政府が副業を推奨している一方で、会社によってはダブルワークが許可されていない場合もあります。副業に関してのルールが曖昧な会社もあるでしょう。そのため、できれば勤め先にダブルワークのことはバレて欲しくないと考える人もいるのではないでしょうか。この記事では、副業がどのようなタイミングで会社にバレる可能性があるのか、また、確定申告の際にバレないようにする方法について説明します。
目次
ダブルワークが会社にバレるタイミング
副業をしている話を自分で広めているということもないのに、会社にバレる場合があります。ダブルワークはどのようなタイミングで勤め先に知られやすいのか、そのタイミングを挙げてみましょう。
住民税が増加したとき
住民税が増加すると、ダブルワークが会社にバレる場合があります。住民税は、個人ではなく、会社が代わりに支払う特別徴収という仕組みが基本であるためです。
複数の勤め先から給与を支給されている場合でも、1つの会社がまとめて住民税を納めます。そのため、会社に納付書が届けられた際、給与は上がっていないのに住民税だけが増えていると、副業による収入に気づかれることもあるでしょう。
これが、住民税の増加でダブルワークが会社にバレる原因です。
副業している場面を目撃されたとき
同じ会社の従業員に副業している場面を見られ、ダブルワークが発覚するケースもあります。
副業は、業種ごとにさまざまな場所で活動しなくてはなりません。例えば、自ら開業している飲食店やサロンに、会社の同僚や上司が顧客として現れることもあるでしょう。
また、勤め先の従業員ではなく、その家族や共通の友人知人に副業の場面を見られるケースもあります。
ほかにも、バレるタイミングとして数えられるのが、副業で使っているSNSやWebサイトから個人を特定された場合です。また、会社でダブルワークの作業をし、パソコンやスマホの画面を会社の人に見られてしまう可能性もあります。
副業を知られたくない場合には、同じ会社の従業員がいないところを選んで業務を行いましょう。
人づてで副業の噂が広まったとき
副業している場面を同僚や上司に直接見られていなくても、人づてでダブルワークの噂が広まる場合もあります。注意したいのが、社内の人につい副業の話をしてしまい、そこから噂が広がるケースです。
副業のことを知られたくない場合には、会社の人にダブルワークについて話さないように気をつけましょう。
社会保険に加入したとき
パートやアルバイトなどの副業で給与を受け取っている場合は、社会保険に加入した際に会社へダブルワークがバレる可能性があります。パートやアルバイトでの労働時間や給与額によっては、社会保険の加入手続きが必要です。
その際、社会保険料はすべての給与所得と合算され、その通知が勤務している会社にも届きます。
社会保険の加入条件は次の通りです。
- 週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
- 所定内賃金が月額8.8万円以上
- 雇用見込みが2ヵ月超
- 学生以外
- 会社に51人以上の従業員がいる
この社会保険の加入条件は2024年10月から適用が拡大されています。
それまでは従業員数101人以上とされていたものが、現在は従業員数51人以上の会社も対象です。
また、2ヵ所以上の勤務先があり、いずれも社会保険の加入条件に該当していた場合は、それぞれの会社で社会保険の資格を取得する必要があります。
その際は、会社ではなく個人が二以上事業所勤務届を提出し、社会保険の手続きをしなくてはなりません。
社会保険料の通知からダブルワークの発覚を防ぎたいときには、そもそも社会保険の加入が必要となるパートやアルバイトなどを副業にしないことです。
参考:社会保険適用対象となる加入条件|厚生労働省 | 社会保険適用拡大 特設サイト
年末調整で書類を提出したとき
会社の年末調整のために書類を提出する場合、その内容で副業がバレる可能性があります。
年末調整の際に提出する書類とは、「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」のことです。
この書類には、給与所得と給与所得以外の所得の合計額を記載する項目があるため、副業による収入を会社に知られてしまいます。
会社の年末調整の書類で副業がバレるのを防ぐためには、年末調整の書類にダブルワークで得た収入は記入せず、確定申告により金額を修正しましょう。
関連記事:ダブルワークの年末調整や確定申告は必要?判断方法と手続きまとめ
ダブルワークが会社にバレないための方法
ダブルワークが会社にバレないようにするために、工夫できる点があります。次のような事柄に気をつけて、副業が発覚するリスクを抑えましょう。
パートやアルバイトを副業にしない
ダブルワークが会社に知られないための方法として、そもそも副業としてパートやアルバイトを選ばないという方法があります。パートやアルバイトでは社会保険の加入手続きが必要となる可能性があるためです。
社会保険料はすべての給与所得と合算されることから、会社に通知が行けば副業がバレる原因になるでしょう。そのリスクを回避するためには、副業を選ぶ際に給与所得の発生するパートやアルバイトを避ける必要があります。
SNSを特定されないように気をつける
SNSを特定されないように気をつけることも、ダブルワークが会社にバレないためには大切です。副業や本業に関する不用意な投稿や、何気ない写真のアップロードから、個人の特定につながるケースがあります。
特に、副業のアカウントで本業についての書き込みをすると、思いがけずバズった際やエゴサーチにヒットして同僚や上司に気づかれる可能性が高いです。また、副業についての投稿に鏡に反射した自分や私物が写り込んでいる写真から、人物が特定されることもあるため気をつけましょう。
氏名・住所など個人情報の記載や、本名を連想させるアカウント名なども、SNSの特定から副業発覚につながるため注意が必要です。
ダブルワークのことは秘密にする
ダブルワークについて、会社関係の人に話すのは避けましょう。副業が好調であったり、お酒の席であったりすると、つい話したくなる気持ちが生まれるかもしれません。
しかし、信頼できる相手と判断していても、必ずしも相手から同様の信頼が寄せられているとは限らないのです。
一人だけと思って打ち明け、その一人から会社中に噂が広がるリスクもあります。副業については、特に会社関係の人には話さないことが賢明です。
関連記事:副業の税金対策とは?いくらからかかる?副業で節税できる方法を詳しく解説!
ダブルワークがバレないための確定申告書の書き方
確定申告書の書き方を理解することで、ダブルワークが会社にバレることなく手続き可能です。
そもそもどのような場合に確定申告が必要なのか、所得の種類とともに説明します。
所得が20万円を超えているなら確定申告が必要
副業による所得が20万円を超えているのであれば、確定申告は必要です。
裏を返せば、副業の所得が20万円以下であれば確定申告の手続きは不要ということでもあります。
ただし、これは所得税に限ったことであり、住民税については副業の所得額に関わらず申告義務が発生するため気をつけましょう。確定申告を行うことで、住民税の税額も決定します。
また、副業の所得が20万円以下であっても、医療費控除や住宅ローン控除などを受ける場合や、税金の還付がある場合には、確定申告を行うべきです。
こうしたことからも、副業で得た所得が20万円を超えていれば申告は必ず行わなければなりませんが、控除や住民税のことを考えると、20万円以下であっても確定申告したほうが良いと言えます。
給与所得・事業所得・雑所得の違いに注意
確定申告書を作成する際には、給与所得・事業所得・雑所得の違いをしっかりと把握しておきましょう。
所得は、所得税法により、性質ごとに10種類へと区分されています。
副業の際、その10種類の中で主に関わってくるのが給与所得・事業所得・雑所得の3つです。
本業となる会社からの給与は、給与所得に該当します。また、副業であっても、雇用された会社から支給されるパートやアルバイトの給与も、やはり給与所得です。
事業所得は、本業・副業どちらにも当てはまる所得ですが、開業して個人事業主になった場合の所得が該当します。
ほかのどの区分にも該当しない所得で、副業で得た収入から経費を差し引いたものが雑所得です。
確定申告書を作成する際には、収入や所得を記入する欄が給与所得・事業所得・雑所得では異なります。それぞれの違いをきちんと理解し、確定申告を行いましょう。
住民税の「自分で納付」に〇を入れる
ダブルワークが会社にバレないための確定申告書の作成方法として大切なのが、住民税の「自分で納付」に○をつけることです。
住民税の普通徴収を選択し、自分で納付することで、ダブルワークがバレるのを防げる可能性があります。所得の上昇に伴い住民税が増えると、会社が住民税の特別徴収を行っている場合には通知により副業が発覚するかもしれません。
ただし、住民税の納付方法には、1つの会社がまとめて住民税を納める特別徴収のほかにも、普通徴収があるのです。普通徴収を選択すると、副業による所得についての住民税の通知が、会社ではなく自宅に届けられます。
普通徴収を選ぶ場合は、確定申告書の住民税の欄にある「自分で納付」に○をつけましょう。住民税を自分で納付することで、ダブルワークの発覚を防げます。
所得上昇に伴う住民税の増加が会社に知られずに済み、副業を行っていることも発覚しません。
なお、確定申告書の住民税の項目は、第二表の下側です。申告書を作成する際には忘れずに「自分で納付」に○をつけましょう。
関連記事:ダブルワークでの社会保険はどうなる?掛け持ちする際に知るべき加入条件や二重加入について
もしも確定申告をしないとどうなる?
仮に副業の確定申告を無視した場合には、どのような事態に陥るのでしょう。申告義務を怠った場合のリスクについて説明します。
所得税には加算税や延滞税が課される
副業の確定申告を行わなかったことが発覚すると、所得税に加算税や延滞税などの税金が増えます。
加算税には種類があり、確定申告を行わなかった場合に課される税金が無申告加算税です。
2024年1月から、この加算税制度には改正があり、以前よりも罰金がより増額されています。
確定申告を期限までに行わなかった場合の無申告加算税の割合は、納付する税額が50万円以内であれば15%、50万円超の場合には20%、そして300万円超では30%です。
ただし、税務調査を受ける前に自ら期限後申告をした場合には、それぞれ5%ずつ加算税が引き下げられます。また、確定申告を行わなければ、納税も適切に行われません。
定められた期日までに税金が納められなかった場合には、その翌日から納付が完了するまでの日数に応じ、延滞税が発生します。
延滞税は税金の納付が遅れれば遅れるほど増えてしまうため、発覚した場合にはできる限り早く納税を済ませましょう。
参考:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
参考:No.9205 延滞税について|国税庁
住民税には延滞金が課される
確定申告をしなければ、住民税の滞納につながります。結果的に、住民税にも延滞金が課せられるため注意してください。
特に、住民税からダブルワークが発覚しないように自分で納付する普通徴収を選択している場合には、注意が必要です。
延滞金は、例えば確定申告に記入ミスがあり、納めた住民税が少なかった場合にも滞納と判断される可能性があります。
確定申告書を作成する際には記入ミスのないように注意し、延滞金を発生させないためにも住民税は適切に納めましょう。
もしもダブルワークがバレたらどうなる?
ダブルワークを行っていることが会社にバレた場合には、どのような対応がとられるのでしょうか。会社員と公務員に分けて説明します。
就業規則違反に問われる可能性がある
会社員の場合、その会社のルール次第では就業規則違反に問われる可能性があります。政府により副業が推奨されていたとしても、すべての会社が対応しているわけではありません。
機密情報を保持する会社や業種などでは、情報漏えいを怖れ、ダブルワークを禁止しているところもあるでしょう。
そのルールを無視してダブルワークを行った場合は、就業規則違反に問われ、始末書の作成や出勤停止、減給や降格といった処分が下されるリスクがあります。
ダブルワークを行う際には、就業規則違反に問われることのないように、まずは会社のルールを確認しましょう。
公務員は原則的に副業禁止
国や地方自治体の業務に従事する公務員は、守秘義務を持つ仕事に関わる場合もあることから、原則的に副業が許されていません。
公務員がダブルワークを行っていることが発覚すると、免職処分を受ける可能性もあるのです。
一方、現在では一部地域で地域貢献応援制度が導入されていることから、地域への貢献や発展への活動であれば副業が認められるケースもあります。
このような例もあるものの、全体的には公務員のダブルワークは原則的には認められていない場合がほとんどです。
税理士ならダブルワークの確定申告に適切なアドバイスが期待できる!
ダブルワークで確定申告の義務が生じた場合、所得の区分が2種類以上になったり、会社にバレない書き方をしなければならなかったりと、作成方法が複雑になりがちです。
副業の確定申告方法に迷った際には、税理士にアドバイスを仰いだり相談してみたりしてはいかがでしょうか。
私たち小谷野税理士法人では、個人向けの確定申告代行を行っているほか、さまざまな税のお悩みについての相談に応じています。
ダブルワークの確定申告は、記載ミスが会社に副業のバレる原因となりかねません。また、確定申告を適切に、負担なく進めるため、税の専門家である税理士がお力になれます。ぜひ一度、お気軽にご相談ください。