税務調査に関して耳にする「お土産」とは、調査官に指摘させるための「敢えて残したミス」を指します。「お土産を用意すると調査が早く終わる」と言う俗説がありますが、実際は用意する必要はなく、むしろ逆効果となるケースもあります。この記事では「お土産」の正しい意味や背景、誤解が広まった理由、さらに税務調査の事前準備のポイントなどを解説します。
目次
税務調査のお土産とは「軽微な指摘事項」を指す業界用語

税務調査に関連して業界関係者が言う「お土産」とは、追徴課税や修正申告に繋がる「軽微な指摘事項」を意味する業界用語です。
なお、税務調査とは、申告された内容にミスがないか税務署などが確認するものです。その過程では、調査官が納税者の仕事場などに臨場して調べる実地調査もあります。ミスがあれば指摘され、場合によっては修正申告や追徴課税につながります。
「指摘事項を見つけることは、調査官にとって評価に繋がる手柄になるのでは」と業界関係者は考えています。そのため「調査官は手ぶらで帰らない」と言う誤解が広まり、過去には「軽微な誤りを敢えて残しておけば調査が早く終わる」と考える人もいました。
このような経緯から、調査官の手柄となるミス=「お土産」と呼ばれます。由来は、出張帰りにお土産を持ち帰る姿になぞらえたとみられます。
例えば交通費の一部を私用だったことにするとか、一部の領収書を保存しないなど、数万円程度の軽いミスが「お土産」と表現されます。なお、税務調査に関連して使われる「お土産」とは、旅行の手土産や差し入れとは全く別物です。
税務調査や修正申告・追徴課税の概要について詳しくは下記の記事をご確認ください。
お土産はいくらくらい必要?実際は「お土産なし」でOK

「税務調査ではいくらくらいのお土産を用意すべきか?」と心配する方もいらっしゃるでしょう。しかし実際には、わざと軽微なミスを差し出すことはおすすめできません。
「お土産を用意した方が良い」は誤解!むしろ逆効果になる
税務調査において「軽微なミス(=お土産)をわざと残しておく方が良い」と言う考えは誤解です。むしろ逆効果になり得ます。
「小さなミスがあるなら、他にもミスがあるのでは」と調査官に疑われ、さらに深く調査される可能性があるからです。さらに「この納税者からは成果がとれる」とみなされ、今後も調査対象にされるリスクもあります。
結果的に調査が長引いたり、何度も調査に入られたりする恐れがあるため、「お土産を用意する」と言う発想は危険です。税務調査を早く終わらせるために最も有効な手段は、正確な帳簿と証拠書類を整えておき、指摘される余地を残さないことです。
お土産なしでも問題なく調査は終わる
税務調査と言うと「必ず何かを指摘される」と思うかもしれませんが、実際には指摘なしで終わるケースもあります。
「税務調査の実地調査が来たのに指摘事項なく終わった」と言う割合を、国税庁が発表している統計から算出しました。その結果、所得税では約16%、法人税では約24%が指摘を受けずに終わっています。
【所得税の税務調査】
実地調査件数 | 47,528件 |
指摘事項があった件数 | 40,131件 |
上記から算出される「指摘事項がなかった件数」 | 47,528件 − 40,131件 =7,397件 |
指摘事項がなかった割合 | 7,885件 ÷ 47,528件 ≒ 15.6% |
【法人税の税務調査】
実地調査件数 | 59,000件 |
指摘事項があった件数 | 45,000件 |
上記から算出される「指摘事項がなかった件数」 | 59,000件 − 45,000件 =14,000件 |
指摘事項がなかった割合 | 14,000件 ÷ 59,000件 ≒ 23.7% |
つまり、「お土産を用意しないと調査が終わらない」と言うのは誤解です。正確に帳簿や証拠書類を整えていれば、調査は問題なく終わります。
誤解なのになぜ「お土産」が必要と言われるのか
誤解であるにもかかわらず、なぜお土産は必要と言う発想があるのでしょうか。
かつて紙の帳簿が中心だった時代は、小さな記録ミスが頻繁に見つかりました。例えば、一部の売上の記載漏れや、領収書が保存されていないなどです。そのため「軽微な誤りを差し出せば調査は早く終わる」と言う発想が広まったとみられています。
しかし現代では帳簿の電子化やコンプライアンス意識の高まりもあるため、お土産の考え方はむしろ危険です。
調査に来る職員に対する実物のお土産(=差し入れ)は不要

ここでは、「軽微な指摘事項」と言う意味のお土産ではなく、実地調査に臨場した調査官に出す実物のお土産について解説します。
調査官に対して、弁当やお菓子などの差し入れやお土産を出す必要はありません。公務員は、利害関係者から接待や金品などを受けてはならないと法律で定められているためです。
一方で、お茶や水など「来客対応の範囲」であれば、出しても出さなくても構いません。実際に飲むかどうかは、個々の調査官の判断に委ねられます。また、お茶や水を出さなかったからといって、調査が厳しくなることもありません。
つまり調査官への差し入れを準備する必要はありません。現実的な対応としては、湯呑みにお茶を入れて机に置いておくくらいが無難でしょう。根拠となる法律としては、国家公務員倫理規程第3条や刑法第197条などが挙げられます。
参考:国家公務員倫理規程第3条 | e-Gov 法令検索
参考:刑法第197条 | e-Gov 法令検索
旅行の手土産など「本物のお土産」の勘定科目は?
ここでは「軽微な指摘事項」のお土産ではなく、旅行の手土産など「本物のお土産」を買って経費にする際の勘定科目を解説します。正しく処理しないと税務調査に繋がる可能性があるため注意しましょう。
お土産の購入費に使われる勘定科目は、主に下記の4種類です。
勘定科目 | 渡す相手や目的 |
接待交際費 | 取引先や顧客に渡す菓子折りなどの土産 →取引関係を円滑にする目的の支出 |
福利厚生費 | 社員やアルバイトなど「社内向け」の土産 →従業員の厚生を目的とした支出 |
会議費 | 社内会議やちょっとした打合せに出すお菓子・飲み物としての土産 ※1人あたり10,000円以下 |
広告宣伝費 | 展示会やイベントで不特定多数に配布する土産 →顧客獲得や宣伝を目的とした支出 |
このように、同じお土産でも、渡す相手や目的によって勘定科目が変わるため注意しましょう。
それぞれの勘定科目や、仕訳の際の注意点など詳しくは下記の記事をご確認ください。
税務調査の事前連絡が来たら準備したいもの
税務調査の連絡を受けたら、「お土産」ではなく、正しく整理された帳簿や証拠書類を準備しましょう。必要なものを整えておくと、当日の調査がスムーズに進み、結果的に早く終わる可能性が高まります。
下記は税務調査の前に整えておきたい代表的な資料です。
帳簿や決算書類 |
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領収書や請求書などの証拠書類 |
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現金や売上の管理資料 |
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経費の根拠が説明できる資料 |
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また、上記の書類をすぐ取り出せる状態にしたり、部屋や机を片付けたりといった整理整頓も大切です。
税務調査の対応に不安がある場合は、税理士に相談しましょう。税理士なら、事前のアドバイス・調査当日の立ち会い・調査後の修正申告対応といったサポートが可能です。専門家と一緒に対応すれば、精神的な負担も軽減できます。
税務調査の準備や対応が不安な方は税理士にご相談を
この記事では、税務調査の業界用語である「お土産」の意味や、お土産の必要性などを解説しました。
税務調査に関連して使われる「お土産」とは、調査官を手ぶらで帰さないための「敢えての指摘事項」を指します。ただし、現代において税務調査時にお土産を用意する必要はありません。また、お弁当など現物の差し入れも不要です。
税務調査を早く終わらせたい場合は、正確な帳簿と証拠書類を準備し、誠実な対応を心がけましょう。また、税務調査の対応を税理士に任せるのも有効な手段です。
税理士であれば、事前に準備すべき書類が分かる上、当日の調査官とのやりとりもスムーズにできます。結果として早く終わるだけではなく、安心感も得られます。









