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海外赴任者の所得税は会社負担?確定申告の必要性や海外転出の手続きを解説

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海外赴任者の所得税は会社負担?確定申告の必要性や海外転出の手続きを解説

海外赴任を控えた方にとって、もっとも気になるテーマの1つが「所得税」の扱いです。日本では累進課税が採用されており、所得が増えるほど税率が上がりますが、国外では制度や税率が異なることが一般的です。本記事では、日本と海外の所得税制度の違いを踏まえ、海外赴任者の所得税の扱いが自己負担か会社負担かどうかについて解説します。海外赴任を予定している方は、ぜひ参考にしてください。

日本と国外の所得税の違い

所得税は給与や事業所得に対して課される税金です。日本では所得が増えるほど税率が上がる「累進課税」が採用されています。

各国の最高税率はおおむね似ていますが、制度の仕組みは大きく異なります。住民税が含まれていたり、家族構成によって税率が変わったりする国もあるのです。多くの国の所得税率は0~45%の範囲ですが、中には税率が低い、または所得税がない国も存在します。

例えばシンガポールの最高税率は22%と日本より低く、アラブ首長国連邦では個人に対する所得税がそもそも課されていません。そのため海外赴任前には、赴任先の税率や制度を事前に確認しておきましょう。

関連記事:外国税額控除とは?二重課税されないための確定申告のやり方

海外赴任者の所得税は会社負担となる

海外赴任者は、一般的には日本における個人所得税の納税義務がありません。さらに赴任先の国で発生する所得税を会社が負担するケースもあります。このため、日本国内で勤務する社員と比べて、手取り額の面で大きな利点があります。

こうした優遇により発生する社内の不公平感を解消し、国内勤務者とのバランスを保つためにみなし所得税という仕組みがあります。これは、海外赴任者が日本に住んでいたと仮定したうえで所得税額を計算し、その金額を給与から控除するものです。

参考:No.1920 海外勤務と所得税額の精算|国税庁

国外転出までに必要な手続き

カード情報を確認する男性(法人)

続いて、国外転出までに必要な手続きを2パターンに分けて説明します。

1年未満の海外勤務の場合

1年未満の海外赴任は「短期滞在」として扱われるため、基本的には「海外転出届」を提出する必要はありません。住民票も引き続き国内に残ることになり、住民登録は維持されます。

ただし、住民票をそのまま残しておくと、日本の住民税が課税され続けます。これを避けたい場合は、翌年の1月1日までに住民票を除票(削除)しておく必要があります。

赴任先での選挙への参加を希望する場合在外選挙人証の取得が必要ですが、これには住民票を除票していることが条件となります。したがって、選挙権を行使したい場合も、出国前に住民票を除票する手続きを検討しましょう。

海外で1年以上勤務する場合

1年以上の期間、海外で勤務する予定がある場合は、お住まいの市区町村役所に対して「海外転出届」の提出が必要です。この手続きは、渡航日の14日前から当日までの間に行えます。提出は、本人だけでなく、世帯主や同一世帯の方でも可能です。

海外転出届の提出後、住民票は「除票」となり、日本国内での住民登録は削除されます。

海外転出届の提出方法

海外へ転居する際は、「海外転出届(国外転出届)」を出国予定日の2週間前から当日までの間に提出する必要があります。以下では、海外転出届の提出方法について詳しく解説します。

届出ができる人

  • 本人
  • 世帯主
  • 同一世帯の家族

なお、これ以外の方が手続きを行う場合は、委任状の提出が必要です。

必要書類

必要書類は以下をご参照ください。

区分

提出書類

共通

・届出人の本人確認書類(例:マイナンバーカード、運転免許証、パスポート、在留カードなど)

代理人が提出する場合

・委任状・委任者の本人確認書類(コピー)

窓口へ返却する書類(該当者のみ)

海外転出に伴い、以下の書類を保有している場合は、役所の窓口で返却する必要があります。

  • マイナンバーカード
  • 住民基本台帳カード
  • 国民健康保険被保険者証
  • 国民健康保険退職被保険者証
  • 後期高齢者医療被保険者証
  • 介護保険被保険者証
  • 印鑑登録証

海外赴任時には確定申告が必要?

パソコンと電卓を見て悩む男性

海外赴任時の確定申告が必要かどうか、以下の表にまとめました。

状況

年末調整

確定申告

備考

海外赴任する年

出国までに実施(給与収入が2,000万円以下の場合)

不要(通常)

※以下の場合は必要:・給与収入が2,000万円超・医療費控除や寄附金控除を受けたい場合

扶養控除・配偶者控除は「出国時の現況」に基づいて判断

海外赴任中(非居住者)

該当なし

不要(原則)

※以下は申告が必要

日本国内不動産の貸付による所得

国内不動産の譲渡所得など

非居住者は原則として日本の給与所得は課税対象外。ただし国内源泉所得がある場合は申告必要

帰任した年

帰国後に年末調整(給与収入が2,000万円以下の場合)

不要(通常)

※以下は必要

帰国前/後を通じて給与以外の所得があり、合計20万円超

帰国後の給与収入が2,000万円超

帰国前後の所得を区分して集計。不動産所得・譲渡所得なども含めて判定

海外赴任に伴う年末調整や確定申告の必要性は、赴任のタイミングや収入の内容によって大きく異なります。こうした判断には細かな条件が伴うため、正確な対応のためにも税理士への相談をおすすめします。

関連記事:海外資産に税金はいくらかかる?所得額別の税金や提出調書について解説!

確定申告に必要な納税管理人の選定方法

海外に転勤し非居住者となった後も、日本国内で所得が発生する場合には、日本の所得税が課されます。このような場合、原則として確定申告が必要です。

しかし海外に住んでいると、日本での確定申告手続きを自分で行うのは難しくなります。そこで、代わりに申告や納税を行ってくれる「納税管理人」を日本国内で選任する必要があります。

納税管理人は、赴任者に代わって以下のような税務手続きを行います。

  • 確定申告書の提出
  • 税金の納付
  • 税務署とのやり取り

納税管理人は、日本国内に住所がある人であれば誰でも選任可能です。税理士などの資格や、親族である必要はありません。

ただし、税金に関わる重要な手続きを任せることになるため、信頼できる相手を選ぶことが大切です。実際には、多くの人が親族を納税管理人に指定しているようです。

関連記事:外国人労働者にも税金はかかる?条件や免除されるケースを徹底解説!

海外赴任者が利用できる控除

外国税額控除は、海外と日本で同じ所得に課税される「二重課税」を防ぐための制度です。日本に居住していて、海外で得た所得の税金を現地で納めた場合、日本での所得税からその分を差し引けます。

利用できる例

  • 日本に居住して、海外の株式配当を受け取っている方
  • 日本に居住して、海外不動産で利益を得ている方

※租税条約を締結していない国で納税した場合は、控除の対象外

控除の対象となる所得・対象外の所得は以下の通りです。

区分

内容

対象になる所得

所得の一定割合に対して課税される海外の所得税や附加税など

対象外の所得

納付後、自己判断で還付請求できる税金や、納付時期を自由に選べる税金など

控除できる上限は、所得税額 ×(国外所得 ÷ 総所得)で計算されます。

海外赴任中の所得税を会社負担する際の注意点

税理士に丸投げするデメリットのイメージ

所得税は本来個人が支払うものであり、会社はあくまで納税を代行しているに過ぎません。本人が税金を免除されているわけではない点に注意が必要です。

例えば現地子会社が赴任者の所得税を立て替え、本社に請求したとします。その支払いは税務上「寄付金」とみなされ、損金算入が否認される可能性があります。これが認定されると、会社の税務負担が大きくなる恐れがあるのです。

ただし、本社と現地の給与水準に差があり、その差額を補填する場合には、本社が負担した人件費は損金として認められます。もしみなし所得税や海外手当を含む給与額が、現地従業員より高い場合、その超過分は補填として扱うことができます。

海外赴任中の所得税に関するよくある質問

最後に海外赴任中の所得税の取り扱いについてのよくある質問をまとめたので、こちらもあわせてご参照ください。

海外勤務中に不動産所得があった場合は?

日本国内に所有する不動産の賃貸収入や国内資産の売却によって得た所得がある場合は所得税の確定申告が必要なケースがあります。

参考:No.1926 海外勤務中に不動産所得などがある場合|国税庁

海外赴任者の住民税はどうなる?

出国後も日本の勤務先から給与が支払われる場合はこれまで通り特別徴収により住民税が給与から差し引かれ、勤務先が納付します。また、出国前の給与から未納の住民税を一括で控除し、精算するケースもあります。

海外転出後に退職などで給与支払いがなくなった場合、特別徴収ができないため、普通徴収に切り替わります。その場合は自分で納付するか、納税管理人を指定して代理で納付してもらわなくてはいけません。

年の途中で海外赴任した場合の確定申告は?

年の途中で海外赴任し非居住者となった場合、その年の1月1日から出国日までは「居住者としての所得」が生じます。出国日の翌日から年末までは「非居住者としての国内源泉所得」が対象となり、これらを合算して確定申告を行う必要があります。

まとめ

海外赴任に伴う所得税の取り扱いは、国によって大きく異なります。日本では原則として非居住者に所得税の納税義務はありません。現地で課される所得税は企業が負担するケースが多く、手取り収入が増える可能性があります。

その一方で、日本国内で不動産収入などの所得がある場合は、納税管理人を通じた確定申告が必要です。

また、住民税や控除の扱いも注意すべきポイントです。赴任前は転出手続きや税務上の取扱いをしっかり確認して必要に応じて専門家に相談することが、トラブルを避ける鍵となります。

海外赴任に伴う所得税の取り扱いについてお悩みのことがあれば、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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