個人事業主としてこれから起業したいと考えても、起業した経験がなければ疑問や不安に思うこともたくさんあるでしょう。個人事業主として起業するには、さまざまな準備が必要です。準備を怠れば、起業後にトラブルや不利益なことが起こる可能性があります。個人事業主として起業することを相談できる窓口はあるのでしょうか?ここでは、個人事業主の起業相談できる窓口や、起業で準備すべきことや注意点などを解説します。
目次
起業する際の選択肢について
自分で事業を立ち上げて独立する場合、「個人事業主」もしくは「法人」のどちらかの起業方法を選択することが原則です。
個人事業主は、個人で独立をして起業する方法です。税務署に開業届を出せば個人事業主として事業を開始することができ、申請に費用はかかりません。
一方で、法人は法人格を取得するために、法務局での法人設立登記が必要です。「株式会社」や「合同会社」などが法人に該当します。
法人と個人事業主では、手続きや申請費用、税金の種類などに違いがあります。
起業直後は売上が安定しないことや、大きく利益を得られにくいことが予想されるため、個人事業主として起業するケースが多いです。そして、事業が軌道に乗ってきてから法人へ移行します。
個人事業主が法人成りする最適なタイミングについては、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:個人事業主の法人成りに最適なタイミング3つについて解説
個人事業主の起業相談ができる窓口
個人事業主として起業するにあたり、起業準備や起業後の運営に関すること、税務業務などさまざまな不安や疑問があるという方も多いのではないでしょうか。個人事業主として起業する場合に相談できる窓口には、さまざまな種類があります。
窓口に相談すれば、アドバイスや問題を解決するための専門家の紹介などを得ることができ、不安を解消した上で起業できるでしょう。相談したい内容に合った窓口を選択し、相談してみてください。
税務署
税務署では、個人事業主として起業するための手続きや、確定申告、税務業務に関することを相談できます。
個人事業主として起業すれば、所得税の納税が必要です。また、売上高の要件等を満たせば、消費税の申告も必要です。こうした税金の申告方法だけではなく、記帳方法や帳簿の保存方法などについても相談できます。
正しく納税できなければ追徴課税などのペナルティを受けることになるため、分からないことがあれば税務署で相談して適切に納税できるように準備しましょう。
税務署の相談は無料で利用することができ、面談や電話での相談が可能です。ただし、確定申告の時期は窓口が込み合うため、時期をずらして相談することを推奨します。
関連記事:【税理士監修】税務署とは?その役割とサービスや税理士との関係性についても解説
商工会・商工会議所
商工会・商工会議所は、地域の経済発展を目的としたサービスを提供する非営利団体です。
小規模事業者向けにさまざまな支援サービスを提供しており、会社の設立から経営ノウハウ、資金調達方法など開業に関することなら幅広く相談できます。税理士や弁護士などの専門家とも連携も行っている他、交流会なども開催しています。
商工会・商工会議所は事業の規模に関係なく相談できるため、個人事業主も相談窓口の利用が可能です。ただし、利用するには会員登録が必要になります。
地域で交流しながら事業を拡大していきたい場合や、地域に特化した事業などを行いたい場合に適した相談窓口といえるでしょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が株式の100%を保有している金融機関です。
資金調達が困難な中小企業や小規模事業者に対する支援や、新規開業のサポートを目的としている株式会社です。
そのため、民間の金融機関よりも融資の金利が低いことや、返済期間が長いなどの特徴があります。
日本政策金融公庫では、起業前に利用できる創業前支援という制度があります。個人事業主も利用することができ、事業計画の作成や資金調達、起業のための手続きなどを相談することが可能です。
こうした創業前支援は、中小企業診断士など資格を持つ担当者がつくので安心して相談できます。窓口相談だけではなく、オンラインや電話でも対応可能です。
よろず支援拠点
よろず支援拠点は、国が設置する中小企業や小規模事業主が経営相談できるセンターです。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営をしています。
起業から経営まで事業に関するさまざまな課題を相談することができます。専門のコーディネーターがアドバイスをし、必要に応じて提携する専門家や関係機関の紹介も受けられます。
全国各地に支援拠点が置かれており、住まいに最寄りの相談窓口を無料で利用できます。電話やメール、FAXで予約相談をします。
Plus One
Plus Oneは、スタートアップ支援を目的に政府系16機関によって創設されたプラットフォームです。
WEBサイトには「ワンストップ相談窓口」という相談申し込みが置かれており、名前の通り起業に関する相談をワンストップで行えるものです。
政府系16機関は各種専門分野が多岐に渡り、それぞれの機関の支援を受けることができます。相談内容は、起業だけではなく技術開発や、資金調達、起業マッチングなど幅広く対応可能です。
WEBサイトを確認すれば各機関から受けられる支援も一目で分かるため、事前に確認しておくとスムーズに相談しやすいでしょう。
国や各自治体の相談窓口
近年では、国や各自治体で開業を支援する動きが増えています。セミナーの開催や相談窓口の設置などがあり、無料で利用できることがあります。
セミナーに参加すれば、開業までの準備や知識、経営に関する基本などを学ぶことができるでしょう。相談会を兼ねているセミナーであれば、個別に相談に乗ってもらうことも可能です。
居住している地域によって受けられるセミナーや支援、相談窓口は異なるので、住まいの自治体のホームページや窓口に問い合わせてみましょう。
個人事業主の起業相談ができる専門家
個人事業主として起業する場合の相談は、公的機関だけではなく専門家に相談するという選択肢もあります。
専門家に相談すれば専門的な知識に沿ったアドバイスを得ることが可能です。また、依頼すれば、起業後も専門分野のサポートを得られます。
ここからは、個人事業主の起業相談ができる専門家について紹介します。
税理士
税理士は、税務に関することを相談できる専門家です。個人事業主として活動を始めると、確定申告や日々の税務・会計業務を自力でこなす必要があります。
適切に処理できていなければ、税金トラブルが起こるかもしれません。税金に関するトラブルは追徴課税で本来払うよりも多くの税金を支払うことや、周囲からの信用を失うなどのリスクがあります。
税理士に相談すれば、個人事業主として開業するにあたって必要な税金対策や会計処理、決算書類に関すること、確定申告など税務や会計に関する不安を解消できます。
そのまま依頼すれば、顧問税理士として税務業務を任せることができ、事業に集中できるようになるでしょう。
相談料は税理士事務所ごとに異なり、無料の場合もあれば、30分単位などで有料になる場合もあります。
関連記事:税金の相談はどこにすべき?無料で利用できる場所も紹介
司法書士・行政書士
司法書士・行政書士は、法律や登記に関する知識のある専門家です。起業に必要な書類作成などについて相談できます。
個人事業主が開業するための申請書は、簡単な書類なので自分で準備できるでしょう。しかし、特定の事業を行う場合は国や自治体に認めてもらうための「許認可申請」が必要です。
許認可取得ができないと開業できないため、専門家である行政書士に相談することが得策でしょう。
なお、許認可申請が必要な業種は以下の通りです。
【許認可申請が必要な業種】
- 飲食店
- 薬局
- 建設業
- 運送業
- 物品販売業
- 不動産業
- 農畜産物・水産物卸売業
- 食料品販売業 等
また、個人事業主から法人へ移行する場合の相談にも司法書士や行政書士は適しています。定款の作成や登記申請など法人の設立に必要な書類作成や手続きを任せることが可能です。
社会保険労務士
個人事業主でも事業によっては開業当初から従業員を雇うケースもあるでしょう。従業員の雇用に関する相談は、社会保険労務士が適しています。
社会保険労務士は、雇用や労働、社会保険に関する専門家です。従業員を雇用する際には労働基準法に違反しないように労働条件や賃金を決め、社会保険の手続きも行わなければなりません。こうした人事労務に関する相談や手続きの依頼を任せられます。
また、厚生労働省からの助成金を利用したい場合の相談も可能です。キャリアアップ助成金やトライアル雇用助成金など、一定の要件を満たしていれば利用できる助成金があります。
こうした助成金を受けるための条件を満たしているか否か相談することや、代理申請を依頼することもできます。
弁護士
弁護士は法律の専門家です。個人事業主として起業していくなかで何らかの法的トラブルが起こることもあるでしょう。例えば、取引先との契約に関するトラブルや、資金調達時のトラブルなどが考えられます。
こうしたトラブルが起こった際には自力で解決を目指すよりも、専門家である弁護士に相談することで解決に向けて適切な対処ができるようアドバイスを得られます。
取引先と契約を締結する際には、あらかじめ弁護士に相談しておくとトラブルを未然に防げるでしょう。
弁護士と一言でいっても得意な分野は異なるため、相談内容に応じて相談する弁護士を探すべきといえます。
起業相談をする前にやっておくべきこと
個人事業主として起業してから問題やトラブルが起こらないように、事前に起業に関する相談をすることは大切です。
しかし、相談内容が曖昧なものや、考えがまとまっていない状態で相談を受けても、明確なアドバイスは得られません。
適格なアドバイスを得るためにも相談前には、以下のことを準備しておきましょう。
疑問や質問内容を明確にしておく
個人事業主の起業相談ができる窓口や専門家は多数存在しますが、相談内容が曖昧では具体的なアドバイスを得られません。
「起業したいけど何をすればいいかわからない」など漠然とした内容ではなく、「会計処理の方法がわからないので専門家に任せたい」「資金調達を成功させるためのサポートを受けたい」など相談したい内容を具体化しましょう。
適格なアドバイスを得るには、現在の状況を正確に伝え、相談したい内容を具体的に話すことが大切です。
上手く話せないような場合には、あらかじめメモなどにまとめておくと良いでしょう。
事業計画を立てておく
事業計画を立てることは、起業の第一歩です。
事業計画とは、どのような事業を開業して、どのように運営していくのかを具体的に計画することを指します。
アイデアだけでは起業しても上手くいかない可能性があるため、リスク軽減のためにも事業計画を立てることが大切です。
また、適格なアドバイスを得るには、どのような事業をしていくつもりなのか起業について具体化しておく必要があります。とくに、以下の項目はきちんと明確にしておきましょう。
【事業計画において必要な項目】
- 事業内容
- 事業の目的
- ターゲット層
- 収益の見込み
- 必要な資金、調達方法
上記のような項目について検討し、事業計画書として書面にまとめます。
相談する前に事業計画をしっかり立てておきましょう。事業計画書に関する詳しい内容は、下記のページを参考にしてください。
関連記事:事業計画書とは?サンプルやフォーマットは無料で手に入る?書き方や記入例を解説
起業の流れや手続きについて調べておく
窓口や専門家で相談する前に、起業の流れや起業に必要な手続きなど自分で調べられる範囲内で調べておき、把握しておく必要があります。
こうした起業の流れや手続きについて知っておかなければ、窓口や専門家に具体的な相談ができません。また、調べれば分かるようなことを相談するのは、時間の無駄になってしまいます。
起業までには事業の設立や資金の準備などやるべきことは多く、時間は有効活用したいものです。
自分で調べたものの分からない部分があれば相談できるようにメモしておき、一度にまとめて窓口や専門家に相談すると良いでしょう。
起業の流れや手続きについて詳しいことを知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:起業の流れとは?いくらかかるか・起業のやり方や必要なことを詳しく解説!
税理士ならば設立からワンストップでの相談が可能です
個人事業主の起業相談できる窓口は、公的機関や専門家など複数存在しているため、これから起業しようと考えている方にとっては心強い支えになることでしょう。
相談先によっては相談できる内容や分野が限られてしまうため、あらかじめ相談内容をまとめておき、相談先を絞る必要があります。
事業計画をしっかりと立てて入念に準備をすれば、相談をしても具体的なアドバイスを得られやすいです。
小谷野税理士法人では、会社設立から税務業務や確定申告までワンストップでの相談が可能です。知識と経験の豊富な税理士が、分かりやすい説明と親身なサポートを行います。
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