基本的に、不動産所得の金額が年間58万円を超えると確定申告が必要となるでしょう。確定申告の方法には白色申告と青色申告の2つがあり、青色申告の方が手続きなどが大変な反面、高い節税効果を得られるのが特徴です。今回は、不動産所得を得るときの確定申告の必要性や、青色申告と白色申告の違い、青色申告のメリット・デメリットなどを解説します。
目次
不動産所得は確定申告が必要

1年間の所得と所得税を計算し、税務署に申告・納税する手続きを確定申告といい、不動産所得も課税対象の1つです。以下では、そもそも不動産所得とは何なのかや、青色申告と白色申告の違いについて解説します。
関連記事:家賃収入があるサラリーマンは確定申告が義務?必要書類も解説
不動産所得とは
不動産所得とは、以下の通り不動産の貸付によって得る所得を示します。
- 土地や建物などの貸付
- 航空機や船舶の貸付
- 地上権など不動産の上に存する権利の設定・貸付
基本的に、不動産所得の金額が年間58万円を超える場合、確定申告が必要です。社会通念上、不動産貸付が事業として認められる場合、青色申告によって65万円または55万円控除を受けられるケースがあります。
建物の貸付の場合、以下のいずれかに該当すると、原則として事業で行っていると認められます。
- アパートなど:独立した室数がおおむね10室以上ある
- 家屋:おおむね5棟以上ある
事業として不動産貸付を行っていないと認められる場合でも、青色申告の10万円控除は受けられます。
不動産で得た収入から必要経費を差し引くと、不動産所得を算出できます。不動産所得を算出するうえで、経費として処理できる費用は以下の通りです。
- 租税公課:固定資産税や個人事業税など
- 管理代行手数料:管理会社への費用
- 維持管理費:共益費や修繕費など
- 専門家への報酬:税理士や行政書士など
- 借入金利子:借入金の利息
- 減価償却費:土地以外の建物や備品など
- 損害保険料:火災保険や地震保険など
経費として認められるのは、不動産収入を得るために必要な費用に限られると知っておく必要があります。
参考:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)
青色申告と白色申告の違い
確定申告の方法としてあげられるのが、青色申告と白色申告です。白色申告と比較すると、青色申告は手続きや記帳方法がより複雑になるのが特徴です。
一方で、最大で65万円の青色申告特別控除を受けられるなど、青色申告の方が高い節税効果を見込めます。青色申告と白色申告の違いは以下の表の通りです。
青色申告 | 白色申告 | |
提出書類 |
|
|
帳簿の保存 |
| 法定帳簿など |
記帳方法 |
| 簡易簿記 |
e-Taxの利用 |
| 任意 |
確定申告においてどちらを選ぶのかは、申告する方の自由です。納税額などに影響が出るため、違いについてよく理解したうえで判断するのがポイントです。
関連記事:青色申告から白色申告に変更した方が得?検討するべきケースと注意点を紹介
不動産所得の青色申告のポイント

青色申告するうえで、基本として押さえておきたいのは以下の2点です。
- 事前に提出が必要な書類
- 最大65万円・55万円控除を受けるための条件
以下で詳細に解説します。
事前に提出が必要な書類
青色申告するには、住所を管轄する税務署に対して、事前に以下の書類を提出する必要があります。
- 開業届:新規事業開始、事業用事務所の新設、増設時などに提出が必要な書類
- 青色申告承認申請書:所定の期限までに提出が必要な書類
それぞれの書類について、提出期限は以下の表にまとめました。
開業届 | 原則として、事業の開始などの事実があった日から1ヵ月以内 |
青色申告承認申請書 |
【相続で青色申告の事業を承継する場合】
|
期限までに申請書を提出できなかった場合、白色申告で確定申告を行う必要があります。
最大65万円・55万円控除を受けるための条件
青色申告特別控除の65万円、55万円の控除を受けるには、以下の通り条件を満たす必要があります。
65万円控除 | 以下の条件をすべて満たしている
|
55万円控除 | 65万円控除の「1から5」の条件をすべて満たしている |
事業的規模の条件を満たさない不動産所得であっても、事業所得がある場合、最大で65万円控除を受けられると知っておくとよいでしょう。知らずに10万円控除を適用し、節税のチャンスを自ら逃すケースもある点には注意が必要です。
不動産所得の青色申告メリット
青色申告するメリットは、以下の表にまとめました。
青色申告特別控除を受けられる | 65万円・55万円・10万円のうち、いずれかの控除を受けられる |
青色事業専従者給与を経費にできる |
|
貸倒引当金を経費として処理できる |
|
純損失の繰越し・繰戻しができる |
|
確定申告すると損益通算や純損失の繰越控除などを適用できるため、節税につながる可能性が高まります。不動産所得が赤字であっても、確定申告する方が有利になるケースは多いと知っておくとよいでしょう。
関連記事:青色申告のメリット5つ|デメリットや適用をおすすめできる人とは?
不動産所得の青色申告デメリット
青色申告する場合、メリットのみでなくデメリットも存在します。白色申告と比較した場合のデメリットについて、具体的には以下の表にまとめました。
書類が多い |
|
申請が必要である |
|
副業で不動産貸付をしている場合など、短期的な利益を求める方にとっては、白色申告の方が向いている可能性があります。高い節税効果が期待できる一方で、白色申告に比べて時間や手間がかかるのが、青色申告のデメリットのためです。
取引量が多い場合は特に、エクセルよりも会計ソフトや税理士を利用する方が望ましいです。
不動産所得の青色申告に関するよくある質問

青色申告に関してよくある質問をまとめました。以下で詳細に見ていきましょう。
事業的規模でない不動産所得で青色申告はできますか?
できます。原則として、10万円の特別控除の適用に限られる点に注意が必要です。
一方で、事業所得が生じる事業を兼業している方の場合、65万円または55万円の特別控除を適用できます。
不動産所得の事業的規模とは?
事業的規模とは、不動産賃貸業が事業として認められると示すもので、以下の通り基準が設けられています。
- アパート・マンション:10室以上
- 貸家:5棟以上
- 駐車場:目安として車50台分以上
事業的規模と認められると、税務上のメリットを受けられるのが特徴です。
サラリーマンも不動産所得の青色申告をするとよいですか?
はい。具体的には、以下の4つのメリットを得られるためです。
- 最大で65万円の控除を受けられる
- 損失額を翌年以降3年間繰越せる
- 貸倒引当金を経費として処理できる
- 専従者給与控除を受けられる
一方で、本業を退職するとき、失業保険を受給できないケースがあるため注意が必要です。
青色申告の10万円控除帳簿とは具体的に何ですか?
以下の通り、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳の5つがあげられます。
- 現金出納帳:日々の現金の流れを記載する
- 売掛帳:掛け売りで売上があるときに記帳する
- 買掛帳:買掛で仕入れがあるときに記帳する
- 経費帳:仕入れを除く経費を勘定科目ごとに記帳する
- 固定資産台帳:取得から売却までの経緯を固定資産ごとに記帳する
10万円の青色申告特別控除では、簡易簿記での記帳を認めているのが特徴です。
青色申告で10万円控除を適用するための書類の書き方は?
国税庁の公式サイトを参考にするとよいでしょう。10万円控除を受ける場合、貸借対照表の添付が不要のため、所得税青色申告決算書4ページ目の貸借対照表の記載は不要です。
確定申告に関する相談は税理士へ
不動産所得を得るときの確定申告の必要性や、青色申告と白色申告の違い、青色申告のメリット・デメリットなどを解説しました。不動産所得の青色申告には、手続きなどで時間や労力が必要であるものの、白色申告よりも高い節税効果を得られるのがメリットです。
少しでも多くの資金を残したい方の場合、青色申告を検討するとよいでしょう。青色申告にかかる書類作成や申告の手続きは複雑なため、難しく感じやすいと言えます。税務調査などのリスクに備えるためにも、税理士への依頼を検討するのが望ましいです。
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