学生アルバイトは社会経験を積みながらお金を自分で稼ぐことができ、学生が社会人を経験できる良い機会といえます。しかし、一生懸命アルバイトに時間を割いた結果、バイト代が年間130万円を超えてしまったという人もいるかもしれません。ここでは、うっかりバイト代が130万円を超えてしまった場合はどうなるのかという点や、勤労学生控除について解説します。
目次
学生バイトが知っておくべき「年収の壁」
アルバイトをするならばたくさんお金を稼ぎたいと考える人も多いのではないでしょうか。しかし、学生バイトでお金を稼ぐ場合、「年収の壁」について知っておかなければ、後で後悔する可能性があります。
学生バイトが知っておくべき2つの「年収の壁」について解説します。
103万円の壁
ひとつ目の年収の壁は、「103万円」です。
1年間のアルバイト代が合計103万円を超えると、所得税が課税されます。 そうすると、 年収103万円を超えた部分が所得税の課税対象 になり、納税義務が発生します。
また、年齢19歳以上23歳未満で収入103万円以下の子供がいる扶養者は、 特定扶養親族に該当し 年間63万円の所得控除を受けることが可能です。
しかし、年収が103万円を超えると、学生であったとしても家族の扶養から外されてしまいます。親は特定扶養親族の控除を使えなくなるため税金の負担が大きくなり、家計に影響する可能性があります。
130万円の壁
103万円の壁を越えた次の壁は、130万円の壁です。
1年間のアルバイト代が合計130万円を超えると、社会保険の加入義務が生じます 。
一般的に学生は家族の扶養に入っており、扶養者の社会保険に加入し、社会保険料は免除されている状態です。しかし、年収が130万円を超えれば、家族の扶養から外れ 自身の社会保険料を支払う可能性があります。
社会保険に関しては、勤務先の人数などによって加入条件を満たす可能性があります。
年収の壁を越えた場合に検討すべき勤労学生控除
バイト代が年間130万円を超えてしまった場合は、所得税と社会保険料の支払いが発生する可能性があります。そうすると、所得税と社会保険料を支払えば、バイト代の手取りは減ってしまうことになります。
ただし、勤労学生控除を利用すれば、税金を抑えることが可能です。勤労学生控除とはどのような制度なのでしょうか?
勤労学生控除とは
勤労学生控除は、勤労している学生のための控除制度です。一定の要件を満たす学生が、学校と仕事を両立できるように所得の控除を受けられます。
勤労学生控除の制度を利用する場合、控除される額は、一律で所得税額27万円 です。
つまり、103万円から所得税の課税対象になりますが、27万円が控除されるため、 130万円までが非課税 になります。
勤労学生控除を受けられる要件
勤労学生控除は誰でも認められるわけではありません。以下の要件を満たしている場合のみが適用されます。
- 勤労による所得がある
- 合計所得金額が75万円以下で、勤労所得以外の所得が10万円以下
- 特定の学校の学生、生徒である(高校や大学、専修学校、認定職業訓練を受ける人など)
特定の学校などに通う学生が、自分の力でアルバイトなどをして得た所得であれば、勤労学生控除を受けることができます 。
参考:国税庁「勤労学生控除」
勤労学生控除の申請方法
勤労学生控除を受けるには、年末調整もしくは確定申告による申請が必要です。
学生だから自動的に控除されるというわけではないので注意しましょう。それぞれの申請方法は、以下の通りです。
- 年末調整の場合
年末調整で申請する場合は、アルバイト先に勤労学生控除を受けたい旨を伝えるといいでしょう。
「給与所得者の扶養控除等異動申告書」に必要事項を記入して提出します。
記入する箇所は、事業者情報・本人情報・世帯主情報・配偶者の有無です。勤労学生に忘れずチェックを記し、提出してください。
- 確定申告の場合
アルバイトをしていれば、アルバイト先が年末調整を行ってくれることが一般的です。そのため、確定申告は必要ないというケースが多いでしょう。
しかし、年末調整が行われない場合もあります。複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、年末調整を行えるのは一か所のアルバイト先のみです。
それ以外のアルバイト先の分は、自分で確定申告を行わなければなりません。
そして、確定申告にて勤労学生控除も申請します。
確定申告で勤労学生控除を申請する場合、通学する学校の発行する証明書を求められることがあります 。
確定申告書に証明書を添付し、申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」の「勤労学生、障害者控除」の欄に27万円を記入します。また、申告書第二表の「勤労学生」という欄にも〇をつけます。
ただし、年末調整で勤労学生控除を受けている場合には、証明書は不要です。
うっかりバイト代が130万円超えた場合の税金はいくら?
学生がアルバイトの年間収入をうっかり130万円超えてしまった場合は勤労学生控除の活用を検討することが推奨されます。とはいえ、130万円を超えた部分には所得税が発生します。
所得税はどのように計算するのでしょうか?
勤労学生控除以外の控除について
所得税の計算を行う前に、まずは勤労学生以外に適用される控除について知っておきましょう。
まず、基礎控除として全ての人は無条件で48万円が控除されます。
さらに、給与を得ている人は給与所得控除が適用されます。名称に「給与」とあるものの、会社員だけではなくアルバイトでも適用される控除で、最低控除額は55万円です。
そのため、 基礎控除48万円+給与所得控除55万円+勤労学生控除27万円 で 年収130万円までは所得税が0円 になるという計算です。
所得控除に関する詳しい内容は、下記の記事を参考にしてください。
関連記事:【税理士監修】年末調整と確定申告の違いとは?両方が必要なケースや適用される所得控除を解説!
所得税の計算方法
所得税は累進課税方式になるため、収入ごとに税率が異なります。
税率は、以下の通りです。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円から330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円から695万円未満 | 20% | 42万7,500円 |
695万円から900万円未満 | 23% | 63万6,000円 |
900万円から1,800万円未満 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円から4,000万円未満 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 479万6,000円 |
例えば、アルバイトの年収が140万円で勤労学生控除を受けた場合に課税対象となる金額は、140万円−130万円(基礎控除+給与所得控除+勤労学生控除)=10万円です。
つまり、10万円×所得税率5%×復興特別所得税2.1%=5,100円が確定申告で納める所得税になります。
参考:国税庁「所得税の税率」
所得税以外の税金も発生する
アルバイトの年収が130万円を超えれば、家族の扶養から外れて自分で社会保険料を支払わなければなりません。
社会保険はアルバイト先で加入することもできるため、アルバイト先で加入すれば半分を会社が負担してくれます。
保険料は平均報酬月収によって金額が決まります。年収130万円であれば、130万円÷12カ月=11万円が平均報酬月額になるでしょう。
この平均報酬月額を基に、健康保険組合や協会けんぽが公開する保険料額表を見て保険料を計算できます。
うっかり130万円を超えてしまった場合の注意点
アルバイト代が130万円を超えても、勤労学生控除を受ければ所得税額を大幅に抑えることができます。
ただし、勤労学生控除で全てが解決するわけではありません。130万円を超えた場合には、他にも注意すべき点がいくつかあります。
うっかりアルバイト代が130万円を超えてしまった場合には、以下の点にも注意しましょう。
親の納税額が増えてしまう
学生の場合、親の扶養に入っていることが一般的です。16歳以上の子供を扶養している親は、年間最大68万円の扶養控除を受けられます。
しかし、 扶養している子供が年収103万円を超えれば、扶養控除を受けることができません 。なぜならば、103万円を超えた時点で子供は扶養から外されてしまうからです。
扶養控除を受けられなければ親の課税所得が増え、支払う所得税額が増えてしまいます。
子供は勤労学生控除を受ければ130万円まで非課税になりますが、親の納税額が増えるため、家族の納税額としては結果的に増える可能性があります。
親の扶養に入っている場合は、アルバイト代が103万円を超えた時点で相談が必要になるでしょう。
奨学金には収入制限がある
奨学金を受けている場合やこれから奨学金を受けたいという場合、親だけではなく子供も収入制限があるので注意が必要です。
例えば、日本学生支援機構の奨学金は、 学生本人の年収が100万円を超えた場合に、支援の金額が減ることがあります 。
せっかく学費のために頑張ってアルバイトで費用を稼いでも、奨学金が減ってしまって学費の支払いが厳しくなれば意味がありません。
また、奨学金の審査に通過して奨学金を受け取っている場合も、一定の収入を超えてしまうと奨学金がもらえなくなってしまう可能性があるので注意しましょう。
アルバイトを掛け持ちしていれば確定申告が必要
1箇所のアルバイト先で130万円の収入を得た場合であれば、そのアルバイト先の年末調整で勤労学生控除の申請が行えます。
一方で、 アルバイトを複数掛け持ちしていた場合は、自分で確定申告を行う必要があります 。
確定申告の手続きはマイナンバーカードがあれば、スマホやパソコンから手軽に手続きすることが可能です。
ただし、手続きは 2月16日から3月15日まで に行わなければなりません。期間内に手続きを行わなければ、追徴課税が課せられて本来よりも高額な税金を支払うことになります。
手続きの方法が分からない場合は税務署の窓口でも相談することができますが、確定申告の期限が近づいている時期には混雑しています。
確定申告は時間に余裕を持って準備しておくようにしましょう。
確定申告の方法は、下記の記事を参考にしてください。
関連記事:【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて
確定申告や税金の不安や疑問は税理士に相談しましょう
うっかりアルバイト代が130万円を超えてしまった場合、勤労学生控除を受ければ支払う所得税額を抑えることができます。
ただし、勤労学生控除は申請しなければ受けることができません。年末調整や確定申告で手続きを行いを行いましょう。
アルバイト代を多く稼いでしまった場合は、所得税だけではなく社会保険料や親の納税額にも影響を与える可能性があります。そのため、どれくらいまでアルバイトをしても問題ないのか把握しておくことが大切です。
確定申告や税金のことで分からないことや不安がある場合は、専門家である税理士に相談しましょう。
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