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適格合併すると繰越欠損金はどうなる?全額引き継げるケースや税務・会計まとめ

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適格合併すると繰越欠損金はどうなる?全額引き継げるケースや税務・会計まとめ

企業の合併には「適格合併」と「非適格合併」があり、適格合併に該当すれば税務上の大きなメリットがあります。例えば資産・負債の引継ぎにおいて帳簿価額で処理できるため、含み益に課税されることなく合併が可能です。さらに、繰越欠損金を引き継げる場合もあり、将来的な税負担の軽減につながります。本記事では、適格合併の定義や要件、繰越欠損金の取り扱い、会計・税務処理のポイントをわかりやすく解説します。

適格合併とは?

適格合併とは、税法上の一定の要件を満たす会社合併のことです。このような合併が「適格」と認められると、税務上でいくつかの優遇措置が受けられます。

例えば引き継がれる資産や負債は時価ではなく、もとの帳簿に記載された金額(帳簿価額)で引き継げます。これにより、資産の値上がり分(=含み益)に対する法人税の課税を、将来に先送りすることができるのです。

また、被合併会社が過去に出した損失(=繰越欠損金)を、合併後の会社でも引き継いで使える可能性もあります。これは、所得がでたときに税金を抑えるために非常に有利な制度です。

なぜこのような税務上のメリットが認められるのでしょうか。というのも適格合併は「単なる会社の合体」ではなく「合併前と変わらず事業が継続している」とみなされるためです。

つまり、合併を経ても実質的な事業活動は続いているため、税務上もそれを尊重するという考え方が前提にあります。

ただし適格合併として認められるには、「合併によって実質的な経済内容が大きく変わっていないか」といった観点から、いくつかの厳しい条件を満たす必要があります。

関連記事:合併と買収の違いとは?種類やそれぞれのメリット・デメリットについて解説

繰越欠損金とは

繰越欠損金とは、過去の損失を将来の所得と相殺できる制度です。法人税は事業年度ごとに計算されるため、たとえ前年度が赤字でも、当期が黒字なら法人税が発生します。

この損失を「欠損金」といい、青色申告をしている法人はこの欠損金を最大10年間繰り越すことが可能です。(平成30年4月1日以前開始の事業年度は9年間)

繰越欠損金を活用すれば、将来の所得と相殺することで法人税を軽減できます。例えば利益が200万円の企業に15%の法人税がかかる場合、通常の税額は30万円です。しかし、繰越欠損金が100万円あれば、課税所得は100万円となり、法人税は15万円に抑えられます。

合併すると繰越欠損金はどうなる?

繰越欠損金を有する会社が合併された場合、原則としてその欠損金は消滅し、合併後に利用することはできません。しかし、合併が「適格合併」に該当する場合には、被合併会社の繰越欠損金を合併後に引き継げる可能性があります。

関連記事:M&Aによって発生する税金はなに?税率についても解説

繰越欠損金を制限なく引き継げるケース

適格合併が成立した場合、一定の要件を満たせば、被合併法人の繰越欠損金を合併法人が引き継ぐことが可能です。ただし、合併時の状況によっては、全額を引き継げない場合もあります。

ここでは、繰越欠損金が制限なく引き継げる代表的な4つのケースをご紹介します。

区分

条件の概要

補足・留意点

① 5年超の継続的な支配関係

合併事業年度の期首時点で、合併法人と被合併法人との間に5年超の支配関係があること

「5年」の起算日は、適格合併が行われた事業年度の開始日の5年前の日

② 共同事業に該当

両法人の事業が相互に関連しており、合併が「共同事業」として認められること

自己判断は避け、法令に基づいた専門家の確認が必要

③ 時価純資産超過額 > 繰越欠損金

支配関係発生の直前事業年度末の時価純資産超過額が、繰越欠損金を上回ること

含み益相当額(資産の時価-負債)で判定

④ みなし共同事業要件を満たす

以下の条件を満たす場合が該当

①事業関連性

②事業規模

③被合併法人の事業継続

④合併法人の事業継続

⑤特定役員の引継ぎ

→①~④を全て or ①+⑤を満たせば適用可

支配関係5年未満でも適用可能

法改正による適格合併等に係る欠損金の制限措置について

平成29年度税制改正大綱によって、適格合併等に係る欠損金の制限措置について以下のような見直しが行われました。

改正前

改正案

以下の欠損金の繰越し、引継ぎができない

  • 親会社との支配関係が発生する前の事業年度に発生した欠損金
  • 支配関係が生じた後に発生した欠損金のうち、土地や有価証券などの特定資産の譲渡による損失に相当する欠損金部分

以下の欠損金の繰越し、引継ぎができない

  • 支配関係が発生した事業年度の「開始日から支配関係が実際に生じた日までの間」に発生した、資産売却などによる損失を原因とする欠損金

今回の改正により変更された重要なポイントは以下の通りです。

  • 支配関係が発生した事業年度の開始日から実際に支配関係が生じた日の前日までに発生した「特定資産の売却による損失」を原因とする欠損金にも、引き継ぎの制限がかかる
  • 「特定の株主に支配されている会社が持つ欠損金の引き継ぎ制限」や、「そのような会社が行った資産の売却による損失を経費として認めない制度(損金不算入)」についても、同様の見直しが行われる

適格合併の仕訳方法

仕訳のブロックと電卓

適格合併では、被合併法人の資産や負債を帳簿価格(簿価)でそのまま引き継ぐため、仕訳処理は比較的シンプルになります。

ただし、合併は通常の取引とは異なり、多額の金額が動く非日常的な取引です。そのため合併する企業同士やその株主においても正確で慎重な会計処理が求められます。

以下では、適格合併の仕訳方法における主要なポイントをわかりやすくご紹介します。

合併法人(存続会社)の会計処理

被合併法人の帳簿をもとに、科目ごとにそのまま引き継ぐのが基本です。合併後の存続会社の会計処理は、合併形態(適格合併、非適格合併)や、合併の対価(株式、現金など)によって異なります。

合併法人では消滅会社の資産・負債の引き継ぎ(適格合併の場合は簿価)が行われます。また被合併法人の資産・負債を、貸借対照表の帳簿価額に基づいて引き継ぐため、対価と純資産の差額によるのれんや負ののれんは発生しません。

被合併法人(消滅会社)の会計処理

被合併法人は、合併により法人としての存在が消滅するため、すべての資産・負債・純資産を帳簿から除却する処理が必要です。この処理を行うと、被合併法人の帳簿上の残高は最終的にゼロになります。

株主側の会計処理

合併によって株主が新たに合併法人の株式を受け取ると、保有していた被合併法人の株式は消滅し、合併法人の株式に置き換わる仕訳が発生します。

特に、法人株主の場合は、「関係会社株式」や「投資有価証券」の消滅・取得の振替処理が求められます。なお、適格合併であれば、株式の振替に伴う課税は発生しません。

関連記事:吸収合併時の税務処理|仕訳や申告のポイントを解説

適格合併における税務処理におけるポイント

企業の財務担当者にとって、合併に伴う税務処理や仕訳の対応は欠かせない知識です。税務上のリスクを回避しつつ、財務内容を適切に整えるためのポイントを確認していきましょう。

法人税の処理

法人税の処理におけるポイントは以下の通りです。

株式や資産の評価

被合併会社の株式や引き継ぐ資産は正確に評価し、帳簿に反映させる

繰越欠損金の確認

引き継いだ繰越欠損金は、将来の税負担を軽減する重要な要素なので必ず確認する

確定申告と税務調整

合併前の会社は最終の確定申告を行い、合併会社は帳簿価額や資本のズレを確認して税務調整をする

帳簿価額での引継ぎ

譲渡された資産・負債は帳簿価額で引き継ぎ、会計と税務にズレがある場合は調整する

所得税の処理

所得税の処理におけるポイントは以下の通りです。

役員報酬と資本金の調整

被合併会社の役員報酬や資本金を正しく把握し、合併後の処理に反映させる

給与体系の引継ぎ

従業員の給与制度を新会社に正しく引き継ぎ、給与支払報告書を作成する

源泉徴収の確認

合併後の組織・報酬体系に基づき、源泉徴収の計算ミスがないように注意する

適格合併を行う際には、法人税・所得税それぞれの観点から正確な税務処理が求められます。

被合併会社の資産・負債の引継ぎや繰越欠損金・確定申告への対応に加え、役員報酬や給与体系など広範な確認が必要です。税務上のリスクを回避して合併後の業務を円滑に進めるためには、これらのポイントを正しく理解しておきましょう。

適格合併の会計処理・仕訳におけるポイント

以下では、適格合併における会計処理・仕訳のポイントを表形式で分かりやすくまとめました。

項目

内容

補足説明

資産・負債の引継ぎ

簿価でそのまま引き継ぐ

被合併法人の帳簿金額を基に、勘定科目ごとに同額を移す

のれん・負ののれん

発生しない

簿価引継ぎが原則のため、評価差額が生じず計上不要

被合併法人の帳簿処理

完全に締める

資産・負債・純資産の除去、減価償却や未払税金の確定処理が必要

帳簿の管理

原則として申告期限から7年間の保管が必要

申告手続きが完了するまで帳簿を保存し、税理士と連携して対応

勘定科目の表記

合併法人に統一

表記ゆれがある場合も、合併法人の科目名に合わせて統一

適格合併における税務処理はもちろん、帳簿の保管や勘定科目の統一といった実務対応も重要です。日頃から正確な仕訳と管理ができていれば、合併後の会計業務もよりスムーズに進められるでしょう。

非適格合併にすべきケース

非適格合併の方が税務上有利になる場合があります。以下では、非適格合併の方が有利なケースを紹介しています。

ケース

非適格合併が有利な理由

含み損のある資産を保有している場合

含み損と利益を合併前に損益通算できるため、節税につながる

適格合併では損失の制限がある場合

適格合併だと、支配関係や再編から一定期間内の損失は損金算入できない

合併法人に多額の繰越欠損金がある場合

適格合併でも繰越欠損金の引継ぎには条件があり、利用に制限があるため

状況によっては非適格合併の方が柔軟に損益通算できるため、どちらを選ぶべきかは個別に慎重な判断が必要です。もし判断に迷うことがあれば、税理士などの専門家への相談も検討しましょう。

まとめ

適格合併とは、一定の条件を満たすことで税務上の特例が認められる合併形態です。資産や負債を帳簿価額で引き継げるほか、条件を満たせば繰越欠損金の引継ぎも可能となります。

税金の繰延べや節税といったメリットがある一方で、適格要件を満たさない場合や、非適格合併の方が有利なケースも存在します。

また、会計処理や税務対応では、合併法人・被合併法人・株主それぞれの視点から正確な処理が求められます。制度への理解を深め、適切な判断と手続きを行うためには、税理士など専門家のサポートも活用しましょう。

小谷野税理士法人では、適格合併の税務会計処理に特化した税理士が在籍しています。適格合併における税務・会計処理でお悩みのことがあれば、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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