FXで利益が出たとき、税金がいくらかかるのか、節税はできるのかと悩む方は多いでしょう。FXの利益には原則として税金がかかり、条件を満たすと確定申告も必要になります。本記事では、国内FXにかかる税金の基本から、すぐに実践できる税金対策、経費にできる費用の具体例、申告時の注意点まで詳しく解説します。無駄な税負担を防ぎ、安心して取引を続けたい方はぜひ参考にしてください。
目次
FXの利益に税金はかかる?
FXで利益が出た場合、それは課税対象となり、一定の条件を満たすと確定申告も必要になります。FXにかかる税金の基本について解説します。
FXの利益は「雑所得」に分類される
FX取引によって得た利益は、国内FXの場合、「先物取引に係る雑所得等」として申告分離課税の対象になります。
株式や不動産所得などとは異なり、ほかの所得と合算せず、FX取引単体で税額が計算される仕組みです。
一方、海外FXは総合課税扱いとなり、給与など他の所得と合算して累進課税(最大税率55%)が適用されます。
どちらの課税方法になるかは、取引業者が日本の金融商品取引業者として登録されているかどうかで決まるため、事前に確認しておきましょう。
参考:No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁
関連記事:FXや株のトレーダーは個人事業主になれない?税金対策を解説
所得税・住民税の対象となる
国内FXの利益は、所得税と住民税の課税対象となり、申告分離課税として扱われます。所得税は15%、住民税は5%、さらに復興特別所得税0.315%が加わり、合計20.315%の税率で一律に課税されます。
累進課税が適用される給与所得などとは異なり、利益額の大小にかかわらず一定割合で課税されるため、計算は比較的シンプルと言えるでしょう。
利益が出た年は確定申告が必要
FXの年間利益が一定額を超えると、確定申告の義務が生じます。
給与所得者の場合は年間20万円超、専業主婦やフリーランスなど給与を受け取っていない人は基礎控除(現行48万円)を超えると課税対象になります。
なお、令和7年以降は基礎控除の引き上げが予定されており、今後は申告基準が変わるため注意が必要です。
申告を怠ると延滞税や加算税が課されるリスクがあるため、早めの準備を心がけましょう。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
関連記事:株式の譲渡所得は確定申告する?特定口座なら申告が不要な場合も
FXで税金がかかるタイミングと計算方法
FX取引では、いつ税金が発生し、どのように税額が決まるのかを正しく理解しておく必要があります。
税金が発生するのは決済時
FXでは、ポジション(買いや売りの持ち状態)を決済して利益が確定したときに税金がかかります。保有中の含み益・含み損には課税されず、あくまで実際に決済した損益(確定損益)のみが対象になります。
例えば、年末にポジションを持ち越した場合、その年には税金はかかりません。税負担を見越して決済のタイミングを調整するのも取引戦略の1つです。
税額は年間の純利益に対して課税
FXの税額は、1年間の総取引の「確定損益の合計額」に対して一律20.315%(所得税・住民税・復興特別所得税)をかけて計算されます。
利益だけでなく損失も含めて通算し、差し引いた最終的な「純利益」が課税対象になります。例えば、1口座で20万円の利益、他口座で10万円の損失があれば、課税対象は10万円です。
税額は自己計算・自己申告が必要
FXの利益はFX会社が源泉徴収してくれるわけではなく、自分で損益を集計し、確定申告で申告・納税を行う必要があります。
取引履歴や報告書をもとに、正確な損益を算出しましょう。証拠書類の保管や、通年の記録整理も税務リスクを防ぐ上で重要となります。
知らないと損するFXの節税対策5選

FXで利益が出たとき、何も対策をしないと余計な税金を払ってしまう可能性があるでしょう。あらかじめ知っておきたい節税対策5選を紹介します。
- 必要経費を正しく計上する
- 損失繰越制度を活用する
- 複数口座の損益通算で税負担を軽減する
- 経費とプライベートの線引きを徹底する
- 節税を目的とした法人化を検討する
必要経費を正しく計上する
FXに関連する通信費やセミナー代、書籍代などの必要経費は、正しく計上すれば雑所得から差し引けるため、納税額の軽減に繋がります。
支出の内容とFXとの関連性が説明できるよう、領収書や明細、用途メモを残しておく必要があります。曖昧な経費は否認される可能性があるため注意しましょう。
損失繰越制度を活用する
FXで損失が出た場合でも、確定申告を行えば最長3年間繰り越して翌年以降の利益と相殺でき、将来の税負担を軽減できます。
申告を忘れると繰越控除が使えなくなるため、利益が出ていなくても必ず申告する点に注意しましょう。
複数口座の損益通算で税負担を軽減する
FXで複数の口座を使っている場合は、同じ年内の利益と損失を合算して損益通算できます。
ある口座で10万円の利益が出ていても、別の口座で50,000円の損失があれば、課税対象となる利益は差額の50,000円です。
無駄な税負担を避けるためにも、取引履歴を整理し、全口座の損益を正確に把握しておきましょう。
経費とプライベートの線引きを徹底する
経費として認められるには、「FXのための支出であること」が証明できなければなりません。プライベート利用と混同される支出は否認のリスクがあります。
例えば、自宅のネット代やPC代は業務割合に応じて按分し、メモや記録で業務利用の根拠を残すようにしましょう。線引きが曖昧なまま計上すると、税務調査でトラブルになる可能性があります。
関連記事:家事按分とは?経費にできる割合や目安、計算方法を解説
節税を目的とした法人化を検討する
FXで安定的に利益が出ている場合は、法人化によって節税の幅が広がる可能性があります。
法人は経費の対象範囲が広く、役員報酬や退職金、法人税率の活用によって所得を最適に分散できます。また、損失の繰越期間も個人より長くなるため、長期的な収支管理も有利になるでしょう。
ただし、法人化にはコストや管理の手間もあるため、事前に専門家への相談が推奨されます。
FXの節税に使える経費の具体例

FX取引で発生する費用のうち、業務に必要なものは「必要経費」として認められ、確定申告時に所得から差し引けます。経費として計上できる費用を一部紹介します。
通信費(インターネット・スマホ代)
インターネット回線やスマホ料金のうち、FX取引に使用している分は通信費として経費計上が可能です。ただし、私的利用と兼ねている場合は、使用実態に応じて合理的に按分する必要があるので注意しましょう。
取引専用の回線や端末を用意すれば、経費計上の根拠が明確になり、税務署からの指摘を避けやすくなります。明細や使用記録を残しておくと安心です。
書籍・情報サービスの購読費
FXに関する情報収集や学習のために購入した専門書や有料メディアの購読料は、知識向上のための経費として認められやすい支出です。
例えば、為替相場分析の書籍や、相場情報を提供する有料サイトの利用料などです。対象書籍やサービスの内容が業務に関連していることを示せるよう、領収書とあわせて用途も記録しておきましょう。
セミナーや講座の参加費
FXスキル向上や投資戦略習得のためのセミナー受講料は、必要経費として認められる可能性が高いです。例えば、税理士や投資専門家による講義、テクニカル分析に関する実践講座などが該当します。
ただし、懇親会費用など直接業務に関係ない費目は除かれる可能性があるため、内訳ごとの領収書や内容確認資料の保存が重要です。
PCやモニターなどの設備費
FXで使用するパソコンやモニターなどの機器類は、取引に必要なものであれば経費として計上できます。
ただし、金額によって処理方法が異なり、1台あたり10万円以上の場合は減価償却資産として数年にわたり計上し、10万円未満であれば消耗品費として一括で経費計上となります。
いずれのケースでも、FXのための支出であることを示す記録が必要で、他用途との兼用には注意しましょう。
関連記事:減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!
関連記事:個人事業主はパソコンを経費にできる?購入金額別で計上処理を解説
自宅兼オフィスの家賃・光熱費の一部
自宅でFX取引を行っている場合は、作業スペースの面積や使用時間に応じて、家賃や光熱費の一部を経費として計上できます。
例えば、家全体のうち20%のスペースをFX取引用に使っている場合、家賃や光熱費の20%の割合で経費として計上できるでしょう。
重要なのは、使用状況の合理性と、それを説明できる記録の保存です。税務署に問われた際に備え、根拠を明確にしておきましょう。
FXの確定申告で失敗しないための5つの注意点

FXで利益や損失が出た場合、確定申告の対応を誤ると後々大きな不利益に繋がる場合があります。申告時に注意すべき5つのポイントについて解説します。
- 確定申告を忘れるとペナルティが発生
- 損失繰越の申告漏れで控除が受けられない
- 誤った経費計上で否認されるリスク
- 取引履歴の保存が不十分だと集計困難
- 税額が住民税・国保に影響する
確定申告を忘れるとペナルティが発生
FXで課税対象となる利益が出ているにもかかわらず確定申告を怠ると、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課される可能性があります。
たとえ故意でなくても、税務署の調査などで未申告が発覚するケースは少なくありません。追徴課税が重なると、納税額が本来の何倍にもなる可能性があるため、期限内に適切に申告しましょう。
関連記事:追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説
損失繰越の申告漏れで控除が受けられない
FXで損失が出た場合、確定申告をすれば翌年以降3年間にわたって利益と相殺できますが、損失が出た年に申告しなかった場合はこの制度が適用されず、翌年利益が出ても控除できません。
繰越控除を使うには毎年申告を続ける必要があるため、たとえ赤字でも申告しておくことが将来の節税に繋がります。
誤った経費計上で否認されるリスク
経費として計上した支出が業務と関係ないと判断されれば、税務調査で否認される可能性があります。
例えば、私的なスマホ代や旅行費をFX関連費用として申告してしまうと、否認対象になる場合があります。
税務署からの指摘を避けるためにも、正確な領収書の保存と使用目的や按分根拠の記録を残しておきましょう。
関連記事:税務調査とは?いつ・どこまで調べられるのか?大まかな流れや査察調査(国税調査)との違いなども解説
取引履歴の保存が不十分だと集計困難
年間取引報告書だけでは、詳細な損益や経費の確認が不十分なケースがあります。
特に複数口座を使っている場合、月別の損益明細や入出金履歴を自ら管理・保存しておかないと、正確な申告が困難になります。
確定申告時の手間を減らすためにも、日常的に取引履歴の整理・保管を習慣化しておきましょう。
税額が住民税・国保に影響する
FXの利益は、所得税だけでなく住民税や国民健康保険料にも反映される可能性があります。前年より所得が増えると保険料が急増することもあり、申告後に思わぬ出費が発生するケースがあるため注意しましょう。
特にフリーランスや専業トレーダーは、所得額に応じて大きく変動するため、事前に税額シミュレーションを行い、資金を確保しておくのが大切です。
なお、会社員など勤め先の健康保険に加入している場合、FXで利益を出したとしても、健康保険料が変わることはありません。
FX取引で税金対策を考えている方は専門家に相談を
FX取引は利益が出ると嬉しい反面、税金面での不安もつきものです。確定申告のミスや経費計上の判断ミスは、思わぬ追徴課税や税務調査に繋がるケースもあります。
こうしたリスクを避けるためには、制度に詳しい専門家に相談するのが最善でしょう。特に、節税や損失繰越、法人化の判断は個人では難しい部分も多いため、正確なアドバイスが必要です。
小谷野税理士法人では、FX取引や投資に関する税務相談を多数取り扱っており、個人投資家の税務申告から節税戦略まで幅広くサポートしています。「自分の取引が申告対象か不安」、「税金対策をしたい」という方は、ぜひ一度小谷野税理士法人にご相談ください。





