムーズに進みやすいです。
税金が発生している資産の売却による解除
完納が困難な場合、差し押さえの原因になっている資産を売却することも選択肢のひとつです。
例えば、不動産の固定資産税や車の自動車税・重量税を滞納して差し押さえを受けているのであれば、これらの資産を売却した売却益で完納できる可能性があります。
ただし、不動産や車は差し押さえの対象になっていれば自由に売却することはできません。
差し押さえになっている財産を売却する場合は、事前に自治体などに申し出を行い、その売却代金で滞納している税額を完納することを約束すれば、差し押さえを解除してもらえる可能性があります。
差し押さえの解除については、下記の記事も参考にしてください。
税金滞納による差し押さえは税理士へ相談しよう
税金滞納による差し押さえは、生活や事業に多大な損失や不利益を与える可能性があります。
大切なことは、税金の支払いが困難であることに気付いた段階で、相談や対策を取ることです。
不安を感じたら、一人で抱え込まずに専門家である税理士の力を借りながら対応しましょう。
小谷野税理士法人では、知識と経験の豊富な税理士が多数在籍しています。
お一人ひとりの状況に応じた適切な対処やアドバイスを行うことができるため、まずは問合せフォームよりご相談ください。







