NPO法人は非営利団体ですが、収益事業を行えば法人税や消費税の対象となり、税務調査を受ける場合があります。「非営利だから関係ない」とは言えず、申告内容や経理処理に不備があれば追徴課税のリスクもあります。本記事では、NPO法人に税務調査が入る理由、収益事業とみなされるケース、調査時の対応方法を解説します。税務調査への備えに不安を感じる方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
NPO法人にも税務調査はある?

NPO法人は非営利を目的とする団体ですが、収益事業(物品販売やサービス提供など)を行っている場合には、他の法人と同様に税務調査の対象となります。法人税法上、NPO法人は「公益法人等」として位置づけられており、収益事業を行えば法人税の申告義務が発生するため、「非営利だから調査は関係ない」というわけではありません。
活動が公益的であっても、申告内容や経理処理に誤りがないかを税務署が確認する場合があるため、適切な会計管理と備えが必要です。
参考:特定非営利活動促進法により設立されたNPO法人の法人税法上の取扱い|国税庁
参考:法人税法 | e-Gov 法令検索
そもそもNPO法人とは?

NPO法人(特定非営利活動法人)は、1998年施行の「特定非営利活動促進法」に基づいて設立できる法人です。市民が自主的に社会貢献活動を継続的に行うために法人格が与えられたもので、営利を目的としないことが前提となっています。
活動分野は、環境保護、福祉、教育、まちづくりなど幅広く、地域社会の課題解決や公益の増進を目的とする点が特徴と言えるでしょう。
資金源は会員からの会費や一般からの寄付金、助成金・補助金が中心ですが、活動を支えるために必要に応じて収益事業を行うことも認められています。
さらに、一定の基準(寄付者数や情報公開の適正さなど)を満たした法人は「認定NPO法人」として国税庁から認定を受けられ、寄付者には税制上の優遇措置が適用される仕組みがあります。
参考:特定非営利活動法人(NPO法人)制度の概要 | 内閣府
参考:No.5284 認定NPO法人等に対する寄附金|国税庁
NPO法人が収益事業に該当するケース
NPO法人は非営利活動を基本としますが、その一部が「収益事業」に当たると法人税の課税対象になると前述しました。では、具体的にどのような場合に課税対象とされるのでしょう。
政令で定められている34業種に該当している
法人税法施行令第5条では、収益事業とされる業種が明確に定められており、対象となる業種は以下の34種類です。NPO法人であってもこれらに該当する活動を行っていれば、収益事業とみなされて法人税の課税対象となります。
- 物品販売業
- 不動産販売業
- 金銭貸付業
- 物品貸付業
- 不動産貸付業
- 製造業
- 通信業
- 運送業
- 倉庫業
- 請負業
- 印刷業
- 出版業
- 写真業
- 席の貸付業
- 旅館業
- 飲食店業
- 周旋業(仲介業)
- 代理業
- 仲立業
- 問屋業(卸売業)
- 鉱業
- 土石採取業
- 浴場業(公衆浴場業)
- 理容業
- 美容業
- 興行業
- 遊技所業
- 遊覧所業
- 医療保健業
- 技芸・学力教授業
- 駐車場業
- 信用保証業
- 無形財産権の提供業
- 労働者派遣業
このように、日常的な販売やサービス提供から専門的な事業まで幅広く対象とされているため、自法人の活動がどれに当てはまるのか確認しておきましょう。
事業場を設けている
NPO法人の活動が収益事業として課税対象になる条件として「事業場を設けていること」があります。これは、活動が一時的なものではなく、継続的に事業を行う体制が整っていると判断されるためです。
事業場といっても必ずしも常設の店舗や事務所に限られるわけではありません。例えば、移動販売車を使った営業やイベント会場を拠点として繰り返し収益活動を行う場合でも、事業場として扱われる場合があります。
継続的に事業を行っている
収益事業とみなされ課税対象となる条件として「事業を継続して行っていること」があります。単発の活動では収益事業にあたらない場合も多いため、活動の反復性や持続性が重視されます。
なぜなら、法人税法第2条第13号でも「継続して事業として行うもの」と規定されており、一定の反復性があるかどうかが収益事業の判断基準となるためです。
例えば、毎週や毎月といった定期的な活動はもちろん、準備に長期間を要する事業や、不定期であっても繰り返し実施されている活動は、実態として継続性があると認められる可能性があります。
つまり、活動の頻度や期間にかかわらず、事業として反復継続して行われていれば収益事業と判断され、課税対象になる点を理解しておきましょう。
NPO法人が非収益事業に該当するケース
前述の条件に当てはまるからといって、必ずしも収益事業として課税されるわけではありません。実際には、活動の目的や社会的意義が考慮され、非収益事業として扱われる場合もあります。
例えば、従業員の過半数が障害者や高齢者であり、その活動が福祉や生活支援に直結すると認められる場合には、法人税法施行令で列挙された34業種に該当していても、収益事業から除外されるケースがあります。
これは、社会的弱者の雇用や生活支援といった公益性の高い目的を重視するためです。ただし、収益事業か非収益事業かの判断は、最終的に税務署の見解に委ねられる部分が大きいのが実情です。
新たに収益事業を開始する場合や、収益・非収益の線引きが曖昧な場合には、事前に税務署や税理士へ確認・相談しておくのが賢明でしょう。
NPO法人が収益事業を行う際の注意点

NPO法人が収益事業を行う場合には、法律で定められたルールや税務上の注意点を理解しておく必要があります。適切な手続きを踏まなければ、後に課税や法人運営上のトラブルに繋がる可能性があるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
定款に明記する必要がある
収益事業を行うには、法人の基本規則である定款に「収益事業を行う」旨を記載しておく必要があります。これは「特定非営利活動促進法」第11条で、定款に事業の種類を明示するよう義務づけられています。
記載がなければ、法人活動として認められず、許可を得ないまま事業を行ったと判断され、後のトラブルに繋がるでしょう。
法人税の申告義務がある
NPO法人は法人税法上「公益法人等」として扱われます。政令で定められた34業種に該当し、かつ継続して事業場を設けて行う活動は収益事業とみなされた場合、法人税の申告義務が発生します。
所得に応じて課税が行われるため、収益事業に関しては必ず法人税申告を行わなければなりません。
消費税の納税義務が生じる場合がある
収益事業での基準期間の課税売上高が年間1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となります。
寄付金や会費は不課税ですが、物品販売やサービス提供による収入は課税対象となることがあるため、収益と非営利活動を区分して経理処理しましょう。
地方税の減免に影響する可能性がある
「地方税法」では、公益法人等に対する法人住民税(市民税・県民税)の課税・減免規定が設けられており、多くの自治体では、収益事業を行わないNPO法人には住民税の減免措置を設けていますが、収益事業を行うと減免の対象外となる場合があるので注意しましょう。
実際の運用は自治体ごとに異なるため、事業開始前に所轄自治体へ確認しておく必要があります。
NPO法人の収益の使い道は限定されている
NPO法人が収益事業で得た利益は、株式会社のように株主や会員へ自由に分配することはできません。
非営利団体である以上、利益は必ず法人の目的である非営利活動や運営に充てる必要があり、株主配当や会員への還元といった「個人の利益目的」での利用は法律上禁止されています。ただし、例外として「業務の対価」に当たる支出は認められています。
業務に専従する役員には、特定非営利活動促進法第26条に基づき役員総数の3分の1以下の範囲で報酬を支払うことが認められており、また社員が職員として実際に業務に従事した場合には、同法第2条および労働基準法に基づき給与や日当を労務の正当な対価として支払うことも可能です。
これらはあくまで「利益分配」ではなく、法人の事業運営に必要な業務への正当な報酬として扱われるため合法とされています。したがって、NPO法人の利益の使途は厳格に制限されつつも、活動を継続するために必要な支出は認められています。
NPO法人に税務調査が来たときの適切な対応
では、実際にNPO法人に税務調査が入った場合、どのように対応すればよいのでしょうか。事前に押さえておくべき注意点を理解しておけば、不必要なトラブルや誤解を避けつつ、落ち着いて調査に臨めます。
帳簿や証憑を整理して提示する
税務調査で最初に確認されるのは帳簿や証憑です。領収書・請求書・通帳など、収益や支出の裏付けとなる資料は日常的に整理しておき、求められたときにすぐ提示できる状態にしておきましょう。
特にNPO法人の場合、収益事業と非営利活動を明確に区分して経理していることを示せると、調査官に対して説明がしやすくなり、信頼性も高まります。普段から書類を体系的にファイリングし、電子データも整備しておけば、調査時の負担を軽減できるでしょう。
調査官の指摘には根拠をもって対応する
税務調査では調査官から強い口調で指摘を受けたり、追加資料の提出を求められる場合がありますが、調査官の要求をそのまま受け入れなければならないわけではありません。
国税通則法には「質問検査権」が定められていますが、その権限は法律に基づく範囲に限定されており、無制限に行使できるものではないためです。
したがって、不当と思われる要求や曖昧な指摘に対しては、法律に基づいた手続きであるかどうかを確認し、必要であれば根拠を提示して対応する姿勢が大切です。
不明点はその場で回答せず専門家に確認する
調査官からの質問に即答できない場合、無理に答えることは避けましょう。内容を誤解したまま答えてしまうと、後に不利な状況を招く恐れがあるためです。
そのようなときは「確認のうえで回答します」と伝え、正確な情報を整理してから返答する方が望ましい対応です。特に税務の解釈に関わる質問については、専門的な知識を持つ税理士に確認を依頼し、必要に応じて代理で回答してもらうのが有効でしょう。
必要に応じて調査日程の調整を依頼する
税務調査は、都合がつかない場合には日程の変更を依頼できます。例えば、法人の重要行事と重なっている、主要な担当者が出張や入院で不在といった正当な理由があれば、調査の延期が認められる場合があります。
もちろん、無理な要求は不信感を招くため避けるべきですが、事情を丁寧に説明すれば、柔軟に対応してもらえるケースも少なくありません。
調査に臨む際は、法人の体制を整えて臨む必要があるため、必要に応じてスケジュール調整を行い、冷静かつ適切に対応できる環境を整えましょう。
NPO法人の税務調査に不安がある方は専門家に相談
NPO法人は非営利団体であっても、収益事業を行えば法人税や消費税の対象となり、申告内容や経理処理に不備があれば税務調査で指摘を受ける可能性があります。
特に収益事業と非営利活動の区分や経費計上の妥当性は判断が難しく、誤りがあれば追徴課税など大きなリスクに繋がるでしょう。こうしたリスクを避けるには、税務に精通した専門家へ相談するのが最も確実です。
小谷野税理士法人では、NPO法人の会計や税務調査対応に豊富な実績を持ち、日常の経理体制から税務調査時のサポートまでトータルで支援しています。NPO法人の運営に安心を加えるためにも、ぜひ小谷野税理士法人へお気軽にご相談ください。






