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繰戻還付の仕訳とは?制度と仕訳例を実務目線で解説

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繰戻還付の仕訳とは?制度と仕訳例を実務目線で解説

赤字決算となった中小企業が、前期に納付した法人税の還付を受けられる制度が「繰戻還付」です。適切に活用すれば資金繰りの改善に繋がりますが、制度の要件や仕訳の処理を誤ると、還付が認められない恐れもあります。本記事では、繰戻還付制度の概要や注意点を押さえたうえで、仕訳方法や申請手続きの流れを実務的な視点で解説します。

繰戻還付とは?

繰戻還付とは、赤字となった事業年度(欠損事業年度)の損失を、前期の黒字(所得)にさかのぼって適用し、すでに納付済みの法人税の一部または全部を取り戻せる制度です。

簡単にいえば、「払いすぎた法人税を後から返してもらう」仕組みであり、法人税法第80条に基づいて運用されています。この制度を利用できるのは、次の4つの条件すべてを満たす法人に限られます。

  • 資本金が1億円以下の中小企業者等であること
  • 青色申告を提出していること
  • 前年度から継続して青色申告であること
  • 欠損事業年度の確定申告と同時に還付請求書を提出すること

中小企業にとっては資金繰り改善に役立つ制度ですが、要件や申請のタイミングを誤ると還付を受けられないため、事前の確認が重要です。

参考:C1-52欠損金の繰戻しによる還付の請求|国税庁

関連記事:払いすぎた税金は取り戻せる?対象になるケースは?注意点も解説

関連記事:還付申告のやり方は?書類や期間・対象者・確定申告との違いを解説!

繰戻還付の仕訳で使われる勘定科目

考えている男性

繰戻還付を正しく処理するには、場面ごとに適切な勘定科目を使い分ける必要があります。以下で、仕訳の際に使用する主な勘定科目について解説します。

勘定科目

説明

未収還付法人税等

還付請求時に返還予定の法人税額を資産として計上する科目

雑収入

還付見込み額を収益として計上する際に使用する科目

普通預金

還付金が実際に入金された際に使用する預金科目

未収還付法人税等

繰戻還付請求を行った時点で、後日還付される予定の法人税額を資産として計上する際に使う科目です。申告書に基づいて還付額が確定した段階で仕訳され、実際の入金までこの勘定が残ることになります。

現金ではなく「将来受け取る権利」を記録するため、請求時の正確な金額把握と併せて慎重な処理が求められます。

雑収入

還付される法人税額は、本業以外の収益として「雑収入」で処理します

通常の営業活動による売上とは異なり、法人税の還付という非経常的な収益に該当するため、営業外収益として損益計算書に反映されます。処理を誤って営業利益に含めないよう注意しましょう。

普通預金

税務署から繰戻還付金が実際に入金された際には、「普通預金」で記帳します

これは企業が管理する預金口座に入金されるためで、仕訳としては「未収還付法人税等」との相殺になります。未収計上した金額と一致しているかどうか、入金時には必ず確認しましょう。

繰戻還付の具体的な仕訳方法

売掛金と節税に関するイメージ

繰戻還付では、申告や入金などの各ステップで適切な仕訳が求められます。ここでは、勘定科目の使い方とともに仕訳例を場面別に紹介します。

繰戻還付を請求したとき

欠損金の繰戻還付を申請する際は、還付予定の法人税額を「未収還付法人税等」として資産計上し、同額を「雑収入」として処理します。

例)当期欠損600万円、前期所得1,200万円、法人税180万円→還付額90万円

借方

貸方

未収還付法人税等

90万円

雑収入

90万円

還付金が実際に入金されたとき

還付金が入金されたら「普通預金」で受け取り、「未収還付法人税等」を消し込みます。

例)税務署から90万円が入金された場合

借方

貸方

普通預金

90万円

未収還付法人税等

90万円

繰戻還付を活用する際に気をつけたい3つの注意点

0円起業のイメージ

繰戻還付は資金繰りの改善に有効な制度ですが、活用には注意すべき点が複数あります。制度の誤った適用や思わぬ課税リスクを避けるために、特に重要な以下3つのポイントについて解説します。

  1. 繰越控除との選択が必要
  2. 地方税には還付されない
  3. 還付請求の期限を過ぎると適用不可

繰越控除との選択が必要

繰戻還付を利用する場合は、利用した分の損失は将来の繰越控除が使えなくなる点に注意しましょう。繰戻還付を選ぶと、当期の欠損金を翌期以降の所得と相殺できなくなる可能性があります。

今すぐ法人税の還付を受けて資金繰りを改善したい場合には有効ですが、将来の利益見込みがある企業にとっては繰越控除の方がメリットが大きいこともあるため、状況に応じて選択しましょう。

関連記事:繰越税額控除とは?活用事例や手続きの流れを解説

地方税は還付されない

繰戻還付の対象はあくまで法人税や地方法人税であり、法人住民税や事業税などの地方税は還付されません。

制度の対象は国税である法人税に限定されているため、地方税については翌事業年度以降の課税額から控除する仕組みとなっています。

そのため、想定していたよりも還付金額が少なくなるケースもあるため、あらかじめ地方税の取り扱いも含めて還付金の総額を見積もっておくことが大切です。

還付請求の期限を過ぎると適用不可

繰戻還付は、確定申告と同時に請求書を提出しなければ一切適用できません。この制度は、欠損事業年度の申告期限までに「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出することが必須条件です。

期限を過ぎてしまうと、制度そのものの利用ができなくなり、法人税を取り戻すチャンスを失ってしまいます。確定申告の準備と合わせて、請求書の作成・提出スケジュールを事前に確認しておきましょう。

繰戻還付の申請手続き

繰戻還付を受けるには、確定申告と同時に必要な書類を揃え、期限内に正しく手続きを行うことが求められます。不備があると還付が遅れたり、適用が認められなかったりするため注意しましょう。

必要書類

繰戻還付を申請する際には、通常の確定申告書類に加えて、還付請求専用の書類や前期の申告情報を含む複数の資料を提出する必要があります。以下が主な提出書類です。

書類

説明

欠損金の繰戻しによる還付請求書

還付請求の意思を示す専用の様式

書類に不備や記載漏れがあると、税務署での審査に時間がかかり、還付までの期間が延びてしまうことがあるでしょう。

特に還付請求書は記載内容が細かく定められているため、事前に税理士などの専門家と相談しながら、正確に準備しておくことが大切です。

提出期限と手続きの流れ

繰戻還付の請求は、欠損金が生じた事業年度の確定申告と同時に行うことが原則です申告期限は、事業年度終了後2ヵ月以内(延長が認められた場合は3ヵ月以内)と定められており、これを過ぎると繰戻還付は適用できません。

提出はe-Taxまたは書面で行い、審査後およそ1〜2ヵ月で指定口座に還付金が振り込まれるでしょう。確実に申請するには、事前のスケジュール管理と早めに書類準備を行いましょう。

繰戻還付の仕訳や申告でお悩みの方は専門家に相談

繰戻還付は資金繰り改善に効果的な制度ですが、仕訳や申告にミスがあると還付が認められないリスクがあります。特に、還付請求書の記載漏れや税務処理の誤りは、税務署からの問い合わせや是正を招く原因になりかねません。

制度の正確な活用には、税務知識だけでなく実務経験も求められます。少しでも不安がある場合は、税務の専門家に相談することをおすすめします。

小谷野税理士法人は、繰戻還付制度に精通した税理士が、仕訳処理から申告書の作成、税務署対応まで一貫してサポートしています。繰戻還付を確実に活用したい方は、ぜひ一度小谷野税理士法人にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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