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自己株式を取得するメリットとは?取得方法と注意点について解説

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自己株式を取得するメリットとは?取得方法と注意点について解説

上場企業が市場に流通した自己株式を買い戻す方法として自己株式取得があります。近年では非上場企業でも、株主から株式を取得するケースも増えているようです。多くの企業が注目する自己株式取得ですが、自己株式を取得することにどのような目的やメリットがあるのでしょうか。この記事では、自己株式取得の概要に加えて、目的やメリット・デメリットについて解説します。

自己株式取得とは

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自己株式取得と見聞きすると、取引や税務上のリスクをイメージする方も多いのではないでしょうか。ここでは、自己株式取得の概要と注目を集めた経緯について解説します。

自己株式取得の概要

自己株式取得とは、企業が自社の株式を市場や特定株主から買い戻す方法の総称であり、法律や規制に従って実施されます。株式を自社で保有することで、後述するメリットを享受できます。自己株式の取得において厳密な保有期間は存在せず、いつ手放しても、あるいはいつまで保有していても問題ありません。

取得手法には、市場取引のほか、特定の株主から買い付ける方法などがあります。取得方法についても後述していますので、ぜひ最後までご覧ください。

自己株式取得が注目される背景

商売について定めた法律「商法」が施行されたのは、今から150年ほど前の明治時代でした。当時は自己株式の保有が禁止されていましたが、1938年の法改正に伴い、徐々に規制が緩和に向かいます。

2001年の旧商法の改正では自己株式の保有が合法化され、5年後の2006年には商法が会社法へと一新されます。これにより、自己株式の取得は会社法155条の以下の内容に触れない限り原則自由となりました。

第百五十五条 株式会社は、次に掲げる場合に限り、当該株式会社の株式を取得することができる。
一 第百七条第二項第三号イの事由が生じた場合
二 第百三十八条第一号ハ又は第二号ハの請求があった場合
三 次条第一項の決議があった場合
四 第百六十六条第一項の規定による請求があった場合
五 第百七十一条第一項の決議があった場合
六 第百七十六条第一項の規定による請求をした場合
七 第百九十二条第一項の規定による請求があった場合
八 第百九十七条第三項各号に掲げる事項を定めた場合
九 第二百三十四条第四項各号(第二百三十五条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる事項を定めた場合
十 他の会社(外国会社を含む。)の事業の全部を譲り受ける場合において当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得する場合
十一 合併後消滅する会社から当該株式会社の株式を承継する場合
十二 吸収分割をする会社から当該株式会社の株式を承継する場合
十三 前各号に掲げる場合のほか、法務省令で定める場合

出典:会社法 | e-Gov 法令検索を抜粋

自己株式取得について検討する方は、上記に目を通した上で検討を進めましょう。

自己株式を取得する目的

企業が自己株式を取得する目的は、株主還元や株価の安定など、さまざまな戦略的意図があります。ここでは主な目的について解説するので、自己株式取得を検討中の方は目的を洗い出す際の参考にしてください。

M&Aの対価としての活用

M&Aは「Merger And Acquisition」の略称で、日本語に訳すと合併・買収といった意味を持つ言葉です。M&Aでは合併や買収の際、企業同士の株式を譲渡・交換することがあります。このとき、自己株式を取得しておくと対価として利用できるので、M&Aでのやりとりを円滑にすることが可能です。

関連記事:事業承継とM&Aの違いは?メリット・デメリットや流れを解説

敵対的買収への対抗策

企業が自己株式を買い戻すことで、持株比率が上昇し、敵対的買収者が取得できる株式の割合が減少します。その結果、買収のハードルが上昇し、敵対的な動きに対抗する余力が生まれるのも目的の一つです。自己株式を有する株主にとっても、価値のある企業としての印象を与えられるので、信頼感やブランド力の向上にも期待できます。

株価の低迷を防ぎ、価値を高める効果

市場に流通する株式を買い戻すことで、株式の供給が減少し、結果として1株あたりの価値を高める効果にも期待できます。そのことから、自己株式取得は株価低迷を防ぐ手段としても有効です。企業価値を向上させる一環として、長期的な成長にも寄与すると考えられています。

相続税負担の軽減措置としての利用

自己株式を取得しておくと、後継者は自己株式を売却し、その際に得たお金を相続税の納税に充てることができます。

事業承継の際、後継者には相続した株式に対して相続課税が課されます。相続税を支払うためには、ある程度まとまった資金が必要です。このように事業承継における相続税の充当を目的とした自己株式取得も珍しくありません。

関連記事:株式の譲渡所得は確定申告する?特定口座なら申告が不要な場合も

株式の分散防止による経営の安定化

自己株式を取得することにより、株式の分散を防ぎ、経営体制の安定につなげる目的もあります。株主が分散すると、意思決定が困難になるリスクが生じることも少なくありません。

しかし一定の株式を自己保有することで、経営方針をスムーズに決められるといった特徴があります。経営陣の権限強化にもつながり、迅速な意思決定も見込まれるでしょう。

自己株式取得のメリット・デメリット

メリット

自己株式取得は企業経営において重要な役割を果たし、多くのメリットを提供します。具体的には以下の通りです。

  • 株主への利益還元の促進
  • 企業価値向上のための手段
  • 事業承継の円滑化

本記事で先述したように、自己株式の取得によって、企業の価値が向上するほか、安定的な経営につながるといったメリットがあります。ここからは、その一方でみられやすいデメリットについて解説します。

取得手数料やコストが発生する

自己株式を取得する際は、当然ながら購入費用が掛かります。また、手数料などその他にも関連するコストが発生することは避けられません。

総合的な費用が結果的に企業の負担となる可能性もあるため、購入を検討する際は事前にコストの見積もりを行うことが大切と言えるでしょう。

関連記事:株式投資にはどのような税金がかかる?節税方法や税制優遇措置についても解説

資金繰りの負担が増加する

自己株式の取得は、企業の資金繰りに対して直接的な影響を与えることも懸念点です。特に現金を用いた株式の買い戻しでは、短期的な資金繰りが厳しくなるリスクが考えられます。

このような状況に陥ると、他の投資プロジェクトや日常的な経営活動に影響を及ぼす可能性も否めません。

株価変動による不確実性の影響

株価は常に変動します。そのため、自己株式を取得するタイミングや取得価格によっては、企業の負担が大きくなることが予想されます。

市場の動向に左右される性質であることから、長期的な視点での判断が必要です。株式の取得価格が後に下がると、企業の資産評価が悪化する可能性もあります。株価変動によるリスクを軽減させるためには、慎重な分析と市場環境の把握が大切と言えるでしょう。

自己株式取得の具体的な方法

自己株式を取得するには、さまざまな方法があることを知ると共に、企業戦略や目的に応じて選択することが大切です。ここでは、取得方法の詳細について解説します。効率的かつ効果的に目標を達成するための道筋を探りましょう。

市場取引を活用した方法

市場取引は、計画的に少しずつ株式を取得できる方法で、企業の財務に与える影響を軽減することができます。企業が自己株式を市場から買い戻す場合、株価や流動性を考慮しなければなりません。

必要な株式数を柔軟に調整しながら取得しやすくなるため、上場企業であれば検討してみると良いでしょう。

公開買い付け(TOB)の手法

公開買い付け(TOB)は、株主に対して自己株式を一定の価格で買い取ることを公開的に提案する手法です。株式を選択的に売却できるので、有利な取引となるでしょう。特に、大量の株式を一度に取得する必要がある場合に効果的です。

すべての株主からの取得

自己株式をすべての株主から取得する方法は、透明性を持たせる目的で用いられることが多いです。公平性が確保されるので、他株主からの信頼も得やすくなるでしょう。株主参加型のアプローチによっては、企業の方針を広く理解してもらうことにも期待できます。

特定の株主のみからの取得

特定の株主からのみ株式を取得する方法は、株主との関係性を考慮する際に有効です。例えば経営陣からの株式を集中的に取得することで、経営権の強化につながり、安定した意思決定を図ることができます。

子会社からの取得

親会社が子会社から自己株式を取得することも可能です。子会社の経営における持株比率を調整することで、グループ全体の戦略を効果的に展開できるでしょう。

子会社からの取得は、親会社の資本利益を最大化するなど、グループ全体の安定性や成長性を促進するために役立ちます。さらに、親会社と子会社の間での資金の流れをスムーズにし、経営の統一感を高める効果にも期待できるでしょう。

自己株式取得における注意点

個人事業税がかからない業種のイメージ

自己株式を取得する際は、いくつかの注意点に留意する必要があります。

  • 財源規制が適用される
  • 自己株式に議決権はない
  • 取得する割合を見極めなければならない
  • 処分に手間が掛かる可能性がある

ここからは、上記について解説するので、自主株式取得を検討の際はきちんと目を通しておきましょう。

財源規制が適用される

自己株式を買い付ける場合は、財源規制のルールを把握・遵守する姿勢が大切です。買い付けの上限金額や1日に買い付ける数量の制限などもあるため、どのようなルールがあるのかを買い付け前に把握しておきましょう。

無制限に自己株式を買い付け続けると、自己資本の低下を招き、会社の経営そのものが悪化する可能性があります。買い付けにまつわるルールを遵守し、分配可能額内で行うよう注意しましょう。

自己株式に議決権はない

自己株式を取得した場合、議決権がありません。仮に、議決権を目的に取得を検討する場合は、この点に注意してください。また、一度に多くの自己株式を購入した場合も、既存株主によって議決権比率が大きく変わることがあります。混乱を招かないよう、購入する株式数にも細心の注意を払いましょう。

取得する割合を見極めなければならない

自己株式を買い付ける目的の多くは、株主への還元や投資家へのアプローチです。財務状況を変える目的で取得した場合、市場に影響を及ぼし、混乱を招く可能性があります。自己株式を買い付ける場合は、市場や株主などさまざまな影響を考慮し、取得割合を見極めることも大切です。

処分に手間が掛かる可能性がある

自己株式を処分する際は、取締役会の決議など、さまざまな手続きが必要になります。自己株式を増やしすぎると、段階に応じて処分回数が増える恐れがあるため注意してください。

回数によっては手続きの頻度も増えます。最終的に多くの手間が掛かるので、買い付けの際は手放す際の手間について考えておくことも大切です。

自己株式取得について押さえよう

自己株式取得は、企業が株主への利益還元や企業価値の向上を目的として活用する方法です。多様なメリットがある一方で、デメリットや注意点に留意する必要があります。買い付けの際は、資金面や規制面でのリスクも存在することから、慎重な分析と戦略的な判断を心がけましょう。

自己株式取得は相続税対策をはじめとする税務面での活用も可能です。実施に向けて適切なアドバイスをお求めの方は、ぜひこの機会に小谷野税理士法人へご相談ください

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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