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利益供与の税務リスクとは?見落としがちな注意点と対応策を解説

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利益供与の税務リスクとは?見落としがちな注意点と対応策を解説

会社の支出や取引が、知らぬ間に「利益供与」と見なされてしまうことがあります。「利益供与」という言葉に聞き覚えはあっても、その定義や税務上の扱いについて正確に理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。これは企業にとって、税務上の大きなリスクになりかねません。本記事では、「利益供与」について企業が注意すべきポイントや対応策についてわかりやすく解説します。

利益供与とは

利益供与とは、会社が特定の役員、株主、取引先などに対して、正当な対価を伴わずに財産的な利益を与える行為を指します。

会社法では、企業の資産が恣意的に外部へ流出することを防ぐため、こうした不当な利益供与を原則として禁止しています。違反した場合、関与した役員には損害賠償責任が問われる可能性もあります。

さらに、税務の観点でも、提供された利益が「経済的利益」と判断されれば課税対象となり、法人税上の損金として認められないなどのリスクが発生します。

こうしたリスクを避けるためにも、税務や会計処理は慎重に行う必要があります。

税務上の利益供与とみなされる具体的ケース

会社の取引や支出が、思わぬかたちで「利益供与」と判断されることがあります。具体的にどのようなケースが該当するのか事前に把握しておきましょう。

無償または著しく安価な取引

商品やサービスを通常価格よりも大幅に安く、あるいは無償で提供した場合、その差額分が「寄附金」または「役員賞与」などとみなされる可能性があります。

このような取引は、税務上の損金として認められず、法人税の課税所得が増える結果となるでしょう。取引先が関係会社や特定の人物である場合には、特に利益供与と判断されやすくなるため、価格設定には十分な根拠と客観性が求められます。

債務免除や無利息貸付

関係会社や役員、個人に対して負債の返済を免除したり、無利息で貸し付けを行った場合、受け取る側にとっては「経済的利益」を得たことになり、「受贈益」や「給与所得」として課税される可能性があります

会社側にとっても、これらの取引が適切な対価を伴わないと判断されれば、寄附金として損金算入できない恐れがあるでしょう。関連当事者間の取引には、通常の商習慣や合理性が求められます。

個人的支出の会社経費化

役員や従業員の私的な飲食費や旅行費、贈答品代などを、会社の経費として処理する行為は、税務上問題となります

これらは給与や賞与とみなされる可能性が高く、源泉所得税の課税対象になります。また、会社にとっても損金として否認されるリスクがあり、二重課税のような状態になることもあるでしょう。

経費処理は、その支出が業務に関連するかどうかを客観的に証明できることが重要です。

資産の低額譲渡・無償譲渡

会社が保有する自動車やパソコン、什器などの資産を、帳簿価格や時価よりも著しく低い価格、または無償で譲渡した場合、その差額は「寄附金」などとして扱われる可能性があります

この場合、譲渡先の会社にとっては受贈益として課税され、譲渡した会社側でも損金算入が否認されるリスクがあるでしょう。取引先が関係者である場合は特に慎重な処理と文書の整備が必要です。

実態のない役員報酬や賞与

業務への貢献がほとんどない役員に対して、形式的な理由だけで報酬や賞与を支給した場合、それは税務上「実質のない利益供与」とされ、法人側で損金不算入とされる場合があるでしょう。

また、報酬が業績や職責に見合っていない場合にも問題視されやすく、税務調査で指摘される可能性があります。報酬額の決定には、客観的な算定根拠や社内規程の整備が不可欠です。

グループ会社間の価格操作

親会社や子会社などのグループ企業間で、市場価格と著しく異なる取引価格を設定すると、「利益の恣意的移転」として移転価格税制の対象になります

結果として、税務当局から修正申告や追徴課税を求められるケースは珍しくありません。特に、税率の異なる国や地域との取引では注意しましょう。適正な価格を証明するためには、取引価格の根拠資料や文書化が重要になります。

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税務調査で利益供与と指摘されやすい4つのポイント

税務調査においては、通常の取引と異なる不自然な支出が「利益供与」として厳しくチェックされます。特に指摘されやすい4つのポイントを紹介します。

  • 市場価格との乖離
  • 契約書や証憑の欠
  • 名目と実態の食い違い
  • グループ内での利益偏在

市場価格との乖離

取引価格が一般的な市場価格と比べて著しく乖離している場合、その取引は通常の商慣行に基づいたものとは認められず、利益供与と判断される可能性があります。

例えば、取引先に対して特別な値引きを行ったり、無償でサービスを提供したりすると、差額部分が「寄附金」とみなされるでしょう。特に、親密な関係にある取引先との取引では、価格設定に明確な根拠を示すことが重要です。

契約書や証憑の欠如

取引の内容や対価を証明する契約書、請求書、見積書などの証憑類が不備、または存在しない場合、税務当局はその支出の実態や正当性に疑いを持ちやすくなるでしょう。

特に、関係者との取引や高額支出では、後からの説明だけでは信憑性を欠くとされ、利益供与として扱われるおそれがあります。書類の整備は税務リスク回避の基本であり、取引の客観性を証明する最も有効な手段です。

名目と実態の食い違い

支出の名目と実際の使途が異なる場合も、税務調査で利益供与と判断されやすい典型的なケースでしょう

例えば、「福利厚生費」や「交際費」として処理していた経費が、実際には役員個人の私的な飲食や旅行だった場合、それは給与として課税対象となる可能性があります。

帳簿上の科目だけで安心せず、実態と整合する支出内容であることが大前提です。

グループ内での利益偏在

グループ会社間の取引で、特定の会社に一方的に利益が偏るような内容になっている場合、それは恣意的な利益移転と見なされる可能性があるでしょう。

とくに、税率が異なる国や地域に所在する関連会社間での不自然な価格設定は、移転価格税制の対象となることがあり、追徴課税や修正申告のリスクが発生します。グループ内取引でも第三者間と同様の合理性・独立性が求められます。

利益供与が引き起こす税務上の5つのリスク

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利益供与は一時的な便宜のつもりでも、税務上の扱いを誤ると企業に負担をもたらします。代表的な5つのリスクを具体的に解説します。

  1. 損金不算入による課税リスク
  2. 重加算税・延滞税の発生
  3. 役員の損害賠償責任
  4. 株主代表訴訟のリスク
  5. 信用・評判の毀損

損金不算入による課税リスク

利益供与と認定された支出は、法人税法上「損金」として扱うことができず、課税所得が増加することがあります。

その結果、法人税額が増え、当初想定していた経費処理が否認されることで、資金繰りにも影響が出かねません。特に、贈与や寄附と見なされる支出には注意が必要です。

適切な判断や証憑の整備を怠ると、節税どころか逆に重い納税義務を背負うことになるので注意しましょう。

関連記事:損金とは?損金算入・不算入の項目や法人税の計算に必要な損金処理について

重加算税・延滞税の発生

利益供与が意図的または悪質と判断されると、通常の追徴課税に加えて重加算税(35〜40%)が課されることがあります。さらに、申告漏れの期間に応じて延滞税も発生するため、総額での税負担が重くなるでしょう。

単なる修正申告では済まないケースもあり、企業の財務に深刻なダメージを与えかねません。税務調査での指摘を受けた際には、早急な対応が求められます。

関連記事:追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説

役員の損害賠償責任

会社法上、役員が不当な利益供与に関与していた場合、会社に損害を与えたとして、損害賠償責任を問われる可能性があります

株主や会社から直接請求されることもあり、経営判断の誤りが個人責任に発展するケースも少なくありません。役員報酬や関連取引においては、常に適正性・透明性を確保し、会社の利益を損なわないよう慎重な対応が求められます。

株主代表訴訟のリスク

利益供与によって会社に損害が発生した場合、他の株主が「会社の利益を守る」目的で代表訴訟を起こすことが可能です。

訴訟の対象は役員となり、賠償請求や解任要求など、経営上の重大な影響を受ける可能性があるでしょう。特に、上場企業や株主数が多い企業ではリスクが高く、内部統制やコンプライアンス体制の不備が表面化するきっかけにもなり得ます。

信用・評判の毀損

利益供与の事実が外部に発覚した場合、税務リスク以上に深刻なのが企業の信用失墜です

取引先や金融機関、顧客からの信頼が損なわれると、新たなビジネスチャンスや資金調達にも影響を与えるでしょう。一度傷ついた評判を回復するのは容易ではなく、長期的な企業価値の低下に繋がる可能性もあります。

税務上の利益供与を防ぐための5つの実務対応策

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税務上の利益供与とみなされないためには、日々の取引や社内体制における実務対応が重要です。企業が今すぐ取り組める5つの具体策をご紹介します。

  1. 取引価格の根拠資料の整備
  2. 契約書や合意書の作成
  3. 税理士への事前確認体制の構築
  4. 社内規程と研修の実施
  5. 経費精算フローの厳格化

取引価格の根拠資料の整備

利益供与の疑いを避けるには、取引価格が客観的に妥当であることを証明する資料の整備が不可欠です

例えば、第三者との見積比較や過去の契約実績、業界の相場情報などを活用し、「なぜその価格なのか」の説明ができる状態にしておくことが求められます。

これにより、税務調査時にも不当な利益供与との誤解を回避し、正当な取引であることを主張しやすくなるでしょう。

契約書や合意書の作成

取引内容や支払い条件が明確に記載された契約書を取り交わすことは、利益供与と疑われないための基本です。

契約書があれば、当事者間の合意内容が明示され、後から内容を変更・否認されるリスクを軽減できます。

また、見積書や納品書といった補足資料もあわせて保管しておくことで、税務当局に対しても説明力のある証憑となり、税務否認の回避に繋がるでしょう。

税理士への事前確認体制の構築

取引の判断に迷ったとき、特に関係者間の取引や価格設定が相場とかけ離れる場合などは、必ず税理士へ事前相談する体制を整えておくことが重要です

税理士は最新の税務実務に基づいてリスク判断ができ、事前に処理方法を整えることで、のちの税務調査や指摘を未然に防ぐことが可能です。経営判断における安心材料としても有効な手段でしょう。

社内規程と研修の実施

利益供与を防ぐには、役員や従業員が適正な処理基準を理解し、実行できる体制が必要です。そのためには、利益供与に関する社内規程を整備し、全社員を対象としたコンプライアンス研修を定期的に実施することが有効です

社内に正しい知識と意識を根付かせることで、ヒューマンエラーや無自覚な税務リスクを減らし、組織全体での対応力を高められるでしょう。

経費精算フローの厳格化

役員や従業員の私的支出が経費に混入することで、結果的に利益供与とみなされることがあります。

これを防ぐためには、経費申請時に領収書や稟議書の提出を義務付けるとともに、承認プロセスを多段階で管理するなど、精算フローを明確かつ厳格に運用することが大切です。

チェック体制が整っていれば、支出の透明性と信頼性も高まり、税務上のリスク低減に繋がるでしょう。

利益供与の税務判断に迷った方は専門家に相談を

利益供与かどうかの判断は非常に難しく、誤った処理が後に税務調査で問題視されることもあるでしょう。

利益供与が疑われる支出がある場合や、グループ会社との取引で不安がある場合は、早めに専門家に相談することを推奨します

小谷野税理士法人では、利益供与に関する税務・法務の豊富な知見を持つ専門家が、個別の実態に合わせた最適なアドバイスを提供しています。「この処理で大丈夫か不安」、「事前にリスクを回避したい」とお考えの方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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