海外出向時に支払ったチップは、経費として計上できるのでしょうか。出向先の国によっては、レストランやホテルなどでサービスを受けたときにチップを支払うのがマナーです。この記事では、海外出向時に支払ったチップを経費計上するための条件、適した経理処理、注意点まで詳しく解説します。
目次
海外出向時に支払ったチップは経費にできる

業務に必要な出費であれば、海外出向時に支払ったチップは経費計上が可能です。チップは日本ではほとんど馴染みがない制度ですが、一部の国ではサービスへの対価として、利用代金とは別でチップを支払うのが礼儀です。ただ、チップを必要とするシーンやルールは国によって異なります。
チップは現金で支払うことが多く、領収書や明細も発行されません。そのため、海外出向や海外出張が多い企業の場合、チップについてルールを設けているケースがほとんどです。
海外出向や出張が決まったら、チップの扱いや経費の計上方法などについて自社の規定を確認しておきましょう。
海外出向時に経費にできるチップ
チップ制度がある国に海外出向する場合、支払ったチップが経費にできる場合とできない場合があります。適切に経費を計上するためにも、経費にできるチップについて理解しておきましょう。経費にできるチップは、次のようなサービスを利用したときです。
- 打合せで使ったレストラン
- 宿泊先のホテルのポーターやベッドメイキング
- 宿泊先のホテルや取引先に移動するために使用したタクシー
- 打合せでお世話になった通訳やガイドへのお礼
業務に関連するサービスを利用したときにチップの支払いが必要であった場合、経費計上が可能です。
海外出向時に経費にできないチップ
海外出向の際に支払ったチップ全てを、経費計上できるとは限りません。あくまでも業務上の必要性が認められた支払いが、経費となるからです. そのため、以下の状況で支払ったチップは経費として扱えません。
- プライベートで使用したレストランやホテル
- 観光目的で使用したホテルやタクシー
- 観光でお世話になった現地ガイドへのお礼
- 宿泊先で個人的に利用したルームサービス
- そもそもチップが不要なのに支払ったチップ
経費は業務に必要な出費であるため、プライベートでの使用分は経費にはなりません。また、チップが不要な状況でチップを支払った場合も、経費として認められないため注意しましょう。
海外出向で支払ったチップを経費精算する方法
出向先で支払ったチップは、主な支出の内容に合わせた勘定科目を使って経費精算します。例えば、取引先の方と親交を深める目的で食事をする場合、食事代は交際費として計上するのが一般的です。そのため、食事をしたレストランで支払ったチップも交際費扱いです。
また、レストランで食事をしながら打合せをした場合は会議費扱いとなるため、レストランに支払ったチップも会議費として計上します。
ホテルのポーターやベッドメイキングに支払ったチップは宿泊代もしくは出張費、タクシーで支払ったチップは、旅費交通費もしくは宿泊代の勘定科目を用います。
チップを経費として計上するときは、チップを支払ったときに利用したサービスの勘定科目と同じものを使用するのが基本です。
海外出向・出張時の経費精算が複雑になりやすい原因
日本国内の出向や出張と比較して、海外出向や出張時の経費精算は複雑となりがちです。それは、以下の要因が関係しています。
- 為替レートの計算
- 日本と異なる税率
- 日本と異なる形式の領収書やレシート
- 日本にはない習慣(チップなど)
- 言語の違い
海外出向や出張は、通貨だけでなく文化や税率などさまざまな点が異なることから、経費精算が煩雑になりがちです。正しく経費を精算できなければ、申告や納税にも影響が出ることがあります。
正確な申告や納税のためにも、海外出向や出張時の経費精算に注意すること、税務の専門家である税理士からのサポートやアドバイスを仰ぐことが大切です。
海外出向時の経費精算における注意点

海外出向の際も、国内での出向や出張と同様に経費精算が必要です。しかし、経費精算時に注意しておくべき点がいくつかあるため、ここでは、海外出向時の経費精算の注意点について詳しく説明します。
社内規定を確認する
チップを含めて現地でかかった経費を正しく計上するためにも、まずは社内規定を確認しましょう。原則、経費を計上するときには、支払いを証明する領収書などが必要です。しかし、業務上必要な支払いであるチップは、現金で支払うことが多く領収書なども出ません。
そのため、海外出向や出張が多い企業は、チップ代をあらかじめ日当に含めているケースが多いです。日当とは、出張や出向で実際にかかった経費とは異なり、出向や出張先でかかったプライベートの食事、通信費、日用品などにかかる費用に充てる手当です。
出張や出向先でかかった交通費や宿泊費など業務に関連する費用の精算時には、領収書などの書類が求められます。
一方、日当は出張や出向でかかった雑費の支払いに使える費用で、実際に支払った費用と差額を調整する必要がありません。
例えば、出張旅費規程で海外出張は一日あたり7,000円と定められていたとします。打ち合わせ先に向かうまでの交通費や打合せで使用したカフェなどの費用は後日経費として精算しますが、チップ代は日当に含まれているため経費精算が不要です。
出張旅費規程や経費精算のルールなども会社ごとに異なります。海外出向や出張に行く従業員はもちろん、経費精算の担当者も海外出向時の経費精算のルールを出張旅費規程で確認しておきましょう。
支払いの証明となるものを残しておく
海外出向時に支払った費用を経費精算するためには、下記のような支払いの証明書が必要です。
- 領収書
- レシート
- 外貨換金時のレシート
経費として計上するために必要な証明書について、出張旅費規程に明記してあるはずです。経費の精算時にレシートではなく領収書の添付を必須とする企業もあります。
海外の場合、全ての支払いに対して領収書を発行しない国があります。そのため、事前に領収書を発行してほしいことを伝えておかないと領収書を発行してもらえない、もしくは領収書の発行を断られることもあるのです。
そこで、出張旅費規程を事前に確認し、経費精算に必要な書類を受け取るようにしましょう。
近年は、チップ制度がある国でレストランやホテル、タクシーなどを利用した際に、チップを含めて決済できるケースが増えています。
チップも含めて決済できた場合は、利用したサービスの領収書やレシートで支払いを証明できるでしょう。しかし、チップをサービスや商品の支払いと分けて現金で支払った場合は領収書などを受け取れず、支払いの証明が困難です。
現金でチップを支払い、証明書がない場合はどこでいくら支払ったのかを記録しておくことが大切です。
領収書やレシートの内容を理解する
経費として精算するには、業務上必要な出費であることが前提であるため、経費精算を行う担当者は、支払いの証明である領収書やレシートの内容の理解が求められます。
業務との関連性が疑わしい出費については経費として計上できません。レシートや領収書から支出の目的や内容を読み取り、経費として計上できるかを判断しましょう。
海外出向や出張の際に発行された領収書やレシートは、現地の言葉で書かれており、詳細の理解が困難なこともあるでしょう。そこで、頻発する単語について調べて理解しておく、出張や出向をした従業員に詳細を確認するなどの対策が必要です。
為替レートに注意する
海外出向や出張で使った経費を精算する場合、日本円に換算して経費計上するため、為替レートに注意が必要です。原則、経費が発生した日の為替レートで経費を計算します。
日本円に換算する際に用いる為替レートは企業によって異なりますが、金融機関による外貨の販売価格と外貨の買取価格の平均値であるTTMを採用するケースが多いです。
また、海外出向や出張時の経費を現地で現金払いした場合は、支払日の為替レートではなく日本円から現地通貨に両替したときの為替レートを採用します。
両替の際に手数料を支払ったときは、手数料も経費として計上できるため、両替時のレシートを無くさずに保管しておきましょう。
現地でかかった費用をクレジットカードで決済したときは、利用明細に明記されている為替レートで計算するのが原則です。しかし、カード会社の処理日が請求額の最終確定となるため、為替レートが変わることで請求金額も変わる可能性があります。
海外出向や出張時の経費精算の負担を軽減するコツ

日本国内での出向や出張時の経費精算と比べて、海外出向や出張時の経費精算は手間がかかります。そのため、海外出向や出張が多い企業は、経費精算の負担が大きくなりがちです。ここでは、海外出向や出張時の経費精算の負担軽減につながるコツを紹介します。
クレジットカードを使用する
海外で業務に必要な費用を支払うとき、できる限り現金ではなくクレジットカードでの支払いを心がけることです。
クレジットカードで精算すると、為替レートや領収書、レシートの確認作業の手間が大きく省けるからです。
クレジットカードで精算した場合、利用明細で為替レートを確認でき、日本円でも明記されているため、為替レートの確認や計算が必要ありません。
さらに、カードの利用明細から支払った場所、内容、金額まで把握できるため、領収書やレシートから業務との関連性を調べる負担が減ります。
クレジットカードにて精算する場合は、個人的な支払いと区別するために法人カードの作成が望ましいです。海外出向者や出張者に対して、現地で発生した経費を法人カードで支払うように周知することで、業務に必要な出費を明確に区別できるでしょう。
ただし、出向や出張先によってはクレジットカードの支払いに対応していない国もあります。出張先、出向先の国について事前に調べ、適切な支払い方法を選択しましょう。
仮払金を渡す
海外出向や出張前に現地通貨で仮払金を渡すことも、経費精算を楽にするやり方の一つです。出向や出張から帰国した際に、実際にかかった経費を計上しなくてはいけません。
海外出向の前に日本で出向先の国の通貨に両替をして仮払金として処理し、帰国後に仮払金と実際にかかった費用の差額を精算するため、経費精算が簡素化されます。
海外出向や出張の際に、現地で両替した現金で経費を支払った場合、帰国時の経費精算で適切な為替レートを用いて経費を計上しなくてはいけません。仮払金の場合は、精算時に為替レートを調べて計算する手間が省けるため、経費精算が楽になります。
経費として扱うには、出向先での支出と業務の関連性を証明するために、支出の内容を明確に証明できる書類や記録を残しておくことが大切です。
ただし、複数の国に海外出向や出張に出向く際には、仮払金での精算が手間となることがあります。国ごとに外貨を両替して用意しなくてはいけないこと、出向者や出張者が複数の外貨を管理しなくてはいけないからです。
海外出向や出張先の国の状況、出向者の負担なども考慮して、最適な方法を選ぶことをおすすめします。
経費精算システムを導入する
海外出向や出張時にかかった経費の計上を正確かつ簡素化するには、経費精算システムの導入が効果的です。
海外出向や出張時にかかった経費を帰国後にまとめて精算すると、計上漏れやミス、不正が起こりやすいからです。海外出向や出張が長期間に及ぶと経費精算の量が多くなり、経費処理に時間がかかるだけでなく、領収書の紛失などが起こるリスクが高まります。
経費精算システムを導入することで、従業員が現地からその都度経費を精算できるため、経理担当者の負担が減り、ミスや漏れも防げます。
レシートや領収書を読み取るだけで、支払い時の為替レートで自動的に経費精算してくれる経費精算システムもあるのです。
海外出向や出張者が多い場合、経費精算システムの導入により、経理業務の効率化や精度の向上が期待できるでしょう。
経費精算システムの導入で経費の計上業務が効率化されますが、経費としての妥当性を判断するためにも税理士のアドバイスが役立ちます。
海外出向や出張のチップは経費になる!正しい計上が重要
海外出向や出張時に支払ったチップは、業務に必要なサービスを利用した場合に限り経費として計上できます。プライベートで使ったサービスに関連するチップは、経費とならないため注意が必要です。
また、海外出向や出張でかかった経費の精算業務は、為替レートだけでなく文化、言語などの違いから複雑となりがちです。正しく経費を計上するためにも、社内規定に従うのはもちろん、税務のプロである税理士のサポートを検討してみましょう。







