近年、製造業に必要な工場や機械の価格は大きく上昇し「老朽化した設備を新しくしたい」「人手が足りない」といった悩みを抱える製造業経営者も少なくありません。補助金を上手く活用すれば、設備投資のリスクを抑えながら、業績の向上や新事業の展開も可能でしょう。今回は、製造業に特化した2025年の補助金情報を網羅的に解説し、活用するメリットや注意点について解説します。
目次
補助金とは
補助金は、国や地方自治体が事業者の取り組みをサポートするために資金の一部を給付する制度です。事業の内容や規模に合わせて様々な分野で募集されており、それぞれの募集要項を確認して正しく申請する必要があります。
助成金との違い
補助金は、定められた要件を満たしたうえで、審査で選ばれた事業者だけに支給されます。つまり、要件を満たしていても補助金が受けられないケースがあるのです。
更に、必ずしもすべての経費がもらえる訳ではありません。事前に補助対象となる経費・補助の割合・上限額などを確認しましょう。
対して助成金は、助成金ごとに設けられた一定要件を満たしていれば、支給されるのが特徴です。とはいえ、従業員との雇用契約があることや出退勤時間の管理をもとに残業代などが計算されていることなど、労働関係の法令を遵守している必要があります。
【2025年度版】製造業におすすめの補助金一覧
製造業が活用できる補助金について解説します。
ものづくり補助金
中小企業等による生産性向上を実現するための革新的なサービスの開発、試作品開発、生産プロセス改善のための設備投資を支援する補助金です。働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入などの直面する制度変更への対応を後押しする目的で制定されました。
申請枠 |
|
補助上限額 |
|
補助率 |
中小企業 1/2、小規模企業・小規模事業者 2/3
中小企業 1/2、小規模企業・小規模事業者 2/3 |
補助事業実施期間 |
|
補助対象経費 | 機械装置・システム構築費(必須) 技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 ※グローバル枠のうち、海外市場開拓(輸出)に関する事業の場合:海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費 |
2025年度のものづくり補助金では、企業規模に応じた投資ニーズに対応するために補助金額に係る従業員区分が見直され、補助上限金額が一部拡充されています。
参考:ものづくり補助金
関連記事:ものづくり補助金とは?公募要項や採択事例などをわかりやすく解説
事業承継・M&A補助金
事業承継にかかる設備投資費用やM&A・PMIの専門家活用費用などの一部を補助する制度です。中小企業だけでなく、一定の要件を満たす個人事業主や親子間事業承継も補助を受けられます。
申請枠 |
|
補助上限額 |
|
補助率 |
|
補助対象経費 |
設備費・産業財産権等関連経費・謝金・旅費・外注費・委託費など
謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料
設備費、外注費、委託費 など
廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費、移転費用(併用時のみ) |
参考:事業承継・引継ぎ補助金
関連記事:事業承継補助金・引き継ぎ補助金とは?対象経費や対象者について解説
M&Aや事業承継には、手続きの複雑さや費用負担など、さまざまな課題が存在します。そこで、円滑な事業承継とM&Aの促進を図るために創設されました。事業承継・M&A補助金には複数の支援枠があり、それぞれ要件や補助率が異なるため、自社に最適な支援枠を選択しましょう。
IT導入補助金
中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際、経費の一部が補助される制度です。ITツール導入により経営課題を解決し、労働生産性の向上や業務の効率化を目的としています。
申請枠 |
|
補助上限額 |
|
補助率 |
|
補助対象経費 |
ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費
インボイス制度対応ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年分)、導入関連費
インボイス制度対応ソフトウェアのクラウド利用費(最大2年分)
サイバーセキュリティサービス利用料金(最大2年分)
ソフトウェア購入費用、クラウド利用料金(最大2年分)、導入関連費 |
参考:IT導入補助金2025
関連記事:【2025年度】個人事業主が利用できるIT導入補助金について
IT導入補助金は募集が複数回あり、一度不採択になっても同年度内であれば何度でも再申請できます。補助額・補助率、補助対象となる費用は毎年見直されているため、申請年度の公募要領を必ず確認し、自社でどのように活用できるかをしっかりと検討しましょう。
事業再構築補助金
事業・業種転換や新規事業など、その名の通り事業を再構築する際にかかった経費の一部を補助してくれる制度です。元々は、新型コロナウィルスの影響が大きい企業が業績を回復させるための新たな取り組みに対して支援する補助金でしたが、2023年度からは性質が大きく変わっています。
申請枠 |
|
補助上限額 |
|
補助率 |
|
補助事業実施期間 | 交付決定日から12ヵ月または14ヵ月 |
補助対象経費 |
|
事業再構築補助金は様々な経費に対して使用ができますが、建物費や機械装置・システム構築費をメインとした投資を行うようにしましょう。大きな金額が受け取れる補助金のため、その分審査が厳しいと言われています。
中小企業省力化投資補助金
中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援する補助金です。中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的としています。
申請枠 |
|
補助上限額 |
|
補助率 | 1/2以下 |
補助事業実施期間 | 交付決定日から12ヵ月または14ヵ月 |
補助対象経費 |
|
参考:中小企業省力化投資補助金
中小企業省力化投資補助金は、IoT・ロボットなどの導入にかかる費用の一部を負担してくれる制度です。導入できる製品は限られていますが、上手に活用すれば生産性の向上につながるでしょう。
中小企業新事業進出補助金
既存の事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出にかかる設備投資等を重点的に支援するための新しい補助金です。中小企業・小規模事業者の成長支援を目的として創設され、事業再構築補助金の後継制度となる補助金とも言われています。
補助上限額 | 750〜9,000万円 |
補助率 | 1/2 |
補助事業実施期間 | 交付決定日から14ヵ月以内(ただし採択発表日から16ヵ月以内) |
補助対象経費 | 機械装置・システム構築費、建物費、運搬費、技術導入費、知的財産権等関連経費、外注費、専門家経費、クラウドサービス利用費、広告宣伝・販売促進費 |
幅広い費用が補助対象となるため、新事業進出を目的とした機材導入、宣伝などを検討している中小企業や個人事業主にとって、汎用性の高い補助金となっています。個人事業主も対象ですが、従業員がいない場合は補助対象外のためご注意ください。
中小企業成長加速化補助金
売上高100億円を目指す企業を対象に、果敢な設備投資や新事業・新分野への発展、さらにはM&Aや海外展開など、さまざまな挑戦を支援する補助金です。成長志向型の大胆な設備投資を促進し、地方における持続的な賃上げを狙いとしています。2024年度補正予算において創設された、新しい補助金です。
補助上限額 | 最大5億円 |
補助率 | 1/2以内 |
補助事業実施期間 | 交付決定日から24ヵ月以内 |
補助対象経費 | 建物費、機械装置費、ソフトウェア費、外注費、専門家経費 |
「中小企業成長加速化補助金」は単なる資金援助ではなく、企業の次なる成長を支援するための戦略的な制度です。成長を目指す企業にとって、設備投資や人材育成、海外展開支援などの多面で活用できる資金源になるでしょう。
製造業が補助金を活用するメリット
補助金を活用するメリットとして、以下のようなものがあります。
返済不要で資金が調達できる
補助金は返済不要な資金調達方法であるため、事業の財政的な負担が軽減されるでしょう。自己資金だけでなく、補助金を組み合わせるとより多くの資金を調達できます。
さらに、初期投資や設備投資、人材育成といった費用を軽減でき、事業の拡大や新規事業の立上げを積極的に進められるメリットもあります。
事業計画の見直しになる
補助金を申請する際には、事業計画書など様々な書類を準備する必要があります。申請書作成という作業を通じて事業計画を客観的に見直せば、自身の強みや課題が明確になり、効果的な経営戦略を検討するきっかけになり得ます。
企業の信用力が上がる
補助金を獲得するためには厳しい審査を通過する必要があります。審査を通過すれば、採択された企業は事業計画を適切にアピールできる能力があると評価され、信用力の向上が期待できるでしょう。
製造業が補助金を活用するときの注意点
補助金を活用する際の注意点について解説します。
補助金は後払い制
多くの補助金は、基本的に後払いです。 つまり、まずは申請者が自費で事業を進め、その後、事業が完了した際に補助金が支払われます。直ちに受給できないと念頭に置いておきましょう。
申請から支給まで約1年かかる
補助金は、申請してすぐに振り込まれるわけではありません。申請する補助金の事業実施期間などによっては、交付までに1年以上かかる場合もあるため注意が必要です。スケジュール全体を把握し、資金繰りをしっかり考えておく必要があります。
製造業の補助金に関する相談は専門家へ
2025年に活用できる製造業向けの補助金制度と、そのメリットや注意点について解説しました。近年、製造業を取り巻く環境変化に対応するための支援制度が充実しています。
補助金をうまく活用することで、資金面の不安を和らげながら、設備投資や新規事業への挑戦が現実のものとなります。今後の経営戦略の一環として、ぜひ補助金を前向きに検討してみてください。
しかし、補助金制度は年々複雑化しており、書類の書き方ひとつで採択結果が大きく変わるケースもあります。
そこで、専門家である税理士に相談するのもおすすめです。各種補助金申請のサポートや経営計画の策定支援など、採択率アップにつながる各種サポートを行っています。