リース会計基準は、2024年に改正が発表されました。リースを1件でも利用している企業では、会計処理の方法変更が必要となる可能性があります。改正内容や必要な準備について、チェックしておきましょう。当初は2026年度を想定されていた適用開始が、2027年度へと延期された背景についてもご紹介します。
目次
リース会計基準とは

そもそも、リース会計基準とはどのようなものなのでしょうか。改正の前に、基本的な知識についてご紹介します。
リース料の会計処理について定められた基準
リースとは、設備や機材、不動産、自動車などの資産を、借りて使用する取引を指します。オフィス、社用車、コピー機など、多くの企業で一般的に利用されている取引形態であると言えます。
リース取引をした際に支払った料金(リース料)についての会計処理方法は、リースする資産の種類や金額、期間などによって異なります。それぞれの分類ごとに、リース料の会計処理方法を規定したものが、リース会計基準です。
なお、リース会計基準は、正式には「リース取引に関する会計基準」と言います。
適用対象は上場企業など
中小企業や個人事業主には通常、「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」が適用されます。そのため、リース会計基準の対象は、資本金5億円以上などの条件を満たす大会社やその子会社などです。
大会社の条件にあてはまらずとも、任意で会計監査人などを設置している場合、リース会計基準に準じた会計処理が求められます。
リース会計基準の改正における背景
現行のリース会計基準は、2007年に改正され、2008年度に適用開始したものです。前回の改正から15年以上が経ち、新たにリース会計基準の改正が発表されました。
改正に至った背景
リース会計基準の改正が発表されたのは、2024年です。投資家や株主が、企業の会計実態について、より正しく把握しやすくする目的で、改正に至りました。
ヨーロッパやアメリカなどで採用されている国際的な会計基準では、リースに関する基準が10年近く前に改定されています。そこで日本でも、国際的な会計動向を鑑み、改正の検討が行われました。
その後、2019年から見直しが始まり、草案の公表を経て2024年9月に改正が発表され、今に至ります。今回の改正の主な目的は、単純に会計処理を変更することではなく、国際的な基準に準じることで、財務諸表や企業評価の透明性を向上させることです。
透明性が向上することにより、企業の資金調達戦略や投資判断、M&A時の企業価値評価にも影響を及ぼす可能性を秘めていると言えます。また、グローバル市場における比較可能性の向上、ひいては投資家などからの信頼獲得への寄与も期待されています。
なお、今回の改正は大会社のみが対象ですが、中小企業や個人事業主においても、将来的に同様の改正が行われる可能性は考えられます。大会社以外でも、今回の改正内容をチェックしておくことをおすすめします。
2026年度想定だった適用開始は2027年度へと延期
改正が発表された当初は、2026年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度からの適用開始が想定されていました。しかし、準備期間が短すぎるという声が多く、適用開始時期の延期が決定しています。
延期後の強制適用開始時期は、2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度からです。直前になって焦ることのないよう、2025年度・2026年度を通して新リース会計基準適用へ準備を進めましょう。
リース会計基準の改正内容

具体的には、改正の内容はどのようなものなのでしょうか。要点を3つ、ご紹介します。
すべてのリース取引で資産・負債への計上が必要に
リース取引には、「オペレーティングリース」と「ファイナンスリース」の2種類があります。
オペレーティングリースは、貸手の所有する資産を、借手が金銭を支払って借りる取引のことです。レンタカーなどを想像すると、わかりやすいでしょう。契約期間が満了すると資産を貸手に返却する必要があり、借手に所有権はありません。また、リース期間中に故障があれば、所有者である貸手が修理などの対応を行います。
一方、ファイナンスリースは、借手の必要とする資産を貸手が購入し、貸し出す取引です。多くの場合、契約期間満了後、所有権を借手に移転することを前提としており、返却の必要はありません。イメージとしては、分割払いで物品を購入するのに似ています。一般的にオペレーティングリースよりもリース期間が長く、途中解約はできません。
これまでは、オペレーティングリースに関しては、資産ではなく費用として扱う「オフバランス処理」が可能でした。しかし新リース会計基準では、オペレーティングリースについても、ファイナンスリース同様、貸借対照表に記載する「オンバランス処理」を行わなければいけません。
つまり、オペレーティングリースとファイナンスリースという、リース取引の区分による会計処理の区別は、撤廃されると考えて良いでしょう。ただし、短期リース・少額リースなど一部のリース取引は、例外として、現行通り費用計上することが認められています。
リースの定義が変更
どのような取引がリース取引として扱われるのかというリースの定義も、改正によって変更されるポイントです。現行の基準では、「所有者(貸手)から、リース料を支払って、一定の期間、資産を借りる取引」をリース取引として扱っていました。改正後は定義の幅が広がり、「資産の使用権を得る」取引がリース取引であるとみなされます。
具体的には、下記の3点でリース取引か否かが判定されます。
- 資産が特定されていること(契約書に明記されているなど)
- 資産の使用によって生じる利益のほとんどを借手が享受すること
- 借手に資産の使用を指図する権利があること
上記の判定基準は、契約の形式的な文言ではなく、実際の利用状況や取引形態を重視するという、改正の根本にある考え方に基づいています。そのため、従来はリースに該当しなかった取引でも、リース取引とみなされる可能性があります。
契約の名称が「賃貸借契約」「サービス契約」などであっても、上記の基準を満たすものはリースとして扱われます。反対に、契約書にリースと記載されていても、上記にあてはまらないものはリース取引とはみなされません。
具体的には、物流の委託契約における輸送車両、保管の委託契約における倉庫・コンテナなどが、新たに対象となりえます。また、製造の委託契約における専用の金型、通信契約におけるサーバー、賃貸契約を結んだオフィス、広告掲載用のビル壁面の利用契約なども、リース取引とみなされる可能性が出てくるでしょう。
新リース会計基準の適用開始後、スムーズに処理するためには、準備期間のうちに自社で利用しているものがリース取引に当たるか否か、入念に確認しておく必要があります。
リース期間の算出方法が変更
リース期間の算出方法についても改められます。リース期間は、減価償却の金額や、短期リースに該当するか否かの判断などに影響を及ぼします。新しい算出方法を確認しておきましょう。
現行の会計基準では、所有権移転ファイナンス・リース取引は法定耐用年数に応じた契約期間(解約不能期間)を、ファイナンスリースのリース期間とみなしています。なお、オペレーティングリースに関しては、費用に計上するため、リース期間を考慮する必要はありません。
一方で、新リース会計基準では、より経済的実態に基づいて決定されるよう改められました.言い換えれば、実際に企業がリースを利用すると考えられる期間を考慮して、リース期間を算出するということです。過去の利用実績や将来の事業計画、市場環境の変化なども総合的に考慮し、客観的に判断する必要があります。
例えば、リースの契約期間(解約不能期間)が3年で、さらに3年更新できる更新オプションが設定されており、更新の可能性が高い場合、リース期間は6年と判断される場合もあります。
新リース会計基準の早期適用も可能
新リース会計基準は、強制的に適用されるのは2027年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度からですが、早期適用も可能です。早期適用を選択する場合、2025年4月1日以後に開始する連結会計年度・事業年度から適用できます。
早期適用には、メリットとデメリットがあります。メリットとしては、実務として会計処理を行いながら、新リース会計基準への対応を準備できるという点が挙げられます。システムの整備など、実際に使用して調整が必要な部分に対し、強制適用前の対応が可能です。
また、他社に先駆けて適用することで、投資家・取引先などへのアピールにもなるでしょう。
一方、新リース会計基準を適用していない他社との財務諸表の比較が一時的にしづらくなる点はデメリットでしょう。また、公表されている規定には明記されていない部分の取り扱いなど、明確でない税務処理を行わなければならないケースも考えられます。
新リース会計基準へ向けて必要な準備

改正後の基準に応じた処理をスムーズに導入するには、さまざまな準備を行う必要があります。どのような準備が必要かチェックして、計画を練りましょう。
現状把握と影響の分析を踏まえた会計方針の決定
まずは、現状のリース取引の状況や会計処理について、把握することが大切です。改正後の基準において、会計処理が変わる可能性のある取引をすべて洗い出しましょう。
また、今後新たにリース取引を利用する際の判断基準を明確にしておく必要もあります。
新リース会計基準の適用後は、現状よりも会計処理が複雑化し、作業量が増えることが予想されます。影響がどの程度であるかを分析し、必要であれば業務プロセスの見直しや、人員増強などを検討しましょう。
さらに、資産や負債に計上すべき金額が増えることによる影響を鑑みて、今後もリースを利用するのか、購入するのかといった方針も検討することが望ましいでしょう。
業務設計や新システムの導入
会計方針を決めるだけでなく、会計方針に基づいた業務設計も重要です。実際に行う業務の内容についてマニュアルを作成するなど、適用後にスムーズな作業ができるよう対処しましょう。
契約しているすべてのリース情報を網羅した管理台帳の整備は、今後必須になると言っても過言ではありません。会計処理の面ではもちろん、契約の見直しや資産の有効活用などにも役立つ、重要なツールです。この機会に、正確なリース管理台帳を作成することをおすすめします。
また、現在使用している会計システムが、新リース会計基準に適合していないことも考えられます。必要な機能などを見直し、場合に応じてシステムの改修や入れ替えを検討しましょう。リース契約情報の一元管理機能や、使用権資産とリース負債の自動計算機能、残高管理機能などがあると役立ちます。
システムを入れ替える場合、新しい機能の使い方や不明点などについて、丁寧なサポートをしてくれるベンダーを選ぶことも重要です。今後、新たに改正があった場合に素早く対応してくれるかなど、長期的なポイントにも着目しましょう。
現行のリースに対する処理
現状では費用として計上している契約中のリース取引についても、原則、再計算が必要です。具体的には、新リース会計基準の運用開始時点で、「使用権資産」と「リース負債」を計上しなければいけません。
リース負債と使用権資産の計算には、契約期間のほか、更新オプションや残価保証の有無なども関わります。契約中のリース取引をすべて洗い出し、ひとつひとつの契約条件などに添って計算する必要があるのです。
さらに、賃貸借契約・サービス契約など、これまではリース取引とみなされなかったものが、新たにリース取引の対象となる可能性もあります。考えうるすべての契約を見直す必要があると言って良いでしょう。
再計算や契約の見直しには、多くの時間と手間を要することが予想されます。早めに会計方針を決定し、再計算の処理に着手するのが望ましいでしょう。
改正後のリース会計基準についてのお悩みや疑問は税理士への相談もおすすめ
リース会計基準の改正にあたっては、現行から会計処理を変更する必要があるケースも多いです。会計方針の決定やシステムの対応、現行のリース取引の再計算など、行うべき作業は多々あります。早期に計画を練り、対応を進めましょう。
リース会計基準の改正においては、複雑な処理も多く発生します。お困りごとやご相談は、専門家を頼るのもおすすめです。ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。








