株式や投資信託の取引で「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいる方は多いですが、年間の損益次第では確定申告をすることで税金が還付される可能性があります。この記事では、還付金が発生する仕組みや受け取れるタイミング、確定申告で還付を受けるための条件や手続きについて解説します。口座の選び方や還付の条件をしっかり確認して、正しい対応を心がけましょう。
目次
特定口座における還付金とは?
還付金は源泉徴収ありの特定口座で株式などの取引を行い、年間を通じて損失が出た場合に発生します。利益に対して源泉徴収された税金が、年間の損益を通算すると「払いすぎ」になっていた場合、その超過分が戻ってくるのです。
例えば、譲渡益が出た際には20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税金が自動的に引かれます。その後に譲渡損が出て、年間で損失が確定した場合には、この引かれていた税金の一部または全額が還付されます。ただし、還付されるのは源泉徴収された金額の範囲内です。
関連記事:払いすぎた税金は取り戻せる?対象になるケースは?注意点も解説
確定申告で還付金が帰ってくるタイミング
確定申告後に還付金が入金されるタイミングは、1ヵ月~1ヵ月半程度が目安です。電子申告の場合は3週間程度で入金されることもあります。税務署からの通知ハガキや、電子申告を利用した場合はe-Taxでも処理状況の確認が可能です。
特定口座における「源泉徴収あり・なし」の違い
特定口座における「源泉徴収あり・なし」の違いを以下の表にまとめました。
区分 | 特定口座(源泉徴収あり) | 特定口座(源泉徴収なし) |
確定申告の必要性 | 原則不要 | 必要(自身で申告・納税が必要) |
確定申告の手間 | 少ない | 多い |
税金の支払い | 利益が出た時点で自動的に徴収される | 自分で計算・納税するまで課税されない |
20万円以下の利益 | 源泉徴収されるが、還付されない(損する可能性あり) | 原則、確定申告不要で課税されない |
還付の可能性 | あり ※条件次第 | あり ※確定申告で損失繰越や通算が可能 |
再投資のしやすさ | 税金が差し引かれるため再投資額が減る | 税引き前の全額を再投資できる(資金効率が良い) |
所得控除・保険料等への影響 | 原則影響なし(申告しない限り) | 申告時に譲渡益が所得に加算されるため、控除制限や保険料増のリスクあり |
おすすめな人 | 手間をかけたくない人 | 節税意識が高い人 利益が少ない人や損失が出ている人 |
このように、源泉徴収ありは、手軽さや柔軟な税務対応や資金効率の良さが特徴です。それぞれのメリット・デメリットを理解し、自分の投資スタイルに合った口座を選ぶことが大切です。
特定口座「源泉徴収あり」で還付を受けられるケース
源泉徴収ありの特定口座でも、条件によっては確定申告をすることで税金が還付されることがあります。
次の3つのケースに該当する場合、確定申告を行うことで税金の一部が戻ってくる可能性がありますので、ぜひ確認してみましょう。
他社口座との損益通算をする場合
いくつか口座を持っていて、いずれかで損失が出た場合は確定申告をすれば払いすぎた税金が戻ることがあります。
例えば、A証券の特定口座(源泉徴収あり)で70万円の利益、B証券の一般口座で30万円の損失があると仮定します。この場合、これらを合算して40万円の利益として申告可能です。
同一の特定口座(源泉徴収あり)内、同じ証券会社内であれば損益通算は自動で行われますが、他社間では自動で相殺されないため、確定申告が必要です。
年間で損失が出た場合(繰越控除)
年間の株式取引で損失が出た場合は「譲渡損失の繰越控除」により、損失を翌年以降3年間繰り越して控除できます。例えば、今年50万円の損失があった場合、来年に利益が出ればそれと相殺して税金を抑えることが可能です。
ただしこの制度を使うには、3年連続で毎年確定申告を行う必要があるため、継続して申告することを忘れないよう注意しましょう。
配当金に対して配当控除を受けたい場合
特定口座「源泉徴収あり」で配当金を受け取っても、課税所得が695万円以下だと還付金を受けられる可能性が高いです。この場合は、確定申告をすることで配当控除が受けられます。
特定口座では一律20.315%の税率で課税されます。しかし配当控除を適用できる「総合課税」で申告すれば、所得に応じて税率が下がり、結果として税額が減る可能性があるのです。
特に年収が一定以下の方は、配当控除を活用することで還付を受けられるかもしれません。
特定口座における確定申告で必要な書類と申告の流れ
特定口座で株式取引を行った場合、確定申告が必要になるケースもあります。ここでは、確定申告の手順や必要書類についてわかりやすく解説します。損益通算や繰越控除を受ける場合には、通常の申告とは異なる書類が必要となる点にも注意が必要です。
必要な書類
通常の確定申告に必要な書類はこちらです。
- 確定申告書(国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用する場合、紙の様式は不要)
- 個人番号(マイナンバー)
- 本人確認書類
以前は「特定口座年間取引報告書」の添付が必須でしたが、平成31年4月1日以降は添付不要となっています。また損益通算・繰越控除を受ける場合に追加で必要な書類は以下の通りです。
- 「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用」付表
- 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」
なお繰越控除を受けるには、損失が出た年から連続して毎年確定申告をする必要があります。
確定申告の流れ(特定口座の場合)
特定口座の場合の確定申告の大まかな流れは以下の通りです。
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセス
- 「申告書等を作成する」→「作成開始」をクリック
- 提出方法(e-Taxまたは印刷して郵送)を選択
- 「所得税」を選び、生年月日などを入力
- 収入金額・所得金額を入力
- 「特定口座年間取引報告書」の内容をもとに必要情報を入力
- 源泉徴収の有無
- 譲渡の対価の額(収入金額)
- 取得費や譲渡費用
- 証券会社名など
- 譲渡損失の繰越があるかの質問に答える
- 計算結果を確認し、申告書を提出または印刷する
分からない点がある場合は、国税庁が提供する公式ガイドを参考にしましょう。また、手続きに不安がある方は、税理士に相談するのも安心です。
関連記事:還付申告のやり方は?書類や期間・対象者・確定申告との違いを解説!
特定口座の還付金を確実に受け取る方法
特定口座の還付金を確実に受け取りたいなら、まずは税理士への相談をおすすめします。株式取引の損益通算や繰越控除など、還付を受けるための制度は複雑で、誤った申告をすると損をしてしまう可能性があります。
特に複数の証券会社で口座を持っている場合や、年間を通じて損失が出た場合は、確定申告で税金を取り戻せる可能性があります。
しかし、申告の方法や組み合わせによっては、国民健康保険料や控除額に影響が出ることもあるため、専門的な判断が必要です。税理士に相談することで、最新の税制を踏まえた適切な申告ができるため、無駄なく還付金を受け取れます。
特定口座の還付金に関するよくある質問
最後に特定口座の還付金に関するよくある質問をまとめたので、こちらもぜひ参考にしてください。
特定口座「源泉徴収あり」で20万円以下なら損する?
はい、20万円以下の譲渡益であれば「源泉徴収あり」の特定口座を選ぶことで損をする可能性があります。以下の場合は一般的に確定申告が不要とされており、本来は税金もかかりません。
- 給与所得が2,000万円以下の会社員
- 年金収入が400万円以下の年金受給者
しかし、源泉徴収ありの場合は譲渡益が20万円以下でも取引ごとに自動的に税金が徴収されてしまいます。そのため、年間の譲渡益が20万円以下に収まりそうな場合には「源泉徴収なし」の特定口座を選びましょう。
そうすることで、不要な税金を支払わずに済み、結果的に手取りを増やせます。
特定口座年間取引報告書って何?
1年間(1月1日〜12月31日)の株式などの譲渡損益や配当金、源泉徴収された税金の情報をまとめた書類です。特定口座を利用している場合は、証券会社からこの報告書が必ず交付されます。様式は証券会社ごとに多少異なりますが、記載される項目は基本的に共通しています。
報告書の上部には、上場株式等の譲渡に関する金額が記載されています。確定申告では「譲渡所得等の金額」と「源泉徴収税額」が重要なポイントです。下部には、配当金の金額とそれに対する源泉徴収税額が記載されており、こちらも確定申告の際に必要な情報です。
関連記事:特定口座(源泉徴収なし)の利益が20万円以下でも必要な申告は?
まとめ
特定口座(源泉徴収あり)を利用していても、条件によっては確定申告をすることで払いすぎた税金の還付を受けることが可能です。例えば、他社の口座と損益通算したい場合、年間で損失が出た場合、または配当控除を受けたい場合などが該当します。
特定口座は、源泉徴収ありとなしで税務処理の手間や資金効率が大きく異なるため、自分の取引状況や所得に合った選択が重要です。ただし確定申告の方法を誤ったり、還付の要件を満たさない場合は損をしてしまうこともあるため注意しましょう。
還付金の手続きを確実に、かつ有利に進めたい方は、税制や申告に詳しい税理士に相談するのがおすすめです。専門家に依頼することで、還付のチャンスを逃さず、安心して税務手続きを進められます。