従業員の健康を重要な経営資源と捉える「健康経営」は、企業の生産性向上や価値向上、社会的信頼の獲得に繋がります。近年は補助金・助成金を活用して、費用負担を抑えながら戦略的に健康経営を推進する企業が増えています。本記事では、代表的な補助金・助成金の種類や活用メリット、申請のポイントを詳しく解説しますので、健康経営を本格的に進めたい方はぜひ最後までご覧ください。
目次
健康経営とは
健康経営とは、従業員の健康保持・増進を重要な経営資源と捉え、戦略的に取り組む考え方です。
従業員の健康は労働生産性の向上や人材確保、医療費の削減など、さまざまな経営課題の解決に繋がります。
特に少子高齢化が進む中では、優秀な人材を惹きつけ、長く働いてもらうための「魅力ある職場づくり」として注目されています。
これらの取り組みは、企業の持続的な成長や社会的評価の向上にも寄与し、企業価値の強化を後押しするでしょう。
健康経営に取り組む企業が補助金・助成金を受けられる理由
企業が健康経営に取り組む際、補助金・助成金を活用できるのはなぜでしょうか。実は、国や自治体がある狙いを持って健康経営を推進しており、企業を後押しするさまざまな支援制度が用意されています。
国の政策として健康経営が推進されているため
企業が補助金・助成金を受けられる大きな理由は、国が健康経営を積極的に推進しているためです。
政府は、国民の健康寿命延伸や将来的な医療費削減を目指し、企業による従業員の健康保持・増進を支援しています。
その一環として補助金・助成金制度を設け、企業が健康経営に取り組む際の初期費用や運用コストを軽減できるよう後押ししています。
中小企業の負担軽減を図るため
補助金・助成金が提供されるのは、中小企業の負担を軽減することが目的だからです。中小企業は大企業に比べて資金面での制約が大きく、健康経営の導入に高いハードルを感じがちです。
補助金・助成金を活用すれば、初期費用や施策実施にかかるコストを大幅に削減でき、安心して健康経営を始められるでしょう。
この支援策により、中小企業でも従業員の健康を重視した職場づくりが現実的に進められるようになっています。
地域経済活性化のため
企業が補助金・助成金を受けられるのは、地域経済の活性化を促進する狙いがあるからです。
自治体は、地域企業が健康経営に取り組むことで従業員の定着率を高め、地域全体の雇用を安定させたいと考えているため、自治体独自の補助金・助成金制度が充実しており、地域特性に合わせた支援が用意されています。
こうした制度を通じて、地域社会全体の活性化と企業の持続的な成長が同時に実現されています。
健康経営で活用できる代表的な補助金・助成金
健康経営を推進する際、補助金・助成金を活用することで費用負担を大幅に軽減でき、施策の導入・継続が現実的になります。
以下は、全国で利用できる代表的な補助金・助成金です。それぞれの特徴や活用のポイントについて詳しく解説します。
補助金名 | 内容 |
人材確保等支援助成金 | 健康づくり制度の導入、職場環境改善、ストレスチェックなどを支援する助成金 |
業務改善助成金 | 生産性向上や職場改善のための設備投資や制度整備を支援する助成金 |
エイジフレンドリー補助金 | 高齢者を含む労働者の安全・健康対策の設備や環境改善を支援する補助金 |
65歳超雇用推進助成金 | 高齢者の定年延長、継続雇用制度、評価制度の導入を支援する助成金 |
受動喫煙防止対策助成金 | 喫煙専用室設置や受動喫煙防止設備の導入を支援する助成金 |
団体経由産業保健活動推進助成金 | 産業医活動やストレスチェック後のフォローなど、団体の産業保健活動を支援する助成金 |
関連記事:助成金と補助金の違いとは?知っておきたいポイントを解説
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、健康経営を始める企業にとって特に有効な支援策です。厚生労働省が全国で実施しており、職場環境の改善や健康づくり制度の導入に活用できます。
ストレスチェックや健康診断体制の整備、運動促進プログラム、作業負担軽減のための設備投資など幅広く対象です。
制度導入助成は20〜50万円、設備導入助成は最大150万円(条件により最大187万5,000円)と手厚い支援が受けられ、初期費用を抑えながら健康経営を実現できるでしょう。
関連記事:中小企業が活用できる補助金・助成金、人材確保におすすめの助成金について
業務改善助成金
業務改善助成金は、健康経営と生産性向上を同時に進めたい企業に最適な支援制度です。
厚生労働省が主体で、職場の設備投資や改修、研修費用など生産性向上に繋がる施策を幅広くカバーします。
補助率は3/4〜9/10と高く、上限は最大600万円と大規模な取り組みにも対応可能です。作業環境を改善することで従業員の健康負担を軽減し、結果として職場全体の活性化と持続的な成長を後押ししてくれるでしょう。
エイジフレンドリー補助金
エイジフレンドリー補助金は、高齢者を含む従業員の安全確保と健康保持を目的に支給される補助金です。
厚生労働省が実施しており、補助率は最大4/5、上限100万円と充実しています。転倒防止マットや昇降設備、腰痛予防機器、リスクアセスメントの実施費用などが対象です。
高齢者の雇用促進だけでなく、全従業員の職場安全意識向上や健康経営レベルの底上げにも寄与する制度と言えるでしょう。
65歳超雇用推進助成金
65歳超雇用推進助成金は、高齢者の雇用機会拡大を目的に設けられた制度です。
厚生労働省(高齢・障害・求職者雇用支援機構)が主体で、65歳以上の定年延長、継続雇用制度、評価制度の導入などを支援します。
最大160万円まで助成が受けられ、労働力不足対策や多様な人材活用を後押しします。定年延長に伴う制度改定費用の負担を軽減し、持続可能な組織づくりを推進できるでしょう。
関連記事:中小企業におすすめ!高齢者雇用で助成金を活用し税制優遇を取得する方法
受動喫煙防止対策助成金
受動喫煙防止対策助成金は、職場の健康環境を守るために重要な支援策です。厚生労働省が主体で、喫煙専用室の設置や換気設備の導入などにかかる費用を補助します。
補助率は1/2〜2/3、上限は100万円程度とされています。従業員の受動喫煙防止だけでなく、企業の健康意識向上、イメージ改善、法令遵守を一体的に進められるメリットがあるでしょう。
参考:受動喫煙防止対策助成金 職場の受動喫煙防止対策に関する各種支援事業(財政的支援)|厚生労働省
団体経由産業保健活動推進助成金
団体経由産業保健活動推進助成金は、事業主団体が主体となって実施する産業保健活動を支援する制度です。
厚生労働省が主体で、補助率は90〜100%、上限は500万円〜1,000万円と非常に大きな支援額が用意されています。
産業医の導入、ストレスチェック後のフォローアップ、健康指導など中小企業単独では難しい施策を団体で効果的に推進できます。
健康経営に補助金・助成金を活用するメリット
補助金・助成金を活用して健康経営に取り組むと、企業にとってさまざまなプラスの効果が期待できます。
費用負担を軽減できる
補助金・助成金を活用すると、健康経営に必要な初期投資や運用コストを大幅に軽減できるでしょう。
通常、健康施策の導入には健康診断設備の導入費用や専門家への外部委託費など、多くのコストがかかりますが、補助金を使うと資金面のハードルが下がり、企業規模を問わず健康経営に挑戦しやすくなります。
これにより、リスクを最小限に抑えながら取り組みを推進できます。
社員のモチベーション向上に繋がる
健康施策を充実させると、社員は企業からの「大切にされている」という意識を強く感じるでしょう。
補助金を活用して取り組みの幅を広げれば、社員の満足度が上がり、仕事への意欲や責任感が高まります。
モチベーションが向上すれば、生産性アップや職場の活気向上にも繋がり、結果的に企業全体の成果に貢献するでしょう。
企業の社会的評価が高まる
健康経営の推進は、CSR(企業の社会的責任)やESG(環境・社会・ガバナンス)評価の面でも大きなプラスになります。
補助金を活用しながら積極的に健康施策に取り組むと、企業の社会的信頼度やブランドイメージが向上します。
取引先や求職者、地域社会など、さまざまなステークホルダーからの評価が高まり、長期的な関係構築や信頼獲得に繋がるのが大きなメリットでしょう。
採用力の強化に繋がる
「社員の健康を重視する企業」というイメージは、求職者にとって非常に魅力的です。補助金を活用して健康施策をさらに強化すれば、より多くの優秀な人材を惹きつける力が高まります。
採用活動において他社との差別化ができ、企業の成長を支える基盤が築けるでしょう。健康経営は人材確保だけでなく、企業の魅力を総合的に高める重要な要素となります。
離職率の低下が期待できる
従業員の健康状態が改善されると、職場への満足度や安心感が高まり、長期的に働き続けたいという意識が強まるでしょう。
その結果、離職率が低下し、優秀な人材の流出を防げます。定着率が向上すれば、採用や教育にかかるコストも削減でき、組織全体の安定化と持続的な成長が実現します。健康経営は単なる福利厚生ではなく、経営基盤を強化するための重要な施策です。
補助金・助成金申請の際に押さえるべき5つのポイント
補助金・助成金を活用するには、正確な情報と計画的な準備が欠かせません。スムーズに採択されるために、申請時に特に意識すべき以下5つのポイントについて解説します。
- 計画性と書類整備が重要
- 地域の最新情報をチェックする
- 早めの準備が成功のカギ
- 専門家の意見を取り入れる
- 社内での協力体制を築く
計画性と書類整備が重要
申請を成功させるには、計画性と正確な書類整備が最も重要です。補助金や助成金の申請では、詳細な事業計画書や収支計画、証拠書類など多岐にわたる資料の提出が求められますが、これらの準備が不十分だと、審査で不採択になるリスクが高まります。
早い段階で計画を立て、必要な書類をリスト化し、逐次整備していきましょう。
地域の最新情報をチェックする
最新情報の収集は、補助金・助成金申請において非常に大切です。
制度内容や条件は年度ごとに更新され、さらに自治体独自の要件が加わる場合もあります。公式サイトや自治体の窓口を定期的に確認することで、情報の遅れや誤解を防げるでしょう。
申請直前に条件が変わるケースもあるため、常に最新情報をチェックしておくことが申請の成功を左右します。
早めの準備が成功のカギ
補助金・助成金申請は早めの準備が採択成功の最大のポイントです。
申請には募集枠があり、予定予算に達すると受付が早期終了するケースも多いため、余裕を持って計画と準備を進めれば、内容をブラッシュアップでき、必要書類の精度も向上するでしょう。
専門家の意見を取り入れる
専門家のアドバイスを活用することで、申請書類の質が大幅に向上します。専門家は多くの実績や知見を基に、申請内容の改善点や補足資料の提案をしてくれます。これにより、ミスを未然に防ぎ、審査通過率を高められるでしょう。
自社だけで進めるよりも、外部の力を借りることで準備の精度が上がり、安心して申請を進められます。
社内での協力体制を築く
補助金申請を成功させるには、社内の協力体制の構築が不可欠です。人事、総務、経理など各部門が連携して情報共有し、役割分担を明確にすることで、書類作成から実施報告まで円滑に進行できます。
協力体制が整っていないと申請後の実行段階で問題が生じやすく、負担が増大するため、組織全体で目標を共有し、一体感を持って進めましょう。
健康経営における補助金・助成金の活用で迷ったら専門家に相談
補助金・助成金の申請には、詳細な書類作成や複雑な要件確認が必要で、わずかなミスでも審査に落ちるリスクがあります。
制度を最大限に活用するには、専門家のサポートを受けて万全に準備を進めると良いでしょう。自社だけで進めるには限界があるため、第三者の知見を取り入れることをおすすめします。
小谷野税理士法人では、健康経営に関する補助金・助成金の申請支援や計画策定のアドバイスを提供しており、スムーズな手続きと確実な活用を後押しします。補助金を活用して戦略的に健康経営を進めたい方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。