個人事業主が親から子へ事業を承継する際、承継手続きや書類の準備や手順、税金の取り扱いなど、非常に複雑です。一方、近年では事業承継支援も充実しており、節税に活用できる制度や、家族で紛争が起きないよう工夫された制度もあります。そこで本記事では、事業承継の基本的な知識や手続きの流れ、税務などで活用できる支援制度について解説します。円滑な事業承継に向けた具体的な事業承継の準備から、双方が必要な手続き、法律や税務の注意点など、幅広く見ていきましょう。
目次
親から子へ事業承継をする方法

親から子への事業承継には、
- 生前贈与
- 相続
の2つの方法があります。それぞれの特徴やメリット、注意点、発生する税金について見ていきましょう。
生前贈与による承継
生前贈与による事業承継とは、経営者が元気なうちに事業用資産や経営ノウハウを後継者に譲り渡すことです。この承継方法のメリットは、将来の事業承継に向けて十分に準備できるため、事業の移行や承継後の業務もスムーズに行える点です。後継者は経営者から直接指導を受けられ、実務を通じて経営に必要なスキルの習得が可能です。
生前贈与の場合、税金面では贈与税が発生します。受け渡されるものの評価額に対して、後継者に贈与税が課税されます。個人版事業承継税制などの優遇措置の利用や、贈与税の適切な資産評価を調査しておくなど、税務対策をして節税に繋げましょう。
相続による承継
相続を通じた事業承継は、一般的に親が亡くなった後に行われます。相続での事業承継のメリットは遺言書に承継者を明記できるため、事業承継する相手を指定できる点です。ただし、承継者には指定する旨を伝え、承継の意思を確認しておくことが大切です。
一方で、遺言書が存在しない場合には、相続人間での話し合いとなり、トラブルに繋がる可能性があります。また、遺言書での事業承継であっても、周囲が納得のいかない相続の場合は、トラブルに発展する恐れもあります。そこで、事業承継においては事前に十分な話し合いの機会を設け、相続人全員が納得できる環境を整えておくことが大切です。
税金面においては、相続税にあたります。故人から相続される資産がすべて合算されるため、相続税は親族全体で適切に処理しなくてはなりません。相続時は個人的な手続きも増えることから、次世代への安定した引き継ぎができるよう、あらかじめ対策しておきましょう。
親子間の事業承継で発生する税金
親子間で事業承継を行う際、承継するタイミングによって、どちらかの税金がかかります。
- 贈与税:生前贈与による事業承継の場合
- 相続税:経営者の死亡による事業承継の場合
後継者に承継するときに、現経営者が生存しているかで、税金の取り扱いが変わります。
ここでは、それぞれの計算方法や控除について、節税に活用される税制特例など、具体的な税金対策についても詳しく見ていきましょう。
贈与税の計算方法
生前贈与により、事業承継や資産を移転する際には、贈与税が発生します。1月1日から12月31日までの1年間に、贈与により譲り受けた財産が贈与税の対象です。贈与税には年間110万円までの非課税枠があり、この枠内で贈与された場合、税金は発生しません。110万円の非課税枠を超えた場合は、課税対象額を算出し、対象額に応じた税率で計算された贈与税額を納税する仕組みです。不動産などの資産価値が不明なものは、資産の評価価格に基づいて算出された価額で計算されます。
たとえば、贈与額が5,000万円で一般贈与に該当する場合で計算してみましょう。課税対象額は、贈与額の5,000万円から非課税枠の110万円を差し引いた額です。贈与税の税率は課税対象額の金額によって異なり、10%~55%までの8種類の区分に分けられています。
課税対象額:5,000万円-110万円=4,890万円 |
課税対象額が4,890万円の場合、税率は「課税価格3,000万円超」の区分に該当し、税率は55%です。この区分には400万円の控除額があるため、さらに差し引くと、納税しなくてはならない贈与税額は以下のとおりです。
贈与税額:(4,890万円×55%)-400万円=2,689.5万円-400万円=2,289.5万円 |
贈与税は控除額も少なく税額が高いため、事業規模によっては高額納税しなくてはならない恐れがあります。
そのため、毎年の贈与額は計画的に調整し、非課税枠を有効活用するなどの税金対策をして節税しましょう。生前の事業承継と資産移転の計画を立てた際は、贈与契約書を公正証書で作成することで、法的なトラブルも防げるので安心です。
相続税の計算方法
相続で事業承継を行った場合は、相続税が発生します。相続税を計算するための過程として、以下の1~4の手順で課税遺産総額を算出し、その後5~7の手順にて納税額を決定します。
- 相続した資産、資産の評価額、相続時精算課税の適応対象を受けていた贈与対象のすべてを合算する
- 非課税財産や債務、葬式費用などを差し引き、純資産価格を算出する
- 純資産価格に相続開始前7年以内の暦年課税に係る贈与財産の価額を加算して、課税価格を算出する
- 課税価格から控除後の課税対象額を求める
- 法定相続人の人数から基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を算出し、課税対象額を法定相続人で按分(例:配偶者:1/2、子供:1/4)する
- 各人に適用される税率を速算表に当てはめ、該当した税額を納税する
- 税額控除がある場合は、各人で差し引いて納税額が決定する(小規模宅地等の特例、配偶者特別控除、未成年控除など)
基礎控除額は法定相続人の数で決まります。たとえば、法定相続人が2人であった場合の基礎控除額は3,000万円+(2×600万円)=4,200万円です。
ここでは例として、相続税の課税価格である課税対象額(手順3までを終えた段階)が5,000万円、法定相続人が子2人だった場合の計算をしてみましょう。
課税対象額:5,000万円-4,200万円=800万円 |
課税対象額の800万円を法定相続人(配偶者:1/2、子供:1/4)で按分します。今回は子2人の場合で計算します。
配偶者:800万円×1/2=400万円 |
相続税の総額は40万円+20万円+20万円=80万円です。
相続税には、過去7年分の贈与を含むさまざまな相続の加算、個別の特例や控除などが存在します。例として、相続したものが小規模宅地等の特例に該当すれば、一定の範囲であれば相続税から税額控除されます。
そのため、個別のケースに応じた細かな税務状況を加味した上で、相続税を計算しなくてはなりません。相続税は計算がとても複雑なため、相続による事業承継は必ず専門家と相談しながら手続きを進めましょう。
参考:相続税はいくらから?基礎控除とは?相続税の基本を確認!(政府広報オンライン)
事業承継の生前贈与や相続における個人版事業承継税制とは
個人の事業用資産を生前贈与や相続で事業承継する際に、節税として活用できる制度として、経営承継円滑化法の「個人版事業承継税制」があります。
- 2019年4月1日~2026年3月31日までに「個人事業承継計画」を都道府県知事に提出して、確認を受けている青色申告者が対象
- 青色申告に係る事業の継続など、一定の要件のもと、特定事業用資産に係る贈与税・相続税の全額の納税が猶予される
- 後継者の死亡など、一定の事由が発生した際は、納税が猶予されている贈与税・相続税の納税が免除される
- 2028年12月31日までに贈与、相続によって特定事業用資産を取得する必要がある
- 先代の事業者の事業用として使われてきた「特定事業用資産」の宅地等(400㎡まで)、建物(床面積800㎡まで)、それ以外の減価償却資産の一部が該当する
節税以外にも、資産維持しながら次世代に事業承継できる点など、利用するメリットも多いです。ただし、特定事業用資産の処分に制限があるなどの注意点もあることから、活用する際は専門家に相談することをおすすめします。
親子間での事業承継の手続き

親子間での事業承継は、「家族間だから、いつでも引き継ぎできるはず」と考えて、後回しにしてしまいがちです。しかし、事業承継の手続きには法的な対応や税金面の対策など、都度対策すべきことが意外と多いです。そこで、円滑に引き継ぐための事業承継の流れ、現経営者(親)側・後継者(子)側の手続きをそれぞれ詳しく解説します。
親子間での事業承継の流れ
ここでは、親子間での事業承継の流れをご紹介します。事業承継で主に承継するものは「経営権」「知的財産」「事業資産」の3つです。引き継ぎの流れそのものは単純に感じますが、それぞれの作業や処理、整理には時間もかかり、途中でトラブルが起こる可能性もあります。
そのため、事業承継の計画は早めに作成し、対策を練っておくことが重要です。事業承継で起こりがちなトラブルや引き継ぎミスを防止するためにも、親子ともに全体像を把握しておきましょう。
後継者の選定と意向確認
まずは現経営者(親)が後継者を指定し、後継者が受け入れる意向を互いに確認することで、「経営権」の承継相手を決定することから始めます。
選定の際は、後継者の事業に対する意欲や適性を見極めた上で、移行を決定しましょう。また、周囲にも納得がいくように選定し、後継者を認めてもらえる環境を整えましょう。
2.必要な知識と経験の共有
選定後は、現経営者が持つ経営経験や専門知識を後継者に引き継ぐ「知的財産」の承継を行います。共有しておきたいものの例は以下のとおりです。
- 引き継ぐべき具体的な業務内容
- 重要な業界知識
- 事業の経営知識
- 事業のブランドや信用力
- 培ってきた独自の技術やノウハウ
- 育成してきた人材や重要な人脈などの人の資本
これらを体系的に整理しましょう。後継者へしっかり引き継ぐためにも、引き継ぎ内容によっては時間をかけて実践していく必要があります。
ご自身が育ててきた人材や、培ってきた取引先といった人脈などの『人の資本』においては、相手の方に後継者を紹介する機会を設けるなどの対応も重要です。
事業の安定した継続のためにも、現経営者独自の知識やスキルは親子で丁寧に共有すべき箇所だと意識しておきましょう。
贈与・相続の計画と検討
後継者への事業承継には、贈与や相続を通じた多額の資産の移転や税金が発生するため、「事業資産」の承継方法は慎重に考えましょう。また、業種や事業規模によっては、移転や事務手続きが複雑になるため、長い時間を要します。
さらに、資産の評価額や贈与・相続の手順は、数年間かけての税金対策が必要となるケースもあります。計画的かつ適切に進めるためには、税理士などの専門家によるアドバイスを受けたうえで、節税対策に努めることがおすすめです。
法的手続きの遂行
事業譲渡契約の締結や廃業届出書、登記変更などを提出し、法的な手続きに進みます。不動産や株式など、事業の主要資産が含まれる場合は、追加で手続きする必要があります。
親子がそれぞれ手順に沿った手続きをする必要があることから、処理に時間がかかることに留意しましょう。
実務面での事業引き継ぎ
最終的には後継者が一人で事業運営を行えるよう、丁寧に事業の引継ぎを行います。経営管理や意思決定に主体的に関与していき、少しずつ事業運営を担っていくことが求められます。
現経営者は、この移行期間においても必要に応じて適切にサポートを行いましょう。特に贈与で行う事業承継の場合は、新体制が安定するまでの基盤作りとして、承継者である子への支援ができます。親子ともに協力することで、スムーズな引き継ぎとその後の事業安定が見込めます。
現経営者(親)が行う手続き
ここでは、現経営者である親側が行う手続きと、必要な準備についてご紹介します。あらかじめ引継ぎの計画や手続きをしておくことで、税金リスクを減らせる場合もあります。子が引き継いだ後も、持続的かつ安定して事業を続けられるよう、親子で連携を図りましょう。
後継者の選定と意向確認
まずは後継者となる候補を選びます。事業状況や環境、経営に対する意向について、しっかりと引き継いでもらえるのかを確認しましょう。この際に、必ず後継者の意志を尊重しなくてはなりません。
また、周囲にも納得してもらえるよう、最適な人材選択を行うことが重要です。納得が得られ、後継者を選定し終えたら、以下の書類で「経営権」の承継手続きを行う必要があります。
- 事業譲渡契約書
- 廃業届(個人事業主の場合)
これらの書類は法的な書類となることから、専門家を通じて行う必要があります。そのため、事業を引き継ぐ時期を決定したら、その時期までに完了しておきたい事業承継を親子で進めておきましょう。
知識やスキルの伝授
「知的財産」の引き継ぎを行います。後継者が経営に必要な知識やスキルを習得できるよう、後継者へ指導します。この際に、必要となる手続きとして、
- 事業の承継に伴う免許申請手続き
- 過去に取引先と交わした重要な契約書類の引き継ぎ
など、業界や事業によって必要なものが変わりますので注意しましょう。中には、再度手続きが必要となるものもあるため、現経営者の同席が必要な手続きがないか確認しておきましょう。
さらに、具体的な事業運営方法にまつわる情報の取りまとめや、専門書類を引き継ぐこともあります。この際に、経営者がもつ知識や技術の引継ぎなども含め、スキルや人的資本の承継と共有には時間がかかるため、計画的に行いましょう。
贈与・相続に関する準備
贈与契約や相続に向けた手続きを行うために、必要書類の準備と、贈与税・相続税に関する事ンの対策を行います。この準備の際、税金の処理や手続きなどを間違えてしまうと、後の税務トラブルにつながる可能性があります。
そのため、必ず税理士や法律専門家によるアドバイスを受けながら進めましょう。また、相続後でも事業が迅速に始められるよう、その後の対応や事務処理などを考慮して準備すれば、承継後も安心です。
- 遺言書(公正証書遺言)
- 遺産分割協議書
- 生前贈与契約書
- 事業譲渡契約書
弁護士や司法書士などの専門家を通じてこれらを作成し、事業承継の意思や家族の意向を記録するための手続きをしておきましょう。
事業用資産の評価および分配
事業承継時の税金額を計算するために、事業用資産の評価額を正確に把握する必要があることから、事業用資産の評価および適切な分配も重要です。事業用資産の評価方法はいくつかあり、会計士や税理士などの専門家を通じて計算しなくてはなりません。
また、この評価額は相続税・贈与税において、税額を大きく左右します。後継者の税負担を抑えられるよう、専門家を頼り慎重に検討することをおすすめします。
事業用資産の評価および分配についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。
トラブル回避のためのコミュニケーション
関係者間での意見のすれ違いや誤解を防ぐため、承継手続きに関する内容については、透明性のあるコミュニケーションを維持することが重要です。
- 手続きの進捗や内容を家族間で周知する
- 親族や専門的なアドバイザーなどの第三者と連携を取りながら手続きを進める
- 手続きを行う時期や、誰が行うのかなどの重要な点を決定する際は専門家などの第三者をはさんでやり取りする
- 疑問や不明点などは丁寧に説明をして、家族が納得いくように進めていく
家族間の事業承継は意思疎通を欠くことでトラブルが起こる事が多いため、家族間での共有を大事にしながら、事業承継手続きを進めましょう。
後継者(子)が行うべき手続き
続いては、後継者である子が行う手続きについて解説します。事業知識やスキルの習得をはじめ、経営に関する知識、税務面の対策など、承継すべきものは幅広く、想像以上に時間がかかります。
これからの事業成功のために、起こりうるリスクを親子で共有しやすいこのタイミングで、あらかじめ整理しておきましょう。
学習と準備
まずは親から経営業務を引き継ぐための基礎知識やスキルとなるを学びましょう。現経営者である親が今まで体得してきた事業や経営に関する教育や知的財産の引き継ぎを受けます。事業者目線での指導や実務経験を積むことで、経営者としての視点で事業や業務の全体像を把握していく必要があります。
承継後の運営がスムーズに進められるよう、現経営者である親の経験や知識をできる限り学びきりましょう。
2.引き継ぎ手続きの把握
事業承継に必要な手続きに関する流れを正確に理解しておきましょう。事業承継の手続きは個人事業と株式会社のどちらなのか、また、承継方法によっても変わります。
- 遺言書(公正証書)や遺産分割協議書の作成
- 契約書の作成と締結
- 廃業届の提出(個人事業主の場合、現経営者が行う)
- 開業手続き(個人事業主の場合、後継者が行う)
- 事業資産の譲渡
- 株式がある場合は株式譲渡または会社で株式の買取を行う
それぞれで行う手続きもあることから、親と協力して引き継ぎがスムーズに行えるよう準備しましょう。
贈与や相続の準備
贈与や相続に関連する必要書類を準備しましょう。子が承継するにあたり、以下のような書類が必要です。
- 遺言書(公正証書遺言)
- 遺産分割協議書
- 生前贈与契約書
- 事業譲渡契約書
法的な手続きとして正確に行う必要があるため、専門家と相談して適切な税金の計算や申請を進めましょう。
財産の評価額の調査や事業の分配についても計画的に行い、法律に基づいた対応を行ってください。
業務執行理解の向上
今後、経営者としての責任や役割に対する理解を深めましょう。経営を引き継ぐにあたり、経営者として果たすべき役割や事業運営の方向性、事業展開や将来的なビジョンを見据えた計画を策定しましょう。
この際に、現経営者である親のアドバイスなどをしっかりもらったうえで、実行可能なプランを練る必要があります。
事業の継続性確保
事業承継後も事業が安定して継続するために、長期的な目線での経営を意識した運営を目指します。事業を引き継いで間もない時期は、社内も大きく変化して多忙になることから、運営を安定させる必要があります。
また、経営者が変わってからの社内外の信頼関係を維持するためにも、従業員や取引先との連携を丁寧に図りましょう。これらの手続きを順序立てて進めていくことが、後継者として最初の役割と言えます。
親から子への事業承継で活用できる支援制度

親から子への事業承継を行う際には、承継に伴う財政的な負担を軽減し、円滑に事業承継できるよう、さまざまな支援制度を活用できます。ここでは、以下の3つをご紹介します。
- 小規模企業共済制度
- 経営承継円滑化法による支援
- 家族信託
それぞれの制度の内容や活用のメリットをお伝えします。これらの制度をうまく活用し、承継後もスムーズに事業が行えるよう、しっかりと戦略を立てましょう。
小規模企業共済制度
小規模企業共済制度とは、小規模企業の経営者や役員、個人事業主が利用できる退職金制度です。独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営している共済制度で、掛け金がすべて所得税控除の対象となるため、節税効果があります。
小規模企業共済制度の概要
小規模共済制度は貯蓄型の退職金共済制度です。経営者が引退する際に共済金を受け取ることで、老後の生活資金を効率的に準備できる仕組みです。
- 加入対象者は従業員数が業種により変わるが、5人以下または20人以下の個人事業主とその共同経営者、会社等役員
- 月々の掛金は1,000~70,000円までとなっており、500円単位でいつでも自由に増額・減額ができる
- 共済金の受け取り時期は退職・廃業時
- 受け取り方法は分割、一括、分割と一括の併用の3つから選べる
- 低金利での貸し付けも可能
2022年3月の時点では、全国で約159万人が加入しており、多くの事業主が制度を活用しています。
活用するメリット
小規模共済制度を上手く活用するメリットとしては、以下のとおりです。
- 掛け金は確定申告を利用して全額を所得税控除できるため、節税効果がある
- 退職金を準備しながら後継者が円滑に事業を引き継ぐための環境を整えられる
- 現経営者が退任する際に、共同経営者である後継者に共済金の引継ぎが可能
このように、後継者が金銭的な負担を感じずに経営を引き継ぐための工夫のひとつと考えて、上手に活用しましょう。 福利厚生が少なく、退職時への不安が大きい個人事業主でも、長期間にわたり計画的に資金を蓄えられることから、経営者とその家族にとって経済的に安心できる制度です。
参考:小規模企業共済制度
経営承継円滑化法による支援
経営承継円滑化法とは、中小企業の事業承継の総合的支援を目指し、事業承継をスムーズに進めるための法律です。この法律に基づいて、中小企業や個人事業の親子間による事業承継を支援するための制度がいくつか展開されています。経営承継円滑化法の認定を受けることで、企業が抱える負債やリスクを軽減するための特例措置などの支援が利用できるため、上手く活用しましょう。
経営承継円滑化法による支援の概要
経営承継円滑化法による支援はいくつか設けられています。中には会社向けと個人事業主向けと分けられているものもありますが、ここでは基本的に個人事業主向けについて解説します。
| 支援内容 | 詳細 |
|---|---|
1.税制支援 |
|
2.金融支援 |
|
3.遺留分に関する民法の特例 |
|
4.所在不明株主に関する会社法の特例 |
|
上記の4つの支援に分けられておりますが、認定が受けられれば併用して支援を受けることも可能です。ただし、株式や資産の移転に関する書類や各支援による必要書類の作成などが必要となるため、漏れがないよう準備しましょう。また、3の遺留分に関する民法の特例については、所管の行政期間が中小企業庁と異なるため、認定書類の提出先にも十分留意しましょう。
活用するメリット
経営承継円滑化法による支援を活用するメリットとしては、事業承継にあたって以下のような点にあります。
- 「個人版事業承継税制」を活用すれば、納税の支払いに猶予ができるため、事業承継が落ち着いた時期に税金の支払いができる
- 金融支援の活用で融資を利用できるため、事業承継後に新しい取り組みをする場合に役立つ
- 遺留分に関する民法特例を活用すれば、贈与で承継した際に節税できる可能性もある
- 所在不明株主に関する会社法の特例を活用して、承継の時期を早められることから、承継がスムーズに行える
ただし、これらを上手く活用するためには、あらかじめ事業承継に向けた具体的な計画を立てておくことが大事です。特例などの税務面については節税に繋がる可能性もあるため、税理士などの詳しい専門家に相談することをおすすめします。
3.家族信託
家族信託とは、親の財産管理を家族に託す制度です。親が認知症などで判断力を失った際に、資産凍結などを防ぐための民事信託のひとつとして活用されています。
財産を管理できる受託者を決定し、現在資産を持っている委託者と契約した信託財産を管理・処理する権利を受託者に託す制度です。管理処分権限を共有者の一人に集約させられることから、家庭内での紛争を防ぐためにも活用されています。
家族信託の概要
家族信託は事業承継以外でも使える制度のため、個人的な財産でも信託財産として利用できます。家族信託に活用するための信託用の銀行口座を作成し、信託財産を移転させていく流れです。家族信託の仕組みは、以下のとおりです。
- 現在資産を持っている人(=委託者)と財産を管理する人(=受託者)が信託契約する
- どの財産を誰のために管理するのか?を契約で決めていく
- 契約で管理される資産は「信託財産」として受託者が管理する
- あらかじめ決められた財産である「信託財産」のみを管理・処理する
- 信託財産で利益を受ける人(=受益者)は受託者に対して、監視・監督権を持っている
- 受託者は受益者に対して受益権がある
- 受託者=受益者、委託者=受益者になる場合もある
このように事業資産の移動を「契約」として管理・処理していくことで、財産を計画的に移転できます。家族信託は当事者だけで行うのが難しい契約となるため、税理や法務に詳しい専門家を通じて行うのが一般的です。
活用するメリット
親子間の財産管理や事業承継にも役立つ家族信託ですが、信託契約を結ぶことで、以下のようなメリットがあります。
- 親が自分の財産を後継者にスムーズに引き継ぎできる
- 財産管理を一人に集結させて管理できるため、家族内紛争が起こりにくい
- 自分の意向を信託契約に反映させられる
- 認知症などのリスクが発生した場合でも、後継者が事業を迅速に引き継ぎしやすい
- 成年後見人よりも制約が少ないため、扱いやすい
- 相続税対策や節税に活用できる
家族信託は資産の保護や運用についての詳細な指示を残せるため、安心して将来に備えられる制度です。形だけでなく実質的な事業承継を実現するために、家族信託を利用する際は、税理士や弁護士などの専門家を適切に活用しましょう。
事業承継の準備は早めに開始しましょう
事業承継は、できるだけ早期に準備し、家族で話し合いながら計画を立てていくことが成功の鍵です。事業や資産の価値を把握し、適切な方法で計画・処理することで、トラブルの回避や節税などの対策ができます。親子間でのコミュニケーションを密にし、専門家の意見も取り入れながら、家族の状況に合った計画を進めましょう。
また、補助金や税制優遇措置などの支援制度を活用することで、経済的な負担や税負担を軽減することも可能です。事業承継計画における承継時期や内容を具体化し、円滑に進めるためには、税に関する専門知識が不可欠です。正確かつ安心な事業承継のために、税理士への相談をぜひ検討してください。








