会社経営者や個人事業主が融資を希望する場合、まず検討するのが日本政策金融公庫や民間の金融機関からの融資ではないでしょうか。しかし、銀行からの融資以外にも、事業者が利用できる資金調達方法があります。それが「事業者ローン(ビジネスローン)」です。銀行融資にはないメリットもあるため、資金調達の選択肢として把握しておくべき商品といえるでしょう。今回は、事業者ローン(ビジネスローン)に関する基礎知識や、メリット・デメリットなどについて詳しく解説していきます。
目次
事業者ローン(ビジネスローン)とは
事業者ローン(ビジネスローン)の金利
事業者ローン(ビジネスローン)の金利は、高めに設定されているイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。実際、事業者ローン(ビジネスローン)の金利は銀行融資よりも高めに設定されています。
以下のとおり、事業者ローン(ビジネスローン)と銀行からの融資で設定される金利について比較してみました。
金融機関 | 事業者ローン | 一般的な融資 | |
銀行 | 地方銀行 | 1.0~14.0% | 1.0~3.0% |
メガバンク | 3.0~15.0% | 1.0~4.0% | |
ノンバンク | 5.0~18.0% | 2.0~18.0% |
このように、事業者ローン(ビジネスローン)は一般的な融資よりも高い金利が設定されています。金利は、基本的に審査が厳しいほど低く、審査が易しいほど高く設定される場合がほとんどです。どちらにもメリット・デメリットがあるため、状況に応じて使い分けていきましょう。
事業者ローン(ビジネスローン)のメリット
原則として無担保・無保証人で申し込みが可能
事業者ローン(ビジネスローン)を利用するメリットとしては、原則として無担保・無保証人で申し込み可能な点が挙げられます。事業者ローン(ビジネスローン)にもさまざまな種類があるため、金融機関によっては不動産や売掛債権を担保として求められるケースもありますが、ほとんどの場合は無担保・無保証人で利用可能です。
「事業で使用している事務所は賃貸であるため、担保として提供できる物件がない」「保証人を引き受けてくれる人がなかなか見つからない」という場合には、事業者ローン(ビジネスローン)の申し込みを検討してみてはいかがでしょうか。
総量規制対象にならない
総量規制とは、貸金業者から借り入れられる金額について上限を設ける制度のことを指します。貸金業法によって規制されており、多重債務者の救済を目的として施行されました。総量規制の内容を簡潔に述べると「貸金業者による貸付は、債務者の年収に対して1/3の金額を超えてはならない」というものです。つまり、融資を受ける立場から考えると「年収の1/3にあたる金額までしかお金を借りられない」ということになります。
例えば、自分の年収が300万円だった場合、100万円までしか貸金業者から借り入れることができません。また、既に借入金が50万円ある場合には、あと50万円までしか借りることができないということになります。
ところが、事業者ローン(ビジネスローン)は総量規制の対象外となっているため、年収や借り入れ状況に関わらず資金調達をすることが可能です。「事業拡大のために融資を受けたいが、希望する融資額が年収の1/3を超えている」「既に金融機関から年収の1/3にあたる金額を借り入れているが、追加で事業資金が必要になった」という場合にも、事業者ローン(ビジネスローン)であれば融資を受けられるかもしれません。
公的融資や銀行融資と比べて融資スピードが早い
政府系金融機関である日本政策金融公庫などの公的融資や銀行融資は、金利が低い代わりに審査に時間を要する場合がほとんどです。利用する金融機関によって異なりますが、審査期間は2週間~1か月程度と考えておいたほうがいいでしょう。
一方、事業者ローン(ビジネスローン)は審査期間が比較的短く、スピーディーに融資を受けられるというメリットがあります。最短で即日結果が出る場合もあり、遅くとも1週間~10日程度で融資を受けることが可能です。
事業者ローン(ビジネスローン)のデメリット
公的融資や銀行融資と比べると借入れ可能金額が低め
事業者ローン(ビジネスローン)は、公的融資や銀行融資に比べて借入れ可能金額が低めに設定されています。スピーディーに資金調達ができる反面、多額の融資を希望する場合にはあまり向いていないといえるでしょう。例えば、大手消費者金融が実施している事業者ローン(ビジネスローン)の借入れ可能金額は以下のとおりです。
金融機関 | 商品 | 借入れ可能金額 |
プロミス | 自営者カードローン | 300万円 |
アコム | ビジネスサポートカードローン | 300万円 |
オリックスクレジット | オリックスVIPローンカードBUSINESS | 500万円 |
このように、事業者ローン(ビジネスローン)の借入れ可能金額は、数百万円ほどである場合が多くなっています。公的融資や銀行融資が、数千万円~数億円もの融資を行っていることと比較すると、かなり少額であるといえます。ただし、実際に融資を受けられる金額は審査結果によって異なるため、これらの借入れ可能金額はあくまでも目安として考えておきましょう。
公的融資や銀行融資と比べると金利がやや高め
上述のとおり、事業者ローン(ビジネスローン)の金利は公的融資や銀行融資と比べて高めに設定されています。日本政策金融公庫などの公的融資では0.3~2%台、銀行融資では2%台の金利が設定されている場合がほとんどです。一方、事業者ローン(ビジネスローン)の金利は5.0~18.0%となっており、通常の融資よりも借り入れコストがかかるというデメリットがあります。
将来的に銀行融資を検討する際に審査に影響する可能性がある
事業者ローン(ビジネスローン)を利用する中小企業や個人事業主は、ノンバンクから借り入れる場合が多くなっています。ノンバンクからの借り入れは審査スピードも早いため便利ですが、将来的に銀行融資の審査で不利になる可能性があるのです。
なぜなら、ノンバンクの事業者ローン(ビジネスローン)に申し込む事業者は、公的融資や銀行融資の審査に落ちているケースが多いからです。つまり、事業が好調ではないということになります。
そのため、ノンバンクからの融資履歴は、銀行融資の審査においてマイナス要素となるリスクがあります。将来的に公的融資や銀行融資の利用も希望している方は、ノンバンクから借り入れるかについて慎重に検討しましょう。
事業者ローン(ビジネスローン)とカードローンの違い
事業者ローン(ビジネスローン)は事業資金を調達することに特化した融資ですが、デメリットもあるため状況によっては利用しづらい場合があります。そのような場合には、個人でも利用できるカードローンが便利です。では、事業者ローン(ビジネスローン)とカードローンには、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
資金用途が自由
事業者ローン(ビジネスローン)は事業資金専用の商品であるため、事業を営んでいない個人は利用することができません。一方、カードローンは資金用途の制限がなく、生活費として利用することも可能です。
借入れ可能金額が高めに設定されている
事業者ローン(ビジネスローン)の場合、借入れ可能金額は数百万円で設定されているケースがほとんどです。対して、カードローンでは1,000万円程度の上限が設定されている場合もあるため、多くの融資を受けられる可能性があります。どの事業者ローン(ビジネスローン)と比較するのかにもよりますが、無担保・無保証人で利用できる商品であれば、カードローンのほうが借入れ可能金額は高い傾向にあるといえるでしょう。
融資を受けるまでのスピードが早い
利用する会社にもよりますが、カードローンは融資を受けるまでのスピードが早いという特徴があります。事業者ローン(ビジネスローン)は1週間~10日程度の期間を要する場合がありますが、利用するカードローンによっては最短30分~数時間で融資を受けることが可能です。翌営業日には入金されるという場合も多いため、資金調達を急いでいる場合にはカードローンが便利だといえるでしょう。
事業者ローン(ビジネスローン)以外の資金調達方法とは
家族や知人からの借入れ
事業者ローン(ビジネスローン)などの融資を検討する以外に、家族や知人から資金を借り入れるという手段もあります。原則として、資金を借り入れた場合は元本に加えて利息も支払わねばなりません。しかし、家族や知人であれば無利息で借りられるというケースも多いでしょう。返済期間なども両者の合意があれば自由に設定することができるため、好条件で資金調達できる可能性があります。ただし、トラブルを未然に防ぐためにも契約書は必ず作成しておきましょう。
銀行融資
事業拡大や新規事業立ち上げなど、多額の融資を希望する際などは銀行融資が適しているといえるでしょう。事業者ローン(ビジネスローン)と比較して審査のハードルは高くなりますが、金利の負担を抑えられるというメリットもあります。融資を受ける目的や状況に応じて、銀行からの融資も検討していきましょう。
カードローン
上述のとおり、早急に資金が必要な場合などはカードローンが便利です。また、事業者ローン(ビジネスローン)と違って資金用途が自由であるため、借入金の一部は生活費に回すといった目的にも利用できます。
クレジットカードの活用
キャッシュフローを改善したい場合には、事業用クレジットカードの活用もおすすめです。決済を事業用クレジットカードで行うことによって、仕入れ金などの支払いを先延ばしにすることができます。資金を借り入れるだけではなく、キャッシュフローの見直しも行っていきましょう。
売掛金の売却(ファクタリング)
入金待ちの請求書は「売掛債権」という資産に分類されるのですが、この請求書を買い取ってもらえる「ファクタリング」という手段があります。このファクタリングを利用することで、決済日よりも前に現金を受け取ることが可能です。ただし、ファクタリングには3~10%程度の手数料が発生することも覚えておきましょう。
クラウドファンディング
新規事業の立ち上げや商品開発などを行う場合、クラウドファンディングを利用することも有効な選択肢のひとつです。近年はクラウドファンディングの認知度も高まっており、成功すれば多額の資金を調達することができます。市場調査を兼ねることもでき、今後も大きく伸びていく資金調達方法だといえるでしょう。
事業者ローン(ビジネスローン)は個人事業主も利用できる?
結論からいうと、個人事業主でも利用できる事業者ローン(ビジネスローン)はあります。個人事業主は法人に比べて資金繰りに苦労するケースが多く、銀行から融資を受けるハードルも高くなりがちです。しかし、個人事業主向けの事業者ローン(ビジネスローン)は多く存在するため、急に事業資金が必要となった場合にも事業者ローン(ビジネスローン)を利用して資金を調達することができます。
個人事業主の資金調達が法人と比べて難しい理由としては、事業実態を正確に把握しづらいという点が挙げられます。銀行融資の審査で主に確認されるのは、決算書類の内容です。しかし、個人事業主は事業内容や事業実態の把握が難しいため、金融機関も積極的に融資を実行できないという背景があります。
そのような個人事業主にとって、事業者ローン(ビジネスローン)は有力な資金調達方法のひとつといえるでしょう。
事業者ローン(ビジネスローン)をうまく活用したい場合は専門家に相談も検討
今回は、事業者の方が利用できる事業者ローン(ビジネスローン)について、基礎知識やメリット・デメリットなどを詳しくご紹介してきました。事業者ローン(ビジネスローン)は無担保・無保証人で申し込むことができ、銀行融資よりもスピーディーに資金調達できる点が魅力です。しかし、少なからずデメリットもあるため、状況に応じて適切な資金調達方法を選択することが重要です。事業者ローン(ビジネスローン)を有効活用していきたいという方は、専門家への相談も検討してみてはいかがでしょうか。