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棚卸資産は無償譲渡できる?課税されるケースと注意点を解説

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棚卸資産は無償譲渡できる?課税されるケースと注意点を解説

棚卸資産とは販売目的で保有する商品や原材料など、企業の重要な資産の1つです。これらの資産を無償で譲渡した場合、税務上みなし譲渡とされ、実際の取引がなくても所得税や法人税などの課税対象になるケースがあります。この記事では、棚卸資産の基本から無償譲渡に関する課税ルール、そして注意すべきポイントまで、わかりやすく解説します。無償譲渡でどのような税金がかかるのか知っておきたい方はぜひ参考にしてください。

棚卸資産とは何か

固定資産税のイメージ

棚卸資産とは、販売目的で保有している在庫や、在庫になる途中段階の資産を指します。具体的には、仕入れた商品や自社製の完成品、販売前の原材料、さらに未使用の消耗品などが該当します。

企業の資産としての価値があるため、事業年度末には棚卸を実施し、棚卸資産の金額を貸借対照表に計上しなくてはいけません。

棚卸資産の主な分類と特徴を表にまとめました。

分類

内容・定義

具体例

特徴・ポイント

原材料

製品を製造するために仕入れた材料

小麦粉、イースト、塩、チョコレートなど

  • 主要原材料と補助原材料に分かれる
  • 製品本体または補助的に使用

商品・製品

販売目的で保有している商品・製品(仕入品または自社製)

仕入れ商品、自社製品、副産物(おからなど)

  • 販売用の在庫・副産物や作業くずも含まれる

仕掛品

製造途中の未完成品

製造途中のパン生地など

  • 一部加工済み
  • 単独では販売・貯蔵不可

半製品

加工済みで、単体で販売や貯蔵が可能な中間製品

ラベルなしのボトル醤油など

  • 単体で販売可
  • 第三者への販売が可能な状態が条件

こういった資産は企業の資産として扱われ、事業年度末には棚卸を行って正確に計上することが法人税法上求められています。種類ごとの特徴を正しく理解し、適切に分類・管理しなくてはいけません。

関連記事:棚卸資産と在庫の違いとは?税務調査で押さえたいポイントも解説!

棚卸資産の評価方法

償却資産申告書とはのイメージ

棚卸資産の評価方法について、評価の種類・内容・特徴・適用に向いているケースを簡潔に表でまとめました。

評価方法分類

評価方法

内容・特徴

適用に向いているケース

原価法

総平均法

会計期間内の仕入原価の平均で評価

一般的な仕入品を扱う事業者

最終取得原価法

期末直前の仕入価格を使用

届出なしの場合のデフォルト

簡易な計算を望む小規模事業者

個別法

商品ごとの実際原価で評価

高額商品や一点物(例:貴金属等)

先入先出法

先に仕入れた商品から販売されたと仮定して評価

物の流れが明確な商品(例:食品)

移動平均法

仕入のたびに平均原価を更新

常に最新の在庫評価が可能

精緻な原価管理を求める業種

売価還元法

商品グループ単位で売価から逆算

原価率を掛けて算出

商品点数が多い小売業など

低価法

洗替法

時価が下落した場合に、原価と時価の低い方で評価

翌期に原価へ戻す

時価変動が大きい資産を扱う業種

いずれの方法も、原則として税務署への届出が必要となるため、事前準備を十分に行った上で選択しましょう。

関連記事:低価法なら評価損を損金算入できる!原価法との違いや仕訳を解説

棚卸資産を無償譲渡した場合の取り扱い

事業所得者が商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの棚卸資産を譲渡した場合の所得は、事業所得となります。

不動産所得や山林所得、雑所得を生ずる業務を行っている者がその業務に関して上記の棚卸資産に準ずる資産を譲渡した場合の所得は、雑所得となります。

参考:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法|国税庁

無償譲渡に関わるみなし譲渡とは

賃貸経営

みなし譲渡とは資産を無償または著しく低い価格で譲渡した際に実際の取引額ではなく時価で譲渡したとみなして税額を計算する制度です。企業や個人が対象となり、租税回避を防ぐために設けられています。

通常、所得税や法人税は実際に発生した課税所得をもとに計算されます。しかし、みなし譲渡が適用される取引では、実際の譲渡価額ではなく、資産の時価に基づいて税金が課されます。

もし個人が法人に時価より安く土地を売却した場合、本来得られるべき売却益が表面上は見えず、所得税の回避につながってしまいます。こうした租税回避を防ぐために、みなし譲渡の規定が設けられているのです。

以下のようなケースでは、みなし譲渡として税金がかかります。

税の種類

みなし譲渡とされる主な取引内容

所得税

  • 個人が法人に資産を無償で譲渡(贈与)した場合
  • 個人が法人に資産を著しく低額で譲渡した場合
  • 遺産を限定承認で相続した場合(相続人が負債の範囲で資産を受け継ぐ)

消費税

  • 法人が購入した資産を役員に無償で譲渡した場合
  • 法人が購入した資産を役員に著しく低額で譲渡した場合
  • 個人事業主が事業用資産をプライベート用途(家事使用)に使った場合

みなし譲渡は「実際に利益が出ていないために申告を忘れやすい」点が大きなリスクです。税務調査で発覚すると追徴課税の対象となる可能性があります。

みなし譲渡に該当する可能性がある取引を行った場合は、必ず税理士などの専門家に相談し、適切な申告を行いましょう。

関連記事:法人・個人間における贈与の扱いの違いは?4つのパターン別に解説

無償譲渡で法人税が課税されるケース

法人が資産や資金を無償または著しく安価に取得した場合、それが「受贈益」として扱われ、法人税の課税対象となることがあります。

受贈益とは、法人が無償あるいは低額で資産を取得した際に計上される収益で、会計上は「特別利益」に分類されます。この特別利益は法人税の課税対象となるため、たとえ資産をタダで受け取った場合でも、法人は法人税を支払わなくてはいけません。

例えば近年注目されているクラウドファンディングの「寄付型」において、法人が個人や他の法人から金銭的支援を受けたとします。

この場合、その受け取った金額は受贈益として扱われます。このように、受増益は、法人の場合は課税される点に注意が必要です。

まとめ

棚卸資産は企業の財務に大きく関わる重要な資産であり、その評価や管理には正確さが求められます。棚卸資産を無償または低価格で譲渡した場合、税務上は「みなし譲渡」として時価を基準に課税される場合があります。

法人であれば「受贈益」として法人税の対象となる可能性もあり、税務処理を誤ると追徴課税などのリスクを招きかねません。また、譲渡する側・される側それぞれに税務や経営面でのデメリットがあるため、慎重な判断が必要です。

無償譲渡や資産移転を検討する際には、事前に税理士など専門家に相談し、適切な手続きを踏むことが安心・安全な運用につながります。税務トラブルを回避するためには、税理士などの専門家に相談するのもひとつの手段です。

無償譲渡に関するお悩みがあれば、ぜひ一度「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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