インボイス制度の施行により、領収書や請求書に登録番号の記載がなければ、仕入税額控除が認められなくなりました。しかし、取引先や仕入れ方法によっては、制度施行後も登録番号がない領収書を受け取ることも多く存在します。結論として、番号がない領収書でも経費計上できますが、消費税は全額控除できない可能性があるため、注意のうえ扱いましょう。本記事ではインボイス登録番号がない領収書の取り扱いについて解説します。
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目次
結論:インボイス番号なしの領収書でも費用計上できる

結論として、インボイス登録番号が記載されていない領収書やレシートであっても、経費計上はできます。インボイス制度は消費税の仕入税額控除に関する要件を定めたものであり、経費計上そのものの可否を左右するものではありません。
登録番号がない領収書でも、事業に必要な支払いであったことが客観的に見ても分かる内容であれば、経費として認められます。
番号がない領収書は消費税の仕入税額控除を受けられない
インボイス登録番号がない領収書でも経費計上できますが、原則として消費税の仕入税額控除が認められない点に注意が必要です。仕入税額控除とは、確定申告により納めるべき消費税から期内に支払った消費税を差し引ける制度を指します。
控除制度により、仕入れや経費で支払った消費税の二重払いを防げます。しかし、インボイス制度施行後は控除できる消費税は原則「インボイス番号を記載した適格請求書」のみに要件が絞られました。
要件を満たさない領収書では控除を受けられず、結果的に事業者の消費税負担が増えてしまいます。
インボイス制度により番号記載の領収書が求められる理由

インボイス制度の施行により、消費税の仕入税額控除により税負担を減らすため、番号記載の領収書が必要になりました。インボイス登録番号は、国税庁に登録された適格請求書発行事業者であることを証明する番号です。
番号の記載があれば、その事業者が発行した請求書や領収書は、仕入税額控除が認められます。制度施行以降は、インボイス番号がない領収書は仕入税額控除の対象とならないため、領収書の取り扱いに注意が必要です。
インボイス番号がない領収書を受け取った際の対処法

インボイス番号がない領収書を受け取った場合は、適切に対応して仕入税額控除の可否を確認する必要があります。番号記載のない領収書の取り扱いと対処法について、詳しく解説します。
取引先がインボイス登録事業者か確認する
領収書にインボイス登録番号の記載がない場合、まずは取引先が適格請求書発行事業者として登録しているか問い合わせましょう。確認する方法として、以下の2つが挙げられます。
- 取引先に直接問い合わせる
- 国税庁の公表サイトで検索する
確実な方法は、取引先にインボイス登録番号を取得しているか、直接確かめることです。番号を取得していないか、記載を忘れていないかが分かれば、対応方法も検討できます。
合わせて、国税庁が公開している「適格請求書発行事業者公表サイト」で検索することでも、登録状況が分かります。ただし、基本的に公表サイトでは番号を入力して事業者を検索する方法に限られるため、注意が必要です。
番号を問い合わせたうえで公表サイトで登録実態を確認して、取引先のインボイス登録番号の取得状況を判断しましょう。
登録事業者だった場合は適格請求書の再発行を依頼する
問い合わせのうえ、取引先がインボイス番号を取得する適格請求書発行事業者であった場合は、領収書の再発行を依頼しましょう。領収書や請求書は、受け取り側による情報の追記や修正が法的に認められていません。
領収書や請求書の発行元に修正と再発行を求める必要があります。再発行を求める際は、インボイス登録番号や適用税率、消費税額の記載が必要である旨を伝えて、円滑な対応を目指しましょう。
未登録事業者だった場合は経過措置を適用して会計処理する
問い合わせのうえ、取引先がインボイス登録番号を取得していない免税事業者だった場合は、適格請求書を発行できません。この場合、原則として仕入税額控除は適用できませんが、2029年までは経過措置が適用されます。
経過措置は手続きなしで利用でき、期間内は免税事業者等からの仕入であっても、一定割合が控除の対象になります。免税事業者等との取引があった際は、経過措置の対象である旨を帳簿に記載して一定割合を控除に含めましょう。
免税事業者等からの仕入れにかかる経過措置とは
インボイス制度の導入により、免税事業者等からの仕入れは原則として仕入税額控除が認められなくなりました。しかし、控除の取りやめは事業者の負担が急増するため、救済措置として経過措置が設けられています。
インボイス制度にともなう免税事業者等への経過措置について、詳しく解説します。
経過措置は仕入税額相当額の一定割合を控除できる特例
インボイス制度における経過措置とは、免税事業者等が発行した領収書や請求書も、一定割合が仕入れ税額控除と認められる制度です。
- 2023年10月1日〜2026年9月30日:仕入税額相当額の80%
- 2026年10月1日〜2029年9月30日:仕入税額相当額の50%
期間内は、インボイス番号がない領収書や請求書であっても、仕入税額控除が認められます。経過措置を適用するには、従来の区分記載請求書の要件を満たす請求書の保存と、帳簿への記載が必要です。
帳簿の摘要欄に「経過措置を適用」などを明記して、支払った消費税の一部を仕入税額控除に含んでいることを明らかにしましょう。
参考:国税庁|5 経過措置
経過措置を適用する際の帳簿への記載方法
免税事業者等からの仕入れに経過措置を適用する際は、帳簿への記入方法に注意しましょう。免税事業者等からの仕入れは、取引内容に加えて経過措置を適用する旨を明記しておく必要があります。
主な記入内容として、以下を紹介します。
- 取引年月日
- 取引内容と金額
- 取引先の事業者名
- 取引先の住所または所在地
- 経過措置を適用した旨
一般的な記帳との大きな違いは、摘要欄などに仕入税額控除の経過措置を適用した旨を記載することです。摘要欄に「80%控除対象」「経過措置を適用」などを追記して、インボイス制度の経過措置対象である旨を明らかにしましょう。
経過措置の適用対象が多い場合は、対象の取引に記号を付けて分類する記帳方法も認められています。
インボイス制度の施行による会計処理・税務対応にお悩みの方は、専門の税理士への相談がおすすめです。
インボイス対応の領収書を作成するポイント
適格請求書発行事業者となって領収書や請求書を発行する場合、インボイス制度の要件を満たす内容に対応しなければいけません。記載内容に漏れや誤りがあれば、取引先の仕入税額控除を受けられず税負担が増えるため、正しい内容で発行しましょう。
インボイス制度対応の領収書や適格請求書を発行する方法について、詳しく解説します。
適格請求書(インボイス)として認められる記載項目
適格請求書(インボイス)として認められる領収書や請求書には、以下の項目を記載する必要があります。
- 発行事業者の氏名や名称
- インボイス登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(適用する消費税率)
- 適用する消費税率
- 税率ごとに区分した消費税額
- 書類交付を受ける事業者名
インボイス制度の施行により、特にインボイス登録番号と適用税率、税率ごとの消費税額の記載が求められます。要件を満たさなければ適格請求書と認められず、仕入税額控除の対象にもならないため、注意のうえ発行しましょう。
インボイス登録番号は手書きで追記しても問題ない
インボイス制度に対応した適格請求書を発行するうえで、必ずしも領収書や請求書のすべてを刷新する必要はありません。既存の請求書に手書きでインボイス番号を追加したり、スタンプしたりする形でも対応できます。
記載されたインボイス登録番号が明確に読み取れれば、紙面でもデータでも適格請求書と認められます。既存の帳票を活用して、コストを抑えながら発行できる方法もあるため、事業内容や業務の負担から発行方法を検討しましょう。
取引先がインボイス登録事業者か確認する方法
新規の取引先がインボイス登録事業者か確認することは、今後の消費税負担を減らすうえで欠かせません。ここでは、仕入税額控除の適用ミスを防ぐための登録事業者の確認方法について解説します。
国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で検索する
取引先が適格請求書発行事業者であるか確認するうえで確実な方法は、国税庁の公表サイトを利用することです。公表サイトでは、取引先から共有されたインボイス登録番号(Tから始まる13桁の番号)から、登録状況を確認できます。
登録番号をもとに、事業者の氏名や登録年月日を照合できるため、登録番号が正規に発行されたものであるかすぐに照合できます。
なお、取引先が法人の場合は「T」のあとに法人番号を付けたものがその事業者のインボイス登録番号です。法人番号も国税庁の公表サイトで事業者名から検索できるため、法人の場合は2つのサイトから登録番号を割り出せます。
取引先から共有されたインボイス登録番号が正しいか確認するためにも、国税庁が提供する2つの公表サイトを活用しましょう。
店舗の掲示物や領収書の記載を確認する
取引に際して発行される領収書や請求書、取引先への問い合わせでも、インボイス登録番号は確認できます。
- 取引先に直接問い合わせる
- 飲食店や小売店のWEBサイトや店内掲示を確認する
- 店舗を利用した際のレシートで確認する
特に飲食店や小売店など不特定多数の顧客と取引する事業者は、レシートや店内掲示でインボイス登録事業者であるかが分かります。実店舗ではレジ周りや店舗入口などに、インボイス登録番号を取得している旨がステッカーなどで掲示されている場合もあります。
インボイス番号が記載されたレシートがそのまま適格請求書と認められるため、必ず記載の有無を確認して経費計上しましょう。
インボイス対応のお悩みは税理士が対応できます
インボイス番号がない領収書でも、事業に必要な支出であれば経費として認められます。ただし、原則として消費税の仕入税額控除は受けられないため、取引先に確認のうえ対応方法を検討しましょう。
2029年9月30日までは経過措置が設けられており、インボイス番号の記載がなくても一定割合は仕入税額控除を適用できます。以降は適用が認められなくなるため、2029年を目安に対応方針を固めることが大切です。
制度施行により、すでに適格請求書発行事業者となった事業者も、免税事業者等も事業に応じた対応を求められます。インボイス制度についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。








