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ホステス報酬は事業所得か給与所得か?控除と源泉徴収の違いを徹底解説

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ホステス報酬は事業所得か給与所得か?控除と源泉徴収の違いを徹底解説

クラブやバーの経営者は、ホステスの報酬が事業所得と給与所得のどちらなのかについて把握しておく必要があります。正しく認識していないと、経営者もホステスも、適切な金額を納税することができないためです。この記事では、ホステスの報酬を中心に、源泉徴収や控除の仕組み等について解説します。

給与所得と事業所得|それぞれの特徴と違い

給与支給明細書

ホステスの報酬が給与所得か事業所得のどちらに該当するのかは、それぞれの特徴と違いについて理解を深めることでイメージしやすいです。ここで、給与所得と事業所得の特徴について見ていきましょう。

所得区分概要
給与所得
  • 勤務先から受け取った給料・賃金・賞与等のこと
  • 年間給与の合計額から、給与所得控除を差し引いた金額が該当する
  • 社員やパート・アルバイト等の雇用形態においても、給与支払時に所得税の源泉徴収義務が発生する
事業所得
  • 農業や漁業、製造業や小売業、サービス業など、事業を営む人の、その事業から発生した所得のこと
  • 請負契約を介して生じた支払いを外注費と呼ぶが、取引先から外注として依頼を請けた後、報酬を得た場合は事業所得に該当する
  • 源泉徴収の義務はないものの、外注費の支払いにおいては消費税が発生する

給与所得は、入社した勤務先から受け取った給料等です。一方、事業所得は、事業を営む人がその事業を通して得た所得を指します。

給与所得は、給与所得控除を差し引いた金額が従業員に支払われます。また、所得税の源泉徴収義務も発生しているのも給与所得の特徴です。これに対し、事業所得には、給与所得控除がありません。事業所得として得た収入には、消費税の納税義務が発生する可能性があります。

ホステス報酬の所得区分|判断ポイント

ホステス報酬の所得区分を判断するには、以下項目をチェックしましょう。

  • 時間および空間的拘束の有無
  • 指揮監督下にあるかどうか
  • 報酬の最低保証の有無
  • 売掛金回収責任の有無
  • 必要経費の負担の有無

A~Cまでが該当する場合、給与認定される可能性があります。一方、D~Eに該当する場合は外注費とみなされる可能性が高いです。ここで、給与所得と事業所得の判別ポイントを見ていきましょう。

所得区分判断ポイント
給与所得
  • 出勤表・タイムカード等で管理されている
  • 報酬が日給または時給計算されている
  • 必要経費をホステスが負担していない
  • 売掛金の回収責任が店側にある
  • 報酬の最低保証がある
  • 雇用関係がある
事業所得
  • 出勤表・タイムカード等で管理されていない
  • 報酬を日給または時給で計算されていない
  • ホステス自身で必要経費を負担している
  • 請負契約を結んでいる(雇用契約を結んでいない)
  • 売掛金の回収責任をホステスが任されている
  • 報酬の最低保証がない

給与所得か事業所得のどちらかを知りたいときは、ホステスの働き方や契約種類などで判断可能です。働き方や契約種類等を振り返らないと判断が難しい業種とも言えるので、この機会にどちらに該当するのかを押さえておきましょう。

関連記事:水商売で確定申告しないと損をする?キャバ嬢やナイトワークで確定申告をするメリットや方法を分かりやすく解説!

給与所得と事業所得の違いで考えられる事業主・ホステスへの影響

女性

ここでは、給与所得と事業所得の違いで考えられる、事業主とホステスへの影響について解説します。それぞれの影響に理解を深め、今後の対策に活かしましょう。

事業主に考えられる影響

まずは事業主に考えられる影響から説明します。具体的には以下3つです。

  • 源泉徴収の種類と対応
  • 消費税の仕入税額控除
  • 社会保険および労働保険の扱い

それぞれを見ていきましょう。

源泉徴収の種類と対応

所得税法204条では、源泉徴収が必要な報酬料金について、以下のように定めています。

キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金。

出典:e-Gov 法令検索|所得税法|

また、源泉徴収が必要な報酬であっても、給与所得に該当する場合は事業の報酬に関する源泉徴収の適用はなく、別途、給与として源泉徴収の対象とも記載があります。

つまり、給与所得に該当する報酬は給与として、給与所得に該当しない報酬は報酬として源泉徴収額を計算する必要があるということです。分かりにくい部分のため、混同する人も珍しくありません。今一度、この項で理解を深めておきましょう。

参考:国税庁|No.2807 ホステス等に支払う報酬・料金

消費税の仕入税額控除

ホステスの報酬が事業所得にあたる場合、その報酬は消費税の課税対象となります。この場合は報酬を支払う事業者側が仕入税額控除を利用可能です。

ただし給与所得に該当する場合、消費税の課税対象にはあたらず、仕入税額控除を受けられません。またインボイス発行事業者に未登録のホステスへの支払いも、原則、仕入税額控除ができないので注意しましょう。

社会保険および労働保険の扱い

ホステスの報酬が事業所得の場合は、社会保険や労働保険は適用外となり、給与所得の場合はいずれも適用されるでしょう。

社会保険や雇用保険の保険料は、その半分を会社側が負担するのが一般的です。また、労災保険については、保険料の全額が会社側の負担になるため、人件費割合が高いとされる水商売においては大きな影響があると考えられます。

関連記事:副業所得20万円以下で確定申告は必要?ポイントや注意点を解説!

ホステスの報酬における影響

次に、ホステスの報酬において、考えられる影響は以下4つです。

  • 事業所得であれば確定申告の手続きが増える
  • 雇用形式によって必要経費or給与所得控除の対が異なる
  • 加入する保険関連が異なる
  • 目先の手取額が異なる

どのようなことなのか、詳しく見ていきましょう。

事業所得であれば確定申告の手続きが増える

ホステス報酬が事業所得の場合、原則、ホステス側が自身で確定申告しなければなりません。また、2年前の課税売上が1,000万円を超える場合や、インボイス発行事業者に登録した場合については、消費税の申告も必要です。

一方、給与所得の場合については、原則として年末調整等によって課税手続き等は必要ありません。ただし、医療費控除を受ける場合などについては、確定申告が必要になります。

関連記事:【税理士監修】医療費控除とは?申請・計算方法や他の制度との違いを解説

雇用形式によって必要経費or給与所得控除の対が異なる

ホステス報酬が事業所得の場合、収入を得るために生じた直接の経費が必要経費にあたります。一方、給与所得の場合は、経費の実額は控除することができず、所定の給与所得控除額のみを控除する形です。

所得の計算式は以下の通りです。

  • 事業所得の場合:総収入金額-必要経費
  • 給与所得の場合:給与金額-給与所得控除

なお、給与所得控除額については、下表のように収入金額に応じて決まります。

令和2年分以降の場合

給与等の収入金額

給与所得控除額

~1,625,000円まで

550,000円

1,625,001円 ~ 1,800,000円まで

収入金額 × 40% – 100,000円

1,800,001円 ~ 3,600,000円まで

収入金額 × 30% + 80,000円

3,600,001円 ~ 6,600,000円まで

収入金額 × 20% + 440,000円

6,600,001円 ~ 8,500,000円まで

収入金額 × 10% + 1,100,000円

8,500,001円以上

1,950,000円(上限)

参考:国税庁|No.1410 給与所得控除

なお、同一年分の源泉徴収票が2枚以上ある場合は、それらの支払金額の合計額より上表を適用させましょう。

平成29年分から令和元年分の場合

給与等の収入金額

給与所得控除額

~1,625,000円まで

650,000円

1,625,001円 ~ 1,800,000円まで

収入金額 × 40%

1,800,001円 ~ 3,600,000円まで

収入金額 × 30% + 180,000円

3,600,001円 ~ 6,600,000円まで

収入金額 × 20% + 540,000円

6,600,001円 ~ 10,000,000円まで

収入金額 × 10% + 1,200,000円

10,000,001円以上

2,200,000円(上限)

参考:国税庁|No.1410 給与所得控除

令和2年分以降と比べると、収入金額や給与所得控除額に違いがあることが分かります。計算の際は、正しい年度のものを参考にしましょう。

加入する保険関連が異なる

ホステス報酬が事業所得だと、国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。一方、給与所得では、健康保険と厚生年金の加入が必要となるでしょう。保険料と年金の合計負担額については、700万円を超える場合、事業所得の方が安くなる傾向です。

目先の手取額が異なる

ホステスの報酬が事業所得の場合、源泉所得税の天引きが行われます。一方、給与所得の場合は、源泉所得税や社会保険等が天引きされるといった違いがある点に注意が必要です。

所得区分がどちらに該当するかによって目先の手取り額が変わります。天引きされる金額は、次項で詳しく解説するので参考にしてください。

源泉徴収の計算方法

フリーランスの源泉徴収のイメージ

ここからは、源泉徴収の計算方法について解説します。どのような計算が必要で、どれくらいの手取り額となるのか、実際に計算しながら概算を把握しましょう。

事業所得における源泉徴収の計算式

事業所得に基づく源泉徴収の計算式は、報酬金額に、税率を適用する形で算出します。源泉徴収税額の計算は以下の手順です。

  • 報酬の支払い金額を算出する
  • 報酬支払金額に適用される税率を掛ける
  • 源泉徴収税額が算出される

【計算式】
源泉徴収税額 =報酬の支払い金額 × 10.21%

次に具体例として、報酬が30万円の場合を見てみましょう。

  • 報酬の支払い金額:300,000円
  • 100万円以下の税率:10.21%
  • 報酬の支払金額300,000円 × 10.21% = 30,630円

この例における源泉徴収税額は30,630円です。経営者は30,630円を報酬から差し引き、税務署に納付しましょう。なお、100万円を超えた部分の税率は20.42%になります。計算方法に限らず、税務に関する詳細な専門知識が必要な場合は、専門家へ相談すると安心です。

給与所得の場合の計算例

事業主は、従業員の支払額から給与所得控除を差し引き、その差額に対して適用される所得税を計算する義務があります。計算を適切に行うことで、源泉徴収された税金は正確に納税され、従業員給与の透明性を保つことが可能です。

たとえば、従業員の月額給与が30万円の場合です。給与所得控除としての年額65万円(均等割した場合は月額約54,167円)を考慮して計算します。月額給与30万円から控除額54,167円を差し引くと、課税対象額は245,833円です。この金額に税率を掛けて源泉徴収額を求め、さらに社会保険料などを差し引いた金額が従業員の手取り額となります。

現行の税率に基づき、例えば税率が5%であれば、245,833円 × 5% = 12,291.65円(小数点四捨五入で12,292円)が源泉徴収税額です。

源泉徴収の計算にあたっては、自動計算ソフトや専用の税務ツールを活用することで正確性を確保できます。事業主であれば導入を検討し、年度末に徴収した税額が正しいかどうか確認することをおすすめします。

関連記事:【個人事業主】バイト先で源泉徴収票が出ない場合は確定申告はどうなる?

ホステス報酬に関するまとめ

ホステスの報酬に関する正しい理解は、事業運営の効率化とトラブル回避につながります。報酬が給与所得か事業所得かを見極め、適切な所得区分を把握することで、税負担の最適化につながるでしょう。

報酬の扱いや税関連の処理でお困りの際は、お気軽に小谷野税理士法人へご相談ください。

この記事の監修者
  • 会社設立の基礎知識 特集「法人のための確定申告」
税理士「今野 靖丈」

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