定款の事業目的を決定するときは、業種別の例文一覧や競合他社の内容を参考に、なるべく具体的にするのがポイントです。事業目的の内容は、取引先や金融機関からの信頼、将来的な変更手続きの必要性などに影響するでしょう。適切に事業目的を決定すると、事業者にとってさまざまなメリットがあります。今回は、定款に記載する事業目的の要件や業種別の一覧、注意点、変更・追加時のポイントなどを解説します。
目次
定款の事業目的とは

具体的に事業目的を決める前に、以下の通り基本について知っておくとよいでしょう。
- 特徴
- 3つのルール
それぞれ詳しく解説します。
特徴
どのような事業活動によって会社が収益を得るのかを内外に示すものが、事業目的です。具体的には以下の特徴があるため、会社にとって重要な位置づけです。
- 他社と区別するための情報である
- 事業目的に未記載の事業をすると、株主などから追求されるケースがある
- 金融機関から資金調達するとき、事業目的を通して融資対象事業であるかチェックされる
- 目的を明確化すると、取引先に安心感を与えやすい
- 内容に応じて、登記の可否が決まるケースがある
新規事業の開始や既存事業の拡大・縮小、法改正が行われたとき、現在の事業目的が適切かどうかを見直す必要があります。M&Aや事業譲渡などにより、事業内容を見直すときなども同様で、事業目的の変更が求められるケースもあるのが特徴です。
将来的に展開予定の事業をするとき、事業目的に未記載の場合は、定款変更決議や申請などでコストが余分に発生する可能性があります。
3つのルール
事業目的を決めるうえでは、以下の3つの要件を満たす必要があります。
適法性 |
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営利性 |
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明確性 |
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以前は「具体性」も要件となっていたため、「商売」「商業」「物販」などと事業目的を曖昧に記載すると、不認可となるケースがありました。近年、類似商号規制の廃止によって具体性の要件が除かれたため、事業目的の要件も緩和されています。
業種別・定款の事業目的の一覧

事業目的を決定するときは、自社だけで考えるより、すでに他社で使われている事例を参考にするのが重要です。以下で詳しく解説します。
業種 | 事業目的の例 |
情報サービス業 |
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職業紹介・派遣事業 |
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教育 |
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コンサルティング業 |
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レジャー産業 |
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広告業 |
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出版業 |
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宿泊業 |
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旅行業 |
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飲食業 |
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美容業 |
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介護事業 |
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保険業 |
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金融業 |
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電気・ガス・水道業 |
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建設業 |
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不動産業 |
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製造業 |
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卸売業・小売業 |
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古物商 |
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産業廃棄物運搬業 |
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運送業 |
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近年はコンプライアンスの重視やマネーロンダリングの増加などを背景に、事業目的の審査がより慎重に実施される傾向にあります。事業の意志を明確に伝えるためにも、例文を参考に、なるべく具体的に記載するのがポイントです。
定款の事業目的を書くときの注意点

定款の事業目的を記載するとき、知っておきたい注意点やポイントを以下の表にまとめました。
事業目的の数の多すぎ・少なすぎを避ける |
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許認可が必要な事業を知っておく |
(例)
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将来実施する可能性のある事業を盛り込む |
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最後に「前記各号に附帯関連する一切の事業」と記載する |
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同業他社の内容を参考にする |
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内容について不安がある場合、法務局へ相談し、定款をチェックしてもらうのも1つの方法です。
関連記事:電子定款を作成するメリット・デメリットは?ソフトや機材不要で作成する方法も紹介
事業目的の変更・追加するときのポイント
戦略立案や市場の変化に対応するために、事業目的の変更が求められるケースもあるでしょう。新規事業の展開などで事業目的を変更・追加するときは、手続きをする必要があります。以下で詳しく解説します。
必要書類
定款の事業目的を変更するために必要な書類は、具体的に以下の通りです。
書類の名称 | 概要 |
株式会社変更登記申請書 |
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株主総会議事録 |
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株主リスト |
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委任状 | 代理人の司法書士が申請する場合は必要 |
申請書の書式・テンプレートは、法務局の公式サイトでダウンロードできます。
関連記事:定款変更とは?必要なケースから登記申請の流れ・費用、注意点までを解説
申請方法
定款の事業目的に変更が生じたとき、以下の流れで手続きを進めるのがポイントです。
- 株主総会の開催
- 株主総会議事録・株主リストの作成
- 変更登記申請書の作成
- 管轄の法務局に書類の郵送or持ち込み
目的変更するためには、以下の条件を満たす株主総会を開催する必要があります。
- 議決権の過半数を有する株主の出席
- 議決権の3分の2以上の賛成による特別決議
株主総会の開催日の2週間前までに招集通知を郵送し、議案を示します。株主や取引先に対して説明が求められるケースもあるため、事前に対応しておくとスムーズに進められます。
変更・追加1件あたり、登録免許税として会社の規模とは無関係で、30,000円の納付が求められる点には注意が必要です。登録免許税を納める方法として、郵便局や法務局で収入印紙の購入のほか、金融機関での現金納付があげられます。
必要に応じて、申請完了後は謄本を取得し、正しく変更されているか確認するとよいでしょう。
よくある質問
定款の作成についてよくある質問をまとめました。以下で詳細に解説します。
定款の事業目的以外のビジネスをするとペナルティを受けますか?
いいえ。事業目的以外のビジネスをしたとしても、会社法などではペナルティの対象外として扱われます。
一方で、取引や資金調達で信用問題へ発展したり、許認可申請で不利になったりなどする点は注意が必要です。事業目的を決定するうえで、ある程度将来を見据えておくのがポイントです。
定款目的検索できるデータベースはありますか?
あります。
多くの民間企業のWebサイトでは、無料で利用できるデータベースが用意されています。事業者の置かれている状況に応じて、定款に記載するとよい事業目的の内容が異なるケースもあるため、参考程度に見るとよいでしょう。
定款の事業目的がたくさんあるメリットとデメリットは?
定款変更するときの時間や労力を削減できたり、取引先や金融機関などの信用力を高められたりすることがメリットと言えます。
一方、多すぎたり具体性がなかったりする事業目的の場合、取引先や金融機関の信頼を損ねたり、定款作成のための時間がかかったりするのがデメリットとなるでしょう。
会社設立に関する相談は税理士へ
今回は、定款に記載する事業目的の要件や業種別の一覧、注意点、変更・追加時のポイントなどを解説しました。
事業目的を適切に決定すると、取引先や金融機関などから信頼を得やすくなり、将来的な変更にかかるコストも削減できるため、会社設立時は事業目的の決定が重要です。業種別の例文や競合他社の内容などを参考に、慎重に決定するのがポイントです。
会社設立に伴う相談や手続き代行、節税対策などについては税理士を頼りにするとよいでしょう。事業を効率的に発展させるためのサポートや、アドバイスなどを受けられます。
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