銀行から融資を受ける場合、金利相場を把握することで、利子負担を最小限に抑えつつ収益とのバランスを保つことができるでしょう。この記事では、金利の基本知識や相場について詳しく解説します。銀行融資による資金調達を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
銀行融資の金利種類
銀行融資を受ける場合、金利には2つの種類があることを押さえておきましょう。ここでは、変動金利と固定金利のそれぞれについて解説します。
変動金利
変動金利は、借入期間中に変動する金利です。通常は6ヵ月に1回適用金利が見直されますが、変動しても毎月の返済額は5年間変わらない特徴があります。他金利よりも低く抑えられる特徴から、下落等によっては返済総額が少なくなる点はメリットです。
ただし金利が変動するために、返済期間や返済総額が当初予定していた期間よりも長くなることもあります。最終的に、元金がなかなか減らず、返済が長期化しやすい部分は変動金利のデメリットと言えるでしょう。
固定金利
固定金利は、借入期間中の金利が固定されたものです。完済まで固定される「全期間固定金利」と、借入開始時から一定期間固定される「当初固定金利」の2つあります。期間としては、一般的に2~20年と幅があり、期間が長期化するほど適用金利も高くなる仕組みです。
固定金利が終了した場合、その後の金利については同期間の固定金利もしくは異なる期間の固定金利、変動金利から選択できます。
借入時の金利で融資を受けられるため、返済額や返済期間が分かりやすい点は固定金利のメリットと言えるでしょう。しかし、下落による影響を受けないため、変動金利のように返済額が減るような旨みがない点をデメリットに思う人もいるようです。
事業融資の調達方法|種類と金利相場
ここからは、事業資金の調達方法として、以下6つの種類と金利の相場について解説します。
- 日本政策金融公庫
- 信用保証協会付き融資
- プロパー融資
- 信用金庫
- ファクタリング
- ノンバンク
どのようなものなのか早速見ていきましょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が管轄・出資する政府系金融機関です。提供する融資制度の金利については、業種・規模によって異なるものの、基準利率は2~3%台と言われています。一定の条件を満たすことで特別利率が適用されると、1%前後の利率になることもあるようです。金融機関等と比べると低い金利での資金調達ができるので、利率を抑えて融資を受けたい方にとっては有効な方法と言えるでしょう。
参考:日本政策金融公庫
信用保証協会付き融資
信用保証協会付き融資は、金融機関からの融資において公的機関の保証を付け、資金調達をサポートする制度です。中小企業等の返済を保証し、金融機関の貸倒れリスクを軽減する目的があります。貸倒れリスクの低下によって、金融機関は通常よりも金利を低く設定することが多く、2%前後が相場のようです。
参考:一般社団法人全国信用保証協会連合会|初めての融資と信用保証
関連記事:信用保証協会のメリットは?融資の審査が通過しやすくなるのかを解説
プロパー融資
プロパー融資は、金融機関が自社の判断によって企業に直接融資を行う方法です。適用金利は金融機関の内部規定や市場金利に影響されるものの、1~3%と比較的低い金利が設定されます。対象とする企業は法人であることが多く、融資金額も100万円以上で行われるのが一般的です。
関連記事:プロパー融資とは?審査が厳しいので難しい?金利やメリット・デメリットなどを詳しく解説!
信用金庫
信用金庫は、地域密着型の金融機関として、中小企業向けの融資に特化したサービスを展開しています。他の金融機関と比べても担当者との距離が近く、柔軟な対応が受けられるなど、魅力の多い方法の一つです。
金利についても、地域密着型のビジネスモデルを重視しているので、競争力のある条件で融資を行うケースが見受けられます。業種・規模によって違いはあるものの、2~6%前後が相場のようです。
ファクタリング
ファクタリングは、売掛債権の売却によって資金調達する方法です。金利はないものの、買取金額から一定の手数料が引かれ、残った金額が支払われます。企業とファクタリング会社の2社間で契約が完結する場合、売掛金に対して10~30%の手数料が相場です。取引先を含めた3社間であれば、1~10%と低くなります。
ノンバンク
ノンバンクは、預金を取り扱わない金融機関です。金利は各社または融資商品によって異なり、3~18%が相場と言われています。信用度の高い企業や個人の場合、比較的低い金利で融資が受けられるようです。
関連記事:法人・個人で銀行から借入を受けるには?審査やメリット・デメリットなどについて詳しく解説!
金利が決まる4つの要素
事業融資における金利は、融資を希望する企業に限らず、金融機関の利益などさまざまな要素で決まるのが一般的です。ここでは、金利が決まる以下4つの要素について解説します。
- 返済期
- 担保の有無
- 貸倒れリスク
- 金融機関の利益
どのような意味があるのか、詳しく見ていきましょう。
返済期間
返済期間の長さは、金利に直接的な影響を及ぼします。たとえば、契約時に設定した返済期間が長期の場合、金融機関は返済が完了するまでリスクを被る可能性があります。そのため、リスクが長期化する可能性があるほど金利を高く設定することが多いです。
逆に、短い期間での返済を選ぶと、リスクが少ないと判断され、金利が低く設定される場合があります。返済期間を決める上では、綿密かつ滞りのない返済プランを立てることが大切と言えるでしょう。
担保の有無
融資における担保の有無も、金利に大きな影響を与える要素の一つです。担保を提供することで、金融機関にとってのリスクが軽減されます。そのため、低い金利が設定されやすいです。
たとえば、不動産や設備などの担保がある場合は、金融機関は万が一の時に回収できる手段になるため、融資の条件が有利になることもあります。反対に、担保を提供できない場合は、金融機関もリスクを踏まえ、金利を高く設定するでしょう。
担保の有無は金利設定に影響を与える要素であるため、融資を受ける際は十分に考慮することをおすすめします。
貸倒れのリスク
金融機関は、企業の過去の返済履歴や経営状況を基に信用度を評価します。信用度が高いほどリスクは少ないと判断し、低い金利を設定することが多いです。逆に信用度が低いと、金融機関は貸し倒れリスクを考慮し、金利を高く設定する傾向にあります。自社の信用情報を事前に確認し、必要な改善策を講じることが最低金利に近づく一歩となるでしょう。
金融機関の利益
融資をする際、金融機関は資金の調達コストやリスク管理を考慮しながら金利を決めます。したがって、融資希望者の情報や市場全体の金利動向が、実際の金利に反映されやすいです。また金融機関は、さまざまな融資商品を提供し、各商品によって収益を最大化するための金利設定が行われています。
融資を受ける際は、金融機関の収益構造に関する理解が求められるほか、収益を抑える方法を模索することも必要と言えるでしょう。
利息の計算方法と返済方法の違い
事業融資の利息を計算する方法は、一般的に以下の式で算出します。
元金額 × 金利(利率) × 借入機関=利息額 |
なお、金利(利率)は3種類あり、基本的に年利で考えることが多いです。
金利(利率)の種類 | 概要 |
---|---|
日歩 | 現金100円に対する1日あたりの利息のこと |
月利 | 元金に対する月額あたりの利息のこと |
年利 | 元金に対する1年間の利息のこと 利息計算の単位を1年として計算する |
分割返済における元金は毎回の返済で減ります。そのため、毎月負担する利子は以下の計算式を使って算出してください。
借入残高 × 金利(利率) × 借入機関=利息額 |
計算式を使うことで、毎月の返済額や総支払額、利息額を事前に把握することができます。融資を計画する際は、企業の評価度や返済能力に見合った条件を見つけ、無理のない返済計画を立てるよう心がけましょう。
元金均等返済と元利均等返済の違い
融資の利息を計算する際は、元金均等返済と元利均等返済のそれぞれについて理解しておくことをおすすめします。
元金均等返済は、毎月の返済額の中で元金が占める割合が一定の返済方法です。元金が一定のため、初回の返済額が高いものの、返済回数が増えるにつれて利息が減ります。事業用資金の貸付で採用される方法で、返済期間の短縮を希望する人や、確実に借金を返したい人におすすめです。
一方、元利均等返済は、毎月の返済額が一定の返済方法です。初めのうちは利息割合が高いものの、返済が進むにつれて元金返済部分が増える特徴があります。返済期間の経過によって利息割合を元金に充てられる一方、返済が長期化しやすい点はデメリットと言えるでしょう。
金利を下げるためのポイント
ここからは、融資を受ける際に金利を下げるためのポイントについて解説します。どのようなポイントがあるのか、早速見ていきましょう。
業績改善や信用度アップに取り組む
業績を改善するための具体的な施策として、コスト削減や収益の多様化が有効です。効率的な経営を心がけることで安定した収益を確保し、結果として信用度の向上に期待できるでしょう。金融機関は過去の融資履歴や返済能力を重視するため、円滑な返済実績を築くことも大切です。
複数の金融機関を比較・検討する
複数の金融機関を比較・検討することも、金利を下げるために有効な方法です。異なる金融機関が提供する貸出条件や金利を把握し、ニーズに適したプランを選ぶことで、より有利な条件を得ることができるでしょう。
比較・検討の際は、金利に限らず返済方式や手数料、サービス内容といった細かい点も考慮することをおすすめします。金融機関によっては金利設定に大きな差があるので、冷静に選択できれば金利交渉において強い立場に立つことができるでしょう。
担保や保証人を活用する
担保や保証人の活用が金利を下げるポイントになることもあります。担保の存在によって、金融機関にとってのリスクが軽減されるため、優遇された金利の提示に期待できるでしょう。特に不動産や設備など有価値の資産がある場合は、活用方法を模索することをおすすめします。
また保証人の存在も、金融機関の信用を高めることにつながるので、結果的に金利交渉が有利になりやすいです。信頼度の高い保証人を選定することで、交渉の成功率アップにも期待できるでしょう。
関連記事:銀行融資の担保のありなしでは何が違う?特徴や種類を徹底解説!
事業計画書を作成・提出する
事業計画書の作成・提出も有効な方法の一つです。具体的かつ明確な計画書であるほど、金融機関からの信頼を得やすく、条件交渉にも良い影響を与えるでしょう。
なお、事業計画書の提出にあたっては、内容に基づいた説明力も欠かせません。綿密な市場分析や収支予測を経た説明によって、融資に対する理解が深まるでしょう。
事業資金を調達する方法はさまざま!自社に適した方法を探そう
金融機関等による融資は、スタートアップや経営において欠かせない資金調達手段です。融資を受けるにあたっては、どのような方法があり、金利相場はどれくらいかを把握しておくことが大切と言えます。
最適な融資先を選ぶ上で適切なサポートを受けたい方は、一度、小谷野税理士法人へご相談ください。