補助金や助成金を受け取った際「税金はかかるのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。補助金の多くは会計上「収益」として扱われ、所得税や法人税の課税対象になります。ただし消費税は不課税であり、補助金の種類や受給目的によって課税区分も異なります。本記事では、課税・非課税の違いや会計処理、確定申告のポイント、そして圧縮記帳の活用法まで、わかりやすく解説します。
目次
補助金・助成金に税金はかかるのか?
補助金は会計上「収益」として認識されるため、所得税や法人税の課税対象となります。ただし、商品やサービスの提供に対する対価ではないため、消費税の課税対象にはなりません。
国などから補助金を受け取った際には、こうした税務上の取扱いを正しく理解し、適切な会計・税務処理を行うことが重要です。
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課税・非課税対象となる補助金
続いて、課税・非課税対象となる個人の補助金や助成金についてご紹介します。
課税区分 | 分類 | 説明 | 主な該当例 |
課税 | 事業所得 | 事業に関連する補助金 売上や経費の補填目的 確定申告で収入計上が必要 | 持続化給付金(個人事業主向け) 家賃支援給付金 雇用調整助成金 小学校休業等対応助成金・支援金 感染拡大防止協力金(東京都) |
一時所得(課税条件あり) | 生活支援など事業に無関係な給付金 年間50万円の特別控除あり | 持続化給付金(給与所得者向け) Go Toキャンペーン給付金 すまい給付金 地域振興券 | |
雑所得 | 事業所得・一時所得以外に分類される給付金 | 雑所得者向け持続化給付金 ベビーシッター利用者支援事業・東京都のベビーシッター利用支援事業 | |
非課税 | – | 法律や特例措置により非課税とされる給付金 | 新型コロナ休業支援金 雇用保険の失業等給付 生活保護 児童手当 特別定額給付金 子育て世帯臨時特別給付金 学生支援緊急給付金 医療従事者慰労金 保育料助成金(東京都) |
補助金や助成金は、その性質や支給目的に応じて「課税対象」となるものと「非課税」となるものに分かれます。
事業に関連する補助金は原則として事業所得として課税され、確定申告において収入として計上が必要です。一方、生活支援など個人向けの給付金は一時所得や雑所得として扱われ、条件によって課税されるケースがあります。
一方で、法律や特別措置に基づいて支給される給付金は非課税とされています。代表的なものには「特別定額給付金」や「雇用保険の失業等給付」などが挙げられます。
補助金の名称が同じでも、支給目的や受給者の属性によって課税区分が異なることがあります。そのため、税務処理の前には制度の内容や法的根拠を確認しなくてはいけません。誤って申告漏れや過剰申告をしてしまわないよう、慎重に対応しましょう。
補助金・助成金を受給した場合の会計処理
助成金や補助金、支援金・協力金を受け取った際は「雑収入」として仕訳します。補助金による収入には消費税がかからないため、受取金額をそのまま帳簿に記載すれば問題ありません。
例えば、雇用促進に関する補助金70万円を口座振込で受け取った場合の仕訳は以下のとおりです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
預金 | 70万円 | 雑収入 | 70万円 | 雇用促進補助金 |
支給が決定しても実際に入金されるまで時間がかかるため、その間は「未収入金」として仕訳する場合があります。
補助金・助成金を受給した場合の確定申告のポイント
補助金・助成金を受給した場合の確定申告のポイントを3つ解説します。以下のポイントを踏まえて、スムーズかつ正確な申告ができるように準備しましょう。
勘定科目を正しく設定する
補助金や助成金を確定申告する際には、適切な勘定科目の設定が重要です。受給した補助金は「雑収入」として処理するのが一般的です。しかし補助金を利用して取得した資産やサービスについては、その性質に応じて適切な勘定科目を割り当てる必要があります。
勘定科目の誤りは税務調査のリスクにもつながるため、補助金の使途ごとに勘定科目を区分するよう注意してください。
課税対象となる範囲を確認する
補助金や助成金は、基本的に課税対象となる「収益」に該当します。法人の場合は、「所得」が法人税の課税対象となります。また個人事業主であれば「所得」が所得税の課税対象です。
一定の要件を満たす補助金は、全額がそのまま課税されるわけではありません。そのため、受給した金額と支出内容を照らし合わせ、課税対象となる範囲を適切に把握することが大切です。
減価償却の対象を整理する
補助金で取得した資産が固定資産に該当する場合は、減価償却の対象となる可能性があります。例えば、設備機器や建物などの有形固定資産やソフトウェアなどの無形固定資産は、耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。
補助金の使途によっては減価償却の処理が必要です。まずは固定資産台帳と照らし合わせながら、対象資産の種類や取得時期を明確にしておきましょう。
補助金・助成金の会計処理に活用できる圧縮記帳
圧縮記帳とは、法人が補助金を受けて資産を取得した際に利用できる制度です。初年度の課税所得が増えて税負担が重くなるのを避けるために、補助金相当額を資産の取得価額から控除し、課税を繰り延べます。
補助金に対する課税はされますが、課税の時期を後ろ倒しにできるため、初年度の税負担軽減といった効果があります。
圧縮記帳の適用要件は以下の通りです。
- 圧縮限度額の範囲内で、いずれかの方法により経理処理を行うこと
①帳簿価額を損金経理により直接減額する
②確定決算において積立金として積み立てる
③決算確定日までに剰余金の処分により積立金として積み立てる - 確定申告書に、圧縮記帳に係る損金算入の明細書を添付すること
- 清算中の法人でないこと
なお「圧縮限度額」とは、圧縮記帳の種類ごとに定められた固定資産の帳簿価額の減額上限を指します。適用を検討する際は、こういった減額の限度額にも注意が必要です。
関連記事:補助金活用で利用できる圧縮記帳とは?条件や方式・対象を解説!
圧縮記帳を活用できるケース
以下では、法人が圧縮記帳を活用できるケースについて表でまとめました。
適用ケース | 圧縮限度額の概要 | 備考 |
国庫補助金 | 取得資産に充てた国庫補助金の額 | 国や自治体からの補助金などが該当 |
工事負担金 | 取得価額 − 提供を受けた金銭のうち、その固定資産の取得に充てた部分の金額 | 電気・ガス・鉄道などのインフラ系事業者向け |
保険差益 | 保険差益 ×〔代替資産取得に充てた保険金 ÷(保険金 − 滅失経費)〕 | 災害などで被害を受け、代替資産を取得した場合に適用 |
交換差益 | 取得資産の価額 −(譲渡資産の帳簿価額+譲渡経費) | 資産を一定の条件で交換した場合に適用 |
非出資組合の賦課金 | 工事負担金と同様 | 賦課金で固定資産を取得した場合に準用 |
特定資産の買換 | 圧縮基礎取得価額 × 差益割合 × 80% ※圧縮基礎取得価額は「取得価額」と「譲渡対価」のいずれか少ない方 | 旧資産を譲渡し、新資産に買い換えた場合などに適用 |
これらの制度を活用すると、課税のタイミングを繰り延べし、資金繰りや税負担の平準化を図ることが可能です。
ただし、適用には厳密な要件があり、根拠法令や計算方法の確認をしなくてはいけません。適用期限が定められている制度もあるため、事前の確認と税理士などの専門家への相談をおすすめします。
関連記事:補助金を活用した先行取得における圧縮記帳の正しい手順
補助金・助成金を受給した場合の会計処理における注意点
最後に、補助金・助成金を受給した場合の会計処理における注意点を解説します。
補助金や助成金の入金には時間がかかる点に注意する
補助金や助成金は、申請が採択された後すぐに入金されるわけではありません。原則として後払い方式であり、実際の入金までに数ヶ月〜1年程度かかるケースもあります。
決算期をまたいでしまうこともあるため、まだ入金がされていない場合には「未収入金」として借方に仕訳しましょう。
入金が確認できた段階で「未収入金」として貸方に計上し、未収入金を消す処理が必要となります。入金までのタイムラグがあることを前提に、正確な会計処理を行ってください。
消費税は不課税だが法人税は課税対象となる
補助金や助成金は、消費税法上「資産の譲渡等の対価」に該当しないため、消費税は不課税となります。一方、法人税については、これらの収入は原則として課税対象となります。
特に施設補助金など、資産取得に関連する補助金については会計処理が複雑になりがちです。そのため、制度の内容を確認したうえで正確な処理を行わなくてはいけません。
会計処理を誤るとペナルティを受ける可能性がある
補助金や助成金は返済不要の資金であるため、つい会計処理を軽視してしまうことがあります。しかし、補助金も通常の収益と同様に、適切な会計処理が必要です。
万が一、処理を誤って申告漏れや過少申告があった場合、過少申告加算税として追徴される税額の10%が課されることがあります。また、納付が遅れると延滞税が発生する可能性もあるため、資金繰りへの影響にも注意が必要です。
不要なトラブルを防ぐためにも、補助金・助成金に関する会計処理は正しい手続きに基づいて行いましょう。また、必要に応じて税理士などの専門家へ相談するのもおすすめです。
まとめ
補助金や助成金は、原則として所得税・法人税の課税対象ですが、消費税は不課税です。個人の課税区分は補助金の目的や使途によって事業所得・一時所得・雑所得・非課税に分かれるため、制度内容をよく確認しましょう。
また法人は、補助金による資産取得に対しては「圧縮記帳」による課税繰延も可能です。不適切な会計処理はペナルティのリスクもあるため、正確な処理と専門家の助言を得ながら対応しましょう。