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固定資産税は経費にできる?法人・個人事業主が知っておくべき会計処理の基本

公開日:

固定資産税は経費にできる?法人・個人事業主が知っておくべき会計処理の基本

土地や建物などを所有している場合に毎年課される固定資産税について、事業に関係する支出として経費計上できるのか迷う方は少なくありません。経費として処理できるかどうかは、資産の用途や契約内容によって異なるため、正しい判断が求められます。本記事では、固定資産税を経費にできる条件や判断基準、会計処理の考え方を整理しながら、法人・個人事業主の立場ごとに押さえるべきポイントをわかりやすく解説します

固定資産税とは?

固定資産税は、土地や建物などの資産を所有している人に対して毎年課される地方税です個人・法人を問わず、一定の資産を保有していれば納税義務が生じます。

項目

内容

対象資産

土地・建物・償却資産(事業用設備など)

課税主体

市区町村(東京23区は都)

税の種類

地方税(市町村税)

納税義務者

毎年1月1日時点の固定資産所有者

納付時期

年1回または年4回の分割納付(自治体により異なる)

固定資産税は、地方自治体によって課される税金なので、市町村(東京23区は東京都)が課税主体となります。課税対象は、土地や建物のほか、事業用の償却資産(設備など)も含まれます。

税額は、市区町村が評価する「固定資産税評価額」を基にした課税標準額に、標準税率(多くの地域で1.4%)を乗じて算出されるため、お住いの地域の評価額や税率がどう設定されているかを事前に確認しておきましょう。

納税通知書は毎年春頃に送付され、自治体により一括納付または分割納付が選択できます。

固定資産税は経費にできる?

上場会社とは?わかりやすく解説のイメージ

固定資産税は、その資産が事業のために使用されていれば経費として計上できますただし、自宅や別荘などプライベート用の資産や、事業と併用している場合は注意してください。

固定資産税は、以下のように明確に事業用とされる資産に対しては、原則として経費に含めることができます。

  • 事業用建物や事務所・工場にかかる固定資産税
  • 法人所有の事業用資産(全額)
  • 個人事業主が100%事業用として使用している建物や土地

一方で、以下のような事業に使っていない資産や、私的利用を含む資産にかかる固定資産税は、経費として認められません

  • 自宅や別荘などプライベート用途の不動産
  • 自宅兼事務所などは「家事按分」が必要
  • 土地を投資目的で保有しているだけの場合(実際に事業で使っていない)

特に個人事業主が自宅の一部を事務所として使用している場合には、使用面積や使用時間などに応じた「家事按分」が必要です。全額を経費にすることはできませんので、按分基準を明確にし、適切に処理することが求められます。

関連記事:固定資産はいくらから計上できる?固定資産税についても解説

関連記事:家事按分とは?経費にできる割合や目安、計算方法を解説

固定資産税の勘定科目

勘定科目

固定資産税は、資産の性質や契約内容によって使うべき勘定科目が異なります。代表的な以下の勘定科目について、それぞれの用途と注意点を解説します。

勘定科目

説明

租税公課

固定資産税を含む事業関連の税金全般に使う基本科目。

地代家賃

契約により借主が固定資産税を負担する場合に用いる科目。

仮払金

納付時に内容が不明な場合の一時処理として使用する科目。後に振替を行う。

建物

不動産取得時に固定資産税を精算した金額を取得原価に含める際に使用する。

租税公課

固定資産税の処理で最も一般的に使用されるのが「租税公課」です法人・個人事業主ともに、事業用として使用している土地や建物にかかる固定資産税は、この科目で経費として計上します。

法人の場合は原則全額、個人事業主は事業使用分に限定されるので注意しましょう。なお、法人税や住民税など所得に関する税金は損金不算入となるため、租税公課とは区別して処理する必要があります。

地代家賃

賃貸物件において、借主が固定資産税を負担する取り決めがある場合は、「地代家賃」として処理することがありますこれは、税金であっても実質的に賃料の一部とみなされるためです。

ただし、実務では「租税公課」として処理されるケースもあり、契約書の記載内容や会計方針によって判断が分かれることもあるので注意しましょう。税務調査時に備え、契約書等で税負担の根拠を明示できるようにしておくことが重要です。

仮払金

固定資産税を支払った際、対象資産や詳細が不明な場合には、「仮払金」として一時的に処理します。後日、明細が判明した段階で、適切な科目(通常は租税公課)に振替するのが原則です。

仮払金は経費ではなく資産的性格を持つため、振替処理を忘れると会計上の誤りとなります。税務調査でも確認されやすいポイントのため、内容確定後は必ず速やかに振替処理を行いましょう。

建物

建物取得時に売主と日割りで固定資産税を精算した場合、その税額は「建物」の取得にかかる付随費用として扱い、「建物」勘定に含めて資産計上します。

これは、取得に直接関係する費用とみなされるためで、通常の経費処理とは異なります。支払った税額は経費ではなく資産として計上され、後に減価償却の対象となります。

固定資産税の仕訳例(法人の場合)

固定資産税の会計処理は、支払方法や発生状況によって使う勘定科目が異なります。

また、法人と個人では処理の考え方や経費計上の範囲が異なります。ここでは、法人における固定資産税の仕訳例を解説します。

一括納付した場合

固定資産税を一度に全額納付した場合は、その金額を「租税公課」として処理します通常、現金または預金口座から支払う形になります。

例)事業用のオフィスにかかる固定資産税24万円を現金で一括納付した。

借方

貸方

租税公課

24万円

現金

24万円

自動引き落としで支払った場合

口座振替により納税した場合は、引き落とし日に「租税公課」として処理し、支払い元の預金科目を使って仕訳します。

例)第1期分の固定資産税60,000円が普通預金口座から自動引き落としされた。

借方

貸方

租税公課

60,000円

普通預金

60,000円

精算によって取得時に固定資産税を負担した場合

建物を取得する際、引渡し日を基準に売主と固定資産税を日割り精算することがあります。このような場合、その金額は建物の取得原価に含め、「建物」として資産計上します

例)建物取得時、引渡し日を基準に売主と精算し、80,000円を固定資産税分として支払った。

借方

貸方

建物

80,000円

未払金

80,000円

契約により借主が固定資産税を負担する場合

賃貸契約により、借主が固定資産税を負担する定めがある場合は、その金額を「地代家賃」として処理します実務上は、賃料の一部とみなされる扱いです。

例)借りている倉庫にかかる固定資産税12万円を契約に基づき借主として支払った。

借方

貸方

地代家賃

12万円

現金

12万円

固定資産税の仕訳例(個人事業主の場合)

個人事業主の場合も、固定資産税の仕訳は使用目的や支払状況によって異なります。特に自宅兼事務所のケースでは、家事按分の処理が重要です。

自宅兼事務所で、費用を用途別に分けて管理したい場合

自宅の一部を事業用に使用している場合、固定資産税の事業分を「租税公課」で按分して処理します。

例)固定資産税が10万円で、事業利用割合が40%(10万円 × 40% = 40,000円)

借方

貸方

租税公課

40,000円

普通預金

10万円

事業主借

60,000円

※残り60,000円は経費に含めず

100%事業用の建物に対して支払った場合

完全に事業用として使用している建物にかかる固定資産税は、全額を「租税公課」として処理します。

例)倉庫にかかる固定資産税15万円を普通預金から支払った。

借方

貸方

租税公課

15万円

普通預金

15万円

明細不明のまま支払った場合

内容が不明なまま支払った場合は、いったん「仮払金」として処理し、内容判明後に正しい科目に振替します

例)50,000円を普通預金から納付したが、明細は未確認。

【支払時】

借方

貸方

仮払金

50,000円

普通預金

50,000円

【後日内容判明時】

借方

貸方

租税公課

50,000円

仮払金

50,000円

固定資産税を経費計上する際の5つの注意点

適用事業報告のイメージ

固定資産税は事業用であれば経費にできますが、すべてのケースで一律に処理できるわけではありません。ここでは実務上見落としがちな以下5つの注意点について解説します。

  1. 家事按分が必要な場合の判断基準を明確にする
  2. 土地にかかる税金の扱いに注意する
  3. 納付書や領収書を必ず保管する
  4. 分割納付した場合の仕訳も忘れずに行う
  5. 振替納税の処理方法を確認する

家事按分が必要な場合の判断基準を明確にする

自宅兼事務所など、私用と事業用が混在している資産にかかる固定資産税は、使用割合に応じて按分しなければなりません。

その理由は、税務上「事業のための支出」でない部分を経費に含めると否認される可能性があるためです。

使用面積や使用時間など、合理的な基準をもとに按分比率を定め、証拠となる記録も残しておきましょう。

土地にかかる税金の扱いに注意する

事業用として使用している土地にかかる固定資産税は、原則として経費にできますが、土地は減価償却の対象外であり、保有しているだけでは事業関連性が認められないケースもあります

例えば、遊休地や投資目的での保有など、個人が実際に業務で利用していない土地に対する固定資産税は、経費算入が否認される可能性があるため注意が必要です。

納付書や領収書を必ず保管する

固定資産税を経費として認めてもらうには、納付書や領収書などの証拠書類を適切に保管しておくことが必要です。

なぜなら、税務調査が入った際に、実際に支払ったこととその対象が事業に関連しているかを証明するために、書類の提示を求められるからです。

電子保存の場合は電子帳簿保存法に沿った管理が求められるため、保存形式や改ざん防止の仕組みにも注意しましょう。

分割納付した場合の仕訳も忘れずに行う

分割で納付した固定資産税は、それぞれの支払日に分けて仕訳するケースがあります。

一括納付とは異なり、分割納付では期をまたいで支払うことがあるため、全額をまとめて計上すると帳簿の正確性が損なわれます。支払スケジュールを把握し、都度正確に処理しましょう。

振替納税の処理方法を確認する

口座振替によって納税する場合も、実際の引き落とし日を基準に仕訳を行うケースがあります。

処理日を誤ると、会計期間や月次決算にズレが生じ、財務管理や税務上のトラブルに繋がるので注意しましょう。帳簿と通帳の整合性を保つことが重要です。

固定資産税の経費処理に不安がある方は専門家に相談

固定資産税は、事業用資産かどうかの判断や家事按分の方法など、実務では判断が難しいケースもあります。正しく処理しなければ、経費として認められないだけでなく、税務調査で否認されるリスクもあるでしょう。

こうした場合は、税務リスクを回避するためにも、早い段階で専門家へ相談することをおすすめします

小谷野税理士法人では、固定資産税を含む実務的な経理処理に豊富な実績があり、個人事業主・法人どちらにも対応可能です。固定資産税の処理に不安がある方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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