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デリバティブ取引とは?代表的な種類と会計処理をわかりやすく解説

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デリバティブ取引とは?代表的な種類と会計処理をわかりやすく解説

デリバティブ取引は、企業のリスク管理や投資戦略において欠かせない金融手法です。先物取引やスワップ取引などさまざまな種類があり、それぞれに応じた会計処理が必要です。しかし、会計処理が複雑そうと感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、デリバティブ取引の基本的な考え方から代表的な取引の種類、押さえておきたい会計処理のポイントなどを専門家の視点でわかりやすく解説します。

デリバティブ取引の定義と特徴

デリバティブ取引とは、株式や債券、為替などの原資産の価格に連動して価値が変動する金融商品の取引です。主に、価格変動リスクヘッジや、将来の価格変動を見越した投資(投機)の手段として活用されており、効率性と柔軟性を兼ね備えた金融手法とされています。

ここでは、デリバティブ取引の基本的な仕組みと特徴について見ていきましょう。

デリバティブ取引とは

デリバティブ取引とは、ある資産や指標の価格変動に基づいて価値が決まる金融契約のことです。代表的なものとしては、先物取引、オプション取引、スワップ取引などが挙げられます。

デリバティブ取引の特徴は、原資産を実際に保有することなく、価格の変動を利用して利益を得たり、リスクを管理できたりする点です例えば、為替のデリバティブであれば、実際に外貨を持たずに為替レートの変動から利益を得ることが可能です。

デリバティブ取引は、経済環境の変化によるリスクをコントロールしたい企業や投資家にとって、有効なリスクヘッジの手段となります。加えて、市場の動向を予測して利益を狙う投機的な活用方法も存在し、用途によって柔軟に運用されているのが特徴です。

こうした特性から、デリバティブは現代の金融市場において欠かせないツールの1つと言えます。

デリバティブ取引の目的

デリバティブ取引は、価格変動リスクのヘッジや、相場の変動を活用した収益獲得など、さまざまな目的で活用されています。よって、企業にとって為替リスクや金利リスクをコントロールするための有効な手段となり、経営の安定も可能です。

一方、個人投資家にとっては、相場の先行きを予測し、タイミングを見極めて利益を狙う投資戦略として注目されています。

デリバティブ取引は、レバレッジ効果を活用することで、少額の資金でも大きなポジション(エクスポージャー)を持てます。そのため、限られた資金を効率的に運用したい投資家にとっても魅力的です。

こうしたメリットがある一方で、税務面の配慮も欠かせません。デリバティブ取引から生じた利益や損失は、所得税や法人税の課税対象となるため、正確な記帳と適切な申告が必要です。

また、取引にかかる手数料やスプレッドなどのコストも、収益に影響を与える可能性があります。

デリバティブ取引を検討する際は、リスクと収益のバランスだけでなく、税務や取引コストの観点からも総合的に判断し、計画的に運用しましょう。

デリバティブ取引の特徴

デリバティブ取引の代表的な特徴は流動性の高さとレバレッジ効果です。

流動性が高いことは、取引の成立が比較的容易で、売買に適したタイミングで市場に参加しやすいことを意味します。

また、レバレッジを活用すれば、小額の資金で大きな取引が可能です。一定の戦略のもとで用いれば、より高いリターンを目指すこともできるでしょう。

ただし、レバレッジはリスクも高く、相場が想定と逆に動いた場合には、元本以上の損失が発生する恐れもあります。

デリバティブ取引を行う際は、商品の特性やリスクを十分に理解したうえで、戦略的かつ慎重に運用しましょう。

関連記事:投資と融資の違いは?会社設立前に知っておきたい資金法

デリバティブ取引の種類

税務・会計処理

デリバティブ取引にはさまざまな種類があり、企業のリスク管理や投資目的に応じて使い分け、先渡取引・先物取引・オプション取引・スワップ取引の4つが代表的です。ここでは、それぞれの取引の特徴を解説します。

先渡取引と先物取引

先渡取引と先物取引は、いずれも将来の特定の日に原資産をあらかじめ定めた価格で売買する契約です。

先渡取引は、当事者間で個別に契約を結ぶ相対取引です。契約の内容は柔軟に決められますが、流動性が低いのが特徴です。実際の資産の受け渡しを行うケースが多く、主に企業間でのリスクヘッジを目的に使われます。

一方、先物取引は取引所を通じて契約を行い、差金決済が基本です。これにより、取引の途中でも反対売買で決済が可能であり、高い流動性と価格の透明性を備えています。また、投機的な取引にも広く利用されているのが特徴です。

 

いずれの取引も、将来の価格変動リスクを軽減する目的で活用されますが、契約後のキャンセルはできないため注意しましょう。

オプション取引

オプション取引とは、将来の特定の日にあらかじめ定めた価格で特定の資産を買う権利または売る権利を取引する契約ですオプション取引は、権利を持つ者がその権利を行使するかどうかを選択できます。

そのため、オプションの買い手は相場が不利に動いた場合でも損失を抑えることが可能です。価格が予想に反して動いたとしても、オプション料を支払っていれば、権利を放棄するだけで追加損失を回避できます。

このように、価格変動リスクを限定しつつ収益のチャンスを狙える点から、オプション取引はリスク管理と投機の両面で有効な手段として、株式市場や為替市場で多く利用されています。

スワップ取引

スワップ取引とは、将来の一定期間にわたって、異なる条件のキャッシュフロー(主に金利や通貨)を交換する契約を意味します。代表的なものが金利スワップで、固定金利と変動金利の支払義務を交換する取引です。

例えば、変動金利で借入を行っている企業が金利上昇リスクを避けるために、固定金利へ切り替えることがあります。これにより、支払利息が安定し、財務計画が立てやすくなります。

スワップ取引は流動性が高く、中長期的なリスク管理や資金繰りの安定化に役立つ一方で、契約期間中は条件変更が難しいため、慎重に戦略を立てることが大切です。

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デリバティブ取引の会計処理

のれん会計のイメージ

デリバティブ取引における会計処理は、企業の財務透明性を確保し、リスク管理や投資の判断をするために欠かせません。国内外の会計基準では、デリバティブを原則として時価で評価し、評価差額を損益に反映させます。

これにより、企業のリスク状況やパフォーマンスを反映した財務諸表の作成が可能となり、投資家やステークホルダーに透明性の高い情報を提供できます。

ここでは、デリバティブの基本的な会計処理の流れと、ヘッジ取引における特例的な方法について見ていきましょう。

デリバティブの会計処理

デリバティブ取引の会計処理では、契約ごとに期末時点の時価を評価し、評価差額を当期の損益として計上するのが一般的です。そのため、オプション取引や先物取引は、市場価格の変動に応じた損益が毎期認識されます。

ただし、すべてのデリバティブ取引が同じ処理ではありません。リスク回避を目的としたヘッジ取引は、ヘッジ会計の適用により、損益の認識タイミングや方法が異なる場合があります。

よって、ヘッジ会計の適用で、本来のヘッジ効果が財務諸表に反映され、過度な損益の変動を抑えられます。

ヘッジ会計の概要

ヘッジ会計とは、企業が為替変動や金利変動などのリスクを軽減するために行うヘッジ取引に適用される会計処理です。

通常のデリバティブ取引では、時価評価によって発生した損益はそのまま当期の損益として計上されます。一方、ヘッジ会計を適用することで、ヘッジ手段とヘッジ対象の損益を同一の会計期間に計上できるため、収益の変動を最小限に抑えることが可能です。

ヘッジ会計は、一定の要件を満たすことで適用が認められます。よって、ヘッジ戦略を採っている企業は、為替リスクや金利リスクといった市場リスクに対して、会計・財務の安定性を高める有効な手段です。

結果として、投資家や金融機関などのステークホルダーに信頼性の高い財務情報を提供できます。

繰延ヘッジの原則

繰延ヘッジの原則は、ヘッジ会計の中でもよく用いられる手法の一つで、ヘッジ取引によって生じた損益を、ヘッジ対象の損益が財務諸表に反映される時点まで繰り延べるという考え方に基づいています。

例えば、支払う予定の外貨建て債務に対する為替ヘッジの場合、為替予約による評価損益は、支払時点に損益として認識されます。これにより、当期における不要な損益変動を避け、財務数値の安定性を維持可能です。

結果として、企業の財務状況が安定し、投資家などの利害関係者からの信頼性向上にもつながります。

時価ヘッジ(例外的処理)

時価ヘッジとは、繰延ヘッジの原則に対して例外的な処理方法で、ヘッジ対象となる資産や負債の相場変動を当期の損益に直接反映させる会計手法です。

ヘッジ手段から生じる損益と、ヘッジ対象の損益を同じ会計期間に計上することで、ヘッジ効果を反映できます。

日本の会計基準では、時価ヘッジの適用対象はその他有価証券に限られています。その他有価証券の評価差額は損益計算書ではなく純資産の部に計上されます。

時価ヘッジを適用すると、この評価差額を損益計算書に反映させ、デリバティブの損益とタイミングを揃えることが可能です。

これにより、ヘッジ対象と手段の損益が同一の会計期間に反映されて相殺されるため、相場の変動による損益のブレを抑えられ、企業の財務がより安定します。

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ヘッジ会計と仕訳

ヘッジ会計は、為替や金利などの変動によるリスクを抑えるために企業が行うデリバティブ取引に適用される会計処理です。

ヘッジ会計を使うことで、ヘッジ対象となる資産や負債と、それに対するデリバティブ取引の損益を同じ会計期間に認識できます。ここでは、ヘッジ会計の基本的な仕組みと方法について説明します。

ヘッジ会計とは

ヘッジ会計は、相場の変動による影響をできるだけ減らす目的で導入される処理方法です。通常のデリバティブ取引では、評価損益が発生した時点で当期の損益に反映されますが、ヘッジ会計を用いると、対象となる取引と同じタイミングで損益を計上できます。

ヘッジ会計を行うには、ヘッジ対象とヘッジ手段との関連性が明確であること、ヘッジの有効性が数値で検証できること、適切に書面化されていることなど、一定の基準を満たさなければなりません。

例として、将来の外貨支払いに備えて為替予約を行った場合、その取引で生じる損益は、実際に支払いが発生する期にあわせて計上されます。

よって、企業のリスク対応が反映され、投資家や取引先への信頼性も高まるでしょう。

繰延ヘッジの仕訳方法

繰延ヘッジでは、デリバティブ取引によって発生した評価差額を、対象となる取引が会計上認識されるまで繰り延べて処理します。

繰延ヘッジを使えば、実際の取引が完了する時点に合わせて損益を反映できるため、短期的な相場変動が決算に与える影響を抑えることが可能です。

評価益が出た場合は資産として処理され、反対に評価損が発生した場合は負債として計上されます。

こうした処理によって、損益は取引実行時にまとめて反映され、結果として財務の安定性を保つことができます。特に長期的にリスクを管理したい企業にとって有効な会計処理の1つです。

時価ヘッジの仕訳方法

時価ヘッジは、デリバティブ取引の時価の変動をそのまま損益計算書に反映する方法です。時価ヘッジはヘッジ対象も時価で評価されている場合に適用され、両者の評価タイミングが揃うことで、損益の整合性を保ちやすくなります。

よって、時価が上昇すれば利益として計上し、下落すれば損失として扱われます。評価差額は都度損益に反映されるため、企業は自社のリスク状態をすぐに把握でき、柔軟な対応が可能です。

時価ヘッジは、相場の変動に素早い対応が求められる業種や、日々の価格変動が業績に直結する事業においては、有効なリスクコントロール手段と言えるでしょう。

関連記事:株価収益率(PER)とは?計算方法や目安をわかりやすく解説

まとめ

デリバティブ取引はリスク管理や投資戦略の中核を担う重要な金融手段で、先物取引・オプション取引・スワップ取引など、さまざまな方法を通じて市場の変動に柔軟に対応することが可能です。

ヘッジ会計を正しく適用することは、企業の財務諸表において収益のブレを抑え、情報の信頼性を高めるうえで重要です。これにより、企業がリスクにどう対応しているかを、より実態に近いかたちで外部に伝えられます。

よって、実務に活かすことで経営の質が高まり、企業の将来的な価値向上にもつながります。

一方、デリバティブ取引やヘッジ会計の適用には、高度な専門知識と制度への理解が必要です。

税務上の取り扱いについても注意が必要なため、不安がある場合は専門の税理士に相談することをおすすめします。

関連記事:税理士の探し方がわからない?優先順位やチェックポイントを解説

デリバティブ取引についてのお困りごとやご相談は、ぜひ小谷野税理士法人までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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