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印税を確定申告する目安と方法とは?原稿料や講演料についても説明

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印税を確定申告する目安と方法とは?原稿料や講演料についても説明

印税は、著作物の権利で生じるものであり、特別感のある収入です。ただし、その反面、税務に関する知識が不足している場合には、正確な確定申告書の書き方や手続き方法に不安を覚える場合もあるのではないでしょうか。そのような不安を解消すべく、この記事では、印税を確定申告する際の知識やノウハウを説明しています。印税と原稿料や講演料など、ほかの収入との違いにも注目してみてください。

印税とは?原稿料や講演料との違い

フリーランス・個人事業主の確定申告のイメージ

印税とは、書籍・楽曲など、出版社やレコード会社が著作物を販売した際、その作家やアーティストに支払う著作権使用料のことです。
契約ごとに違いは見られるものの、一般的な印税は、定価×印税率×販売数の計算式で導き出されます。
書籍の場合、作者が得られる印税率は、一般的に10%です。

ただし、絵本のように、イラストが書籍の大半を占める場合には、印税率10%を作家と画家で分割します。
音楽の場合は、作曲家25%・作詞家25%が印税の割合です。

一方、印税が著作権使用料であるのに対し、原稿そのものの対価としては原稿料が支払われます。
その原稿をもとに書籍が販売された際には、著作権使用料である印税が作家に支払われる仕組みです。

また、著作物のくくりには、講演も含まれています。
そのため、講師や専門家が講演を行うことにより支払われる講演料は、税制的な面では原稿料と同じ扱いです。

印税の確定申告は所得いくらから必要?

印税を得た場合には確定申告が必要です。具体的には、所得いくらから確定申告しなければならないのか説明します。

必要:給与があり印税の所得が20万円超の場合

会社から給与が支給されており、印税による所得が20万円を超えていた際は、確定申告が必要です。
従業員として働いていた場合、印税は副業による所得と見なされるでしょう。
副業では、給与所得の他に20万円超の所得が発生した場合、確定申告が義務付けられているのです。
その逆に、副業の所得が20万円を超えていなければ、確定申告は必要ありません。

必要:印税を含む所得が48万円超の場合

収入から経費を差し引いた所得が48万円を超えている場合は、確定申告の義務が生じます。
基礎控除は、所得から一定額が差し引かれる所得控除の一種であり、所得2,400万円以下の場合は48万円です。
そのため、所得金額が48万円以下であれば、基礎控除により課税されるべき所得が0円以下となるため、確定申告も必要とされません。

参考:No.1199 基礎控除|国税庁

不要な場合でも確定申告すると還付の可能性がある

給与の支給があって印税の所得が20万円以下の場合や、印税を含む所得が48万円を下回っていた場合は、確定申告は必要ありません。
ただし、確定申告が不要であっても、あえて申告することで、還付金を受け取れる可能性があります。

出版社やレコード会社から印税、及び原稿料や講演料が支払われる際には、取引先から源泉徴収されることが一般的です。
この源泉徴収には、所得控除や経費が含まれていません。そのため確定申することで、過剰に納税した分が還付金として返却されるのです。
ただし、確定申告で還付金がいくら戻ってくるかは、事前に税務署から教えてもらえるわけではありません。

還付金は、確定申告書を作成する際や、申告後に税務署から還付金額が通知されて確認できます。
確定申告前にどの程度の還付金が戻ってくるかは、自分で計算するか、税理士への相談が必要です。
個人事業主やフリーランスであれば、取引先から源泉徴収を行われる場合が大半であり、多くの方が自分で確定申告することでしょう。

給与所得者の場合、副業で得た印税が20万円を下回っていても、次のような際には還付金を受けられる可能性があります。

  • 医療費控除:年間の医療費が高かった場合
  • 住宅ローン控除:住宅ローンを組んでいる場合
  • 寄附金控除:ふるさと納税を利用したり寄附を行ったりした場合
  • 雑損控除:盗難や災害の被害に遭った場合
  • 特定支出控除:特定支出に該当する費用が給与所得控除の半分超の場合
  • 配偶者・扶養控除:結婚したり子どもが生まれた場合
  • 損益通算:副業で赤字が出た場合

医療費控除は、1年間にかかった医療費から保険金などで補てんされる金額を差し引き、そこから10万円、もしくは所得総額の5%のいずれか少ないほうが控除されるもので、上限は200万円に設定されています。

特定支出控除は、仕事の経費を自腹で支払った場合に適用される控除で、特定支出に該当する費用が給与所得控除の半分超の場合が対象です。
例えば、資格取得や研修への参加費用のほか、通勤費を自腹で支払っている場合や、会社から支給されている通勤費が不足している場合も特定支出控除に該当します。

損益通算は、副業で損失があった場合、その赤字分を同年の給与所得から差し引き、所得を抑えられる制度です。
ただし、副業の収入が印税であれば、株や不動産のような損失は生じないため、損益通算を利用する機会はほとんどないでしょう。

参考:No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)|国税庁
参考:No.1415 給与所得者の特定支出控除|国税庁
参考:No.2250 損益通算|国税庁

印税を確定申告する際のやり方と書き方

確定申告イメージ

印税の確定申告の際には、事前に項目の記入方法や仕組みを把握しておきましょう。副業と本業とでは記入すべき項目が異なるため、書き方を説明します。

確定申告の白色申告と青色申告の違い

確定申告は白色申告と青色申告に大別されています。
白色申告は、決算の手続きが比較的に簡単であることが特徴です。
確定申告に必要な帳簿付けも、単式簿記と呼ばれるシンプルな記帳が適用されています。

一方の青色申告は、事前の申請が必要で、白色申告と比べ手続きは煩雑です。
記帳も帳簿付けの知識を要する複式簿記が適用されています。

白色申告青色申告
優遇税制少ない多い
事前申請不要必要
帳簿付け単式簿記原則複式簿記

申請や帳簿付けのハードルはあるものの、青色申告は白色申告よりも税制的に有利であることがメリットです。
青色申告の事前申請が通れば、最大65万円の特別控除を受けられる可能性があります。

また、青色申告では、最大3年間にわたり、赤字の繰り越しが可能です。
赤字繰り越しを利用すると、その年に赤字が出たとしても、その分を翌年以降に繰り越して黒字分の所得と相殺できます。

このようにして、黒字で増えた所得を抑え、節税につなげられるのです。
ただし、青色申告の場合、帳簿付けは複式簿記と呼ばれる、簿記の知識を必要とする複雑な記帳方法が義務付けられています。

副業(給与所得者)の印税は雑所得

給与所得を得ている場合、印税は雑所得として確定申告書に記入します。
所得には、次のように10種あり、副業が該当するのはその中の雑所得です。雑所得とは、ほかのどの所得にも当てはまらない所得を指します。

【所得の種類】

  • 事業所得
  • 不動産所得
  • 利子所得
  • 配当所得
  • 給与所得
  • 雑所得
  • 譲渡所得
  • 一時所得
  • 山林所得
  • 退職所得

参考:所得の種類と課税方法|国税庁

実際に確定申告書に記入する際は、雑所得の項目が、公的年金等・業務・その他に分かれています。印税や原稿料・講演料は、多くの場合、業務が記入先です。
例外として、副業による収入が300万円を超えており、かつ帳簿付けを行っていた場合は、事業所得となる可能性があります。

本業(個人事業主)の印税は事業所得

印税を主な収入源にしており、個人事業主として開業している場合、確定申告の所得区分は事業所得です。
確定申告書では、事業所得の欄がさらに営業等と農業に分かれています。
作家や画家、音楽家などの自由業の収入、つまり印税や原稿料・講演料などは、営業等へと記入しましょう。

印税が雑所得か事業所得かの目安は、ほかに給与所得を得ていれば雑所得、個人事業主として開業しているのであれば事業所得と、区別可能です。

印税の経費として計上できる費用

節税のためには、印税で得た収入からしっかりと必要経費を差し引き、課税所得を抑えなければなりません。印税の経費として計上できる費用を紹介します。

印税の経費として計上可能な費用のリスト

印税の経費の範囲は、作品の執筆や出版、作詞作曲の販売に要した支出すべてです。
所得税を抑えるためには、すべての支出を正確に経費計上する必要があります。
次のリストは、経費計上が可能な印税に関わる費用です。

  • 著作権に関する費用:著作権登録制度の利用や著作権管理団体の加盟費用
  • 交通費・旅費:著作物の制作・宣伝・販売のための移動や出張にかかった交通費・旅費
  • 調査・研究の費用:著作物を制作するための調査や研究にかかった費用(書籍の購入、音楽・映像のダウンロードなど)
  • 設備・事務の費用:著作物を制作に使うパソコンやプリンター、その他の機材の購入費、印刷代やコピー用紙代など

参考:著作権登録制度 | 文化庁

原則的に著作権は、登録や申請をせずとも自動的に発生します。
ただし、著作権が移行した際には、著作権登録制度を利用することで、トラブルなくスムーズに業務の継続が可能です。

出版社やレコード会社の場合、印税を支払う際の銀行振込の手数料や、出版のための編集・製本・印刷・広告・翻訳にかかった費用も経費計上できます。
また、本を出版する際、帯やあとがきに、著者とは異なる人物からのコメントを掲載する場合がありますが、その際の原稿料も出版社は経費として計上可能です。

参考:著作権登録制度 | 文化庁

経費と生活費を区別する家事按分の計算方法

自宅で著作物の制作を行った場合には、家事按分で経費と生活費を区別できます。
家事按分とは、家賃・光熱費・通信費・自動車関連費など、生活費と共有している経費を計算式により区別する方法です。

まず、家賃の場合は、自宅全体の床面積のうち、仕事用に使っているスペースの割合を算出することで、地代家賃として計上できます。

地代家賃とは、仕事のために使用している不動産の賃料です。
光熱費や通信費は、使用時間で家事按分できます。
例えば、電気やインターネット回線を1日のうち8時間、仕事で使用しているのであれば、3分の1が経費です。

自動車に関連する経費には、調査や出張など、仕事に使ったガソリン代・駐車代・高速代などが該当します。

印税の確定申告する際の注意点

確定申告に関するイメージ

初めて印税を得た場合には、対処方法に迷う場面もあるのではないでしょうか。印税の確定申告をする際には、特に次のような点に注意が必要です。

急な売上増加には変動所得の特例を利用

書籍や楽曲がヒットし、急激に売れると、印税とともに所得税が一気に増える可能性があります。
その所得税に適用されているのが、累進課税制度です。累進課税制度では、所得が多ければ多いほど所得税も増加仕組みが取られています。

例えば、所得が900万円の所得税率は23%ですが、900万円以上になると33%と、税率が10%上昇するのです。

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

そのため、書籍や楽曲が急激に売れることで、いきなり所得税が増額するケースがあります。
このように所得税が急に増加した際には、平均課税制度を利用しましょう。
平均課税制度とは、累進課税制度のもとで急に所得が増えた際、ほかの人よりも所得税の負担割合が増えることを緩和する措置です。

例を挙げましょう。2年間の所得が同じ500万円のAさんとBさんがいたとします。
Aさんは、ある年の所得が400万円で、翌年が100万円でした。Bさんは、2年にわたり250万円ずつ所得がありました。

すると、二人に適用される税率は、Aさんが1年目20%・2年目10%、Bさんが両年10%です。
2年で通算すると同じ所得であるにも関わらず、Aさんのほうが所得税の負担が増えます。
平均課税制度のもとでは、このような累進課税制度の不公平が緩和可能ですが、制度を利用するためには次の条件を満たさなくてはなりません。

  • 事業所得・不動産所得・雑所得に該当する変動所得か臨時所得であること
  • その年の変動所得・臨時所得の合計が、所得額の20%以上であること

   and

  • 前々年・前年に変動所得のない方

   or

  • 前々年・前年に変動所得があった方で、その年の変動所得が前年・前々年の平均を超えている方

印税・原稿料・講演料は変動所得に該当します。ちなみに、臨時所得とは、スポーツ選手の契約金や不動産などです。
この平均課税制度のもとで変動所得の特例を受けるためには、まず国税庁のサイトから変動所得・臨時所得の平均課税の計算書をダウンロードしましょう。

書面に必要事項を記入の上、確定申告書に添付し提出します。

参考:変動所得・臨時所得の説明書|国税庁
参考:変動所得・臨時所得の平均課税の計算書 – 年分|国税庁

印税の支払調書は必ずもらうこと

印税を受け取った際には出版社やレコード会社から支払調書を必ずもらいましょう。
確定申告の際には、支払調書に記載されている収入金額と源泉徴収額を参考にすることが多々あります。

ただし、出版社やレコード会社の発行する支払調書が必ずしも正しいとは限りません。確定申告の際は、支払調書の金額と通帳に振り込まれた額を照らし合わせ、正確に申告しましょう。
また、印税とともに渡される明細書も保管が必要です。

経費の領収書をなくしたら代わりを用意

いざ確定申告のため決算を進めていると、領収書を紛失していることに気づく場面があります。
その場合、まずは取引先や購入先に連絡し、可能であれば領収書の再発行を依頼しましょう。
再発行が難しい場合は、代わりに証明として使用できる書類を用意します。

例えば、レシートやクレジットカードの利用明細、オンラインでの買い物は購入履歴や確認メールなども証明書類として活用できます
また、電車やバスなどの交通費は、そもそも領収書が発行されないケースが多くを占めています。

このような経費も漏れなく計上するために、日々の帳簿付けを徹底することが大切です。
移動日や利用区間、金額を記録しておくことで、後々の確定申告もスムーズに進められます。

印税の確定申告と税金のことはプロにお任せ!

印税は、著作物の売り上げ次第で急激に増額するケースがあるため、対応に戸惑う場合もあるかと思います。

その際、印税の仕組みや、複数の所得控除、変動所得の特例についての知識がなければ、もっと節税できるはずが、納税額は多くなるでしょう。
また、税の手続きは大切なことですが、そのため仕事に集中できなくなれば業務の効率は下がってしまいます。

そこで、適切な納税を行うためにも、印税の確定申告については税理士への依頼がおすすめです。
私たち小谷野税理士法人でも、個人向けの確定申告作成を請け負っています。
確定申告以外の税務についても、もちろんいつでもご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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