FXで得た利益には、一定額を超えると税金がかかります。「いくらから申告が必要になるのか?」、「税金の計算はどうすればいいのか?」と不安に思う方も多いでしょう。加えて、専業主婦や会社員など立場によっても申告基準が異なるため、注意が必要です。本記事では、税金が発生するラインや計算方法、損失が出た場合の取り扱いまで丁寧に解説します。確定申告や住民税への影響が気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
FXで得た利益に税金はかかる?

FXで得た利益には税金がかかりますが、仕組みを知らずに放置するとリスクに繋がります。FXにおける課税の基準や税率など基本的なポイントについて解説します。
FXの利益は少額でも課税対象となる
FXで得た利益は、取引額の多寡にかかわらず「所得」として課税対象になります。たとえ数千円や数万円の利益であっても、条件によっては申告義務が発生するため、軽視はできません。
特にFXは少額でも利益が出やすいため、初年度から税務上の扱いを正しく理解しておく必要があります。
FXの利益は「雑所得」として扱われる
国内FXで得た利益は、税法上「雑所得(先物取引に係る雑所得等)」に分類されます。
重要なのは、雑所得の中でもFXは他の副業収入とは異なり、特定の課税方式が適用される点です。申告分離課税という独自の扱いにより、FXの損益は他の所得と切り離して申告しなければなりません。
申告書作成時は、FXだけで損益をまとめて記載する点に注意が必要です。
参考:No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁
関連記事:FXや株のトレーダーは個人事業主になれない?税金対策を解説
FXの税金は「いくらから」発生するのか?
FXを始めるにあたって気になるのが、「どのくらいの利益を得たら税金がかかるのか」という点でしょう。FXの利益がいくらから課税対象になるのか、金額ごとの基準をわかりやすく解説します。
年間20万円超の利益がある会社員は確定申告が必要
会社員の場合、FXなどの副業で得た利益が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。これは年末調整済みであるかどうかは関係ありません。
たとえ副業がFXだけであっても、20万円を超えた場合は申告義務が生じるため、こまめな利益管理が重要です。
関連記事:株式の譲渡所得は確定申告する?特定口座なら申告が不要な場合も
年間48万円超の利益がある専業主婦・学生も対象
専業主婦や学生など所得がない人でも、FXの利益が年間48万円を超えると所得税の課税対象となり、確定申告が必要です。
加えて、扶養控除を受けている場合は扶養から外れる可能性があり、家族の税負担に影響する可能性があるので注意しましょう。
なお、令和7年分以降の所得税からは、基礎控除額が最大で95万円となる段階的な改正が予定されており、160万円の給与・アルバイト所得までは非課税となる可能性があります。詳細は国税庁による改正情報をご参照ください。
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
年間43万円超なら住民税の申告が必要な場合がある
FXで年間43万円を超える利益がある場合、たとえ所得税がかからず確定申告が不要な方でも、住民税の申告が必要になるケースがあります。
住民税の基礎控除額は所得税とは異なり43万円であるため、専業主婦や学生などであっても、一定の所得を得た場合は課税対象となります。自治体が課税資料を把握できないと、無申告扱いとなり、後日納税通知が届く場合があるため注意しましょう。
FXの税金の計算方法

FXで得た利益に課税されるといっても、「実際にいくら税金がかかるのか」は具体的にイメージしにくいでしょう。FXの利益の出し方や経費の扱い、税額の計算方法まで、実務に即してわかりやすく説明します。
利益の計算は「売却益-購入費用」で行う
FXでは、ポジション(通貨を「買った」または「売った」状態)を決済してはじめて利益が確定し、その利益が課税対象となります。
例えば、1ドル=130円で買ったポジションを135円で決済すれば、10,000通貨あたり50,000円の為替差益が生じ、これが課税の対象になります。
逆に、まだ決済していないポジション(いわゆる含み益・含み損)は課税されません。
経費として差し引ける費用もある
FXで発生した利益からは、必要経費を差し引いて課税対象額を算出できます。
経費として認められるのは、取引に直接関係する費用に限られます。例えば、FX関連の書籍代、セミナー費、チャートソフト利用料、通信費、一定の電気代などです。
ただし、プライベートとの区別があいまいな支出や証明が困難な費用は、原則として経費に含められないため注意しましょう。
税額は利益×20.315%で算出する
FXで得た利益にかかる税金は、(利益 - 経費)× 20.315% という計算式で求められます。
税率20.315%の内訳は以下の通りです。
- 所得税:15%
- 住民税:5%
- 復興特別所得税:0.315%
例えば、年間で90万円の利益が出て、経費が10万円かかった場合、課税対象は80万円です。この場合の税金は、80万円 × 20.315% = 約16万2,500円 となります。
税金は利益が出た翌年の確定申告で納付するため、納税分の資金はあらかじめ確保しておきましょう。
FXで損失が出た場合の税務上の取り扱い
FX取引では必ずしも利益が出るとは限らず、損失を出してしまう年もあるでしょう。損をした年の税務処理を正しく行えば、翌年以降の節税に繋がる可能性もあります。
損失が出たときの税務上の扱いや、含み損との違いなど、混同しやすい点を整理して紹介します。
損失は翌年以降3年間繰り越せる
FXで損失が出た場合、その損失は翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の利益と相殺(損失繰越控除)することが可能です。
この制度を活用すれば、翌年以降に利益が出ても、その分にかかる税金を軽減できますが、繰越控除を受けるには毎年連続して確定申告を行う必要があります。
1年でも申告を怠ると、以後の繰越は無効になりますので注意しましょう。
参考:No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁
関連記事:上場株式の譲渡損失を3年間繰越控除するにはどうすればいい?
国内FXでは損益通算の対象外
国内FXの損失は、他の所得とは損益通算できません。FXの利益や損失は「申告分離課税」の対象であり、給与所得や不動産所得などと合算して相殺できない仕組みになっています。
ただし、CFDや商品先物など同じ「先物取引に係る雑所得等」区分に含まれる取引であれば通算が可能です。複数の所得がある方は、どの取引が通算対象かを確認したうえで申告しましょう。
参考:No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁
含み損では損失扱いにならない
FXでポジションを保有中に発生している「含み損」は、課税上の損失とは認められません。
損益の計算はポジションの決済時点で行われるため、決済を伴わない状態の損失は帳簿上も税務上も反映されません。
実際に確定した損失(売買完了)のみが損益計算や損失繰越の対象となるため、「含み損が大きいから今年はマイナス」という判断は誤りなので注意しましょう。
参考:No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係|国税庁
FXの税金に関する5つの注意点
FXでの利益に対して正しく納税するためには、制度上の細かいルールにも注意が必要です。申告ミスや予期せぬペナルティを避けるために、FXに関する税制で見落としがちな5つの注意点について解説します。
- 海外FXは課税区分も税率も異なる
- 損益の記録は自分で管理する必要がある
- 損失がある年も確定申告しないと繰越できない
- 利益の少額でも住民税申告が必要になる場合がある
- 税務調査やペナルティの対象になる可能性もある
海外FXは課税区分も税率も異なる
海外FXは国内FXとは異なり「総合課税」の対象となり、最大で55%の累進課税が適用されます。また、国内FXのような損失繰越制度は使えず、税制面での優遇がほとんどありません。
取引所が海外にある場合、税率や控除の制度がまったく違うため、知らずに国内FXと同じ感覚で運用すると、想定外の高額納税や申告ミスが発生する可能性があるため注意しましょう。
損益の記録は自分で管理する必要がある
FX取引では、証券会社が税金の自動計算や源泉徴収を行ってくれません。
年間の取引履歴を自分でダウンロード・集計し、損益を正確に記録・保管しておく必要があります。
確定申告での損益計算は自己責任のため、記録が不十分だと申告ミスや控除漏れに繋がるので注意しましょう。
損失がある年も確定申告しないと繰越できない
FXで損失が出た場合、損失繰越を適用するには必ず確定申告を行う必要があります。
たとえ課税される利益がない年でも、申告を怠ると繰越の権利が失われ、翌年以降の利益と相殺できなくなります。
繰越控除は最大3年間有効ですが、毎年継続して申告を行わなければ制度が無効となるため、損失を出した年こそ申告手続きを忘れずに行いましょう。
利益の少額でも住民税申告が必要になる場合がある
所得税の申告基準(20万円以下など)を下回っていても、住民税の申告が必要になるケースがあります。
自治体によっては、少額の雑所得についても課税対象として扱うため、申告を怠ると後から修正や納付通知が届く可能性があります。
所得税の申告が不要な場合でも、「住民税の申告は必要か」を自治体の窓口や公式サイトで確認しておきましょう。
税務調査やペナルティの対象になる可能性もある
FXの申告を怠ったり過少申告を行った場合、税務署による調査対象となり、追徴課税や加算税が課される可能性があります。
特に、マイナンバー制度の導入により、金融取引の情報は税務当局に把握されやすくなっており、「バレないだろう」と考えての無申告は非常にリスクが高くなっているので、正確な申告と記録の保管を徹底してください。
関連記事:税務調査とは?いつ・どこまで調べられるのか?大まかな流れや査察調査(国税調査)との違いなども解説
関連記事:追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説
FXの税金に関してよくある質問

FXの税金まわりでは、実際に申告が必要かどうか、どこまで会社に知られるのかなど、迷いやすいポイントが多くあります。特に多く寄せられる質問を取り上げますので、ご自身の状況と照らし合わせながら参考にしてみてください。
FXの利益が10万円でも税金はかかりますか?
FXの利益が10万円だけであり、他に所得がなければ、基本的に課税対象にはなりません。
会社員であれば雑所得が年間20万円以下、専業主婦や学生など扶養対象者であれば所得が年間48万円以下であれば、原則として所得税の確定申告は不要です。
ただし、他の副業収入と合算して基準額を超える場合や、住民税の申告が必要になるケースもあるため、他の所得と合わせて判断しましょう。
確定申告し忘れた場合は、どう対応すればいいですか?
申告漏れに気づいた場合は、速やかに「期限後申告」を行いましょう。自発的に修正すれば、加算税などのペナルティが軽減または免除される可能性があります。うっかり忘れていた場合でも、放置せずに早めの対応が肝心です。
副業でFXをしていると会社にバレますか?
原則としてFX取引をしているだけで会社に知られることはありませんが、住民税の申告方法によっては副業が発覚する場合があります。
確定申告の際、住民税を「特別徴収」にすると、会社に送られる住民税の通知により副業が知られてしまう可能性があるため、「普通徴収(自分で納付)」を選択するとよいでしょう。
FXの税金について不安がある方は専門家に相談
FXの利益が少額でも、税務処理を誤れば思わぬペナルティを受けるリスクがあります。特に複数口座を利用していたり、損失繰越を行いたい方は計算や申告の手続きが煩雑になりがちです。
こうしたリスクを未然に防ぐためには、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
小谷野税理士法人では、FXを含む金融所得に関する税務相談に対応しています。確定申告の方法がわからない方や、損益の計算に不安がある方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。





