支払調書と源泉徴収票、それぞれの役割をご存じでしょうか?どちらも正確な税務に欠かせない法定調書の一種ですが、役割や必要とする場面などに違いがあります。支払調書、源泉徴収票共に事業を運営するうえで使用する可能性が高いことから、それぞれの正しい理解と使い分けが求められます。この記事では、支払調書と源泉徴収票の違い、それぞれの役割と必要な場面、作成時の注意点まで詳しく解説します。
目次
支払調書と源泉徴収票の違いは支払先と発行義務

どちらも法定調書の一種ではあるものの、たびたび混同されやすい支払調書と源泉徴収票の違いは、支払先と交付義務の有無です。
両社共に個人事業主や企業が労働の対価や成果物に対する報酬を支払ったことを証明する書類ですが、支払先によって発行する書類の種類が異なります。
自社の従業員に対して給与や賞与を支払ったときは源泉徴収票、外注先の企業やフリーランス、専門家など社外の企業や個人に対して報酬を支払ったときは、支払調書を作成します。
また、源泉徴収は支払先、つまり給与や賞与を支払った従業員に対する交付義務がありますが、支払調書の交付は任意で義務ではありません。
支払調書も源泉徴収票も、一定の条件を満たしたときに税務署に提出義務が生じます。例えば、同じ人に支払った報酬が一定額を超えない場合など、所定の要件を満たさないとき、税務署に支払調書を提出する必要はありません。
支払調書の基礎知識
正しい申告と納税のためにも、支払調書への理解が求められます。ここでは、支払調書とは何か、必要となる事例について説明します。
支払調書の基本
外部の企業または個人事業主といった取引先に業務を依頼した際、その業務に対して支払った年間(1月1日から12月31日)の報酬額や業務内容などを明記した書類が支払調書です。
企業が、誰にいくら報酬を支払ったのかを明確にして税務署に報告することにより、正確な納税につなげています。
法人や個人事業主の申告や納税は自己申告制です。申告内容の正確性を判断するには、法定調書の内容と照らし合わせることが有効な手段の一つとされています。そこで、一定の条件を満たす報酬や料金の支払について、法定調書である支払調書の提出を義務付けています。
例えば、顧問契約を締結している弁護士に報酬を支払った場合、年間の顧問料の合計額と支払った料金の内訳を明記します。
同一の個人や法人に対して、年間(1月1日~12月31日)に支払った報酬など、一定の条件を満たすとき、翌年1月31日までに調書を税務署に提出しなくてはいけません。
支払調書が必要なケース
次のような報酬を支払ったとき、支払調書の作成対象となる可能性が高いです。
- ライターや専門家に対する原稿料や講演料
- 弁護士や税理士、社労士といった士業への報酬
- 外交員、集金、電力設計の検針人への手当
- プロスポーツ選手への報酬
- 芸能関連の仕事に対する報酬
- ホステスへの報酬
原則、個人や法人に対して料金や報酬を支払った際に支払調書を作成し、税務署に提出しますが、全ての料金や報酬が対象となるわけではありません。
提出の必要性については、料金や報酬の支払区分、年間で支払った金額などで判断します。そのため、支払調書の作成に該当する報酬や料金が発生した際には、支払調書の提出要件を確認し、適切に対応することが大切です。
支払調書の種類
報酬の支払先や内容に応じた、正しい書類の作成が求められています。ここでは、主な種類について詳しく説明します。
報酬、料金、契約金及び賞金に関する調書
主に士業や外部の専門家に報酬や料金などを支払った際に発行するものです。法人や個人事業主にとって、高頻度で作成するだけでなく、日常業務において最も目にする機会が多い調書の種類だといえます。
- 顧問契約をしている士業(税理士や弁護士、社労士)への支払
- 講演会やセミナーの講師に対する報酬
- 雑誌やWEBでの記事作成に対する原稿料
上記の報酬を支払う際には、あらかじめ所得税と復興特別所得税を差し引かなくてはならず、税金を差し引いた額が実際の支払額です。調書には下記の項目を記載します。
- 区分(報酬や料金の内訳)
- 支払総額(源泉徴収前の金額)
- 源泉所得税の控除額
- 支払先の個人名・住所もしくは企業名・所在地
- 支払者の氏名・住所もしくは会社情報
原則、支払調書は税務署への提出義務があります。しかし同一の法人や個人事業主に対する報酬の支払が年間5万円以下だった場合、提出は不要です。
参考:国税庁 No.7431 「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等
不動産の賃貸に関する調書
不動産の使用料金を、不動産事業を営んでいる個人や法人に対して支払ったときに提出が必要です。例えば、下記のような支払が発生した場合が対象です。
- オフィスや店舗の家賃
- 入居時や更新時に支払う権利金
- 契約更新の際の更新料
- 礼金や保証金
- 借地料や地代
家賃や賃貸料以外に支払がない場合については、税務署に支払調書を提出する義務は発生しません。権利料と更新料といった特定の支払が発生した際に、調書の作成と提出が求められます。
礼金や保証金といった物件の退去時に返却される預り金については、支払った金額の一部もしくは全額が返還されないと確定したときに支払調書を提出します。
不動産等の譲受けの対価の支払調書
不動産売買や交換、競売や公売などの不動産取引で、同一の人に対して年間で150万円を超える場合に提出が必要です。
また、不動産の取得時に支払う際に、補償金の支払を受けるときは、摘要欄にその種類と金額を記載します。
不動産取得時の支払に関する調書
土地や建物といった不動産を購入したり、交換や競売で不動産を取得したりしたときに、作成が求められます。ただし、全てのケースが作成の対象となるわけではありません、同じ相手(個人や企業)に対して年間で100万円超支払ったときに限ります。
不動産の賃貸に関する調書と同様に、個人経営で建物の賃貸借の代理業や仲介業を主な業務としている場合、提出は不要です。
参考:国税庁 No.7441 「不動産の使用料等の支払調書」の提出範囲等
不動産や大規模資産のあっせん手数料に関する調書
不動産の売買や賃貸、もしくは船舶、航空機などの高額資産についてあっせん業務を依頼した際の手数料を年間で15万円超上、同じ人に支払ったときが調書の作成対象です。
ただし、先に紹介した不動産関連の支払調書において「あっせんを行った者」の情報が正しく記載されていた場合、重複での提出は不要です。また、不動産の賃貸借の代理や仲介業を営んでいる個人事業主も同様です。
参考:国税庁 No.7443 「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出範囲等
源泉徴収票の基礎知識

源泉徴収票は個人の1年間の収入や納税額が記載された書類で、収入の証明としても用いられる法定調書です。主に法人が発行する機会も多いことから、ここでは、源泉徴収票とは何か、源泉徴収票を必要とする場面について詳しく紹介します。
源泉徴収票の基本
法人が自社の従業員に対して1年間(1月1日~12月31日)給与や賞与、退職金を支払ったときに、必要事項を記した書類のことです。
法人は、従業員に支払った給与や賞与などから、所得税と復興特別所得税、社会保険料を徴収して従業員の代わりに納税しなくてはいけません。
しかし、従業員の給与や賞与などから支払う税金は、さまざまな控除を適用する前であるため、正確な額ではありません。
そこで、年末調整で各種控除を適用し、納税額の過不足を調整したうえで納税額を確定します。正しい税額が確定した後で、源泉徴収票を発行するのです。
源泉徴収票は主に3つの種類があり、給与所得者に対してだけでなく、退職者や公的年金受給者にも発行されます。
源泉徴収票が必要なケース
源泉徴収票が必要となるのは、以下の場面です。
- 転職時
- 確定申告時
- ローンを組むとき
- 保育園の入園時
年度の途中で転職をする場合、転職先の勤務先で源泉徴収をしてもらうため、前職の職場から源泉徴収票を発行してもらいます。
例えば、住宅ローン控除を受けるとき、年収2,000万円超の会社員など、会社努めをしていても確定申告をしなくてはいけないケースがあります。確定申告時には、自身の収入を証明する必要があるため、源泉徴収票が必要です。
他にも、住宅ローンなどの融資を受けるとき、収入によって保育料が決まることから子供の保育園の入園時などにも、源泉徴収票の提出を求められます。
適切な支払調書を作成するためのポイント
外部の企業や個人事業主に業務を依頼し報酬を支払ったとき、業務の内容などによって支払調書を作成しなくてはいけません。そこで、正しく書類を作成するためにも、作成時のポイントについて紹介します。
支払調書に記載するべき項目
外部に業務を依頼する機会もあることから、多くの企業が作成する機会が多い「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の記載項目を理解しましょう。正しい法定調書を提出するためにも、下記必要な項目を過不足なく記載します。
- 報酬を受け取った企業や個人事業主の名称、住所や所在地
- 区分(例:士業報酬、講演料)
- 細目(具体的な報酬の内容)
- 支払金額(1月1日~12月31日で支払った金額の合計)
- 源泉徴収税額(実際に支払った金額に対する所得税と復興特別所得税の合計額)
- 摘要(特記事項や源泉徴収の免税証明の提出状況など)
- 支払者の名称や所在地
それぞれの項目について、記載するべき事項と注意点を理解し、正しい調書を作成しましょう。調書の作成に不安があるときは、税理士に相談することも正確な調書の作成に役立つ手段の一つです。
調書を作成するのに適切なタイミング
支払調書を作成し発行するのに適した時期は翌期の1月です。支払調書は年間(1月1日~12月31日)の報酬や料金の支払実績について証明する書類であるため、翌期の1月には支払った費用(未払い分も含む)が確定しているからです。
また、支払先に対する交付義務はありませんが、任意で支払先に交付しているケースもあります。支払先が確定申告をする場合、2月上旬頃までに送付先に届くようにしておくと、申告期限までに十分間に合うでしょう。
支払調書の作成時に注意しておきたいポイント
正しい調書の作成のためには、必要な事項を記載するのはもちろん、いくつか注意しておくべきポイントがあります。ここでは、注意点について詳しく説明します。
正確な記帳を行うこと
支払調書の作成に必要な情報は記帳に基づいているため、日々正確な発注や記帳を心がけることが大切です。例えば、記帳にミスや漏れがあると、正確な支払調書を作成できません。
また、誤りが発覚した場合、その確認と修正のために時間と労力を取られ、本来やるべき業務に支障をきたすことがあります。
さらに、税務調査が入ったときにも帳簿の不備や誤りを指摘され、ペナルティを課されるリスクが高まります。
日々正確な記帳をしていれば、ミスや漏れが起こりにくいだけでなくミスが発覚してもすぐに確認と修正対応ができるはずです。日頃から正しく記帳を行うためにも、定期的に税理士に帳簿をチェックしてもらうと効果的です。
実際の支払金額と未払い分も記載する
支払調書には、1年間で行った業務に対して確定した報酬や料金を記載します。そのため、実際に支払った金額だけでなく、未払いの報酬も含めます。
未払い分も記載する場合は、実際に支払った金額と分けて記載する点に注意が必要です。同様に、源泉徴収額についても未払い分の報酬や料金がある場合、源泉徴収ができないため、徴収済みと未徴収分の源泉徴収額がわかるように記載します。
支払先のマイナンバーを確認する
2016年より、支払調書に支払先のマイナンバーを記載することが義務化されました。そこで、業務を委託している個人事業主から、本人であることを確認するためのマイナンバーカードや通知カードの写しを提出してもらわなくてはいけません。
とはいえ、個人情報保護などを理由にマイナンバーの提出を拒否する人もいます。そこで、マイナンバーの提出が必要であること、個人情報の扱いに十分注意を払っていることを支払先に伝えて協力を仰ぎましょう。
支払先を説得してもマイナンバーの提出が難しい場合は、本人確認が困難であることの経緯を記録するなどして、説明責任を果たすことが大切です。
また、マイナンバーについては、支払者も必要であるため。個人番号もしくは法人番号を所定의 場所に記載します。
提出期限を守る
税務署への支払調書の提出期限は、翌期の1月31日です。期限までに提出をしないと、ペナルティを受けるリスクがあります。税務署へは、以下のいずれかの方法で提出します。
- 書類を郵送もしくは持ち込む
- 光学ドライブでの提出
- e-Tax
都合の良い手段で構いませんが、提出する手間が大きく省けることから、e-Taxの利用が便利です。
適切な源泉徴収票を作成するためのポイント

正しく源泉徴収票を作成するためには、記載するべき項目やポイントを押さえておくことが大切です。国税庁が公開している書式を参考に、下記必要事項を正しく記載します。
- 年間の支払総額(給与、賞与、退職金など)
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除額の合計(社会保険料や配偶者控除など)
- 源泉徴収された税金の総額
- 控除対象配偶者の有無等
- 控除対象となる扶養親族の数
- 社会保険料等の納付額
- 各種保険料や住宅ローン控除額の合計
上記、記載内容に誤りがあると、従業員の正しい納税に影響を及ぼすため、誤りや漏れがないかを確認し、正確な源泉徴収票を作成することが大切です。
源泉徴収票を作成するときの注意点
源泉徴収票は、正しい納税につなげるための重要な調書となるため、正確性が求められます。正しい法定調書を作成するためにも、源泉徴収票作成時に注意するべき点について、詳しく説明します。
正しく課税対象を見極める
日々の正確な記帳はもちろんのこと、所得税の課税対象となるか否かを正しく見極めることが、正しい納税につながります。
例えば、一定額までの通勤手当、常識の範囲内で認められる慶弔手当など、所得税の課税対象とならない従業員への支払があります。課税対象の誤りは、必要以上に税金を納めたり、未納分が発生したりと納税額を誤る原因です。課税対象の可否の判断が難しいときは、税理士に相談してみましょう。
期限内に提出する
支払調書と同様に、源泉徴収票も定められた期限までに税務署に提出しなくてはいけません。年末調整を行った翌期の1月31日が提出期限です。
提出方法は支払調書と同様であるため、都合の良い手段で期限内に提出しましょう。提出の遅れは罰則の対象となりえるため、正確な調書を期限内に提出することが大切です。
支払調書と源泉徴収票の違いを理解し正しい作成と使い分けにつなげよう
支払調書と源泉徴収票はどちらも税務署に提出が必要な法定調書ですが、支払先と発行義務の有無が異なるため、適切な使い分けが求められます。また、支払調書については所定の条件を満たすときに作成が求められ、条件を満たさないときの提出義務はありません。作成が必要な場合は、必要事項を漏れなく正しく記載することです。正しく支払調書や源泉徴収票を作成するためにも、正確な記帳を心がけ、必要に応じて税理士のサポートを活用しましょう。









