法人の税金対策には、経営効率の向上だけでなく、財務の健全化に繋がることをご存じですか?この記事では、法人が取り組むべき節税対策や買うもの、やっておきたいことについて解説します。適切な税金対策を押さえ、利益の最大化や長期的な成長を目指しましょう。
目次
法人税とは?対策前に基本を理解しよう
法人税対策を効果的に進めるには、まず基本的な仕組みについて理解することが大切です。ここでは法人税の仕組みと企業の経営に与える影響について解説します。
法人税の仕組み
法人税とは、法人の事業活動で得た所得に対して課される国税のことです。税額は、益金から損金を差し引いた課税所得に対し、所定の税率を乗じ、税額控除を適用した後の金額です。
法人税が課される対象としては、株式会社や有限会社、法人団体、協同組合などがあります。また、公益法人や人格のない社団法人などの収益事業から生じた所得も対象です。
法人税の申告および納付については、定款で定めた年度ごとに算出し、各事業年度終了日の翌日から2ヵ月以内に行わなければなりません。通常は期限内に法人税を申告・納付しなかった場合は、延滞税が課される点に注意しましょう。
企業経営に与える影響
法人税対策を行うことで、企業経営にはプラスの影響が生まれます。例えば、税金が抑えられれば、当初は納付予定だったお金を投資に回すことができるでしょう。資金が増えれば投資や人材育成、福利厚生の充実等に回せるので、企業全体の成長や人材確保に期待できます。
資金が多ければ企業の信頼度向上にも繋がり、取引先や顧客からの信頼を得ることもできるでしょう。競争が激化する市場において、法人税対策の重要性はますます高まっています。
【法人向け】節税対策|買うものや導入するもの
法人が活用できる節税対策にはさまざまな方法があり、正しく実践することで税負担の大幅な軽減が可能です。
具体的には、経費を増やして課税所得を減らす方法が一般的ですが、この他にもさまざまな戦略があります。以下の記事ではさまざまな対策方法についてまとめているので、興味のある方はぜひご覧ください。
【中小企業向け】節税対策の方法
中小企業におすすめの節税対策は以下の11種類です。
- 役員報酬の設定
- 出張手当・決算賞与の支給
- 役員社宅制度の導入
- 未払費用を年度内に計上する
- 法人保険に加入する
- 共済に加入する
- 設備投資・人材投資を行う
- 不要な固定資産を見直す
- 少額減価償却資産の特例を利用する
- 福利厚生を拡充させる
- 別会社を設立する
それぞれの特徴について解説するので、経営者の方はぜひ参考にしてください。
役員報酬の設定
役員報酬は損金計上が可能です。役員報酬を増やすとその分だけ損金が増えることになるため、最終的に会社の所得も減らすことができます。
役員報酬を設定する場合は、企業の業績や役員の職務内容、業務態度などを総合的に判断することが必要です。
また、 役員報酬は一定額でなければ損金不算入となる場合があります。
なお、役員報酬は株主総会での承認が必要です。設定する際は必要な手続きを適切に踏むよう注意しましょう。
出張手当・決算賞与の支給
出張手当や決算賞与を支給するのも方法の一つです。出張手当や決算賞与は経費計上できるので、いずれも会社の所得を減らすことに繋げられます。出張が多い企業であれば、手当の支給によって社員の金銭的負担を予防できるでしょう。決算賞与も、社員にとっては臨時賞与に該当するので、モチベーションや企業貢献度の向上に期待できます。
ただし、決算賞与を未払計上する際は、下記の条件を満たさなければ認められません。
- 事業年度終了までに従業員全員に賞与額を伝えること
- 翌事業年度の最初の1ヵ月以内に支給すること
- 決算賞与の額を未払金として経費計上すること
決算賞与を従業員全員に支払うことは企業にとって多額の支出となります。キャッシュフローの安定を保つためにも、会計のバランスには注意してください。
役員社宅制度の導入
会社名義で契約した賃貸住宅を、企業の役員に社宅として貸し出す制度も有効です。社宅を利用する場合、役員は家賃の一部を企業に支払います。企業は役員から受け取った家賃を雑収入で処理しましょう。
貸主に支払った家賃を地代家賃として経費計上すれば、地代家賃と雑収入の差額分が経費となります。差額分が増えればその分だけ法人税の負担軽減に繋げることが可能です。
関連記事:【法人企業向け】社宅を経費にして節税対策をする方法
未払費用を年度内に計上する
年度内に支払いが終わっていない費目でも、未払費用として処理すれば年度内の損金として計上することができます。未払費用とは、期末時点で支払いの済んでいない費目でも、費用が生じているものと考えて良い金額のことです。例えば、従業員の給与や社内の水道光熱費、通信費などが挙げられます。
本来、損金として計上すべき費用を正しく計上できていないことによって納税額を増やしている可能性も否めません。このようなことにならないよう費用はこまめに計上し、確認することをおすすめします。
関連記事:法人で利益が出過ぎた場合はどうする?知っておきたい節税対策を一挙にご紹介!
法人保険に加入する
法人保険の加入によって、保険料の全額またはその一部を損金計上できるので、法人税の節税に繋げられます。法人保険とは、法人が契約可能な生命保険や損害保険、医療保険等のことです。
各種保険では、経営者・役員の身に万が一のことが起こったとき、のこされた家族のために生活資金として充当したり、業務が安定するまでの事業継続資金として活用したりすることが可能です。
法人保険の加入には、さまざまなメリットが享受できます。例えば、法人に万が一のトラブルが生じた場合に、手厚い保障を受けることができる等です。保険によっては解約返戻金を受け取ることができるものもあるので、上手に活用すれば資産の増加にも繋げられるでしょう。
関連記事:保険は節税になる?ならない?賢い選択で節約しながらリスク管理をしよう
設備投資・人材投資を行う
社内設備を買い替えたり、人材投資に回したりするのも効果的です。設備投資の場合、中小企業経営強化税制という制度を活用することで、特別償却や税額控除を受けることができます。人材投資の場合も、賃上げ促進税制という制度の活用によって節税に繋げることも可能です。
ただし、いずれも条件や期間が決められていることが多いので、利用に際しては税理士などの専門家に問い合わせることをおすすめします。
不要な固定資産を洗い出す
長期間使っていない固定資産があれば、決算の前に売却・廃棄することも検討しましょう。簿価と比較して安く売却し、売却損・廃棄によって除却損が生じた場合、損金計上することで法人税の節税に繋げられます。
土地や建物等の固定資産税が発生する固定資産も、売却によって固定資産税の納税額を減らすことができるでしょう。
少額減価償却資産の特例を利用する
少額減価償却資産の特例の利用によって、税負担の軽減が見込まれます。この特例は中小企業が30万円未満のものを購入した場合に、一括で経費計上できる特例です。
10万円未満のものを購入した場合であれば、消耗品費として一括での経費計上が可能です。しかし、10万円以上のものを購入した場合だと、一度、資産計上し、減価償却を用いて数年に分けて経費計上する必要があります。
少額減価償却資産の特例を利用すれば、10万円以上のものでも30万円未満であれば購入時の経費計上が可能です。ただし、利用の際は法人税の申告書に明細の添付が必要になります。書類に不備があった場合、経費とは認められません。提出の際は書類内容に不備がないかを確認するようにしましょう。
福利厚生を拡充させる
福利厚生を拡充させるのもおすすめです。福利厚生の拡充によって損金として計上できる部分が増えるので、法人税の負担を抑えることができます。福利厚生が充実すれば、社員の意欲向上に期待でき、企業貢献度アップも見込めるでしょう。
ただし、福利厚生の内容には注意が必要です。特定の社員が対象であったり、社内規程が整備されていなかったりした場合は、損金として認められません。
別会社を設立する
別会社の設立も法人税の節税に有効です。資本金が1億円以下の子会社を設立した場合、年間800万円以内の所得については法人税・事業税の軽減が見込まれます。
ただし、子会社の実態がなかったり、親会社との関係性があいまいだったりすると、税務署から申請を否認されかねません。別会社の設立に際しては、税理士等の専門家に相談することをおすすめします。
節税対策における注意点
節税対策にはさまざまな方法がありますが、中には注意しなければならない点もあります。過度な節税対策だと、税務署から指摘を受けたり、追徴課税になったりするなど、リスクについても押さえておくことが大切です。
節税と脱税の境界を理解する
節税は合法的に税負担を軽減する行為ですが、一歩間違うと脱税に繋がる可能性があります。特に曖昧な手法や実態のない取引は税務署に否認されるリスクが高まります。
「この方法、本当に大丈夫?」と迷ったら、税理士などの専門家に相談するのが賢明です。合法的な枠内で、企業に最適な方法を選びましょう。
節税で財務体質を崩さない
節税のために無理な投資や支出を行うと、かえって企業のキャッシュフローが圧迫されることも。例えば、設備投資による節税を検討している場合、その効果が本当に会社の利益につながるかを慎重に見極める必要があります。
節税は「将来への投資」でもありますが、目先の税金を減らすことだけに囚われない視点を持ちましょう。
税法改正を見逃さない
税法は頻繁に改正されます。昨日まで有効だった節税策が、今日からは使えないことも。少額減価償却資産の特例や賃上げ促進税制など、制度の適用期限や条件を常に確認しましょう。
税制改正を定期的にチェックし、新たな節税のチャンスを見逃さないのも、企業経営者の重要な役割です。
記帳と書類整備は節税の基本
どんなに優れた節税策も、記録や書類が整っていなければ意味を成しません。契約書や領収書、帳簿などの整備が不十分だと、税務調査で疑問を持たれる可能性があります。
また、未払費用や福利厚生費の計上など、細かな部分まで正確に記帳することが信頼性を高める鍵です。日頃から「税務調査に耐えうる」書類管理を心がけましょう。
税務調査を想定して備える
節税を積極的に行う法人は、税務署の目に留まりやすくなる傾向があります。しかし、透明性が確保され、適切な手続きを踏んでいれば問題ありません。
事前に税務調査を意識して、根拠資料を揃えておきましょう。特に役員報酬や未払費用の計上、法人保険などは重点的に確認される項目です。税務調査は避けられませんが、しっかり準備していれば恐れる必要はありません。
なお、節税対策における注意点は、以下の記事でまとめています。節税対策を検討中の経営者の方も、ぜひこちらも併せてご覧ください。
関連記事:法人税の節税対策とは?税金を減らすには何をすればいい?注意点とは
法人の税金対策のまとめ
法人の税金対策は、適切な計画立案と長期的な視点を持つことが大切です。また、税制改正の把握や専門家である税理士のアドバイスを活用することで、効率的な節税と安定した成長を目指せます。
自社の経営状況に見合った節税対策を見極めるためにも、この機会に小谷野税理士法人へご相談ください。