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人材派遣業が知っておくべき税金|派遣社員と消費税について

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人材派遣業が知っておくべき税金|派遣社員と消費税について

人材派遣業を運営する上で、税金に関する正確な知識は重要です。特に派遣社員の税金や消費税の取り扱いは複雑であり、適切な処理が求められます。

本記事では、派遣元企業が理解しておくべき税金の基本から日々の業務における注意点、さらには税務リスク対策等について解説していきます。

派遣業界での税金の基本知識

人材派遣業における税金は、他の業種とは異なる特徴があります。特に、派遣社員の給与に関わる所得税や住民税、そして派遣料金にかかる消費税については、仕組みを正確に理解する必要があります。

ここでは、人材派遣業の税金に関する基本的な知識と、派遣元企業が押さえるべきポイントについて詳しく説明します。

派遣社員の給料と消費税の関係

派遣社員の給与そのものに消費税はかかりませんが、派遣先企業が派遣元企業に支払う人材派遣料には消費税が課税されます。派遣契約が人材派遣会社から派遣先事業者への役務の提供とみなされるためです。したがって、派遣元企業が受け取る人材派遣の対価は課税売上となり、派遣先企業が支払う対価は課税仕入れとなります。

派遣先企業は、インボイスなどの要件を満たしている場合、課税仕入れに含まれる消費税を仕入税額控除として控除可能です。派遣スタッフが派遣会社から受け取る給与から消費税が直接差し引かれるわけではありませんが、派遣会社が受け取った派遣料金の中から、派遣社員への給与や諸経費、そして消費税を支払う仕組みとなっています。

関連記事:人材派遣を使うと消費税の節税ができる?派遣社員を使うメリットと注意点

派遣社員に関わる所得税と住民税の仕組み

派遣社員に関わる所得税住民税は、派遣元企業が源泉徴収や特別徴収の義務を負う重要な税金です。

所得税は派遣社員の給与所得に対して課される国税であり、派遣元企業が毎月の給与から概算で天引き(源泉徴収)し、国に納付します。

一方、住民税は前年の所得に対して課される地方税で、派遣社員自身が自治体に納付(普通徴収)するケースが多いですが、派遣元企業が給与から天引きして納付(特別徴収)する場合もあります。

派遣労働者の所得にかかる所得税や住民税は、正社員の場合と同様に所得額や控除によって税額が変動します。そのため、派遣元は正確な計算と適切な手続きが必要になります。また、派遣社員の年収が一定額以下の場合には所得税や住民税が発生しないといった基礎知識も持っておきましょう。

派遣元として知っておくべき税金のポイント

派遣元企業が税金に関して押さえるべき重要なポイントはいくつかあります。まず、派遣先企業から受け取る人材派遣料は消費税の課税売上となるため、売上高に消費税を含めて計上します。

また、派遣社員に支払う給与は消費税の課税仕入れにはなりませんが、所得税の源泉徴収義務が生じます。さらに、社会保険料(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)についても、派遣元企業が一部または全額を負担し納付しなければなりません。

派遣社員の税金にまつわる業務

給与明細書

人材派遣業としては、派遣社員の所得税の源泉徴収や年末調整、そして住民税に関する手続きなどの税金関係の業務も行う必要があります。

ここでは、派遣社員から徴収する税金の種類や、所得税・住民税の計算方法、さらに年末調整や確定申告における注意点について解説します。

派遣社員から徴収する税金には何がある?

派遣社員から派遣元企業が直接徴収する税金は主に所得税です。所得税は毎月の給与から源泉徴収という形で差し引かれ、派遣会社が派遣社員本人に代わって国に納付します。一方、住民税については、派遣会社が特別徴収(給与天引き)を行う場合と、派遣社員自身が普通徴収で納付する場合があります。

多くの派遣会社では所得税のみを源泉徴収し、住民税は派遣社員自身が納付する普通徴収としているでしょう。また、人材派遣料には消費税が含まれますが、消費税は派遣先企業が派遣元企業に支払う対価に対してかかるものです。派遣労働者自身の給与から差し引くものではありませんのでご注意ください。

派遣社員の所得税と住民税の計算方法

所得税の計算方法は、まず年間の給与所得から各種所得控除(扶養控除や社会保険料控除など)を差し引いて課税所得を算出します。この課税所得に所得税率をかけることで所得税額は決まります。

ここでの所得税率は、課税所得が多いほど高くなる累進課税制度を採用します。課税所得ごとの所得税率については、国税庁のホームページにてご確認ください。

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

毎月派遣社員から徴収する源泉徴収額は概算なので、年間の正確な所得税額は年末調整や確定申告で確定させます。

住民税の計算は、前年の1月1日から12月31日までの所得に基づいて行われます。住民税は「均等割」と「所得割」の合計で構成されており、均等割は所得にかかわらず一定額が課税され、所得割は前年の所得を基に計算することになります。

年末調整や確定申告で気をつけるべきこと

派遣元企業として、派遣社員の年末調整や確定申告に関して注意すべき点があります。主な注意点は以下の通りです。

年末調整の対象者を確認する

12月時点で雇用関係がある派遣社員が、自社で年末調整を行う対象になります。年の途中で退職した社員や派遣を副業としている人は対象外となるため、派遣社員ご自身で確定申告または新しい勤務先で年末調整をするよう促しましょう。

また、退社した派遣社員に対し、源泉徴収票を発行するのを忘れないようにしましょう。

複数の派遣会社で就業している派遣社員の場合

複数の派遣会社で勤務している派遣社員の場合、主たる給与の支払者である収入が多いほうの派遣会社で年末調整を行うのが通例です。また、副業分の所得については派遣社員自身が確定申告を行う必要があります。

副業収入がある派遣社員の場合

自社の仕事以外に年間20万円を超える副業所得がある派遣社員の場合、派遣社員自身による確定申告が必要です。派遣元企業は、必要に応じて派遣社員に情報提供を行いましょう。

控除に関する書類の提出を促す

生命保険料控除地震保険料控除など、年末調整で各種控除を受けるためには派遣社員からの書類提出が必要です。提出漏れがないよう周知を徹底しましょう。

確定申告が必要なケースを周知する

医療費控除や住宅ローン控除(初年度)などは年末調整で申告できません。年末調整で申告できない控除を受けるためには、派遣社員自身が確定申告を行う必要があることを伝えましょう。

源泉徴収票の発行

年末調整の対象となる派遣社員には、翌年1月末までに源泉徴収票を交付します。また、自分で確定申告を行う派遣社員にも、求められ次第交付をする必要があります。

関連記事:年末調整の計算方法を徹底解説!ミスを防ぐポイントも紹介

関連記事:派遣社員が副業するときは確定申告が必要?必要なケースや注意点を解説!

派遣業務に関わる消費税の注意点

人材派遣業においては、消費税の取り扱いが特に重要です。派遣料金は消費税の課税対象となるため、計算や請求、納税には細心の注意を払いましょう。ここでは、消費税増税が派遣業務に与える影響や、派遣料金の消費税計算と設定におけるポイントについて解説します。

消費税増税の影響と派遣業務の関係

消費税率の増税は、人材派遣業のサービス価格にも影響を与えます。派遣先企業に請求する派遣料金に含まれる消費税額が増加するため、契約内容の見直しや価格交渉が必要となる場合もあるでしょう。派遣元企業としては、消費税率の変更に合わせて適切に料金設定を変更し、派遣先企業への請求額に反映させるなどの対応が必要です。

また、仕入税額控除の対象となる経費にかかる消費税額も変動するため、税務処理全体への影響を把握しておきましょう。適切な消費税の取り扱いは、正確な納税だけでなく、価格競争力や顧客との信頼関係にも影響するため、常に最新の税法に基づいた対応が求められます。

派遣料金の消費税計算と設定のコツ

派遣料金の消費税は、派遣サービスという役務の提供に対して課税されます。派遣元企業は、派遣先企業へ請求する派遣料金に税率を乗じて消費税額を計算し、請求書に明記しましょう。非課税となる取引と混同しないよう注意が必要です。

派遣料金の設定においては、消費税を含めた総額で競争力のある価格の設定が求められます。消費税額を明確に提示することで、派遣先企業は仕入税額控除を正確に計算できるため、取引の透明性を高められるでしょう。

また、インボイス制度の導入により、適格請求書の発行が仕入税額控除の要件となるため、適格請求書発行事業者として登録し、要件を満たした請求書を発行することが重要です。

派遣業が押さえるべき税務の重要ポイント

インボイス登録の取り消しイメージ

人材派遣業を営む上で、税務に関する知識は経営の安定に直結します。適切な税務処理を行うことは法令遵守はもちろんのこと、税務リスクの低減や経営資源の有効活用にも繋がる要素です。ここでは、派遣元企業が特に押さえておくべき税務の重要ポイントに焦点を当て解説します。

派遣元の立場で考える税金の負担割合

派遣元企業は、法人税法人住民税法人事業税といった法人にかかる税金に加え、消費税、そして派遣社員の給与にかかる源泉所得税などを負担または徴収・納付する義務があります。派遣元企業が負担する税金は、人材派遣業の利益に大きく影響するため、税金の種類ごとの負担割合を理解し、適切に管理することが重要です。

例えば消費税については、受け取った消費税から支払った消費税を差し引いた差額を納付しますが、派遣料金の多くが課税売上となる一方で、不課税仕入れ(人件費など)の割合が高くなる傾向があるため、他の業種と比較して消費税の負担が大きくなる可能性があります。

また、社会保険料の事業主負担分も実質的な人件費の一部であり、税金負担と同様に企業のコストとなります。派遣元企業が負担するコストを正確に把握し、派遣料金の設定や経営戦略に反映させることが安定した経営のポイントです。

派遣業界での税務リスクを減らす方法

派遣業界特有の税務リスクとして、消費税の取り扱いミスや、源泉所得税の計算・納付漏れなどが挙げられます。派遣業特有のリスクを減らすためには、まず税法に関する最新の情報を常に把握し、社内の経理担当者が適切な知識を持つことが重要です。特に消費税については、インボイス制度の導入など、改正が頻繁に行われるため注意してください。正確な帳簿付けと証憑書類の管理を徹底し、税務調査が入った際にもスムーズに対応できる体制を構築しておきましょう。

まとめ|派遣業界における税金対応の重要性

人材派遣業界において、税金に関する適切な対応は事業継続と発展のために重要です。派遣社員の税金処理から、自社の法人税、そして特に複雑な消費税の取り扱いまで、正確な知識と実務能力が求められます。

適切な税務処理は、税務リスクを回避し、法令遵守を徹底するだけでなく、経営の透明性を高め、派遣先企業や派遣社員からの信頼を得ることにも繋がります。常に最新の税法や関連情報を確認し、日々の経理業務において正確性を期すことが、派遣業の税金対応の基本です。

もし複雑な税務判断が必要な場合や、税法改正への対応に不安がある場合は、専門家である税理士に相談することを強くおすすめします。税務の専門家からのアドバイスは、適切な税務処理を行い、将来的な税務リスクを低減する上で非常に役立つでしょう。

派遣業界における税金対応にお困りの際は、小谷野税理士法人にお気軽にご相談ください。

関連記事:請負契約と委託契約の違いを分かりやすく解説!企業にとってのメリットとデメリットと税務処理について

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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