国内の少子化や高齢化に伴い、多くの企業が抱えているのが後継者不在という課題です。この問題を放置してしまうと、会社の存続に影響を及ぼすばかりか、対策を講じる時間的な余裕も失われていきます。後継者不足の解決策には複数の選択肢があり、それぞれの違いを知っておくことが重要です。この記事では、後継者不在の課題に対する具体的な対策と、各方法のメリットとデメリットについて解説します。
目次
後継者がいない会社が生まれる理由

会社に後継者不在の状況が生まれるのは、どのような理由からでしょうか。現代社会における問題点や傾向を説明します。
経営者の高齢化と親族内承継の減少が影響している
後継者のいない会社が発生する原因としては、まず経営者の高齢化が進み、その一方で親族内承継の減っていることが挙げられます。
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休廃業・解散企業の経営者年齢の推移を見ると、全体に占める割合は、2024年の場合で70代39.5%、80代23.7%と、過去8年間にわたり増加し続けています。
その一方で、60代は減少し続けているのが実態です。経営者の年齢が70代・80代へと上がっても、後継者の不在から60代の経営者が生まれにくいという状況が続いています。
会社の廃業・解散のリスクを高めるのが、後継者不足です。経営者の年齢が70代・80代へと移行していき、体力の低下に伴い経営が困難になることで、そのリスクは一層高まります。

また、後継者不足の要因として考えられるのが、親族内承継の減少です。
親族内承継とは、経営者の子供や孫などの親族から後継者を選び、会社の引き継ぎを行う方法を指します。
2023年の中小企業の事業承継に関するインターネット調査結果によれば、後継者の決定状況は、長男33.7%、親族以外の役員・従業員が19.1%、その他の親族が10.7%、親族以外の社外の者が10.4%を占めていました。
この結果では、2019年に実施された調査より長男の事業承継が減少し、その他の親族や親族以外の者の割合が上がっていることが明らかです。
かつての日本企業では、後継者の決め方と言えば親族内承継が一般的でした。
たとえ後継者としてふさわしい人物がいなかった場合でも、子どもに会社を継がせれば、事業の継続が可能だったのです。
一方、現在は事業の経営リスクや働き方の多様性などもあり、子供が親の事業を継ぎたがらないというケースも増え、多くの企業が後継者不足の課題を抱えています。
参考:中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2023年調査)結果
少子化による後継者候補が減少している
現代の日本における少子化問題は、後継者のいない会社が発生する要因の1つです。
そもそも経営者に子供がいなかったり、子供がいても後継者の希望者がいなかったりすると、親族内承継が進みません。
ただし、このような少子化の中でも、中小企業における後継者不在率は、現在は解消に向かいつつあります。
2011年には全体の66.2%の会社で後継者不在の状況が見られましたが、2024年には52.7%と、割合は減少傾向です。
このような状況は、先に述べた親族内承継が減り、その一方で親族以外から後継者を指名するケースが増加しているためと見られます。

後継者がいない会社の選択肢メリット・デメリット

後継者がいない会社には、親族内承継・従業員承継・外部招聘・M&A・IPO、そして廃業と複数の選択肢があります。
それぞれにメリット・デメリットが存在することから、慎重な検討が必要です。
ちなみに、親族内承継を除いた従業員承継・外部招聘・M&A・IPOは、親族外承継の一形態に数えられています。
さらに、外部招聘・M&A・IPOは第三者承継の一種です。親族でも従業員でもない外部の人物が後継者として選出されます。
| 特徴・説明 | メリット | デメリット | |
|---|---|---|---|
| 親族内承継 | 親族内承継は、経営者の子供・孫・兄弟・甥や姪などが会社の経営を引き継ぐことを指します。 日本ではかつて一般的に行われていた事業承継手法です。 |
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| 従業員承継 | 従業員承継とは、社内の役員や従業員が事業を引き継ぐことです。 |
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| 外部招聘 | 外部招聘は、親族内承継や従業員承継で適した後継者が見つからない場合に、外部から新たな経営者を招くことを意味します。 |
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| M&A | M&Aは合併と買収(Mergers and Acquisitions)の頭文字からできている言葉です。 事業承継型M&Aでは、後継者が不在の場合でも、第三者に会社を譲渡することで事業承継を行えます。 |
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| IPO | IPOはInitial Public Offeringの頭文字からなる言葉で、新規公開株式の意味です。 |
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| 廃業 | 会社の廃業は、経営者が法人の事業を廃止し、解散・清算を行うことを指します。 |
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従業員承継のデメリットにおいて、資金に関する後継者の負担が重いことには複数の要因があります。
まず1つが、株式の買取です。
特に中小企業は、株式の多くを現在の経営者が保有している可能性が高く、その総額は個人にとって高額にあたります。
また、そもそも従業員は経営者と異なり、自己資金が少ない傾向にあることも理由の1つです。
そのため株式買取資金や運転資金を確保するのが難しい場合は、金融機関の融資に頼らなければなりません。
また、外部招聘で候補者を選ぶ場合には、ヘッドハンティングや、取引先や金融機関を通じて適任者を紹介してもらうという方法があります。
後継者がいない会社に想定される影響
後継者を選定しないまま放置していると、経営や信頼など、複数の面から会社に影響が及びます。特に、次のような影響には注意しなくてはなりません。
後継者の不在による経営判断が遅れる
後継者がいない会社では、投資や経営戦略など長期的な見通しが難しくなるリスクがあります。
経営判断の遅れは、事業の成長停滞にもつながる可能性が高いです。
また、長期的な経営判断を誤った際、後継者不在のままの場合、現経営者がすべての責任を背負うことになり、ますます慎重にならざるを得ません。
一方、後継者が決定していれば、その人物の意思を考慮した経営判断ができ、長期的なビジョンも共有しやすくなるため、よりスムーズに意思決定が可能です。
取引先との信頼関係が途絶える
後継者の不在は、取引先からの信頼関係を損なう要因の1つです。
万一にも、現経営者が病気や事故で経営を続けられなくなった場合には、その会社には倒産の危機が訪れます。
また、取引先の中でも特に金融機関は、会社の将来性を重視する傾向が強いです。
後継者不在のまま放置していると、将来性に疑問を持たれ、資金調達に悪影響の及ぶリスクがあります。
後継者がいない状況を解消するための対策

後継者不在は会社にとって複数の面でリスクを伴います。後継者のいない状況を解消するためにも、次のような対策が必要です。
専門家に相談し早めに後継者を探しておく
会社の後継者を早めに探したいのであれば、専門家への相談が効率的で有効です。
後継者探しのサポートを依頼できる専門家としては、税理士・行政書士・司法書士・公認会計士・中小企業診断士・弁護士などが挙げられます。
上記以外では、商工会議所や商工会、自治体の事業承継・引継ぎ支援センターなども相談可能です。
専門家に相談することで d的なアドバイスが受けられる他、客観的な視点から後継者を選定できるようになるのが強みと言えるでしょう。
さらには、相談先の専門家が士業であれば、手続きや書類作成まで一貫したサポートを受けられる可能性があり、後継者探しから決定までスムーズです。
万一、後継者選びに失敗した場合でも、早めに相談していたのであれば、新たな候補者を探す時間的な余裕を確保できます。
M&Aの相手が見つかりやすいように会社の価値を高める
後継者不在の際、M&Aを選択する際には、会社の価値が今後を左右します。
買う側にとっての会社そのものに魅力がなければ、交渉を有利に運べません。納得できる価格で事業を売却するためにも、事前に会社・事業の価値を高めておきましょう。
そのための手段として、未上場会社が行える対策の1つが、前述したIPO(新規公開株式)です。
証券取引所に上場して株式を公開することで、幅広い投資家との取引が生まれ、資金調達力とともに知名度や信用度が向上します。
親族内承継を進める
会社の親族内承継は、後継者不在の解消に有効な手段です。
親族の中に後継者にふさわしい人物がいた場合は、スムーズな承継が期待できます。
ただし、親族内承継を進める場合も、M&A同様に会社の魅力を高め、候補者のモチベーションを上げることが必要です。継ぎたくないと思われるような会社では、承継が進みません。
また、後継者の教育を早くから計画しておくことも親族内承継では重要です。後継者の教育には、一般的に3年以上の月日を要すると言われています。
従業員承継を選ぶ
親族内承継が難しい場合は、従業員承継という選択肢があります。従業員の中から適切な後継者を選べるため、社内や取引先からの納得も得やすいです。
また、従業員承継の場合、経営権のみを引き継ぐ内部昇格か、経営権だけでなく会社の資産を含めた承継にするか、2つの選択肢から決められます。
ただし、従業員承継は親族内承継と同様、後継者の育成期間が必要です。事前にしっかりと準備することで、よりスムーズな業務の引き継ぎが期待できます。
第三者承継を選ぶ
親族にも従業員にも適切な後継者が見つからない場合は、外部招聘・M&A・IPOなど、第三者承継にて外部から候補を選定可能です。
第三者承継では候補となる人物の選択肢が広がり、これまでとは異なる分野からも後継者を選定できるため、さらなる事業の成長や販路の拡大などが期待できます。
ただし、その上で第三者承継を選ぶ際には、対象となる人物に会社や事業に対する適性が備わっていなければなりません。
話し合いを重ね、対象となる人物が引き継ぐ会社の理念や方針に深い理解を示しているか、従業員の労働環境に配慮してくれるかを確認することが重要です。
また、会社と関わりの薄い人物が会社を引き継ぐことから、親族や従業員からの支持が得られるか否かが承継を成功させるカギを握ります。
第三者承継を利用する際には、親族や従業員への十分な説明が必要です。
M&Aマッチングを活用する
M&Aマッチングも後継者選びの際には便利です.M&Aマッチングとは、M&Aにおける売り手側と買い手側を仲介するサービスを指します。
M&Aマッチングのサイトには複数の企業が登録されており、売り手と買い手、双方が提示する条件に添って後継者選びが可能です。
他の承継方法同様に時間が十分であれば、売る側にとって有利な交渉が期待でき、相場より低い価格で会社を売却するリスクが回避できるでしょう。
ただし、M&Aマッチングの場合は、一般的に専門家による支援は得られません。そのため、日数と労力をかけ、自社で手続きや書類作成を行うか、別途プロへのサポート依頼が必要です。
また、一般的なM&Aマッチングでは、初期費用・月額費用・手数料・成功報酬・着手金などの費用も発生します。
後継者がいない会社の問題解決には専門家への相談が有効!
M&Aマッチングの活用にしても、また、親族内承継・従業員承継・第三者承継を選ぶにしても、承継を進めるためには手続きや書類の作成が必要です。
こうした手続きや書類の作成には専門的な知識を求められる場面も多く、自社だけで対応しようとすると、日数と労力がかかってしまいます。
そこで賢明な手段となるのが、まずは専門家に相談し、早めに後継者探しを始めることです。承継の手続きや書類作成まで、一貫したサポートが期待できるでしょう。
私たち小谷野税理士法人では、後継者の選定や経営権の維持など、事業承継を円滑に進めるためのご提案を行っています。
事業承継についてお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。








