飲食店やオフィス、病院などの施設で欠かせない業務用エアコンですが、導入には多額の費用がかかってしまいます。しかし、国や地方自治体によって、省エネルギー・CO2削減・節電効果が高い設備投資に対する補助金が実施されていることをご存知でしょうか。各機関が実施している補助金を活用できれば、導入コストを大幅に抑えることが可能です。そこで、この記事では業務用エアコンに活用できる補助金について、詳しく解説していきます。
目次
業務用エアコンとは
補助金の対象となる業務用エアコンとは、飲食店やオフィスのような広い空間で使用されることが想定された、出力の大きなエアコンのことを指します。一般的な壁掛け型に加え、天井埋め込み型や天井吊り下げ型など、さまざまなタイプがあることが特徴です。
そのほか、業務用エアコンと家庭用エアコンには以下のような違いがあります。
| 業務用エアコン | 家庭用エアコン |
出力 | 1.5馬力~12馬力 | 約0.5馬力~3馬力 |
種類 | 壁掛け型・天井埋め込み型、他多数 | 壁掛け型 |
風量 | 大 | 中 |
耐久性 | 強 | 中 |
電源 | 単相200V/三相200V | 単相100V/単相200V |
設置工事の難易度 | 高 | 低 |
業務用エアコンと家庭用エアコンの最も大きな違いは「出力」です。家庭用エアコンは最大3馬力程度であるのに対し、業務用エアコンは組み合わせ次第で最大12馬力もの出力があります。14畳の部屋に壁掛け型のエアコンを設置する場合に2馬力程度が選定されることが多いことからも、業務用エアコンの最大出力がいかに大きいかがわかります。
また、業務用エアコンには「パッケージエアコン」と呼ばれるものがあります。このパッケージエアコンとは室内機と室外機がセットになっているタイプであり、1台の室外機で複数台の室内機を稼働できるのが特徴です。そのほかに「ビル用マルチエアコン」と呼ばれる商業ビルで使われるようなタイプもあり、業務用エアコンは設置する場所や用途によってさまざまな種類があります。
業務用エアコンの補助金とは
国や地方自治体が実施する補助金には、省エネルギー推進やCO2排出量削減を目的としたエアコンの導入を支援する制度があります。そのほかにも、新型コロナウイルスなどの感染症対策として、エアコンや換気設備を整える取り組みを支援する補助金も実施されています。業務用エアコンの補助金は、このような取り組みを検討している事業者に対して支給される補助金です。
業務用エアコンの導入を検討している方は、補助金を活用することで導入コストを抑えることができます。ただし、補助金を受給するにはさまざまな要件が設けられているため、公募要領をしっかりと確認しておきましょう。
業務用エアコンの補助金にはどんな種類がある?
大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業(環境省)
大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業とは、新型コロナウイルス感染症の拡大によって業績が悪化した飲食店など、不特定多数が集まる業務用施設を対象とした補助金です。感染症対策と同時に、業務用施設のCO2排出量削減を目的として支援しています。
補助対象事業となるのは「全熱交換型の換気設備の導入」および「高効率な空調設備等の更新」によって、「対象室内の換気量の増加」および「CO2排出量を削減」できる設備が対象となっています。
また、大規模感染リスクを低減するための高機能換気設備等の導入支援事業の概要は以下のとおりです。
管轄 | 環境省 |
執行団体 | 一般社団法人静岡県環境資源協会(SERA) |
補助上限額 | 2,000万円 |
補助率 | 2/3 |
なお、補助対象となる「不特定多数が集まる業務用施設」には、飲食店以外にもホテル・病院・百貨店・学校・図書館など、さまざまな施設が含まれます。明確な定義が定められているわけではないため、多くの人が出入りする幅広い施設が対象といえるでしょう。
業務用施設のエアコンや換気設備の導入・更新・追加を検討している場合は、本補助金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
中小規模事業所向け省エネ型換気・空調設備導入支援事業(東京都)
省エネ型換気・空調設備導入支援事業とは、高効率な空調設備や換気設備の導入に要する費用について、その一部を助成する制度です。都内で中小規模事業所を所有・使用している中小企業者等を対象に、換気の確保やCO2排出量の削減を目的としています。
また、省エネ型換気・空調設備導入支援事業の対象となるには、主に以下の要件を満たす必要があります。
- 都内で所有し、または使用する中小規模事業所における導入であること。
- 換気設備の導入により、1人当たり毎時30㎥以上の換気量が確保されること。
- 助成対象設備を導入する事業所について、工事完了時および工事完了の翌年度から3年間、地球温暖化対策報告書を提出すること。
そのほか、換気設備に加えて空調設備も対象とする際の要件も定められているため、公募要領をしっかり確認する必要があります。
なお、対象設備は以下のとおりです。
換気設備(新設・更新・増設) ※必須 | 高効率空調設備(更新のみ) |
① 高効率換気設備 ② 熱交換型換気設備 ③ 換気・空調一体型設備 | ① 電気式パッケージ形空調機 ② ガスヒートポンプ式空調機 ③ 中央熱源式空調機 ④ ルームエアコン |
助成上限額は1,000万円、助成率は対象経費の2/3以内となっており、活用できれば導入コストを大幅に抑えることが可能です。ただし、対象設備には細かい要件も設定されているため、活用を検討する際は注意しましょう。
創業促進事業補助(大阪府茨木市)
創業促進事業補助とは、大阪府茨木市内で初めて事業を開始する方や、創業後5年以内で事業拡大に取り組む方に対し、改築・改装工事費などを支援する補助金です。市内の商工業の振興と、地域経済の活性化を図ることを目的としています。なお、創業促進事業補助では天井埋め込み型の業務用エアコンに限り補助対象となっています。
創業促進事業補助には創業に関する要件に加え、申請時点の6か月前において必要資金の1/10以上の自己資金を有することなど、さまざまな要件が定められています。申請を検討する際は、すべての対象要件に該当しているか確認しておきましょう。
補助上限額は50万円、補助率は工事費の1/2にあたる金額まで補助を受けることが可能です。
省エネルギー設備導入支援事業(北海道)
省エネルギー設備導入支援事業とは、「ゼロカーボン北海道」の実現に向けて省エネルギーの促進を図るため、省エネルギー効果の高い設備の導入費用を支援する補助金です。補助対象者は道内に事務所や事業所がある法人を含む、複数事業者による共同体(コンソーシアム)となっています。
また、補助対象事業に該当するには以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 産業部門などの関連事業における省エネルギーの取り組みに対して、高い波及効果が期待される省エネルギー設備を導入する事業であること。
- 複数の事業者や団体が街区等の道内のエリアを対象に面的に取り組む事業、あるいは、サプライチェーンを構成する複数の事業者によって行う事業であること。
- 事業の進捗状況、課題、成果等を公表することができる事業であること。
- 省エネルギー効果を客観的に示すことができる事業であること。
- 他の道事業に採択されたことがない事業であること。
- 補助事業終了後、補助事業者自らが事業成果等の普及啓発等を行うものであること。
- エネルギー消費量について、設備導入前と比較して年率20%以上の削減効果が見込まれる事業であること。
これらの要件を満たしている場合、補助上限額1,000万円、補助率1/2まで支援を受けることが可能です。北海道の事業者で、高い省エネルギー効果が期待できる設備投資を検討している方は、公募要領を確認してみてください。
補助金に関する注意点
補助金と助成金の違いを理解しておこう
補助金と助成金は、どちらも国や地方自治体が実施している制度です。公的な資金が財源となっているため、受給するためには各制度で定められた要件をクリアする必要があります。では、両者には一体どのような違いがあるのでしょうか。
まず、補助金は予算や採択件数が明確に定められているものが多く、政策目的に沿った事業を行っていると判断されなければ受給することはできません。つまり、申請すれば誰でも受給できるわけではないという点に注意が必要です。ただし、補助金によっては大規模な予算が組まれているものもあり、審査を通過すれば多額の支援を受けられる可能性があります。
一方、助成金は申請要件を満たしていれば基本的に受給することができ、補助金と比較して受給までのハードルは低いといえます。その代わり、助成額は数十万円~数百万円と控えめである点が特徴です。
補助金と助成金にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、目的や事業の性質に応じて活用を検討していきましょう。
全額が補助金の対象になるわけではない
補助金を申請して無事採択されたとしても、対象経費の全額が補助されるわけではありません。補助金には「補助上限額」と「補助率」が定められており、対象経費の一部についてのみ支援が行われます。補助金でカバーできない部分については、別途資金を用意しなければならないことに注意しましょう。
余裕を持って申請を行う必要がある
補助金を受給するためには、事業計画書などのさまざまな必要書類を用意する必要があります。また、審査には1か月程度の時間を要する場合もあるため、余裕を持ったスケジュールで手続きを進めていかなければなりません。事前に補助金の内容をしっかりと確認し、早めに準備に取り掛かるようにしましょう。
補助金は工事が完了した後に給付となる
補助金は、申請して採択されればすぐに受給できるわけではありません。補助金は原則として後払いであり、対象経費の契約・工事が完了してから支給されます。つまり、補助対象経費について、いったん自社で立て替えておく必要があるということです。また、補助金には一般的に事業期間が定められており、期間外に支出した経費については補助を受けられない可能性があることに注意しましょう。
補助金が利用できない場合もある?
補助金の目的と利用の目的が異なる場合
補助金は、国や地方自治体が何らかの政策目的を達成するために実施される制度です。よって、補助金が創設された目的と申請者の利用目的が異なる場合、審査で落ちる可能性が高くなってしまいます。補助金の目的は公募要領に記載されているため、活用を検討する際は利用目的と合致しているか確認するようにしましょう。
同じ補助金を過去に利用したことがある場合
補助金によっては、過去に受給したことがある方は受給できない場合があります。また、受給できる回数が制限されなかったとしても、同一の事業者に偏らないよう審査で不利になる可能性が高いといえるでしょう。ただし、申請者が同じであったとしても、過去に受給した事業と異なる場合には採択されることもあります。
補助金の見つけ方
検索サイトを活用する
補助金を活用して事業をスムーズに進めていくためには、補助金の情報をいち早くつかむことが重要です。そのためには、各機関が実施している補助金を横断して検索できるサイトを利用しましょう。
例えば、中小企業向けの支援策を集めた「ミラサポplus」や、独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する「J-Net21」などの検索サイトがあります。自社の経営課題に合った補助金を検索したい場合は。このような検索サイトも活用していきましょう。
各自治体のホームページをチェックする
補助金に関する詳細を知りたい場合は、実施している各自治体のホームページもチェックしましょう。公募要領などが掲載されており、申請を検討している補助金の最新情報を確認することができます。補助金によっては各自治体のホームページでしか見つけられないものもあるため、活用できる補助金がないか確認しておくことをおすすめします。
自治体に直接問い合わせを行う
補助金の公募要領は複雑な場合が多く、文面だけではなかなか全容を理解することが難しいかもしれません。補助金の内容について不明点がある場合は、自治体に直接問い合わせてみましょう。利用の目的などを説明すれば、目的に合った別の補助金も紹介してもらえるかもしれません。
専門家に意見を聞く
補助金を検索したり、細かい内容まで確認したりする時間がないという方は、専門家に意見を聞くのがおすすめです。税理士などの専門家に相談することで、調査に要する時間を削減することができます。また、補助金によっては専門家との連携が不可欠なものもあるため、早い段階から専門家に相談しておいて損はないといえるでしょう。
補助金でわからないことを聞きたい場合や活用できる補助金を詳しく知りたければ専門家へ相談を検討
業務用エアコンの導入にコスト面の問題があった場合、この記事でご紹介した補助金を活用できれば、負担を大幅に抑えることができます。また、省エネルギー効果の高い業務用エアコンを導入することによって、社会貢献の一環にもつながるでしょう。どの補助金を活用すればいいのかわからないという方は、ぜひとも専門家への相談も検討してみてください