売上や取引が限定的であるマイクロ法人にも、顧問税理士は必要なのでしょうか。結論から言えば、自分に税務の知識がない方や、税務に割く時間がない方は、顧問税理士をつけるのがおすすめです。この記事では、顧問税理士の必要性やメリット・デメリット、費用相場、マイクロ法人に合った税理士の選び方などを解説します。
目次
顧問税理士とは?スポット依頼の税理士との違い
顧問税理士とは、継続的な契約を結び、月単位や年単位で税務や会計のサポートをしてくれる税理士を指します。
サブスクのように継続的・定期的に料金を支払う代わりに、契約内容に応じて、随時税務に関する相談ができます。税務への不安をすぐ解消できるのが魅力です。
契約形態は、税理士と定期的にやり取りできる「月次顧問」が一般的ですが、決算申告だけを依頼する「年1決算型」もあります。ただし年1型は普段のやり取りがないため、毎年依頼したとしても、狭義では顧問と定義されない場合もあります。
一方、「スポット依頼の税理士」は、必要なときだけ単発で関与してもらう税理士を指します。顧問契約との区別のため「個別契約」と呼ばれるケースもあります。継続的に料金を支払わなくて済むため、月次顧問と比べてコストを抑えられるのが魅力です。
例えば「今年の決算だけ頼みたい」「税務調査の立ち会いだけお願いしたい」といったケースで利用されます。同じ税理士に年に1回の決算だけを頼んでいても、形式上はスポット契約である場合もあります。
この記事では、月単位で関与する月次顧問スタイルを「顧問税理士」として解説します。読み進める際の参考にしてください。
関連記事:顧問税理士とは?業務内容や費用相場、良い税理士の見極めポイントを解説
マイクロ法人に顧問税理士は必要?
顧問税理士が必要かどうかは、その人が持つ税の知識や不安などによって異なります。
顧問税理士が必要なのは「税務に不安がありリスクを避けたい人」
顧問税理士をつけた方がいいのは、税務に対する不安が強い人や、リスクを減らしたい人です。
マイクロ法人といえど法人である以上、税務処理や決算などのルールは個人事業よりも複雑です。判断を誤れば、税務署から指摘を受けたり、思わぬ損失を出したりするケースもあります。
下記の要素に1つでも当てはまる人は、顧問税理士をつけることを前向きに検討しましょう。
- 税務や経理の判断をすべて1人で抱えるのが不安
- 節税と脱税の線引きがわからなくて怖い
- 税務調査が来たらどう対応すればいいのか不安
- 申告ミスによる損失を避けたい
- 税理士に相談できる安心感が欲しい
- 決算書の作成や申告の手続きが複雑で手が回らない
- 決算や申告に時間をかけたくない(本業やプライベートに時間を割きたい)
- 少しでも税金を減らせる選択肢を知っておきたい
- 融資や補助金の相談をしたい
税金に対する手間や不安をなくせる安心感は、法人経営を続けていくうえで精神的な支えになるでしょう。
顧問税理士が不要なのは「自力で運営できる税務知識がある人」
自分で記帳から申告まで対応できるスキルと時間的余裕があれば、税理士と顧問契約をしなくても問題ありません。
具体的には、下記の要素に多く当てはまる人です。
- 会計や税務にある程度の知識があり、ツールなどで記帳や申告が自力でできる
- ネット上の膨大な情報から、正確かつ最新のものを見極めて活用できる
- 年1回の決算申告だけをスポットで外注している
- 節税や時間の節約よりも、固定費(毎月の支出)削減を重視している
- 申告ミスや税務署の対応も自己責任で行う覚悟がある
事業がシンプルで、帳簿も自分で管理できるなら、税理士にかかるコストを抑えるという選択肢もありでしょう。
関連記事:顧問税理士はいらない?顧問税理士をつけない場合のリスクとデメリットについて
顧問税理士のメリットは「安心と時間を買えること」
顧問税理士をつけて得られる代表的なものは、「安心」と「時間」です。
すべての判断や処理を自分だけで担う必要があるマイクロ法人では、相談相手がいるだけで安心感が得られます。また、調べる・考える・処理するといった時間を減らせるため、本業やプライベートに集中しやすくなります。
具体的なメリットは下記の通りです。
メリット | 具体例 |
ミスを防げるので安心できる |
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作業を任せられ時間を得られる |
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お金を守り増やす工夫ができる |
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自分の時間と安心を得るための投資として検討してみましょう。
顧問税理士のデメリットは「費用負担」と「相性」
顧問税理士をつける最大のデメリットは、毎月「顧問料」という名の固定費が発生することです。特に、売上が限定的なマイクロ法人では、相談した回数や内容と比べて「元が取れていない」と感じやすい傾向があります。
また、税理士の対応力によっては、思ったような助言が得られずモヤモヤするケースもあります。
具体的なデメリットは下記の通りです。
- 毎月の顧問料が発生する
- 節税額より顧問料が高いと損に感じる
- 相談したい内容が少ないと「元が取れていない」と思いやすい
- 担当税理士との相性が悪いと、継続がストレスになる
- 相談しても期待したほどのアドバイスが得られないと満足度が下がる
顧問税理士をつける場合は、依頼する目的や求める税理士像を契約前に整理しておきましょう。
顧問税理士へ支払う月額費用の相場は30,000〜60,000円
ここでは顧問契約の費用感を把握しましょう。
一般的に、顧問契約の月額報酬は30,000〜60,000円程度が相場です。ただし、業務範囲が限定されているプランや、マイクロ法人に特化したサービスであれば、月額5,000円程度の契約もあります。
顧問料は、記帳代行の有無や相談対応の範囲など、契約内容によって上下します。中でも、「年に1度の決算料が月額に含まれているか否か」は必ずチェックしましょう。月額顧問料が安い場合、決算料が別途必要である傾向があります。
別途必要である場合、決算報酬は月額報酬の4〜6ヵ月分程度が相場です。
例えば月額20,000円で決算料が別の場合、年間に発生する税理士への報酬は以下の通りです。
- 月額顧問料:20,000円×12ヵ月=24万円
- 決算申告料:20,000円×6ヵ月分=12万円
- 合計:年36万円
一方で、月額30,000円に決算料込みの契約であれば、年間に発生する税理士への報酬は以下の通りです。
月額顧問料のみ:30,000円×12ヵ月=年36万円
このように、結果として年間の支払総額は同じでも、内訳によって印象が異なります。契約前には、「年次決算業務を含む」と契約書に明記されているか否かを確認しましょう。
なお、顧問契約を結ばず、決算申告だけをスポット依頼するのであれば、15〜25万円程度が相場です。格安プランだと50,000円台のものも存在します。取引内容や資料の整理状況などによって価格が変動するので注意しましょう。
関連記事:【税理士監修】法人が税理士に依頼する費用の相場はいくら?依頼内容別の相場と費用を抑えるポイントをご紹介!
関連記事:税理士との契約形態|顧問契約・スポット契約の特徴と料金相場
マイクロ法人に強い税理士の選び方
ここでは、どんな税理士を顧問税理士として選ぶべきかをケース別に解説します。
個人事業との二刀流なら、社会保険や所得分散に強い税理士を
個人事業主として活動しつつマイクロ法人も運営している「二刀流」の場合は、社会保険や所得分散に詳しい税理士がおすすめです。
二刀流は、税金以外にも、社会保険料、扶養判定、各種制度への影響なども含めて考える必要があります。例えば、個人と法人どちらの名義で収益を上げるか、役員報酬をどう設定するか、社会保険の加入をどうするかなどです。
法人の役員報酬が高すぎると法人の利益が減って節税にはなるものの、個人側の税負担や社会保険料が増えてしまいます。逆に報酬を抑えすぎると、厚生年金の将来受取額が少なくなったり、生活に困ったりするケースもあります。
こういった制度の複雑さを理解してアドバイスしてくれる税理士なら、余計なリスクを避け最大限にメリットを活かせます。
社会保険や所得分散に詳しい税理士を探すには以下の方法がおすすめです。
税理士の発信内容やブログを チェックする |
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面談時に丁寧に答えてくれるか チェックする |
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発信内容や面談時の対応を見て、曖昧だったり話を逸らされたりしたら、相性が悪い可能性があります。
関連記事:一人社長におすすめの税金対策は?節税のポイントや経費の範囲について解説
本業が会社員なら、副業に理解があり情報管理に強い税理士を
会社員として働きつつマイクロ法人を運営している場合は、副業事情に配慮できる税理士がおすすめです。
特に、会社にマイクロ法人の存在を知られたくない場合は対策が必要です。住民税の通知などから会社に副業が発覚するケースがあるためです。
例えば、役員報酬を設定すると、住民税の通知が本業の会社に届く可能性があります。これを避けるためには、マイクロ法人からの報酬をゼロにしたり、住民税の徴収方法を切り替えたりするなどの対応が必要です。
税理士がこうした配慮を欠くと、知らぬ間に会社にマイクロ法人の存在がバレてしまう可能性があります。
副業に理解があり情報管理に強い税理士を探すには、以下の方法がおすすめです。
税理士の発信内容やブログをチェックする |
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面談時に答えられるかチェックする |
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実績を確認する |
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副業に理解のある税理士なら、情報漏洩リスクを下げつつ、運営をサポートしてくれます。
関連記事:副業は住民税でバレる?申告方法や会社にバレない方法を解説
顧問税理士の探し方についてさらに知識を深めたい方は、下記の記事も併せてご確認ください。
関連記事:顧問税理士の探し方10選・選ぶ際の10個のポイント
関連記事:税理士の探し方がわからない?優先順位やチェックポイントを解説
マイクロ法人に顧問税理士が必要か不安な方はご相談ください
この記事では、マイクロ法人に顧問税理士が必要か否かについて解説しました。
税務に不安があり、すべての判断を自力でやる自信がない方は、顧問税理士をつけるのがおすすめです。逆に、税務の知識があり、時間的余裕もある方は、顧問税理士をつけない場合もあります。
当税理士法人では、マイクロ法人の設立支援から日々の税務相談、決算・申告まで、必要なサポートだけを柔軟にご提案します。「顧問をつけるほどでもないかも…」という段階でも、遠慮なくご相談ください。