個人事業主にとって、売上を伸ばすだけでなく、手元に残る利益をいかに確保するかが事業運営のポイントです。そのためには、日々の支出を見直す「経費削減」や、制度を活用した「節税対策」が欠かせません。本記事では、青色申告や各種控除、特例制度など、個人事業主が実践できる代表的な節税方法や経費削減のコツを分かりやすく解説します。
目次
個人事業主の節税の仕組みとは
個人事業主が節税を行うには、まず税金の計算の仕組みを理解することが重要です。売上から経費、所得控除を差し引いた「所得」に対して課税されるため、経費や各種控除を上手に活用することで、税負担を軽減できます。
ここでは、控除を利用した節税の仕組みについて説明します。
経費と控除を活用した節税方法とは
個人事業主にとって、経費の計上は節税の基本です。事業に必要な支出は経費として計上でき、所得を減らすことが可能です。
また、経費とは別に「所得控除」や「税額控除」も活用できます。所得控除は課税所得を減らし、税額控除はそのまま税額から差し引かれるため、どちらも大きな節税効果をもたらします。
これらの控除を適用することで、同じ利益でも納税額を減らせるのです。経費と控除を組み合わせて最大限に活用し、無理なく手取りを増やしましょう。
所得控除を活用した節税方法
所得控除とは、所得金額から一定額を差し引くことができる制度で、個人事業主にとって有効な節税手段の1つです。控除を適用することで課税所得が減少し、結果的に所得税や住民税の負担が軽くなります。以下は代表的な控除の例です。
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 医療費控除
- 扶養控除
- 配偶者控除
- 基礎控除
税額そのものを直接減らすわけではありませんが、課税所得を減らすことで結果的に税率も抑えられる場合があります。
関連記事:個人事業主の所得はいくらが得?税金対策のボーダーライン
税額控除を活用した節税方法
税額控除とは、算出された所得税額から一定額を直接差し引ける制度であり、所得控除よりもさらに直接的な節税が可能です。適用することで、税額そのものを減らせるため、手元に残る資金を増やすことに繋がります。代表的な税額控除は、以下の通りです。
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
- 政党等寄附金等特別控除
これらは、適用要件を満たせば税額からそのまま差し引かれます。税額控除の種類は所得控除に比べて少ないですが、適用できるものがあれば積極的に活用しましょう。
なお、住宅借入金等特別控除を受けるには、初年度に必ず確定申告が必要です。2年目以降は、会社員など給与所得者の場合、勤務先の年末調整で「住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅ローンの年末残高証明書」を提出することで控除を受けられます。
政党等寄附金等特別控除を受ける場合にも、同様に確定申告をする必要があります。
個人事業主が経費削減をする方法
個人事業主ができる節税対策の一つが、日々の支出を見直して経費を削減することです。経費が削減できれば事業利益が増え、結果として手元に残る資金を増やせます。ここでは、個人事業主が取り組みやすい経費削減のポイントを紹介します。
通信費を見直す
インターネットや携帯電話などの通信費は、プランの見直しやオプションの解約により節約可能な経費です。
また、自宅を事務所としている場合、事業で使用した割合を家事按分し、経費として計上できます。家事按分とは、支出を事業用とプライベート用に分け、事業で使用した分だけを経費とする計算方法です。
例えば、自宅のインターネット回線を業務にも使用している場合、使用割合に応じた金額を「通信費」として計上できます。一方、別途事務所や店舗を借りている場合は、その通信費は全額経費にできるのが一般的です。
事務所家賃を見直す
家賃は、個人事業主にとって大きな負担となる経費の一つであり、見直すことで節税とコスト削減の両方を実現できる可能性もあります。
自宅を事務所として使用している場合、事業で使用している床面積の割合などを根拠に家事按分し、家賃の一部を経費として計上できます。
別途事務所を借りている場合は、家賃を全額経費にできますが、より家賃の低い物件への移転や賃貸面積の縮小により、経費そのものを削減可能です。
例えば、事務所からレンタルオフィスやコワーキングスペースの利用に切り替えることも、事務所にかかる費用を抑える方法となり、検討の余地があるでしょう。
光熱費を節約する
電気やガス、水道などの光熱費も、個人事業主が経費として計上できる対象です。自宅を事務所として使用している場合、光熱費も家事按分により事業で使用した分を経費計上します。
また、光熱費そのものを節約すれば、手元に残る資金を増やせます。以下のような節約の工夫をしてみましょう。
- 不使用時は電気機器のコンセントを抜く
- LED照明に交換する
- 冷暖房の設定温度を調整する
また、省エネ性能の高い設備への入れ替えやリフォームも、長期的には光熱費の削減に繋がるでしょう。
備品をまとめ買いする
事業で使用する備品は経費として計上できますが、購入方法を工夫することで節税を高められます。
例えば、10万円未満の備品は購入した年に全額経費にできます。さらに、青色申告を行っているのであれば、「少額減価償却資産の特例」を活用することで、30万円未満の備品も一括で経費計上が可能です(※年間上限は300万円)。
この特例を利用して期末に必要な備品をまとめて購入することで、その期の課税所得を減らし、節税につなげられるのです。
交通費を節約する
電車代やバス代、タクシー代など、事業に関係する交通費は経費として計上できます。しかし、利用方法を見直すことでさらなる節約に繋げられます。例えば、以下のような工夫もおすすめです。
- 回数券・定期券を活用する:頻繁に移動する区間がある場合、都度払いよりも定期券や回数券の方が費用を抑えられることがあります。取引先への訪問が多い人ほど効果的です。
- オンラインでの打ち合わせを増やす:出張や移動を伴う打ち合わせを、ZoomやGoogle Meetなどに切り替えることで交通費の発生自体を削減できます。定例の会議や初回の商談などは、オンライン対応が可能か検討する価値があります。
- 業務効率の観点から出張をまとめる:複数の訪問先を1日で回るスケジュールにするなど、移動回数自体を減らすことで、交通費を圧縮できます。遠方への出張であれば、宿泊を挟んで一度に済ませるのも良いでしょう。
自家用車を事業にも使用している場合は、ガソリン代や有料道路代、駐車場代なども、利用割合に応じて家事按分して経費にできます。ただし、事業用の車両を購入する際にローンを組んだ場合、返済元本は経費にならない点に注意が必要です。
関連記事:リースは節税に効果的?節税に結びつく理由と注意点を徹底解説
税金・社会保険料を節約する
個人事業主が支払う税金や社会保険料も、納付方法や制度の活用次第で節税に繋がる可能性があります。
所得税や住民税は経費にできませんが、個人事業税や固定資産税(事業用部分)は経費として計上できます。社会保険料では、国民健康保険料や国民年金保険料は所得控除の対象となり、所得から差し引くことで税負担を軽減可能です。
さらに、小規模企業共済やiDeCo(個人型確定拠出年金)への加入も、掛け金が全額所得控除の対象となるため、活用の価値があります。この2つは、節税だけでなく、将来への備えにもなる点がメリットです。
個人事業主が節税する方法
個人事業主が節税を行うには、日々の経費管理に加えて、税制上の優遇制度を正しく理解し、適切に活用することが重要です。ここでは、前述した「所得控除」と「税額控除」以外に、特に実践しやすく効果の高い3つの節税方法を紹介します。
青色申告を適用する
青色申告は、白色申告に比べて大きな節税メリットがある申告方法です。主な特典は以下の通りです。
- 最大65万円の「青色申告特別控除」
- 赤字の損失を最長3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」
- 家族に支払った給与を経費にできる「青色事業専従者給与」
これらを活用すれば、税負担を大きく軽減できると言えます。ただし、青色申告には複式簿記による記帳と帳簿の保存が必要なので、事前の準備が必要です。
関連記事:青色申告者対象の繰越控除とは?確定申告の手続きをわかりやすく解説!
経費を適切に計上する
節税の基本は、事業活動で発生した経費を漏れなく、正しく計上することです。経費として認められるのは、事業に関連して支出した費用であり、以下のようなものが該当します。
- 商品の仕入れ・外注費
- 事務所の家賃・光熱費・通信費
- 旅費交通費
- 消耗品費 など
これらの経費を正確に計上すれば、所得額が減り、結果として所得税や住民税の負担が軽くなるのです。ただし、過小計上は納税額の増加に、不適切な計上は税務調査のリスクの可能性を招きます。領収書や請求書などの証拠書類をきちんと保管し、事業との関連性を明確に記録しておくことが重要です。
少額減価償却資産の特例を適用する
「少額減価償却資産の特例」は、青色申告を行っている個人事業主が活用できる節税制度です。
通常、10万円以上の固定資産は数年にわたって減価償却しますが、この特例を適用すれば、30万円未満の資産を購入した年に全額経費として計上できるようになります。これにより、設備投資を行った年の所得を減らし、税負担の軽減が可能です。
パソコンやコピー機、業務用の机や椅子など、事業に必要な様々な備品に適用できます。ただし、特例には年間300万円の上限があります。設備投資のタイミングを調整し、この特例を活用することで、効率的な節税につながると言えるでしょう。
ただし、30万円未満の備品であっても、耐用年数が1年以上の資産が対象になります。また、特例には適用期限がある点にも注意が必要です。
関連記事:年収500万の個人事業主にかかる税金はいくら?効果的な節税方法も紹介
まとめ
個人事業主にとって、経費削減と節税は資金を守り、事業を安定・拡大させるための重要な手段です。
日々の支出の見直しによる経費削減に加え、青色申告や各種控除制度、少額減価償却資産の特例など、税法で認められた制度を正しく活用することで、税負担を合法的に減らせるのです。