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最終仕入原価法って何?棚卸資産の評価が簡単?デメリットも解説

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最終仕入原価法って何?棚卸資産の評価が簡単?デメリットも解説

棚卸資産を評価する方法はいくつかの種類がありますが、特に選択手続きをしない場合、「最終仕入原価法」が自動的に適用されます。この方法は事務負担が少ないため、小規模な事業者に向いています。一方で、インフレ時や、外部向け資料には不向きといったデメリットもあり注意が必要です。今回は、最終仕入原価法の仕組みや他の方法との違い、向いている業種や決算書類への記載例などを解説します。

最終仕入原価法とは?概要とメリットを解説

レシートをもとに経費を計算する個人事業主

ここでは、基本的な仕組みを解説します。

最終仕入原価法は「直近の仕入価格」で資産を評価する方法

最終仕入原価法では、期末の棚卸資産を「直近の仕入単価」で評価します。直近の単価のみ分かれば良いので、他の方法と比べて処理が簡単なのが特徴です。

例えば、商品Aを10月に100円で10個、12月に120円で10個仕入れたとしましょう。12月末の期末時点で商品Aが1個だけ残っていた場合、商品Aの在庫は直近の仕入単価である「120円」で評価されます。このように、計算の手間が少なく済みます。

最終仕入原価法のメリットは記帳や事務手続きがシンプルなこと

最終仕入原価法のメリットは、以下の通りです。

  • 計算や記帳が簡単
  • 単価の記録を細かく追わずに済む
  • 評価方法の届出が不要

他の評価方法は、複数の仕入単価の平均を計算したり、在庫の入出庫を細かく追ったりする必要があります。一方、最終仕入原価法は直近の単価のみで評価するので、計算がシンプルです。よって、他の方法よりも日々の在庫管理や帳簿付けが簡単にできます。

他の評価方法について詳しく知りたい方は下記の記事をご確認ください。

関連記事:棚卸資産と在庫の違いとは?税務調査で押さえたいポイントも解説!

メリット3点目の「評価方法の届出が不要」というのは、他の評価方法と違い、最終仕入原価法は手続きしなくても自動適用されるからです。

評価方法を最終仕入原価法以外の方法にする際は、税務署へ届出を提出する必要があります。ただし届出を提出しないと、最終仕入原価法を選択したとみなされます。よって、最終仕入原価法を採用すると、他の評価方法と比べて事務作業を1つ減らせるのです。

参考:A1-18|国税庁
参考:C1-25|国税庁

最終仕入原価法のデメリットと注意点

税理士に丸投げするデメリットのイメージ

物価変動や決算の使い道によっては、不利に働くケースもあります。ここでは、採用前に押さえておきたい注意点を解説します。

現実の在庫状況と評価額がずれることがある

最終仕入原価法を採用すると、在庫の実態と評価額が乖離する場合があります。古い商品が在庫として残っていても、すべて最新の価格で評価されるため、実態より高い金額になる可能性があるためです。

例えば季節商品や型落ち商品、劣化しやすい食品などが顕著です。期末時点で実際の価値が下がっていても、最新の高い仕入価格で評価されてしまいます。

なお、最終仕入原価法でも、災害による商品の破損がある場合などは例外的に評価額を下げられるケースもあります。ただし根拠や記録などが必要です。

参考:資産の評価損等|国税庁
参考:棚卸資産の評価損|国税庁

インフレ傾向の場合は税負担が増えるリスクがある

インフレで仕入価格が上昇傾向にある場合、最終仕入原価法は税負担が増えるリスクがあります。

なぜなら、期末在庫が実態より高く評価される場合があるからです。すると売上原価が少なく計算されるため、帳簿上の利益が実態より大きく見えてしまいます。利益が大きく見えると課税所得も増えるため、実際の利益に対して過剰な税負担となるリスクがあります。

例えば、商品Aの仕入価格が1年間で100円から120円に上昇したとします。100円で100個、120円で1個仕入れ、期末に101個すべて売れ残ったとしましょう。

合計仕入額は100円×100個+120円×1個=10,120円ですが、最終仕入原価法だと120円×101個=12,120円の評価となります。

つまり、在庫が2,000円高く評価されており、結果、売上原価が2,000円少なく計上され、利益が2,000円大きく見えてしまうのです。

仕入価格が上がりやすい商品を扱っている事業者は、意図せず税負担が増えるおそれがあるため注意しましょう。

在庫の評価額が高くなると、税金が高くなる仕組みについて詳しくは下記の記事をご確認ください。

関連記事:期末在庫を増やすと税金が減る?計算方法や消費税の扱いも解説!

また、期末にならないと正確な在庫評価額を出せない点もデメリットです。期中で原価の予測や損益の見積もりをしたくても、在庫評価が確定していないため、正確な利益把握ができません。予算管理や資金繰りを重視する業種は注意しましょう。

銀行や投資家などに見せる決算には不向きである

最終仕入原価法は、税務署に提出する決算書には使えますが、外部の利害関係者に提出する決算書には適していません。最終仕入原価法は「企業会計基準」で認められていないためです。

企業会計基準とは、企業が決算書などを作る際の共通ルールです。この基準に従って作られた決算書は、実態をより正確に表していると評価されやすく、外部からの信頼性が高まります。

上場企業は企業会計基準に従う義務があります。非上場企業でも、銀行融資や投資家対応では「この基準に準拠しているか」がチェックされます。

よって、企業会計基準で認められていない最終仕入原価法を決算に使っていると、外部の関係者に信用されにくくなるリスクがあります。最終仕入原価法は事務作業のシンプルさを優先しているため、実態を正確に反映していないと見なされるためです。

対外的に信用力のある決算書を作りたい場合は、企業会計基準で認められている評価方法(先入先出法など)を採用しましょう。

参考:企業会計基準第9号棚卸資産の評価に関する会計基準

最終仕入原価法は「仕入れ価格の変動が少ない業種」向き

税理士を変更するデメリットのイメージ

上記のメリット・デメリットを踏まえると、最終仕入原価法は下記の業種に向いています。

  • 仕入価格が安定している商品を扱う業種(書籍・日用品・規格部品の販売など)
  • 在庫が少ない小規模事業者(せどりやネットショップなど)

仕入価格が安定していれば、デメリットである「評価額のブレ」が少なく、メリットの「シンプルさ」を活かしやすくなります。

また、在庫の種類や数量が少ない小規模事業者には複雑な記帳が負担になるため、最終仕入原価法の簡単さが有利に働きます。

とはいえ棚卸資産の評価方法を決める際は、仕入価格の変動リスクや事務負担など複数の事柄を踏まえる必要があります。事業者ごとに最適解が異なるため、自分に最も適した評価方法を選びたい場合は税理士などの専門家に相談しましょう。

最終仕入原価法の計算例

ここでは、2種類の商品の在庫を評価する計算例を見てみましょう。

【仕入内容】

⚫︎商品A(文房具)

  • 3月:90円で10個仕入
  • 9月:100円で20個仕入れ

⚫︎商品B(日用品)

  • 5月:180円で10個仕入
  • 11月:150円で5個仕入

【期末(12月末)の在庫】

  • 商品A:5個→最後に仕入れた単価:100円
  • 商品B:3個→最後に仕入れた単価:150円

【評価額】

  • 商品A:100円×5個=500円
  • 商品B:150円×3個=450円

【棚卸資産】

500円+450円=950円

商品の仕入価格が上がっていても下がっていても、直近の仕入価格で評価されます。

【記載例】法人は個別注記表に最終仕入原価法の旨を記載する

法人の場合、決算書類の一部として「個別注記表」を作成する義務があります。

個別注記表とは、貸借対照表や損益計算書などの決算書類の補足資料です。書類を読む際の注意事項がまとめられています。

中でも「重要な会計方針に関する注記」の欄には、資産の評価方法を初めとする会計処理の基本方針を明記する必要があります。

参考:「個別注記表」って、何ですか? – 会計|中小企業庁

個別注記表の該当箇所の記載例は以下の通りです。

個別注記表

自 令和X年X月X日 至 令和X年X月X日

1.この計算書類は、「中小企業の会計に関する指針」によって作成しています。

2.重要な会計方針に係る事項に関する注記

 ①棚卸資産の評価基準及び評価方法

  最終仕入原価法を採用しています。

参考:中小企業の会計 34問 34答|中小企業庁

決算書の種類について詳しくは下記の記事をご確認ください。

関連記事:【保存版】決算報告書の種類と書き方

評価方法が最終仕入原価法のままでいいか不安なら相談を

今回は、最終仕入原価法の基礎知識を解説しました。

最終仕入原価法は、最後に仕入れた単価で在庫を評価する方法です。計算が簡単で事務負担を減らせますが、インフレ時や外部向けの決算には不向きですので注意しましょう。

最終仕入原価法以外の評価方法に変えたい場合は、税務署に届出を提出する必要があります。ただし、提出期限があるためご注意ください。例えば開業したばかりの個人事業主の場合、開業した年の翌年の確定申告期限までの提出が必要です。

また、評価方法を変更した後は基本的に3年間は同じ評価方法を継続しなければなりません。安易に変更して後悔しないようご注意ください。

棚卸資産の評価方法は、業種・事業規模・価格変動の状況などによって、適した方法が異なります。1人で決めるのに不安がある場合は、ぜひ税理士にご相談ください。個々の状況に合わせた判断や税務をサポートいたします。

棚卸資産の評価方法についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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