さまざまな分野で公募されており、新たな資金調達方法として注目を集めている補助金。しかし、省庁や各地方自治体など、補助金によって実施主体は異なります。そこで、この記事では経産省の提供する補助金についてご紹介していきます。補助金申請のポイントや、実際に交付を受けるまでの流れについても詳しく解説しますので、ぜひとも参考にしてみてください。
目次
補助金とは
補助金とは、国や地方自治体によって実施されている支援制度のひとつであり、何らかの政策目的を達成するために給付される資金のことを指します。国が政策目的を達成するためには、各事業者がその目的に沿った事業に取り組むことが重要です。そこで、対象事業に取り組む事業者に補助金を交付することによって、目標の達成を目指しています。
補助金の3つのポイント
補助金で補助を受けられるのは事業全部又は一部の費用
補助金の交付が決定したとしても、事業にかかる経費の全額について補助を受けられるとは限りません。補助金には対象経費が定められており、補助対象事業を実施するにあたって必要な経費のみ補助を受けられます。また、各補助金には補助上限額・補助率が定められており、上限額を超える部分については補助を受けることができません。
これらの情報は公募要領に記載されているため、補助金の活用を検討する際は事前に確認しておきましょう。
補助の有無や金額については審査がある
補助金には予算額や採択件数があらかじめ定められているものが多く、申請要件を満たしているからといって誰でも受給できるわけではありません。人気の補助金の場合は採択される確率も低くなってしまうため、事業内容の必要性や妥当性が優れていることをアピールする必要があります。そのため、補助金の申請では添付書類の内容が極めて重要になるといえるでしょう。
補助金はそれぞれの目的・趣旨に沿って仕組みが違う
補助金は何らかの政策目的を達成するために実施されるものであり、さまざまな分野で公募されています。達成したい目標や趣旨によって、補助金の内容は異なるため注意が必要です。それぞれの補助金が公募されている趣旨や目的を確認し、要件や希望に合った補助金があれば活用していきましょう。
補助金の活用の流れ
公募
予算が成立する3~5月頃から、補助金の公募が開始します。公募要領には、補助金の趣旨や目的、補助対象事業者や補助金額などの詳細が記載されているため、申請を検討する際は必ず確認しましょう。なお、補正予算の場合は成立したタイミングで公募が開始するため、補助金によってスケジュールは異なります。
審査
公募要領を確認し、必要書類を揃えていきます。補助金の申請には申請書や事業計画書、経費明細書などの書類を用意する必要があるため、早めに準備を進めておきましょう。
無事に申請書類が整ったら、受付期間内に申請を行います。補助金は要件を満たせば必ず受給できるというもの
採択
審査が行われ、採択される案件が決定します。採択された事業者に対して採択通知書が発送され、この段階であらためて補助額が通知されます。補助額については希望どおりの内容で決定する場合もあれば、大幅に減額される場合もあるため注意が必要です。補助金の競争率によっても変わるため、減額されることも想定して資金計画を策定しましょう。
交付申請
採択通知書に記載された補助額を経費の上限とし、事業計画を修正していきます。その後、補助対象経費の参考資料も揃えたうえで交付申請を行いましょう。補助金の申請と交付申請は、補助金によっては同じ扱いになる場合があります。手続きを簡素化するために今後増えるかもしれませんが、基本的には別で交付申請が必要であることを覚えておきましょう。
交付決定
交付申請の内容があらためて審査され、問題なければ補助金の交付が決定します。採択されれば補助金を受給できると思っていた方も多いかもしれませんが、「採択」と「交付決定」は別の考え方であるため注意しましょう。
事業開始
基本的に、交付決定日から補助事業期間が開始します。策定した事業計画どおりに事業を実施していきましょう。なお、補助対象経費の契約や支払いは、必ず補助事業期間内に完結させる必要があります。補助事業期間が始まる前に契約や支払いを行った場合、たとえ補助事業の対象経費であったとしても補助金が交付されない可能性があるため注意が必要です。
中間審査
補助金の種類によっては、書類の整備状況等を確認する中間検査が実施される場合があります。補助金の申請にはさまざまな書類を提出する必要があるため、いざ補助金の交付を申請しようとした段階で不備が見つかっては大変です。そこで、中間検査で所管官庁と必要書類を確認しておくことで、万が一のトラブルを未然に防ぐことができます。
事業終了・報告書の提出
補助事業が終了したら、所管官庁へ報告書を提出します。このとき、対象経費の領収書などの帳票書類も一緒に提出する必要があるため、整理しておきましょう。
確定検査
完了報告書や支払い証明書の提出を受け、提出書類一式に不備がないか確定検査が行われます。検査によって書類の不備や対象経費以外への支出が発覚した場合、補助金が交付されない可能性もあるため十分に注意してください。
金額の決定
確定検査の結果にもとづいて、実際に交付される補助金の額が決定します。この段階でようやく正式な額が確定し、補助事業者に対して金額の確定通知が行われます。
請求書の提出
補助金の最終的な金額が通知されたら、いよいよ請求にうつります。所定の様式にもとづいて、請求書を提出しましょう。
補助金の振り込み
提出した請求内容にもとづいて、所管官庁から補助金が振り込まれます。このように、補助金は原則として後払いになっています。補助金の交付決定を受けたとしても、対象経費をいったん立て替えておかなければなりません。補助金を活用して新たな事業に取り組む場合は、補助額と同等の資金を用意しておく必要があるため、事業計画策定の際は注意しましょう。
経産省が提供する人気の補助金一覧
事業再構築補助金
事業再構築補助金とは、事業転換や業種転換などを契機に、新たなチャレンジを行う中小企業等を支援する補助金です。経産省によって実施されており、中小企業等の新たな事業展開を支援することで日本経済の構造転換を図ることを目的としています。また、大規模な予算が組まれていることも、事業再構築補助金が人気を集めている要因のひとつです。
事業再構築補助金の交付を受けるためには、以下3つの主要要件を満たす必要があります。
- コロナ禍の影響によって売上が減少している
- 事業再構築指針に沿った事業再構築に取り組む
- 認定経営革新等支援機関と協力して事業計画を策定する
さらに、事業再構築補助金は6つの類型に分類されており、それぞれの類型ごとにも要件が設けられています。3つの主要要件を満たしたうえで、自社の事業内容がどの類型に該当するのかを確認していきましょう。
なお、事業再構築補助金の補助金額は、該当する類型や従業員数によって大きく変動します。100万円~1.5億円もの補助を受けられる類型もあるため、事業再構築補助金をうまく活用することができれば、事業をスムーズに軌道に乗せることができるでしょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金とは、生産性向上を実現するための革新的サービスの開発や、生産プロセス改善に取り組む中小企業等を支援する制度です。正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称であり、経産省の外局である中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構によって制度化されました。
業種に関係なく、生産性向上を実現するための設備投資等であれば補助対象になるため、サービス業や農業、小売業などさまざまな業種で採択された実績があります。なお、要件を満たしていれば個人事業主でも申請することが可能です。
ものづくり補助金の交付を受けるためには、以下3つの基本要件を満たした事業計画の策定が求められます。
- 業計画期間において、給与支給総額を年率平均5%以上増加させること。
- 事業計画期間に、補助事業を実施する事業場内における最低賃金を地域別最低賃金プラス30円以上の水準にすること。
- 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させること。
これらが基本要件となっていますが、ものづくり補助金は5つの類型に分類されています。通常枠以外の類型では、個別の要件が設けられているため注意が必要です。
また、ものづくり補助金の補助金額は100万円~3,000万円となっており、手厚い支援を受けられます。生産性向上のために設備投資を検討している中小企業等は、ものづくり補助金の申請要件に該当するか確認してみてはいかがでしょうか。
IT導入補助金
IT導入補助金とは、中小企業等が生産性向上や業務効率化を目的としたITツールを導入する際に、その導入費用の一部を支援する制度です。正式には「サービス等生産性向上IT導入支援事業」という名称で、経産省と独立行政法人中小企業基盤整備機構によって監修されています。ITツールの導入を支援することで、中小企業等の経営力向上・強化を図ることなどが目的です。
IT導入補助金は「通常枠」「デジタル化基盤導入枠」「セキュリティ対策推進枠」「複数社連携IT導入類型」の4つに分類されており、それぞれの類型ごとに申請要件が設定されています。生産性向上のためのソフトウェアに加え、PCやタブレット端末などのハードウェアを導入する際にも活用できる補助金です。
なお、IT導入補助金の補助金額は5万円~450万円となっており、対象経費等によって補助金額が変動します。どの類型に該当するのかについては公募要領を確認し、不安な場合は専門家への相談も検討しましょう。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金とは、小規模事業者等が販路開拓や業務効率化を目的とした取り組みを行う際に、必要経費の一部を支援する制度です。これらの経費を補助することで、地域の雇用や産業を支えている小規模事業者等の、生産性向上および持続的発展を図ることを目的としています。
小規模事業者持続化補助金の補助対象者となるには、以下3つの要件をすべて満たす必要があります。
- 法律によって定められている「小規模事業者」に該当すること。
- 法人の場合、資本金または出資金が5億円以上の法人から100%の株式を保有されていないこと。
- 直近3年分の各年または各事業年度における課税所得の年間平均額が、15億円を超えていないこと
さらに、過去に小規模事業者持続化補助金の採択を受けたことがある場合は、再度交付を受けることができないケースもあるため注意が必要です。また、小規模事業者持続化補助金には6つの類型があり、それぞれ申請要件が異なるため公募要領を必ず確認するようにしましょう。
なお、小規模事業者持続化補助金の補助金額は50万円~200万円となっています。小規模事業者に該当し、販路開拓や生産性向上のための取り組みを行いたいと考えている方は、小規模事業者持続化補助金の活用を検討してみてください。
経産省の令和5年度の施策ポイント
令和4年8月31日、経産省は令和5年度の概算要求額を、前年度当初予算から13.7%増の1兆3,914億円と発表しました。企業が継続して発展していくためにも、国の政策を理解しておくことは非常に重要です。補助金申請を検討する際のヒントにもなるため、経済産業政策の概要を把握しておきましょう。
まず、長期化しているコロナ禍とウクライナ情勢の影響により、エネルギー市場への打撃や物価高騰が続いています。これらの影響や、カーボンニュートラルを目指した取り組みに予算が挙げられていることから、国はエネルギー関連に力を入れているといえるでしょう。
また、中小企業や小規模事業者等の事業継続支援・生産性向上・転嫁円滑化も政策の重点として置かれています。国が成長するためには、中小企業等の生産性向上や設備投資に対する支援も欠かせないものです。
予算の成立・執行前であったとしても、必要な情報の収集や経営計画の見直しなど、準備できることは多くあります。より良い企業経営や補助金の活用方法を検討するためにも、国の政策に関する情報はしっかり把握しておきましょう。
経産省が提供する補助金をうまく活用するなら専門家に相談を検討
今回は、経産省が提供している補助金について、交付までの一般的な流れや人気の補助金についてご紹介してきました。補助金は金融機関からの融資とは違い、返還義務がないことが魅力の資金調達方法です。採択される必要はありますが、うまく活用することができれば事業をスムーズに軌道に乗せることができるでしょう。経産省が提供する補助金をうまく活用したいという方は、専門家への相談も検討してみてください。