修正申告とは、実際より少なかった申告税額を、期限後に直す手続きです。増えた額と納付日までの期間に応じて、延滞税も発生します。ですが追加の額が少なかったり、納付が早かったりすれば、延滞税がゼロになるケースも。この記事では、修正申告に伴う延滞税の算出方法や、勘定科目などをお伝えします。
目次
修正申告で延滞税がかかる?かからないケースも
修正申告すると、基本的には延滞税も発生します。
修正申告とは「過少な申告を直す手続き」
修正申告とは、実際より少なかった申告税額などを、期限後に直す申告です。
税務署から連絡が来る前に自ら修正申告すれば、連絡が来た後にするのと比べて、ペナルティが軽くなります。余計な出費を抑えるためにも、ミスに気付いたらすぐに修正するのがおすすめです。
国税通則法第19条では、以下のケースで修正申告できると規定しています。
- 申告税額が実際より少なかった
- 赤字の金額を実際より多く申告した
- 還付金を実際より多く受け取った
例えば確定申告書の提出後(申告期限後)に経費のミスに気付き、納める金額が少なかったと判明したら、修正申告します。
なお、申告税額が多かった際に行う「更正の請求」とは異なるのでご注意ください。
修正の手順は下記の記事をご確認ください。
関連記事:【税理士監修】確定申告が間違っていたときの修正申告のやり方・流れ
延滞税とは「期限を過ぎて税金を納めた事実に対する利息」
延滞税とは、納付が遅れると科される、いわば利息のような税金です。税金は、決められた期日までに納めるよう法律で決まっています。よって、納付が遅れると、延滞税が日割りで発生します。
修正申告によって追加の納付が生じると延滞税も発生します。増えた分は、遅れて納めた扱いになるためです。
参考:延滞税について|国税庁
修正申告でも延滞税がかからないケース
修正申告をしても、延滞税が発生しないケースも存在します。延滞税は、修正で増えた税額と、延滞期間、そして利率で算出します。数値によっては延滞税がゼロまたは納付不要になるケースがあるのです。
例えば以下のようなケースだと、延滞税は不要です。
ケース | 理由 |
修正後に追加税額が発生しない | 納めるべき税額が変わらなければ、延滞税は発生しない。 例えば売上と経費の両方で申告漏れがあり、結果的に課税所得が変わらなかったときなど。 |
延滞税が1,000円未満である | 延滞税額が1,000円未満だと納付不要。 増えた税額が少なかったり延滞日数が少なかったりすると発生しうるケース。 (計算式は後述の章で解説) |
「ミスがあっても延滞税がなければ、修正しなくてもいいのでは」と思うかもしれません。しかし申告にミスがあるなら、税額が変わらなくても修正するのがおすすめです。
放置して税務調査で誤りを指摘されると、ペナルティが科されるリスクがあるためです。また、翌年以降の申告にもズレなどの悪影響が出るおそれがあります。
修正申告に伴う延滞税の計算方法は?加算税にも注意
ここでは、計算方法を見てみましょう。ケースによっては、延滞税の他に加算税もかかるのでご注意ください。
基本の計算式は「未納額×利率×日数÷365」
延滞税は、未納の税額と、納期限からの日数、そして年ごとの利率によって変動します。ただし修正申告の場合は計算期間の特例があります
一般的な延滞税の算出方法は下記の記事をご確認ください。
期限から1年以上経って修正申告しても延滞税は1年分のみ発生
期限から1年以上経ってから修正しても、延滞税がかかるのは最大366日分です。
自主的な修正を促すため、自主的な修正申告の場合は納期限から1年を超えた期間は、延滞税の対象から除外される特例があります。この特例により、過去のミスに気付き正直に手続きした納税者の負担が過剰にならずに済んでいます。
例えば2022年分の確定申告(納期限:2023年3月15日)の修正を2025年6月にすると、期限から2年以上経っていても、通常は延滞税は366日分だけです。ただし、納付完了までに日数がかかると延滞税がかかる恐れがあるため注意しましょう。
ただしこの延滞税の軽減特例は、正直に申告し直した人のための制度です。税務署からの連絡を受けた後に修正したり、悪質な不正行為があったりすると、特例が適用されません。
参考:延滞税の計算方法|国税庁
税務署からの連絡を受けた後に修正申告すると加算税が発生
税務署からの連絡が入る前に修正すれば過少申告加算税は発生しません。一方、税務署から連絡が来た後だと、過少申告加算税の対象になります。
過少申告加算税とは、修正申告で増えた税額に一定の割合で課されるペナルティです。一定の割合とは以下の通りです。
修正申告のタイミング | 過少申告加算税の割合 |
税務調査の事前通知を 受ける前 | 0%(加算税なし) |
税務調査の事前通知を 受けた後 | 5〜10% |
税務調査を受けた後 | 10〜15% |
参考:確定申告を間違えたとき|国税庁
参考:加算税の概要|財務省
表中の「税務調査」とは、税務署の職員などが、申告が正確かチェックする調査です。税務調査が行われる前には、職員から通知が入ります。その後、調査員が事業所や自宅にやってきて、帳簿や書類を調べます。
申告ミスを発見したら、税務署が行動を起こす前に自ら修正するのがベストです。それにより加算税を回避でき、余計な負担を減らせます。
加算税の詳細は下記の記事をご確認ください。
関連記事:追徴課税とは?加算税の種類や計算方法、対象期間について解説
税務調査の詳細は下記の記事をご確認ください。
関連記事:税務調査とは?どこまで・何を調べる?流れや個人・法人の対応方法などについて詳しく解説
修正申告に伴う延滞税の納付方法
修正申告の際は、①修正申告書の提出、②追加の税金の納付、③延滞税の納付を3点セットで自主的に行いましょう。納付書が届くまで待つのではなく、自ら早めに対応することで延滞税の負担も抑えられます。
延滞税は、所得税や消費税と同じ「国税」に分類されます。そのため、確定申告などと同じく納付書が自動的に届くことはなく、自分で計算して納付するのが基本です。「納付書が届くかな」と待っている間も延滞税は加算されていくため、放置してはいけません。
納付方法も他の国税と共通しており、キャッシュレス納付も現金納付も選べます。納付手段の詳細は下記の国税庁ホームページをご確認ください。
例えば以下のモデルケースだと、納付する金額は30万1,200円です。
【モデルケース】
2023年の確定申告を修正するケース(期限内申告の自主的修正)
【前提条件】
- 本来の納付期限:2024年3月15日
- 修正申告の提出日:2024年5月15日(=2ヵ月遅れ)
- 修正申告での追加税額:30万円
- 納付日:修正申告提出と同日(5月15日)
- 2024年の延滞税利率:2.4%(2ヵ月以内)
【計算】
延滞税
=未納額×利率×日数÷365
=30万円×0.024×61日÷365
≒1,203円(1円未満切捨て)
→延滞税額の100円未満は切り捨てるので、納めるべき延滞税額は1,200円
【納付金額】
修正申告での追加税額(未納額)+延滞税
=30万円+1,200円
=30万1,200円
【納付の流れ】
- 修正申告書の提出(税務署またはe-Tax)
- 納付金額(追加税額+延滞税)を計算し、納付手段を選んで納付
なお、税務署から連絡を受けた後の修正申告の場合は、納付すべき金額を事前に税務署に確認してください。過少申告加算税が発生している場合があります。
納付した延滞税の勘定科目は「租税公課」だが損金計上はNG
延滞税は「租税公課」として仕訳されますが、経費(損金)にはできません。延滞税はペナルティですので、事業運営に不可欠な支出とは認められず、経費計上や損金算入の対象外とされています。
帳簿に記録する際は、他の損金算入可能な税金(自動車税・登録免許税など)と混同しないよう注意しましょう。例えば、補助科目や備考欄に「延滞税」と明記しておくなど対策をします。
個人事業主の場合は「事業主貸」でも処理できます。なお、プライベートな資金で延滞税を支払った場合は、帳簿への記載は不要です。
参考:損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期|国税庁
参考:租税公課|国税庁
損金算入できる税金とできない税金の違いについて、詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:租税公課とは?個人事業主・法人のケースや計算方法をわかりやすく解説
修正申告に伴う延滞税でお困りの際はご相談ください
この記事では、修正申告に伴う延滞税の計算方法や納付方法などについて解説しました。
修正申告の場合、追加の税額が生じると、追加税額と納付日までの期間に応じて延滞税もかかります。ただし、追加税額が少なかったり、納付が早かったりすれば、延滞税を納めなくてもよいケースもあります。
一方で、申告内容の誤りを放置し、税務署から連絡が来てしまうと、過少申告加算税もかかります。その上、放置した分の延滞税も日割りで加算され、結果的に税負担が大きくなってしまいます。
「申告した内容が正しかったか」「修正申告が必要かもしれない」などとお悩みの方は、ぜひ税理士にご相談ください。税の専門家の視点から申告内容を確認し、必要に応じたサポートをいたします。これにより、延滞税や加算税を最小限に抑えられます。