副業による所得が増えてきたサラリーマンにとって、節税は重要な課題と言えるでしょう。その解決策の1つとして注目されるのが、法人設立です。法人化により税制上のメリットを享受できる一方、注意すべきデメリットも存在します。この記事では、サラリーマンが法人化するメリット・デメリットや、法人化を検討すべきタイミングなどについて詳しくまとめました。
目次
サラリーマンが法人化を検討すべきケースとは?

サラリーマンが法人化を検討するタイミングは、副業や不動産投資など給与以外の所得が大きくなったときです。個人の所得税は累進課税で所得が増えるほど税率が上がる一方、法人税率は一定の範囲内に収まっています。
この「所得税率と法人税率が逆転する水準」が、法人化を考える1つの目安となります。以下に詳しくまとめました。
副業の事業所得が大きくなってきた場合
副業による所得が一定額を超えると、法人化による節税効果が期待できます。個人の所得税は、課税所得が900万円超では33%の税率が適用されますが、法人税は一般的に、所得800万円以下で15%、800万円超は23.2%です。
そのため、本業の給与と副業の所得を合わせた課税所得が800万〜900万円を超えるあたりから、法人税率の方が低くなる可能性が高まります。そのため、その前の段階から検討を始めると良いでしょう。
不動産投資による所得がある場合
不動産投資で安定した家賃収入を得ている場合も、法人化が有効な選択肢です。個人で所有している場合、不動産所得は給与所得と合算され、高い所得税率が適用されるリスクがあるからです。
一方、不動産管理会社を設立して法人で不動産を所有・管理すれば、家賃収入は法人の利益となり、法人税が適用されます。さらに、家族を役員にして所得を分散できるほか、将来的な相続税対策につながるのもメリットです。
所有する物件数が増えてきたり、不動産所得が高額になってきたりした場合には、法人化による節税効果がさらに大きくなると考えて良いでしょう。
株式投資などの資産運用で利益を得ている場合
株式投資やFXなどの資産運用で得た利益は、通常「申告分離課税」の対象となり、所得額にかかわらず一律約20%の税率が課されます。一方、法人を設立して法人口座で運用すれば、利益は他の事業と合算して法人税の対象となります。
この場合、他の事業で赤字があれば、株式投資の利益を相殺でき、課税所得を圧縮することが可能です。ただし、役員報酬として個人に還元すると給与所得課税が発生します。個人の年収や他の所得とのバランスを考え、トータルでの税負担をシミュレーションした上で検討しましょう。
サラリーマンが法人化する5つの節税メリット

法人には、個人事業主にはない税制上のさまざまな優遇措置が用意されており、税負担の軽減につながるのが魅力です。ここでは代表的な 5つの節税メリットを解説します。
個人の所得税より低い法人税率が適用される
法人化により節税効果が期待できる主な理由は「税率の違い」にあります。個人と法人での課税構造を比べると、ある一定以上の所得からは法人税率の方が低くなるのです。
- 所得税は累進課税で最大で45%まで上昇する
- 資本金1億円以下の中小法人の法人税率
・所得800万円以下:15%
・800万円超:23.2% - 課税所得が800万~900万円を超えると、法人化した方が税率的に有利になるケースが多い
所得が増えてきたら、税率面から法人化を検討する価値が高まります。
経費として認められる範囲が広がる
法人化すると、個人事業主のときよりも幅広い支出を経費として計上できるようになります。
- 生命保険料の一部
- 自宅を社宅扱いにし、家賃の一部
- 役員退職金(退職所得として税制上優遇される)
- 出張日当(受け取った個人は非課税)
経費として認められる幅が広がることで、結果的に課税所得を圧縮し、法人税負担を抑えられるのです。
自分への役員報酬で給与所得控除を活用できる
法人を設立すると、自分自身に役員報酬という形で給与を支払うことができるようになり、個人事業主では使えなかった控除が適用されます。
- 役員報酬は給与所得となり「給与所得控除」が適用される
- 本業の給与と副業法人からの役員報酬を合計した金額に対して給与所得控除が受けられる
個人事業主の場合、売上から経費を引いた事業所得全体が課税対象です。しかし、法人化して役員報酬を受け取ることで、この控除の分だけ税負担を軽くできます。
家族を役員にして所得を分散できる
法人化した場合、家族を役員にして役員報酬を支払うことにより「世帯全体」での税率を下げられるようになるのも特徴です。
- 配偶者や親族を役員に就任させ、報酬を支払える
- 所得を分散させることで、累進課税の影響を緩和できる
所得税は累進課税制度を採用しているため、一人の所得が高い状態よりも、複数人に所得を分けた方が、世帯全体で適用される税率が低くなるのです。その結果、世帯合計の納税額を抑える節税効果が生まれます。
ただし、勤務実態がないにもかかわらず報酬を支払うことは税務上認められないため、業務内容を明確にしておかなければなりません。
赤字を最長10年間繰り越せる
事業の拡大期や投資期には赤字が発生するケースも多く見られます。しかし法人であれば、赤字を長期間にわたって繰り越せるのが特徴です。
- 法人の青色申告では、赤字(欠損金)を最長10年間繰越可能
- 個人の青色申告では、繰越期間は3年間のみ
「欠損金の繰越控除」という制度により、将来的な黒字と過去の赤字を相殺し、法人税負担を軽減できるのです。赤字が出やすい事業拡大期においても、長期の繰越制度は安心材料となるでしょう。
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要注意!サラリーマンが法人化する4つのデメリット

法人化には多くの節税メリットがありますが、設立や運営に伴う負担や義務も生じます。こうしたデメリットを理解せずに進めてしまうと、かえって経営を圧迫する可能性もあるため注意が必要です。具体的なデメリットを4つ紹介します。
会社の設立や維持にコストと手間がかかる
法人を設立するには、定款の作成・認証や法務局への登記申請が必要で、以下の費用が発生します。
- 株式会社:約20万円
- 合同会社:約60,000円
さらに、司法書士などの専門家に手続きを依頼すれば、これに加えて手数料も必要です。
また、設立後も役員の任期満了に伴う変更登記など、定期的な法的手続きをしなければならず、その都度費用と手間が発生します。開業届を提出するだけで事業を開始できる個人事業主とは異なり、法人化は金銭的にも時間的にも負担が大きいと言えるでしょう。
経理や税務申告の作業が複雑になる
法人の会計処理は、個人事業主の確定申告と比べてはるかに複雑です。複式簿記による記帳や決算書類の作成、法人税の申告書の提出など、専門性が求められます。特に、法人税の申告書は様式が多く、税制も頻繁に改正されるため、専門知識なしでの作成は極めて困難と言えます。
そのため、多くのケースで税理士と顧問契約を結ぶことになり、費用がランニングコストとして発生するのです。
赤字経営でも法人住民税の支払いが必要
法人には所得に応じた法人税のほかに、必ず負担することとなる法人住民税の均等割があります。
- 法人税割:利益に応じて課税される
- 均等割:資本金や従業員数など会社の規模に応じて課税される
法人住民税は上記の2つから構成されており、このうち均等割は赤字でも必ず納めなければなりません。税額は自治体によって異なりますが、最低でも年間7万円程度の負担が発生します。
個人事業主であれば、所得がなければ税金はかかりませんが、法人は赤字でも納税義務がある点を認識しておく必要があります。
社会保険への加入が義務になる
法人を設立し役員報酬を支払う場合は、健康保険と厚生年金保険への加入が法律で義務付けられています。たとえ従業員がいない社長1人の会社であっても、加入は必須です。
社会保険料は会社と個人が半分ずつ負担するため、法人側には「法定福利費」というコストが発生します。また、本業でサラリーマンとして社会保険に加入していても、法人から役員報酬を受け取れば、給与と合算して保険料が計算されます。その結果、保険料が増加する可能性がある点にも注意しましょう。
サラリーマンの法人化は会社にばれる?主な原因を解説
サラリーマンが法人を設立する際、多くの人が気にするのが「会社に知られてしまうのでは?」というリスクです。会社の就業規則で副業が禁止されている場合、発覚すればトラブルに発展しかねません。会社に知られる主な原因としては、以下の2つが代表的です。
住民税の金額変動
会社員の住民税は「特別徴収」で会社に通知されるのが一般的です。設立した法人から役員報酬を受け取ると、その分も合算されて住民税が計算されます。そのため、住民税が給与水準に比して不自然に高くなり、会社の経理担当者に気づかれる可能性があるのです。
このリスクを回避するためには、確定申告時に法人からの住民税の納付方法を「普通徴収(自分で納付)」に切り替える手続きが必要です。ただし、自治体によっては副業の報酬を合算して住民税が徴収されるため事前に確認しましょう。
同僚との会話やSNS投稿
税金面以外でよく見受けられるのが、人づてに知られるパターンです。同僚との雑談でつい事業の話をしてしまったり、SNSに会社設立や活動内容を投稿したりし、意図せず本業の会社に伝わってしまうケースがあります。
実名や個人が特定されやすい投稿には特に注意し、発信する範囲を慎重に選ぶことが大切です。
会社の就業規則で副業が禁止されていないか事前に確認しよう
法人化を具体的に進める前に、必ず確認すべきなのが本業の会社の就業規則です。「原則禁止」「許可制」「届出制」など、多くの会社では副業に関するルールが設定されているのが一般的です。
もし副業を禁止している会社で法人を設立し事業を行った場合、就業規則違反として、最悪の場合は懲戒解雇などの重い処分を受ける可能性もあります。
近年は副業を容認する企業も増えていますが、多くは「本業に支障をきたさない」「競合しない」といった条件付きです。トラブルを未然に防ぐためにも、まずは自社のルールを正確に把握しなければなりません。
まとめ
サラリーマンの法人設立は、節税をはじめとしたさまざまなメリットがある一方で、設立・維持にかかるコストや、複雑な経理・税務処理、社会保険への加入義務といったデメリットも存在します。また、会社の副業規定や住民税による発覚リスクも踏まえた対策も求められます。
法人化を検討する際には、メリットとデメリットを十分に考慮しなければなりません。自身の所得状況や事業計画に基づいた、的確な判断が求められるのです。








